学戦都市アスタリスクRTA 『星武祭を制し者』『孤毒を救う騎士』獲得ルート 作:ダイマダイソン
『さあ、第23回鳳凰星武祭の予選! この会場で行われるAブロックの試合。実況はABCアナウンサーのわたくし
『ども、よろしくお願いするっす』
『さー、まず姿を現したのは界龍第七学院の誉崎基臣選手と黎沈華選手です! 誉崎選手に関しては戦闘データが存在しないため今回の戦闘が公式では初めてとなります。また、黎沈華選手はあの《万有天羅》の直弟子とのことで、ある意味注目のタッグですねー。界龍のOGとしてチャムさんはどうご覧になりますか?』
『そうっすね、界龍では公式戦に出ない学生でも普通に強い人は結構いるっすよ。そういうことなんで、誉崎選手の動きに注目したいところっすね』
『なるほど。それでは次に星導館のタッグですが……』
自分が注目されているという言葉にまるで興味のないような表情で基臣は沈華と作戦の最終確認をしていた。
「相手はそこまで強くない。先に俺が片方の相手を倒しておく。お前はもう片方の奴を相手しておけ、後で援護する」
「私をあまり舐めないでもらえるかしら。序列外の人間相手に遅れを取る程弱くはないわ」
「そうか、分かった」
『さて、そろそろ試合開始の時間が迫ってまいりました。果たして勝利を掴むのは界龍か星導館か! それでは本日の第一試合、スタートです!』
『《
校章の機械音声が試合開始を告げると同時に星導館のペアは序列外である基臣の方へと共に向かう。単純に序列入りしている沈華の方を相手にするのは面倒だという思惑が透けていた。
二人の同時攻撃が基臣へと殺到する。
──だが
「えっ……」
同時攻撃が殺到すると同時に、星導館ペアの片割れの校章は基臣の手の中にあった。
「まっ──―」
星導館の生徒の制止の声も空しく、校章は粉々に握りつぶされる。生き残っているもう片方の生徒は諦めず基臣へと向かってくるが、その意気もすぐに失われることになる。
「ほら、沈華」
残った片方の相手の身体を掴むと相手が抵抗する暇もなく沈華へと放り投げられる。
「ちょっ……! 招雷!」
焦りはしたものの反射的に雷撃を食らわせたことで相手は気絶した。
『
あまりにも瞬時に試合が終了したことで静まり返るが、すぐに会場のボルテージは高まっていき大歓声が基臣達を包み込んだ。
『なんとなんとなんと! 一回戦からまさかの試合展開となりました! チャムさん、この試合どう見られましたか?』
『そうっすね。誉崎選手の方は序列外ということであまり注目していませんでしたがあの動き、優勝有力候補レベルの実力を秘めている可能性があると思うっす。黎選手の方も十分
『まさかのダークホースの登場! 今後の誉崎選手・黎選手の活躍に期待できそうです!』
「ちょっと、強引すぎでしょ」
「すまん。一人で倒そうと思ったんだが星露との約束があったのを思い出して強引だがそっちに投げ飛ばした」
「まったく、次からはちゃんとしなさいよ」
「善処する」
呆れた表情で基臣を見つめていた沈華だったが、いつものことかと思うと諦めの混じった溜息を吐きながら彼と共にステージを後にした。
──────────
その後、順調に予選を勝ち進めていった基臣達は優勝有力候補がいる予選の最終試合へと駒を進めていった。
『さあ、やってまいりました。予選Aグループ最終試合!予選グループ内で一番の注目を集める試合となっております!』
『さてこのAブロックの最終試合、優勝の有力候補と目されているレヴォルフの
『そうっすね、ファルケン選手の純星煌式武装はとにかく当たってはいけないタイプの武装の代表格ですからね。そういう意味では誉崎選手と黎選手、どちらも機動性の高いタイプの選手なのでいかに回避を徹底させれるかということがキーになってくると思うっすね。逆にファルケン選手側からすればいかに攻撃を当てて足を奪うかが重要になってくると思うっす』
「ファルケンの方の純星煌式武装の動きは見たわよね。あれだけには注意すること、いいわね」
「分かっている。それよりももう片方の相手はよろしく頼む。あとステージに透明化した呪符で罠を仕掛けてくれれば十分だ」
「分かったわ」
『なるほど。おっと試合開始までもうまもなくとなりました! この試合、勝つのはどちらか! それでは最終試合、スタートです!』
『《
