学戦都市アスタリスクRTA 『星武祭を制し者』『孤毒を救う騎士』獲得ルート   作:ダイマダイソン

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実に4日ぶりの投稿、大変お待たせしました。


地味にpart10の最後の方に新しく物語が追加されてますが、そこら辺もこの裏話で網羅されているのでpart10は再度読まなくても問題ありません。


キャラを思うように動かせなくてグダグダしていたので初投稿です。


裏話10 すれ違う思い

『ついに鳳凰星武祭も佳境に入り、準々決勝となりました。実況は私梁瀬ミーコと解説はファム・ティ・チャムさんでお送りしまーす』

 

『引き続きよろしくお願いするっす』

 

 

『さて、準々決勝ですが注目すべきはなんといっても今回の試合! 誉崎選手・黎選手ペアとアルルカントのペアの対戦です! チャムさん的には両者についてどのように分析しているのでしょうか』

 

『そうっすね。誉崎選手と黎選手のペアはコンスタントに勝ち星を挙げていってる感じっすけどその内容は傍から見れば凄まじいと言っても差し支えないっすね。特に誉崎選手は攻守ともに隙の無い動きをしていて、気づいている人もいるかもしれませんが現時点で一度もまともに攻撃を食らっていないという驚異的な身体能力の高さを持っているっす』

 

『なるほどー、誉崎選手に誰が最初に決定的な攻撃を与えれるかも注目する点になってきますねー』

 

『もちろん誉崎選手だけでなく黎選手もサポート役として十分な動きが出来ると思うっすよ。実際、透明化が施された呪符の脅威性は今まで対戦してきた対戦相手はよーく分かっているはずっす』

 

『まさに今大会のダークホースにして優勝候補最有力といったところでしょうか。さてお次はアルルカントのペアですが──』

 

 いつも通り基臣は軽く最後の打ち合わせを沈華(シェンファ)としていると、金髪に白い肌、いかにもイケメンといった風貌の男であるアルルカントの対戦相手の一人は基臣に話しかけてきた。

 

「少しいいかな」

 

「ん?」

 

「このセンティマニデバイスは《獅子派(フェロヴィアス)》が今回の鳳凰星武祭のために用意した最新武装にして最高傑作。いくらダークホースの君といっても簡単に勝たせはしないよ。とはいえ、物が物だからね。君が後から卑怯だと文句を言ってくるかもしれないけど審査はちゃんと通っているから抗議してこないでね」

 

「そうか」

 

「って、ありゃ。物凄い興味無さそうな顔してるようだけど、まあいいや。そういう訳で後からの抗議は受け付けないからよろしくねー」

 

 対戦相手の男は手をヒラヒラさせて元の場所に戻っていくと、丁度試合開始の時間になり機械音声が合図をする。

 

 

 

『《鳳凰星武祭(フェニクス)》準々決勝、試合開始(バトルスタート)!』

 

 

 

 事前に映像で情報を得ていた基臣はアルルカントのセンティマニデバイスに一斉攻撃が始まる前に懐へと入り込み射線を切ると、アームによる手数の有利を潰そうと立ち回る。実際、その作戦が効いているのか至近距離にいる基臣の動きにアームが追い付いていないようだった。

 

「試合前に大見栄を切った割には強くないみたいだが」

 

「君にとってはそうだろうね、おっとっと。もっとも、もう一人のお嬢さんは苦戦しているようだけど」

 

「……沈華!」

 

 アルルカントの生徒に言われて気づくと、沈華がセンティマニデバイスの手数の多さに苦戦しているようで、防戦一方でこのままだと下手すると校章を割られかねない状況だった。基臣と沈華の距離は歩数にして10メートルほど。一瞬で移動できる距離ではない。

 

 基臣は本来飛び道具を使うことがないため遠距離攻撃をしない──―といっても元々剣を使っているときは誉崎流特有の歩法を用いることで距離を一瞬で詰めることができるが──―剣士だ。

 

 しかし、今回のように沈華が狙われることを見越してあらかじめ策を練ってあった。それは──―

 

「爆!」

 

「チッ! 君が呪符を使うなんてデータには無かったはずなんだけどなぁ」

 

 高速で投擲した呪符は沈華を狙っていた相手の身体に張り付き、基臣が起爆の合図となる言葉を唱えると同時に爆発する。

 

 予想しない攻撃を食らったアルルカントの生徒はしばらくの間、データにない攻撃に困惑する。その隙に沈華を救い出す。

 

「助かったわ」

 

「礼には及ばん」

 

 短くやりとりを済ませると、相手も必勝の陣形を整えたのかバックパックから伸びるアームによる遠距離攻撃が始まる。

 

