この話からですよ。
秋に入り風が涼しくなり始めた頃、ある日のお昼休みにお昼を食べていたのだが、
「なんか騒がしくね?」
鋼輝がそんなことを言った。
「言われてみれば確かに。どっからだ?」
「いや、わからん」
「まぁいいや」
とりあえずそれは無視してお昼を食べ続けた。
その放課後、珍しく勧誘の時以来に生徒会室に呼び出されたので向かった。扉を開けるとそこにいたのは···
「日菜先輩なんでいるんですか?」
「やっほー」
「来てくれてありがとうございます」
「日菜がなにか思いついたようで昼休みにアポイントメントなしで来たんですよ」
「ああ、それで騒がしかったのか」
納得がいった。ちなみに俺が”日菜”先輩と呼んだのは氷川姉妹が同じ場所にいたからだ。こうしないとややこしくなるから仕方ない。
「それでどうしたんですか?」
「あれ?市ヶ谷いつからいた?」
「最初からいた!」
「実はね」
よくこの流れから続けられるな。
「文化祭を合同でやりたいの!突然思いついてるんっ♪てきて」
「ようはやったら楽しそうだからと」
「その通り!」
「会長、どうしますか?」
「まずは先生方に相談しましょう。他校が関わると私たちの一存では決められません」
まぁそうだろうな。
「そうですね。では日菜、あなたも先生方にちゃんと話しなさい」
「わかってるよ、おねーちゃん!じゃあまたね」
バタン
「···相変わらず台風みたいな人だな」
「ごめんなさい」
「いや別に氷川先輩が謝ることじゃないっすよ。ねぇ会長」
「そうですね。それに実現すれば楽しいものになります」
うーんこれはどうなる事やら。
~~
「···ていうことがあってさ」
「それは大変だったね」
「そのために放課後も羽丘行かないかんし。何故か俺が」
「女子校なのにねあそこ」
朝から奥沢に昨日のことを愚痴っていた。夏休みが終わって席替えをしたのだが奥沢とは隣になった。
「とりあえず確定するまでは弦巻たちだけには知られちゃいけない。どうなるかわかったもんじゃない···」
「あはは、そうだ「蓮!」
ビクッ!
「ど、どうした?弦巻」
「文化祭を合同でやるって本当?そうだとしたら絶対楽しいわよね!?」
なんで知ってるんだ!?
「弦巻?」
「なあに?」
「それ、誰から聞いた?」
「?どうしてそんなことを聞くの?」
「いいから」
「香澄よ」
俺はその言葉を聞きスマホを取り出して、電話をかける。
プルルルルガチャ
「おい市ヶ谷!」
「ごめん!」
「口滑らせたな!?」
「う···つい···」
「こいつらにバレたらこうなることくらいわかるだろ。まぁもうすぎたことはいい。これ以上広まらないようにしときなさいよ」
プツッ
「弦巻それ誰かに言ったか?」
「いえ、まだよ」
「だったら誰にも言うなよ。まだ確定事項じゃないんだ。無くなる可能性もまだある。万が一楽しみにしてたのに無くなったなんてことになったらみんなから笑顔が消えるぞ」
「それは大変ね。じゃあ内緒にするわ!」
「そうしてくれ」
「井戸原君なんかこころの扱いが上手くなったね」
「まぁこんなもんだろ」
「でも羽丘に行くの井戸原君で大丈夫?」
「うーんまぁ向こうには湊先輩、美竹、宇田川がいるしこっちには氷川先輩と奥沢がいるからなにかやったら両方でお説教が待ってるからな。いなくても事案になるようなことはしないけど」
~~
放課後、俺は羽丘女子学園に赴いた。ほんとに俺でいいのか?
来てしまったものは仕方が無いので腹をくくって警備員に話しかける。
「すみません」
「はい、どうしました?」
「花咲川の井戸原です。話は通ってると思いますが···」
「井戸原さん···あっはい確かに。ではこの入校証を首にかけてお帰りの際にこちらでご返却下さい」
校舎内に入ると中を見回す。やはり花咲川とは違うので珍しく思ってしまう。学校から持ってきた上履きに履き替えると声をかけられた。
「あ、あの」
「ん?はい」
「どうして花咲川の方がうちへ?」
「私たちと少しお話しませんか?」
「あ、私も聞きたい!」
わらわらと人が集まって来て収集がつかなくなってしまった。するとそこへちょうどいい人が歩いてきた。
「せ!瀬田先輩助けて下さい!」
「ふふ、困った子猫ちゃんを救うのも運命と言うものか···」
なにかいろいろ言いたいことはあるが助かるならよしとしよう···
「あ!瀬田先輩よ!」
「本当だ!」
···とか思ってた時期が俺にもありました。瀬田先輩の登場で余計に人が増えた。
あの人に頼った俺が馬鹿だった。
すると突然手を捕まれ引っ張られた。誰だ?と思っていたが人混みを抜けるとわかった。
「ごめんね遅くなって」
「羽沢か。いや、助かった。俺マジであそこで死ぬのかと思ったわ」
「どういたしまして」
「しかしよくあの人混みの中入ってこれたな···あ、小さいからか」
「むー」
「あ!あの人いつの間にか!」
やべ!見つかった。
「羽沢!生徒会室どこだ!?」
「ここからだと少し遠いよ」
「お前案内しながら走れるか?」
「無理だよ!」
くっ!出来れば避けたかったが構造を知らない以上はこうするしか無い!