「行くぞ、シュトルフ!」
「うっす!」
クロッゾを前衛に置いてファルケンは液状の純星煌式武装を起動すると、援護するように攻撃を仕掛けてくる。
基臣は液体の攻撃を回避すると、クロッゾを無視しファルケンを直接攻撃する。
「っ……! チッ、すばしっこいな、このッ!」
基臣から一撃をもらったファルケンは爆発する呪符の存在に気を配りながら、液体を周囲に展開して距離を取る。追いかけようとするが、さすがに相手も冒頭の十二人。液体による妨害で時間を稼がれる。
「オラッ!」
速度を上げて液体を数個放ってきたが基臣はそれを鮮やかに回避する。しかし、ファルケンの思惑は基臣に攻撃を当てることではなかった。
「くっ、液体が……」
基臣が回避した液体は沈華へと向かっていき、そのまま着弾した。当たってしまったため、動きは非常に鈍くなりさっきまでクロッゾ相手に優勢だった状態が一気に逆転する。
「沈華、お前は回避に専念していろ。先にこいつから叩き潰す」
「っ……! 分かったわ」
「舐められたもんだな、おい。だれが俺を叩き潰すって?」
モンテルはソフトボール大の液体を5個展開すると、複雑な軌道で基臣へと向かわせる。
しかし──
「なんでだ! なぜ当たらない! ……っくそッ!」
ファルケンは基臣に掴みかかられると、地面に叩きつけられてボールのように身体が跳ねながら飛んでいき壁にぶつかる。それと同時に二撃目が顔面へとめり込み、壁がミシリと嫌な音を立てる。
「ゴボォッ……! チィ…………ッ!?」
壁から跳ね返った衝撃を利用して逃げようと試みるが、次の瞬間には目の前に基臣の姿があった。
「モンテル・ファルケン、
真正面から拳を受けたファルケンはそのまま意識を失うこととなり、後はクロッゾだけとなった。
「兄貴! クソ、こいつだけでも仕留める!」
「急急如律令、
「ちっ! 透明化か。どこに……」
「招雷!」
「ぐあっ! ちく……しょう……」
「シュトルフ・クロッゾ、
『勝者、誉崎基臣&黎沈華!』
『試合終了ー! なんとなんとなんと! 優勝候補と目されていたレヴォルフのペアを無名のタッグが短時間で打ち破りましたー!』
「さっきの液体の影響とかは残ってないか?」
「ええ、大丈夫よ。特にさっきみたいなべたついた感じはないし。さ、行きましょ」
「ああ」
こうして無事に基臣達は優勝候補であったファルケン達相手に優勢に立ち回り、予選を勝ち抜くことが出来たのだった。
──────────────
「インタビューでは余計な情報は流さないようにしてよ。最悪、分からないって言っておけばいいから」
「分かった」
変な所で常識の無さが露呈してくる基臣に気を配らなければいけないことに頭が痛くなる気持ちを抑えつつ、会見場へと移動する。
「えーそれでは誉崎選手に伺いたいのですが、先ほどの戦闘、どのようにしてモンテル選手の液体型純星煌式武装を回避することができたのでしょうか?」
本来なら予選の段階では簡易的な会見スペースでインタビューが行われるが、本戦出場ということで椅子と机が用意された会見場で基臣と沈華に対してインタビューが行われていた。
「なんとなくだ」
「なんとなく……ですか……?」
「ああ」
「あ、ありがとうございます」
あまりにも簡潔すぎる解答に報道陣の間でしばらくの間沈黙が訪れたが、気を取り直し沈華へと質問する。
「今回予選を無事勝ち抜いた事で今大会のダークホースとして注目されていることと思いますが、黎選手から見て手ごわいとみている相手はいますか?」
「そうですね。同じ界龍の虎峰・セシリーペアは手ごわい相手になるかと思っています。また……」
その後、沈華選手の方に質問が流れていき基臣に質問が行かなくなったことでこのまま無事に会見が終わると思っていた。
「次で最後の質問にさせていただきたいと思います」
沈華が次を最後に質問を打ち切ることを宣言すると、フリーのジャーナリストらしき男が手を上げ、基臣の方を向き質問をした。
「誉崎選手はあの12年前の事件の誉崎家と関わりはあるのでしょうか? また、誉崎家だった場合、これからの試合で剣を使う予定はあるのでしょうか?」
途端に報道陣はざわつき始める。この異様な様子に気づいた沈華は基臣の方を見ると、どこか苦しそうな表情をしていた。
「誉崎家? ……ッ──!?」
誉崎家の屑共がッ!!