 今のところ沈華を守りながら反撃の機会を狙う余裕はあるが、間違いなく状況はアルルカント側に傾きつつあった。

 

「やはり使うしかないか」

 

 そう言うと、基臣はアルルカントの生徒に近づく。攻撃を警戒している相手は拳が届く距離から離れて安全に試合を進めようとする。その読み違いを利用して基臣は《潔白の純剣(インヴィズ=ピューレ)》を抜き、そのまま校章へと振りぬく。

 

誉崎流初伝 瞬閃(しゅんせん)

 

「あっ……」

 

 剣をいつ抜いたか、そもそも鞘から抜いたかも察知できない程の神業で振りぬき校章を真っ二つに割る。すぐに鞘に剣を戻すと、もう片方の相手のセンティマニデバイスの根幹となるバックパックを壊すことで完全に勝負の命運は決まった。

 

 

試合終了(エンドオブバトル)! 勝者、誉崎基臣&黎沈華!』

 

 

 

『試合終了! 見事、誉崎選手たちがアルルカントのセンティマニデバイスを攻略し、準決勝に進出しました!』

 

 場内から歓声が沸き上がり、基臣達の活躍に盛大な拍手が送られる。

 

『誉崎選手が校章を割ったカラクリが早すぎてよく分かりませんでしたが、チャムさんは分かりましたか?』

 

『おそらく何かしらの武器を使ったんじゃないっすかね』

 

『えーと、特に私達からは誉崎選手が何か使ってるようには見えませんでしたけど』

 

純星煌式武装(オーガルクス)とか魔術師(ダンテ)の能力とか、私たちに見えないように武器を使おうと思えばそれなりにやりようはあるっすよ。校章の綺麗な割れ方から見ても剣とかが有力じゃないっすかね。どう見ても拳で殴ってできるような割れ方じゃないっす』

 

「やはりバレたか、もう少し巧く隠せばよかったか」

 

「さすがにバレるのは時間の問題だと思ったと思うわ、過ぎたことは考えないようにしましょ」

 

「それもそうだな。とはいえ、対戦相手が知っていることも想定した上でこれを運用する必要があるな」

 

 そう言いながら沈華とステージを立ち去る基臣は、チラリと腰に下げている潔白の純剣(インヴィズ=ピューレ)を見るのだった。

 

 

 ──────────────────

 

 

「解説のチャム氏が言ったように武器を使うのですか」

 

「剣を使うというのは本当なのでしょうか」

 

 解説による基臣の動きのカラクリについての説明によって取材陣は今までと違って、沈華ではなく基臣の方へと質問が集中することとなった。

 

「今後の試合にも関わることなのでノーコメントだ」

 

 何度か基臣に質問が行くが、沈華に念入りに自分たちに関する情報を開示しないように注意されているためもちろんこれらの質問の全てに対する回答を黙秘。最近では基臣から余りにも記事にする情報が出てこないため、意図的に彼を批判するような記事が出始めているが、本人にとっては気にするほどのものではなく一切の影響はなかった。

 

「では会見を終了させていただきます」

 

 沈華の言葉によって会見は終了し、二人は会見場を後にする。会見では表面上はまるで平然としている沈華だったがその実、内心では胃が痛くなるほど緊張していた。初の星武祭出場であることを考えると当然の事だった。

 

「案の定、間違いなくあなたが剣を使うことがバレたわね。しかも、その剣になにかしらの機能が付いているこという推測まで立ってる」

 

「まああまり問題はないだろう。不意打ちはしづらくなったが、その分相手にいつこの剣を使ってくるかというプレッシャーは与えれるだろうしな」

 

「まあ貴方の実力なら負けることはないだろうし要らぬ心配ね。とはいえ、このままだと完全に私が足手まといよね。はぁ」

 

 少し申し訳なさそうな顔をしながら溜息を吐く沈華の肩に基臣は手を置く。

 

「お前のサポートには助けられている。たしか解説もお前の事を評価していたはずだからそこまで卑下することはないだろう」

 

 基臣の言葉に沈華は珍しいものを見たかのような顔をする。

 

「貴方、慰めの言葉をくれるのね。そんな事言いそうな顔じゃないのに」

 

「俺の事をどう思ってるか知らんが、評価するべき相手のことは素直に褒めるぞ」

 

「ふ、ふーん。そうなのね」

 

 なぜ嬉しそうなのかよく分からないが、それを指摘すると機嫌を崩すだろうと基臣はそれなりの付き合いで悟っているので敢えて言わないようにすることにした。

 

