学戦都市アスタリスクRTA 『星武祭を制し者』『孤毒を救う騎士』獲得ルート 作:ダイマダイソン
「『第3回シルヴィア・リューネハイムを追い落とす手段を考える会議』はじめるよー!」
「「「いぇーい!」」」
「それじゃシルヴィアを追い落とす手段だけど、何か考えがある人!」
「あるぜ!」
「はい、トゥーリア!」
「正面から決闘を挑んで倒すってのはどうだ!」
「それ前もやってダメだったからパス」
「なんでだよー、もう一回やってみたらもしかしたらいけるかもしれねぇだろぉ!」
「それ前もやってボコボコだったじゃん、ダメダメ!」
まったくもー、トゥーリアは……。このルサールカの中で一番突っ走るところがあるからどうにも正面から叩き潰すことばかり考える節がある気がする。
第2回の時にトゥーリアの案を採用して私がシルヴィアに決闘を仕掛けた結果、見事なまでに惨敗してしまった。
しかもその一週間後、私の無様な姿を撮ったメディア系クラブの写真が学園内で拡散して、マネージャーのペトラさんに大目玉を食らったのは記憶に新しい。
うぅ、あの時のことを思い出しただけで震えが……
「はいはーい。モニカにいい案があるよ」
「はい、モニカ」
「ほら、1か月ぐらい前にシルヴィアが帰ってきたときに物凄い乙女の顔をしてたでしょお。あれは絶対に裏に男の影があるに決まってるよー」
可愛らしく猫をかぶったモニカが指を立ててシルヴィアに彼氏の存在がいることを示唆した。
「あー、あったよね。そんなこと」
「だからー、その決定的な写真とかを撮っちゃってメディア系のクラブに渡しちゃえばシルヴィアも流石にいろんなところから集中砲火を浴びちゃうかもー」
流石モニカ。作戦の内容のえぐさに若干引き気味になりながらも確かにいい案であると考える。
「まあそれでいいんじゃない」
今まで喋っていなかったパイヴィもその意見に同意する。
「それでは追跡開始ー!」
「「「おー!!」」」
こうして私たちのシルヴィア追跡作戦は始まった!
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カラオケにゲームセンターなど割とシルヴィアにしては普通の場所を巡って件の男と一緒に遊んでた。男の方は遊ぶことに手慣れていないのかどうも動きが硬いような気がするけど、まあ、シルヴィア程の美人と遊んでいるんだ。緊張していて身体が思うように動かないんだろうね。
「あむっ、もぐっ……。パイヴィ、シルヴィアはどんなかんじなのー。もぐもぐ……」
「例の男とブティックで楽しくお買い物中……って真面目にやりなさいよあんたたち」
「いやーごめんごめん、でもこの店の限定スイーツ普段は中々食べられないからつい夢中になっちゃって」
「うんめーなーこれー」
「まったく、それ食べたら出るよ。もうそろそろシルヴィア達も移動しそうだし」
パイヴィの言葉を聞いて、急いでケーキを食べ終えると私たちはそのままシルヴィアと少し距離を開けるようにして尾行を続ける。
しばらく尾行していると、人通りの少ないところに到着して二人はこっそりと裏路地の方に入っていった。
「でもでもー、何しにこんな裏路地に入ったんだろお?」
「人にバレたくないことをしたいから入ったんだろうねぇ。まあ、何となく想像つくけど」
「バレたくないこと?」
「なんだそりゃ?」
モニカとパイヴィは呆れたように私とトゥーリアを見てくる。別に変なことを言ったつもりは無いんだけどなー。
「まあキスとかそういうスキンシップをするんじゃない」
「もしかしたらむふふー、なことまでしちゃうかもー」
むふふーって……っ、そんな破廉恥なことっ! シルヴィアがそんなことするなんて想像もつかないから、もしかしてあの男に誑かされてるんじゃないかという想像が頭の中に浮かぶ。シルヴィアがそれに気づいていないんだとしたら……っ!
