学戦都市アスタリスクRTA 『星武祭を制し者』『孤毒を救う騎士』獲得ルート 作:ダイマダイソン
今日、突然だが界龍に転校生がやってきた。
特待生がやってくるらしい。
兄である
そんなわけで自己紹介の後、質問の時間が設けられたが
「基臣君は木派と水派、どちらに所属するつもりなんだい! 高みをめざすならぜひ木派に入らないか!」
馬鹿だ、馬鹿がいる。あとで人知れず勧誘するならまだしも、木派と水派の両方がいる中でこの質問は悪手だ。その空気を読まない馬鹿のせいで教室の雰囲気はピリつく。
「申し訳ないが、どちらにも属するつもりはない」
「そうか! それならしょうがない! もし気が変わったら言ってくれ! いつでも木派は君の事を受け入れよう!」
「分かった」
先生も雰囲気が少しピリついたのを悟ったのか一つ手を叩き、話の流れを変える。
「質問はここまでだ。それじゃ誉崎の席は沈華の隣だな。授業で分からないところがあったら教えてもらえ」
「了解だ」
隣の席に座ると、こちらに声を掛けることもなく座る。授業の合間の休憩時間の時、ちらりと質問攻めにあっている転校生のことを観察していたが、のらりくらりと質問を交わして自分勝手なマイペースで物事を進めていた。
ただ、なんとなく。なんとなくなのだ。その振る舞いが鼻に付くから放課後、そいつに決闘を仕掛けることにした。
「決闘しない? 実は私、あなたの実力に興味があって」
「……構わないが、場所を移動するか。ここだとさすがに戦いづらい」
「分かったわ」
ふてぶてしさを貼り付けたようなその能面面、すぐに苦悶の表情に変えてあげる。
場所を移し、彼は武器を取ろうと背負っているケースから刀を取り出すと私に向けて構えようとする。
ピシッ
「へ?」
パリンッ!
彼が刀を持ったかと思うといきなりそれが跡形もなく砕け散った。本人も何が起こったのか分からないのか無表情のまま手元をじっと見つめている。新しい装備を手に取ろうと、先ほどの実体刀とは違って煌式武装を取り出すがそれもまるで呪われたかのように同じように砕け散る。
同じように手元を見て煌式武装が砕けたのを確認して、少しだけ考え込んだような表情をすると、装備を手に取る気配を見せずそのまま拳を前に突き立て、戦闘の構えを取る。
「なんの……つもり……?」
「見ての通り手持ちの武器が無くなってしまったからな、申し訳ないが
私を舐めているのだろうか。
「その傲慢にも等しい自信、粉々に打ち砕いてあげる!」
『
「急急如律令、
さっそく、煙幕を張りその姿を隠し、分身して本体を絞らせないようにする。星武祭ならば煙幕のような見えないところで攻撃をするのは違反になるが、これはあくまで校内での決闘。相手を殺しかねないような攻撃でなければ基本的に認められる。
煙幕の中で呪符を展開し、万全の態勢を整える。これで何が来ても彼を……ッ!?
「……かはっ! はぁ……はぁ……、ケホッ! なにが……っ!」
何が……起こったの? 頭がクラクラする。眩暈がひどい……。
回らない頭で必死に原因を考える。この不愉快な感触。おそらく、顎を打たれた。しかも一発当てた直後に更にもう一撃を重ねるという神業を以てだ。
「はぁ……はぁ……急急如律令、勅!」
働かない頭を無理やり起こして再び分身を行い、煙幕の中に身をひそめる。今度こそ一撃入れて……ッ!?
