学戦都市アスタリスクRTA 『星武祭を制し者』『孤毒を救う騎士』獲得ルート   作:ダイマダイソン

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ヤンデレ剣が段々と不穏な動きを見せ始めたので初投稿です。


裏話7 暴走

 

 「ほお。今度の鳳凰星武祭、おぬしたちが組んで出場するのか。意外じゃのう」

 

 その幼体には見合わぬ豪華な椅子に見た目とは反して堂が入った座り方をした幼子である星露は傍に控えている虎峰にお茶を注がせて、今度の鳳凰星武祭出場者である基臣と沈華を見る。

 

 「本当ですよ。基臣くんほどの誠実な人が沈華と組むなんて思いもしませんでした」

 

 「む……」

 

 虎峰が思わず漏らした本音を聞き、沈華が静かに睨むと何も無かったかのように振る舞う。事実、基臣はこの界龍の中でも上から数えてすぐといっても良いほど強く、不器用な所はあるが人に対して悪意を持って接することはないので、対極に位置するような存在である沈華と組むとは普通は思いもしないだろう。したがって、沈華も睨みはすれど噛みつこうとはしなかった。

 

 「まあ、お互いに利害が一致したというだけだ。俺としてもタッグ選びは手短に済ませたかったところだからな」

 

 「ふむ、まあおぬしの性格からしてそうじゃろうな。……それで本題じゃが」

 

 星露はいったんお茶に口をつけて間を置くと、事の本題を話し始める。

 

 「今度の鳳凰星武祭、沈華が必ず相手の内の片方のトドメを差してもらう」

 

 「師父!それはどういう……!」

 

 「今から話すから落ち着けい」

 

 椅子を立ち星露に迫る虎峰を落ち着かせ、席に座らせると話を続ける。

 

 「おぬしたちとそれぞれ戦ってみて感じた事じゃが、課題がいくつかあるのじゃよ」

 

 「課題……?」

 

 「基臣。おぬしは連携するという事を知らない。動きから見ても、相手の動きを観察することはできているようじゃが仲間に合わせるということが出来ておらん。個としての強さを極めていく上でもチームでの動き方を理解することは十分参考になるところはある」

 

 虎峰に再び注いでもらった茶を飲んで一息つくと、基臣から視線を沈華へと移して話しを続ける。

 

 「……それで沈華じゃが。仲間をサポートするなら現時点でも十分優秀な部類に入る。しかし、単独で戦うとなるとどうにも決定力に欠ける」

 

 「そういう訳で、それぞれの課題を考えた結果、次の鳳凰星武祭では基臣は仲間をサポートすることを、沈華は相手に一撃でトドメを与えれるような決定力となる武器を身に着けてもらう」

 

 その説明を聞いて基臣は納得したかのように少し頷いたが、疑問が沸いたのか星露へと話す。

 

 「その条件、俺は別に拒否できるわけだが、その時はどうなるんだ?」

 

 「拒否するのならそれも結構。ただしその場合、来年の獅鷲星武祭(グリプス)。おぬしをチーム黄龍(ファンロン)には加入させん」

 

 「師父!さすがに横暴が過ぎますよ!」

 

 「虎峰、おぬしは静かにしておれ。それでどうする」

 

 その言葉に少し悩んだ様子の基臣だったが、しばらくして返事を出す。 

 

 「分かった。その条件、飲ませてもらう」

 

 「よし、それならばさっそく二人で特訓せい。一か月近くあるとはいえ、本番まであっという間じゃからの」

 

 

 

 

 

 星露の話も終わり、二人で特訓することになった基臣と沈華は施設を貸してもらい、貸し切りで鍛錬を行うことにした。

 

 その途中、鳳凰星武祭でどう戦っていくかについて話し合っていた。

 

 「過去の鳳凰星武祭を確認してみたが、その中でもお前には十分戦えるレベルの実力がある。俺がトドメを差すときは……」

 

 「沈華」

 

 「ん?」

 

 「だから名前。タッグパートナーなのにあなたとかお前とかっていうのはおかしいでしょ。本戦では勝利したらインタビューも受けるんだし、他人行儀のままじゃ怪しまれるわ」

 