 

 

 ────────────────────

 

 

 

『さあ鳳凰星武祭の準決勝、残るはこの試合を含め3試合となりました! もう試合数も少なくなったという事でチャムさん。ずばり今回の優勝候補は誰だと予想してますか』

 

『そうっすね。自分の予想ということだとやはり誉崎選手・黎選手ペアっすかね。次々と優勝候補をなぎ倒していってることからも実力は今大会で一番といって良いと思うっす』

 

 実況と解説の会話をしている間、準々決勝の時に使った《潔白の純剣(インヴィズ=ピューレ)》に何かおかしな点が無いか少し目線を腰元のホルダーに向けていると、対戦相手がこちらにやってきた。

 

 対戦相手の男は基臣を睨みつけると基臣の目の前に立つ。

 

「貴様の家の人間に父を殺された者だ」

 

「……それで、何の用だ。わざわざ挨拶回りに来たわけでもないだろう」

 

「望むのはただ一つ。貴様との剣での戦いだ」

 

「……断る」

 

「何故だ! 貴様にはやはり剣を持つ者としての誇りはないのか!」

 

「こっちにも事情がある。お前の都合で勝手に誇りが無いのかなどと言われても困る」

 

 基臣の返答にやはり納得がいかないのか男はしばらく睨み続けるが、試合開始までもうまもなくといった時間になると自分のペアの元へと戻っていく。去り際、吐き捨てるように基臣へと言葉を投げかけた。

 

「剣を抜かなかったこと、絶対に後悔させてやる」

 

「……基臣」

 

「問題ない。作戦はさっき言った通りだ。ぬかるなよ」

 

「もちろんよ」

 

『《鳳凰星武祭(フェニクス)》準決勝、試合開始(バトルスタート)!』

 

「誉崎ィィィィィィィィ!」

 

 試合開始の合図が告げられると同時に男は基臣に鬼気迫る表情で向かってくるが、その実力は準々決勝のアルルカントペアに比べると未熟。攻撃を躱すと、男の首根っこを掴み床に叩きつける。勢いよく叩きつけられた床は蜘蛛の巣状に亀裂が入り、男に少なくないダメージを与える。

 

 

「やはり、壁よりも床に叩きつけた方が逃げられなくてやりやすいな」

 

「このッ……ゴホァッ!?」

 

 何度も頭を床へと叩きつけられる仲間を助けようと男のペアが向かおうとするが、沈華によって全ての移動経路を塞がれる。

 

 頭を叩きつけていると男が声を振り絞って基臣に恨み言を呟く。

 

「……この人殺し一族め」

 

 ──お前は俺みたいに人殺しになんてならず、自分の大切な人を守れるようになれよ。……といってもまだ言葉も話せないお前に言っても分からんか

 

 

「っ……!」

 

(また、父の声が頭の中に響く……!)

 

 

 頭の中に流れ込んでくる記憶のようなナニカに痛む頭を抑えながら男の方を見ると度重なる攻撃にダメージが蓄積したのか既に気絶していた。

 

 立ち上がると心の中のイガイガに顔をしかめつつも、沈華を援護するため残る片方のペアへと向かっていく。

 

 

 

 

 

「次はお前だ」

 

 

 

 

 

 ────────────────────ー

 

 

 準決勝は危うげなく勝利するが、沈華は試合が終わってから基臣の様子がおかしいことに気が付いていた。

 

「ちょっと、大丈夫なの?」

 

「ああ、大丈夫だ」

 

「あんまり、無理しないでよ。もし調子が良くないなら会見をパスしても良いんだし」

 

「それには及ばない。すまんな心配してくれて」

 

「っ、し、心配なんかじゃないわよ! 貴方が体調を崩して優勝を逃したら虎峰たちに笑われるのは私だし! 特にセシリーなんかに慰められるのなんかは死んでも嫌なんだから」

 

「ああ、そうだな。お前に迷惑をかける訳にいかんしな」

 

 沈華の心配にどこか温かいものを覚えながら、会見場へと向かっていく。既に会見場はたくさんの報道陣で埋まっており、基臣の姿を見かけるや否や大量のフラッシュが焚かれる。あまりのまぶしさに思わず目を瞑ってしまうが、しばらくするとそれも段々と落ち着いてくる。

 

「あの後詳しい取材をした結果、誉崎選手が誉崎家の一族の人間であるという事が分かったのですが、それについてはどう思われていますか」

 

「前の発言は本当の事を言ったのですか!」

 

 わあわあと糾弾するようなニュアンスを含んだ質問が投げかけられるが、基臣は無言を貫く。

 