「ちょっと失礼」
「え?」
俺は羽沢の背中と膝裏に手をまわして持ち上げる。つまりはお姫様抱っこなわけだ。
「ちょ、ちょっとこれはさすがに恥ずかしいよー///」
「それは俺も同じだよ」
「そうは見えない!」
「悪いがそこまでかまってられない。お前を連れてあの集団から生徒会室に逃げるにはこうするしかない。だからこの状態で案内よろしく」
「もーー!」
~~
「みんなーなんか面白いものが見れるよー」
羽丘の廊下の一角、青葉モカは一緒にいた美竹蘭、上原ひまり、宇田川巴を呼んだ。
「どうしたのモカ」
「あれあれー」
その視線の先には
「あ、あれ井戸原···っていうか」
「つ、つぐがお姫様抱っこされてるー!///」
逃げる井戸原と羽沢がいた。
「み、みんな!井戸原君さすがに降ろして!」
「お前がいないと困るからやだ」
「······///」
明らかに告白とも取れる断り方をする。
「おー」
「きゃーー!ひゃーー!」
「ひまりうるさい」
「見ないでー!」
羽沢にはそれが自分がいないと生徒会室にたどり着けないからやだという意味なのはわかっているのだが、女の子としてはやはり多少そう思ってしまうのだ。
ちなみにこの光景は他の羽丘生である湊友希那、今井リサ、大和麻弥にも見られていて花咲川のメンバーに拡散された。
~~
「そこの部屋!」
羽沢がそうい言うので
バンッ!
扉を蹴り開けて、
バタン!ガチャ
鍵をかけて一安心し、扉へもたれかかる。
「わあー意外と大胆」
「氷川先輩、何がですか?」
扉を蹴り開けたことだろうか。
「そういうの良くするの?」
指差す方を見ると羽沢が
「そろそろ···降ろして///」
顔を真っ赤にしながら小さく呟いた。俺はゆっくりと彼女を降ろしたがまだ顔が赤い。
「いや、ほんとにごめん」
そう謝るが彼女は
「う~~~」
と赤い顔のまま唸りながらポカポカと殴ってくる。
「それで蓮君はよくやるの?お姫様抱っこ」
この人ほんとに度胸あるな。
「いえ、羽沢が初めてです」
俺がそう答えると羽沢は殴るのをやめてお茶の準備に取り掛かった。
~~
「で、これが資料です。うちの教師は結構乗り気なんですよね。」
「うちもそうだったよ」
「だとすると決定事項になるので早いうちに詳細詰めて言った方がいいですね。俺も会計として学園長を脅···と交渉して多めに予算を確保したので」
「今脅したって言おうとした?」
「聞き間違いでしょ」
嘘だ。実はこの間偶然ちょっとしたスキャンダルを手に入れたのでそれを材料に予算の増加をさせた。
「まぁこんなところですかね」
「そーだね。じゃあ私もお姫様抱っこして」
「なぜ?」
「私もやってもらいたいと思うんだよね。大体の女の子はそうじゃない?」
「そういうもんですか?まぁいいですけど」
そうして一通り満足してくれたあと
「じゃあ帰ろー!」
3人で玄関へ向かっていると
「あ、つぐだ」
「みんな!」
「おつかれ」
「うんマジで疲れた」
「あの後どうだったの?」
「井戸原くんの初めて取っちゃった」
「「「「「!?」」」」」
「ちょっと井戸原どういうこと?」
「いや、特に何も」
「私2番目だよ」
「氷川先輩これ以上ややこしくしないでください!」
「ちょっとお話しようか」
「美竹、怖い」
この後、散々ありもしないことでお説教を受け誤解を解いた。そのあと羽沢の店で俺が売上に貢献することとなった。まぁ話し合いを始めた辺りから羽沢の機嫌が良くなっていたのはなぜだか分からない。
「ほらほらつぐー」
「ちょっとモカちゃん!どうして撮ってるの!?」
「でもつぐちょっと嬉しそうだよー?」
「~~~///」
ちなみに、今回の羽丘での騒動は後に羽丘お姫様誘拐事件と呼ばれるようになり、からかいと演劇のネタにされることとなった。
珍しく長くなった気がします。
映画楽しみですね。