 「それもそうか、じゃあそっちも好きに呼んでくれ」

 

 「じゃあ基臣で」

 

 「そうか。それでさっきの続きだが俺がトドメを差すときはお前はサポートをしつつ相手の逃げ道を封殺するような立ち回りを心掛けろ。お前がトドメを差すときは俺が相手の意識を削ぐような立ち回りをするから、一番自信のある戦い方をしろ」

 

 「分かったわ。あと話は変わるんだけど、技を繰り出すときは技名を言いながらやってくれないかしら。基臣の動きが早すぎるから、サポートするときに動きを把握しづらいのよ」

 

 「わかった、できる限りのことはやってみる」

 

 

 

 

 そんなこんなで色々と鳳凰星武祭へ向けて色々と作戦を練っていると、建物の奥からおびただしい程の数の呪符を付けた棍を持った大柄な男が基臣たちのもとへとやってきた。

 

 「だ、大師兄!なぜこんなところに……!」

 

 「師父から基臣、お前の純星煌式武装の試し切り相手を務めてやれと言われてな。俺に白羽の矢が立った」

 

 「なるほど。俺もこいつの制御には正直困っていたから、相手がいるのは助かる」

 

 沈華は邪魔になるので端っこの方で観戦してもらうことにして、基臣と暁彗の二人はそれぞれ得物を手に持ち向かい合って対峙していた。

 

 「それではさっそくやろうか」

 

 「ああ」

 

 少しの間、二人の間に動きがなく静かさが場を包んでいたが、策は決まったのか先に暁彗から動き出す。

 

 「急急如律令、(ちょく)!」

 

 身が焼けつきそうなほどの火柱が迫り来るが、基臣はそれを縦に切り裂きつつ暁彗のもとへと駆け抜ける。

 

 「誉崎流初伝、凌穿(りょうせん)

 

 貫くような勢いで剣を点で突くように攻撃をする。暁彗は身に構えた棍でそれを器用にガードを行うことで退けるが、点による攻撃は想像以上に威力があったのか、身体をのけ反らせる。のけ反った暁彗はムーンサルトの要領で後ろへ一回転し、棍による攻撃を行う。

 

 「憤ッ!」

 

 「棍による攻撃と巻き付いている呪符による衝撃の二段構えか……」

 

 先読みしていたのか、綺麗に狙い穿つ攻撃を基臣は全て避け切る。その華麗な回避に暁彗は少し片眉をあげて驚きを表わすが、攻撃の手を緩めず追撃する。

 

 「誉崎流中伝、断蒼(だんそう)

 

 追撃をバックステップを踏んで回避した数瞬後、今度は前に踏み込み相手の隙を突いて下から斬り上げる。

 

 その攻撃は正確無比に暁彗の身体を綺麗に一閃し、その身体に傷をつける。

 

 「これが壁を越えた者たちの戦い……」

 

 舞台端から二人の戦いを眺めている沈華はその戦いのレベルの高さに驚愕する。本気で戦っている基臣の攻撃の合間を掻い潜ってサポートすることができるかを考えるが、思案の中では基臣の攻撃を妨害するという結果に落ち着く。

 

 「どうじゃ、あの二人の戦いは」

 

 「師父……!」

 

 すぐさま片膝をつこうとする沈華を片手で止める。

 

 「よいよい、楽な格好でええ」

 

 「……それでは」

 

 立ち上がり最低限の敬意を払った立ち振る舞いをしつつ、戦いへと視線を戻す。

 

 「今のところ、基臣の方が若干優勢といったところかの。まあ、あのじゃじゃ馬がいつ暴れ出すか分からんから形勢はどう動くかはまだ分からんがの」

 

 星露の言う通り、基臣は一撃も攻撃を食らうことなく有利に立ち回っている。

 

 しかし、途中で暁彗から一撃を食らったところから剣を握る基臣の挙動にどこか不安定な動きが混ざってくる。やがてもう一撃食らうと目に見えて動きが緩慢になる。

 

 「おっ、またしても攻撃を食らいおったか。こうなると勝負も分からんくなってくるの」

 