「作戦変更! シルヴィアを助けることを第一優先にするよ!」
「おー!」
「まったく、リーダーも優しいよねー」
「まあそういうところに惹かれて私たちもルサールカに入ったんだけど」
裏路地を歩いているシルヴィア達は途中で二手に分かれたみたい。どっちを追いかけるか一瞬悩んだけど、まずはシルヴィアを助けることを優先する。
「シルヴィアの方を追いかけよう!」
「「「了解」」」
男の方は放っておいてシルヴィアの方を追跡しているけど、途中から姿を見失ってしまった。
「シルヴィアの奴、どこにいったんだよー、まったく」
「さっきまではちゃんといたはずなんだけどねー」
「さすがにもう見つからなそうだし帰る?」
「シルヴィアがあの男に誑かされてるかもしれないんだよ! 私たちで助けないと……」
「俺達に何か用か?」
「……って、ふぇっ!?」
思わず尻もちをついてびっくりしてしまう。
なんでシルヴィアの男がこんなところにいるの!?
後ろにも気を配ってたはずなのに私たちの警戒を掻い潜って最初からいたかのように私たちのそばに立っている。監視していたシルヴィアも騒ぎに気付いたのか私たちのもとへとやってくる。
「あー、やっぱりミルシェ達だったんだね」
やっぱりってもしかして……
「まさか裏路地に入ってたのは……」
私の質問にシルヴィアは縦に頷いて返答する。
「そう、誰が私達を
「くっそー、騙された!」
「シルヴィの知り合いか?」
「この子たちはうちの学園のバンドグループでね。ルサールカっていうんだけど、私にいつもよく絡んでくる子達なんだよ」
「そうか。でもなぜこいつらがここにいるんだ?」
「うーん、たぶん私のゴシップを見つけたかった……とかじゃないかな? 基臣くんといっしょにいるとこを写真で撮ったらアイドルの熱愛報道みたいにできるだろうし」
「こんな写真ごときで大騒ぎになるとは、アイドルの世界はよく分からんな」
いつの間にか私の首にぶら下げていたカメラが男の手にあった。中身を見ているのか、何の感慨もないような目で私が今日撮った写真のリストが映っているディスプレイを見ている。
「あー! そのカメラ返せー!」
まずい。このままだとデータを消されて証拠隠滅されてしまう。どうにかして取り返さないと。何度も取り返そうと手を伸ばすけど写真確認の片手間とばかりにのらりくらりとかわされてしまう。
「と言ってるが、シルヴィ。どうすればいい?」
「うーん、この子達には悪いけどデータを消させてもらおうかな。スクープにされても少し困るし」
「ちょーっとまったー!」
「ん?」
もうおしまいかと思ったその時、モニカがデータを消そうとするシルヴィアに待ったをかける。
「なぁに? さすがにカメラは返してあげるけど、データは消させてもらうよ」
「その話、少し待ってもらいましょう!」
キャラが崩壊しかけているモニカが無理やりシルヴィアの手を止めさせる。キャラが崩れかけていたのに気づいたのか、コホンと一回咳をして猫をかぶりなおした。
「その男との決闘で決めようよ、その方がお互いに納得いくでしょお」
「決闘かぁ、まあいいよ。ごめんね、基臣くん。変なことに巻き込んじゃって」
「別に俺が失うものは無いから構わないが、お前は大丈夫なのか」
「うん、別に大丈夫だよ」
よし!
シルヴィアなら負けるビジョンしか見えないけどこのボーっとしてるような男だったらなんとかなるはず。よくやった、と内心でモニカを褒め称えつつみんなで作戦会議をしようと振り返る。
「作戦会議を……」
「「「じゃあよろしくリーダー」」」
「って、えー! 私がやるのー」
「だって、この中で一番強いのミルシェだし」
「モニカー、ちょっと今日は戦う気分じゃないっていうかー。キャハッ☆」
「まあ頑張りなよ、ここから応援しといてあげるからさ」
完全にみんな私に頼るつもり満々だ。まあ確かにルサールカの中で一番強いっていう自負はあるけどさー。なんだかなーという気持ちが心に残りつつも代表者として決闘するためにシルヴィアたちと向かい合う。
「それじゃあ、私が勝ったら写真のデータを消さないのと、あんたがシルヴィア・リューネハイムとどういう関係なのか教えてもらうからね!」
「うん、それでいいよ。基臣くんが負けるわけないしね」
むっ……
さすがにここまではっきり勝つって言われると腹が立ってしまう。でも、相手は界龍でも名前が出てない全くの無名。こっちだって負けるわけにはいかない。
「あんた、名前は?」
「誉崎基臣」
「そう。私の名前はミルシェ。芸名だけどね」
そう言いつつ、私は胸に付けているクインヴェール学園の校章『偶像』に右手をかざして宣誓する。
「羨望の
「……その決闘申請、受諾しよう」
誉崎の校章が決闘を受諾したことを示すように赤く光り輝く。
それと共に戦いの火蓋は切って降ろされた
「せいやーーーーー!」
「…………」
難しいことはよく分かんないから先手必勝で先に動くことにした。誉崎は様子を見るつもりなのか拳を構えたままこちらを見つめ続ける。
「このー! せいっ! でりゃっ!」
「沈華より少し強いといったところか……」
何度も攻撃をするけど攻撃が一つも当たらない。それどころかその間に何回も拳で攻撃を仕掛けて、そのほとんどが私の身体に命中する。たまらず距離を取ると、幸いにも向こうから距離を詰めることなく様子を窺っているようだった。
このままだと埒が明かないから素早く動いて攻撃を当てたらすぐ回避する戦法に変える。全力で加速してそのまま誉崎へと突進する。って、あっ……かわされた。早く着地して勢いを殺さないと……っ!?