「あの! 本当は自分が誉崎家の人間だと知ってたのではないですか!」

 

「なぜ俺のプライベートを聞く必要があるんだ?」

 

「え」

 

「会見が始まったと思えば特に試合とも関係のない質問ばかり。前の会見でも分からないと言ったのに口をついて出る言葉は誉崎誉崎と馬鹿の一つ覚え。俺のプライベートを聞いて何になる」

 

「それは、ですね」

 

「…………はあ。沈華、すまんが後は任せた」

 

 もちろん基臣にとっては何も家の事情など知らないため取材陣の普通考えれば神経を逆撫でするような質問ばかり聞いてくることで律儀に応答する必要もないと感じたのか、基臣は立ち上がり会見場を後にしようとする。

 

「ちょ、ちょっと! もうまったく……」

 

「誉崎選手どこへ!」

 

「ちょっと基臣選手の調子が悪いので今回の会見はここまでとさせていただきます」

 

「あの、黎選手! まだ質問が!」

 

「待ってください!」

 

 背後で取材陣の騒がしい声がするが、基臣と沈華はその喧噪から逃れるように足早に立ち去って行った。

 

 

 ────────────────

 

 

「まったく、後で記事に間違いなく私たちの事悪く書かれるわ」

 

「すまん。この借りはいつか返す」

 

「別にいい。その代わり、決勝戦は絶対勝つわよ」

 

「無論だ」

 

 界龍へと二人が帰ろうとしばらく歩いていると突然基臣は足を止めた。沈華はその様子を訝しみ振り返るが特に気配は無かった。

 

尾行()けられてるな。しかも、そこそこ気配を隠すのが上手い。他の学園の諜報部か」

 

「え、尾行されてるの?」

 

「……仕方ない、ちょっと持ち上げるぞ」

 

「ちょっ、えっ!」

 

 基臣は沈華をお姫様だっこして持ち上げると、裏道を通り抜けて持ち前の身体能力で壁伝いにビルの屋上まで登る。屋上から下を見下ろすとやはり基臣の事を追いかけていたのかどこかの学園の諜報部の姿が複数人あった。

 

「逃げられたか」

 

「……そう遠くにはいないはずだ、別れて探すぞ。見つけたら連絡しろ」

 

「了解」

 

 正体が露見しないためかフード付きの外套を見に纏った諜報部の人間たちは上にいる基臣たちの存在に気づくことなく裏道の奥へと姿を消していった。

 

「全く。どいつもこいつも、しつこい事この上ないな」

 

 いつもは顔に能面を付けたような表情しかしない基臣だったが、今回ばかりは嫌そうな顔をしているようだった。

 

「特に今まで何も思わず生きてきたし、何があろうとどうでもいいと切って捨ててきたが……いくら何も思わないと言えど、さすがにずっと付け回されることを考えると精神に来るものがあるな」

 

 ビルの屋上に取り付けられているパイプに座ると、端末を開きニュースを見る。そこには試合の結果よりも基臣に関する噂が大量に記事となって出回っていた。

 

「俺の過去に、俺そのものにそんな価値などないというのにな」

 

ねえ

 

「すまんな、こんな愚痴みたいなものを聞いてもらって。尾行も撒いたし帰るぞ……って、ん?」

 

「ねえ」

 

 袖を掴んで基臣のことを見る沈華の顔はどこか悲しさを纏っていた。

 

「そんなこと言わないでよ。自分に価値がないなんて」

 

 なぜ沈華がそんなに悲しい顔をするのか分からない基臣は自分の思ったままのことを喋る。いや、喋ってしまった。

 

「……と言われてもな、こんな命投げ捨てようが──―」

 

「バカっ!!」

 

 基臣にビンタするとそのまま走り去っていく。頬に残る痛みに不思議と今まで感じたことの無い、胸がチクりと痛むような感覚がする。

 

「……」

 

 

 

 

 ──―なんで! なんで! お前なんかのために澄玲が死んだんだ! 

 

 

 

 

 

 ──―ごめんな……っ! 。こんなひどいことを言う父親でっ……

 

 

 

 

 

「っ、また声が……」

 

 

 最近頭の中に流れ込んでくる声に嫌な予感を感じ取らずにはいられなかった。

 




純星煌式武装に使うウルム=マナダイトの能力は公開義務があるという設定が原作にあったのに今更気づいたのですが、今更その設定を反映すると物語を再構成しないといけないので独自設定ということで本作では個人所有のものであれば公開義務はないという設定にします。ガバガバ知識のせいでこの事について疑問を持たれた方がいるかもしれません。本当に申し訳ないです。

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