 星露がそう言うと、その言葉の通り基臣は完全に劣勢に陥る。今まで攻勢だった基臣はいきなり距離を取り、なにやら目の前の敵とは別の事に気を取られているようだった。

 

 「あいつ、なにやって……ッ!?」

 

 明らかにおかしな行動をとる基臣の姿に思わず声が出てしまったその瞬間、場を包む空気は基臣を中心に一変する。

 

 

 

コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス

 

 圧倒的な殺気が場の空気を支配し、憎悪を基臣以外のその場にいる者たちへと振りまく。

 

 「……ッ!」

 

 「ほっほっほっ、相も変わらず恐ろしい殺気を放ちよるのお」

 

 星露は平然と受け流しているが、隣にいる沈華はその殺気を受けて恐怖を感じるほどのものだった。

 

 「……師父、あれは」

 

 「基臣の持っておる純星煌式武装の意思、いや呪縛といった方が正しいかの」

 

 全く存在を認知できない基臣の剣だが、星脈世代(ジェネステラ)の人間なら周りを漂っている万能素(マナ)越しにその異常と言っても良いほどの存在感が伝わってくる。

 

 「まあ、あれのことは後で話すとしよう。ほれ、やはり基臣の制御から外れたようじゃの」

 

 星露の言葉通り制御から外れた潔白の純剣(インヴィズ=ピューレ)はその刃を暁彗へと走らせる。潔白の純剣の軌跡に当たったと思わしき暁彗の身体からは血しぶきが上がる。

 

 「何も見えなかったのに、大師兄の脇腹にダメージが……!まさか勝手に行動を……。制御が外れてしまっては不味いのでは」

 

 「そんなことあやつもよく分かっておるじゃろう、今捕まえたようじゃわい」

 

 必死に潔白の純剣(インヴィズ=ピューレ)を押さえつけている基臣を見て一安心する沈華をよそに、星露は戦っていた二人のもとへと行く。

 

 「これで大体己が解決すべき課題も見つかったじゃろ」

 

 「……星露」

 

 「今後もこうしてそやつを制御する相手として付き合ってやるわい、おそらく一人だけじゃと途中で行き詰まってしまう」

 

 「助かる」

 

 「ええ、ええ。それでじゃが、沈華はちと話があるのでな。おぬしは疲れたじゃろう先に特訓を終わるとええ」

 

 「分かった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 基臣は寮へと戻っていったのをよそに、星露と沈華は話をするべく移動した。

 

 「おぬしもその目に焼き付けたじゃろうが、基臣の持っておる純星煌式武装は非常に強力じゃが、その反面性格に難があって中々の曲者じゃ」

 

 「はい。傍から見ただけでも基臣が相当制御に苦労してそうなのが分かりました」

 

 「実際途中から挙動が怪しくなってきおったしの。ただ、最大の問題はそこではない」

 

 「最大の問題……?」

 

 「うむ。最大の問題は鳳凰星武祭の途中にあの純星煌式武装に基臣の身体の制御を奪われてしまうことじゃ」

 

 「身体の制御を?」

 

 「過去にもレヴォルフの覇潰の血鎌(グラヴィシーズ)なんかは使用者の身体を変化させたり、身体の制御を奪われるという事故もあったという話じゃ。基臣の純星煌式武装もそんな事態があってもおかしくはない」

 

 「その時はどうすれば?」

 

 「現時点ではどうにもならんが、気をつけるしかあるまい。試合中は気を配るんじゃぞ」

 

 「分かりました」

 

 「話はそれだけじゃ。下がってよいぞ」

 

 「失礼します」

 

 

 

 

 星露の元から立ち去った後、帰路の中一人話していたことを思い返す。

 体の制御を奪われる、そんなことがあればどんなことになるか分からない。もしかすると無差別に攻撃を始める可能性すらある。その場合、さっきのように私にも殺気を飛ばしてくることだろう。

 

 「そのときは私に止められるのかしら……」

 

 沈華はそのことに若干の不安を感じながらも寮へと帰っていくのだった。

 

 

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