(父の、こ……え……?)
「……っと……!」
一族諸共根絶やしにしてやる……
「ち……っと……!」
そして澄玲の仇を──―
「ちょっと基臣!」
肩を揺さぶられるような感覚がしてハッとすると、心配そうな顔をした沈華が基臣を見つめていた。
「ちょっと、基臣? 大丈夫なの」
「っ……。ああ、大丈夫だ」
一つ深呼吸して落ち着き、思考を回復させるとジャーナリストに向き直る。
「その質問に関してだが、12年前の事件とやらは分からないし、それに関係しているであろう誉崎家に関しても俺は知らない。期待した応えじゃないかもしれないが、すまないな」
「い、いえ。ありがとうございました」
基臣の僅かに苦痛に歪んだ顔を見て、流石にこれ以上の質問はよくないと察したのか、素直に引き下がった。
「それではこれで質問を打ち切らせていただきます」
沈華は一礼すると、そのまま基臣と共に会見場から去っていった。
基臣達が会見場から立ち去って報道陣の熱気はある程度収まったとはいえ最後の質問があってからその雰囲気は普段の星武祭の会見に比べどこか異質なものになっていた。
────────────────
「師父。12年前の事件とは一体何のことなのですか?」
「私達、聞いたことないけど」
時を同じくして、界龍の執務室。基臣達と同じように予選グループを勝ち抜いた虎峰とセシリーは会見を聞いて星露に最後の質問の意味を聞こうとしていた。
「そうさの……あれは確か、おぬしらが産まれたころぐらいに起きた事件じゃ。
まあ、今の学園に所属してる学生世代で知っている者はほとんどおるまいて。よく知ってる者がおるとしたら都市伝説やオカルトの類が好きなものぐらいか」
星露は端末を開くと日本の方だろうか、和風の大きな屋敷の画像を虎峰に見せながら話を続ける。
「いまからおよそ12年ほど前まで剣の流派として存在していた誉崎流。まあ余り剣術を嗜むものの間では評判は良くなかったらしいが、それなりの強さを誇っておった」
端末を操作すると星露は画像を別の物へと差し替える。新聞のだろうか、一面にどデカくある記事が書かれていた。
「日本の○○で大量殺人事件……?」
「ある日。二日ほどで誉崎家に類する者450名程が全員切り殺されておったことが判明した。しかも犯人は不明と来たものじゃ。当然、当時の世間では前代未聞の大量殺人事件として大騒ぎしておった」
「450人!? 大騒動じゃないですか」
「しかも、誉崎家の連中は儂からしてみれば強いとはいえんが、簡単にやられるほど弱いわけでもない。しかも結構な割合の者が《
「それはなかなか酷い事件ねー。でも、流石にそれだけ目立った事をしたんだから犯人は見つかったんじゃないの?」
新聞の一面を消すと、過去を懐かしむかのように上を見上げて星露は語る。
「最初はそう思われとったんじゃが、あまりにも犯人に繋がる証拠が現れないので捜査は難航してな。その後、それに追随して大量殺人が起こらなかったことから犯人にこれ以上の害意はないとして、統合企業財体としても世間としても触らぬ神に祟りなしということでなかったものとしてその事件からは手が引かれ、闇に消されたというわけじゃ」
「儂が特待生として基臣を引き入れる時、あやつの血縁関係などについて一度調査の手が入ってのお。記者連中の言う通り「あの」誉崎じゃった。故に、もしあやつが犯人との血縁関係を持っていた場合、リスクが高いため界龍に引き入れないほうが良いと財体の方から意見が来た。まあ無視したがの」
「……」
「しばらくの間はそのことを伏せれると思っておったが、この分じゃと他の学園もその内情報を掴んでくるじゃろうな。他の学園がうちにちょっかいをかけんようにしてはおくが、面倒くさいことになったのぉ」
「あやつに限って精神面で不調が出てくることはないが、もし何かあったら同じ学園の仲間として気遣ってやるんじゃぞ」
「もちろんです」
「同じ学園の仲間だもの。鳳凰星武祭でいくらライバルといっても、歯ごたえの無い相手と戦いたくないわ」
「うむ、それならよい」
満足そうに星露は頷くと、窓から外を眺めてボソリと呟く。
「まあ虎峰たちに頼らなくとも沈華がなんとかしてくれるじゃろう」
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シルヴィア・リューネハイム
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オーフェリア・ランドルーフェン
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ミルシェ
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エルネスタ・キューネ
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黎沈華