勢いよく突っ込みすぎたのか慣性で身体が勝手に動く。このままだと間違いなく噴水に突っ込んでしまう。
思わず目を瞑って水の感触が来るのを待つけど、身体に感じたのはそれとは別の感触。
目を開けて何が起こったのか見て見ると、私の身体を優しく抱きかかえてくれる誉崎の姿がそこにはあった。というかこれって……!?
「も、ももももしかして、お姫様抱っこ……っ!」
身体越しに感じる逞しい腕の感触に顔が物凄い勢いで熱くなっていくのを感じる。男の人の身体ってこんなに落ちつくんだ……って違う違う! 早く離れないと!
「放せ! はーなーせー!」
「ここで放したら噴水に落ちるだろ、敵に抱きかかえられるのは嫌かもしれんが少しは我慢しろ」
「うー……っ!」
そう言われてしまうと反論できなくなっちゃう。抱きかかえられたままみんなのもとまで移動すると優しく私を下ろしてくれた。
後ろで外野がガヤガヤうるさいけど、恥ずかしさで頭が回らずしばらくの間言葉に詰まってしまう。
「あの、その……さ。さっきはありがとう……」
顔を見て感謝の言葉を言いたいけど、少しでも誉崎の顔が視界に映ると顔が嫌が応でも熱くなっていくのを感じる。
「それだけだから、それじゃ!」
「ちょっとまってよおミルシェ―! カメラ忘れてる!」
「じゃあ私がカメラをもらっておくわ」
「ああ、……ってシルヴィ何で抓るんだ。別に変なことをしてないはずだが」
「別にー」
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散々な結果に終わって先に部屋に帰ってベッドに横になっていると、しばらくしてみんなも帰ってきた。
顔に満面の笑みを浮かべさせて。
「おいおい、ミルシェにもついに春が来たかぁ!」
「ち、ちがうって! あいつとはそういうんじゃっ」
「もしかして、最近流行りの略奪愛? リーダー、そういうの鈍いから私が手伝ってあげるよー」
「だからそういうんじゃなくって……!」
うー……っ、シルヴィに纏わりつく悪い虫を追い払うつもりで近づいたのに、助けられてドキドキさせられるなんて卑怯じゃん……。みんなも勘違いするしどうしたら……
「まったく、あなたたちは何をしていたのですか」
「「「「げっ」」」」
聞き覚えのある声に思わず身体がビクッと震えてしまう。恐る恐る後ろを振り向くとこの前の折檻の時よりも怖い顔をして私たちのことを見ている。
「ペトラさん、どうも……」
「出会うなり、げっとはずいぶんなご挨拶ですね。まあ、それはいいです」
ペトラさんが何か端末を操作していると、私たちの目の前に映像が現れる。ってこの映像ってまさか……っ
「私たちが尾行してるって気づいていたんですか!?」
「ベネトナージュの情報収集能力を舐めてもらっては困ります。貴方達の企みぐらいすぐにわかります」
書類を私たちに渡してきたので表紙だけ見てみると、そこにはルサールカのライブツアーに関することが書かれていた。
「さて、貴方達にはしばらくの間ライブツアーを組んでいます。ライブツアー中にしっかりと自分の行動を反省することです」
その後、ペトラさんに渡されたツアーの予定表を見て、あまりの忙しさに私たちは絶叫することとなった。
気づいたらお気に入り1000件超えてました。
見てくださってる皆さん本当にありがとうございます!
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