「ゴホッ! な、なんで……カハッ!」
どういう理屈か分からないけどその行動の淀みのなさから、彼は間違いなく5体いる内の本体である私を確信を持って見つめて襲い掛かってきている。こちらの動きを手に取るように理解しているのか、攻撃は全く当たらない。まるで終わらない悪夢のように延々と繰り返され続ける蹂躙。的確に人体の弱点に狙いを定めて拳で殴打してくる。ただでさえ弱点なのに、そこに速さが加われば言うまでもない。完膚なきまでに私は叩き潰された。
「ッグッ……ケホッ、ケホッ」
「どうだ、満足したなら降参してくれ」
「まだ……っ、負けてない」
「そうか」
皮肉や負け惜しみが全く通じないのか、一切の容赦なく私を地へと倒し伏せる。ぼやける視界の中、逃げ切ることは出来ずついに決着の時が来た。
『
「このバッジのようなものを破壊すればよかったのか……。なるほどどうりで何回攻撃を当てても終わらないわけだ」
危なかった。もう一撃来たら確実に気絶していた。彼は私の二つに割れて破壊された
「これで終わりだが……。満足したか?」
私の事を覗きこんでくるその瞳は何も考えてない冷たさを帯びていた。端的に言うと、最初から相手にされていなかったのだ。それを理解すると、悔しさに心を占められる。
「絶対にッ、あなたに勝って見せる!」
悔しいっ! でも、無理やりにでも理解させられる。私と彼の間に存在する明らかなまでの実力差。おそらく師父の次、もしかしなくても序列2位の大師兄に匹敵するほどの実力。
私は間違っていた。この男に対する評価を。相対して分かるあのプレッシャー。正直怖かった。だけど、負けたくない。
いつか超えてみせる、絶対に
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一人でやることもなく、作り出した蝶と戯れていると足音が一人分こちらに向かってくるのが聞こえる。蝶を消して振り返ると、基臣が立っていた。
「おぉ、基臣か。鍛錬をしにきたかえ」
鍛錬をするのかと思い、ワクワクしながら準備をはじめようとする儂を基臣が片手で制してくる。
「今日は別件だ。少し困りごとがあるんだが、万有天羅であるお前なら分かるかと思ってな」
「ほぉ」
基臣によると、決闘のために武器を取り出そうとしたら独りでに動いて砕けてしまったそうじゃ。本人曰く、勘ではあるが持ってきていた
「ふぅむ……、純星煌式武装がのぉ。前例はないが、あやつらは気難しい性格の奴も多いからのぉ。うまく付き合っていかなければ使い手が死ぬというケースも稀にあるわけじゃから無くはない話じゃろう」
「とすると、どうするべきだ。拳術も嗜んではいるが、それだけに頼るのも限界がある」
「そうか、うーむ……。そうじゃ。おぬしのその純星煌式武装をちょっと儂に貸してみぃ」
「お前にか? どういうつもり知らんが、分かった」
こやつが適合者として認識されるから多少は抵抗されるじゃろうが、触れてどんな性格かを調べるぐらいはワケないじゃろう。
「これだ」
「……見えんのじゃが、おぬしの純星煌式武装の能力かえ?」
「おそらくそうだな。一度他の奴の目の前で持ってみたがどうやら見えないらしい」
「ふむ、それでは……」
脳内に直接喋り掛けて、駄々っ子のようにワンワンと騒がしい声が聞こえてくると同時に儂に敵意を向けて純星煌式武装が勝手に動いて衝撃波を飛ばしてくる。周りの床や壁には亀裂が入り、強烈な圧迫感が襲い掛かってくる。
「……ッ!!」
「おぉ……っとと。色々な純星煌式武装を見てきたが、こりゃまた難儀な性格そうじゃのう」
基臣を見ると制御できていないのか腕が重力で押しつぶされるように地面へと叩きつけられて、純星煌式武装のされるがままに振り回されている。このままではいかんのぉ……
「基臣! 星辰力を武器に籠めて制御せい!」
「今っ、やっているっ!」
時間が経つごとに徐々に抵抗が収まっていき、最後には静かになった。
さすがに異変に気付いたのか
「師父! 何かあったのですか!」
さすがに
「いんや、新しい星仙術の実験に付き合ってもらっとっただけじゃ。気にするでない」
「いやいやいや、気にしますよ! 施設のそこら一面、ヒビだらけじゃないですか! いくら師父が《万有天羅》といえども、この損壊具合、上が何言ってくるかわかりませんよ! それにですね……」
「あぁ、分かった分かった。あとで聞いてやるからしばらくの間待っておれ」
「もう、後で覚悟しておいてくださいよ! 基臣くんも師父の戯れに無理に付き合わなくていいんですからね」
「分かった」
まったく。要らぬ横やりが入ったもんじゃがまあよい。
「すまない。虎峰に勘違いされてしまった」
「別にこれぐらいどうってことないわ。それより、ほれ。よこしてみぃ」
「あぁ……」
少し疲れた様子でこちらに向かって純星煌式武装を渡してきたのでそれを受け取ると同時に先ほどのような攻撃はないものの、禍々しい気配を宿らせてくる。
うーむ、こりゃまたずいぶんと嫌われてしまったのぉ。触れてみてわかることは基臣に対して悍ましいという表現が似合う程の執着心とその反面、繊細な心を持っていて人に見られる、触れられることを極端に嫌っておる。
星導館がもってる純星煌式武装にも似たような所有者を束縛するタイプのものもあるが、ここまでその感情が表に出てくるのは初めて見る。
この感じじゃと懐柔するのにかなり苦労しそうじゃ。
「ほれ、儂はかなり
「それでどうだった」
「お前さんに大分、というか物凄い執着してるようじゃな。今は他の武器に嫉妬するだけで済んでおるが、その内周囲に危害を加える可能性もあり得る」
「そうか……、どうすればいい?」
「うーむ、そうさな。まあ、王道を往くなら、というよりそれしかないのじゃが何度もそやつを使っていく内に向き合って言い聞かせるのが一番じゃがな。ただ」
「ただ……?」
「触った感じ、そやつは大分昔から存在する純星煌式武装みたいじゃから、
「なるほど、用心して使うことにする」
話は済んである程度納得したのか、そのまま立ち去っていく基臣の姿を見届けながら独り言が漏れる。
「どうにもあやつの剣の能力は透明化だけではないように思えるがのぉ……」
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