学戦都市アスタリスクRTA 『星武祭を制し者』『孤毒を救う騎士』獲得ルート 作:ダイマダイソン
「──以上のことから今回の
鳳凰星武祭も終わり、壇上では運営委員長のマディアス・メサが主に視聴者や観客に向けての総評を行っている。基臣としては余り興味のないことであったため、態度は崩さず試合の疲労を取るため身体の力を抜く。普段なら沈華が何か言ってくるのだろうが、緊張しているのか少しそわそわとした様子で身体を縮こまらせている。
「さて、それでは第二十三回目の優勝者と準優勝者をお呼びしよう。──四人とも、こちらへ」
休んでいるとマディアスから壇上に登るよう言われ、階段を上がってたどり着くと観客席からは盛大な拍手と歓声が巻き起こった。
先に、虎峰とセシリーから表彰が行われ握手を交わした後、大きなトロフィーが贈られる。
「次に誉崎基臣、
「ありがとうございます」
優勝したことに対する賛辞と共にマディアスの大きい手が沈華の手をぐっと握った。
「決勝戦での最後の星仙術、非常に興味深かった。この大会で一番タッグとしての成長が目覚ましいと思ったのは君たちだと思っている。今後とも頑張ってくれたまえ」
「は、はい!」
次にマディアスは基臣と向き合うと、沈華と同じように力強く握手を交わす。
「今回の大会が盛り上がったのは間違いなく君の実力のおかげだと思っている。特に決勝戦での戦いは。個人的にも面白いものを見せてもらったと思っている。次の星武祭でまた君の活躍を見れることを楽しみにしているよ」
「ああ」
アスタリスクの象徴たる六角形の紋章が刻まれたトロフィーを両手で受け取ると、マディアスに肩に手を置かれ、観客席に向きを変えるよう促される。
しかし、マディアスが肩に手を置き向きを変えさせる瞬間、基臣は異様な視線を受ける。
(なんだ、この視線は。同情……? いや違う、この感覚は……)
「では改めて今大会に熱気と感動を生み出してくれた彼らに盛大な拍手を!」
観客から湧き上がる拍手によって、マディアスから受けた視線に乗せられた感情の正体が掴めないままこの大会の閉会式の幕は降ろされた。
────────────────────────―
「今回の
閉会式が終わった後、基臣と
「ああ」
「ありがたきお言葉です」
「見事、儂の課題もこなした事じゃし来年の獅鷲星武祭はおぬしらをチーム黄龍の一員として入れることにする」
その言葉に
「基臣はまだしも、私もですか?」
「そうじゃが、何か不満でもあったかえ?」
「いえ、チーム黄龍の一員に選んでいただけてむしろ光栄ですが、私などが入って大丈夫なのでしょうか。他にも候補はいるはずですが……」
「なーにを言っとる。決勝戦のおぬしの戦い方、いい線行っとったぞ。星仙術も自分に合った形で独自に改良したようじゃし、十分おぬしは入るだけの資格はあると思っとる」
「……承知しました」
納得し切れてはいないものの、他でもない天有万羅が言っているため
「俺は用があるから出るぞ」
その後、基臣は用があるのか星露といくつか話を済ませると、立ち去って行った。
「ところで、おぬしは願いは何にするのか決めたのかえ?」
「いえ……。どんな願いにすればいいのか悩んでいまして」
「ふむ。まあなんでも願いを叶えられる貴重な機会じゃ、期限ギリギリまでゆっくり考えるのもええじゃろう」
「はい」
「……そうじゃ。息抜きに基臣についていったらどうかえ。何やらあやつ面白げな事に手を出そうとしておるようじゃからのお」
「面白いこと、ですか?」
「ついていったら分かるわい。丁度一時間後ぐらいに動くようじゃから門で待っておくとええ」
「はぁ……」
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(結局、師父の言う通りに門の前まで来たけれど……面白いことって何なのかしら)
しばらく門の前で待っていると基臣がこちらへと向かってきていた。誰かと用があるのか最低限の服装しか着ない普段と違い、ちゃんとした服装で着飾っている。
(来た……!)
「沈華か。どうしたんだこんなところで」
「特に何かあるわけじゃないわ。それより貴方その恰好でどこ行くのよ」
「別に、お前には関係ない要件だ」
ぶっきらぼうな物言いに少しムッとするが、もともとこんな性格だったのを思い出したため今更かと思った。
「人に言えないことなのかしら」
「……アルルカントの人間と少し商談がある。特に面白い話があるわけでもない」
「ならその商談、私も連れて行きなさい。貴方一人だと不安だし」
「いや、一人で問題ない」
「その商談、私も連れて行きなさい」
「いや、だから」
「その商談──」
「……ふー、分かった。連れて行ってやるが変な真似はするなよ」
「分かってるわ」
しつこく粘ってくる
沈華がついてくるという想定外の出来事はあったものの、時間通りに喫茶店に来ると後で二人追加で来ることを店員に告げ、シルヴィといつもの使っているテーブルへと向かい椅子にかける。商談先が特段気を遣う相手ではないので先に注文をして、飲み物を飲みながら来るのを待つ。少しの間暇を潰していると、ドアベルの音と共に二人の女生徒が店に入ってくる。
「来たか」
基臣は席を立つと二人を席へと案内する。エルネスタは基臣だけが来ると思っていたのか、席に座っている
「ありゃ、君の隣の子は今回のタッグの子じゃない。今回の件の関係者?」
「俺の監視役だそうだ。口をはさむことは基本無いから安心してくれ」
「ふーん、そっか。んでんで、君があの剣士くんねー。なーるほどなーるほど。ほおほお」
じろじろと眺めるように基臣を近づいて観察すると、楽しそうに何度もうなずく。
「おー、なかなかいいねー。気に入っちゃった!」
初対面の人間である自分の何処が気に入ったのかよく分かっていない様子の基臣にエルネスタはちょいちょいと手招きしてくる。
実に楽しそうな雰囲気は伝わってくるものの、害意は感じないため言われた通り少し身を屈めて近づくと、頬に柔らかな感触を受ける。何かと思って目を向けると、エルネスタの唇が頬に当たっていた。
エルネスタの顔を見ると、薄く顔を赤らめながらもどことなく嬉しそうな表情をしている。
突然の行動に沈華は顔を赤くしつつもその姿をまじまじと見てしまう。基臣は別に何とも思っていないのか無反応なため少しエルネスタは不服そうに顔を膨らませる。
「ありゃ、反応なしか。ちょっと残念かなー」
「ちょ、ちょっと! いきなり何を!」
人目を厭わない突然の奇行に
「にゃははー、もしかしてその女の子は彼女さんだったかな? かわいいにゃー」
「友人だ、お前が言うような恋愛関係はない」
「ふーん。といってもその子はそうは思ってないみたいだけど」
小声で言ったことの意味が分からず基臣はエルネスタにその意を問おうとするがもう一人の少女が腰を折って謝罪してきたのでそちらに意識を向ける。
「エルネスタが失礼をした。彼女に変わって謝罪しよう」
「ほら
「む……」
カミラの謝罪もあり、これ以上の言及は基臣の立場を悪くすることを察して避けることにした。とはいえ、エルネスタに対する警戒は未だに解いていなかったが。
二人を席に着かせ、店員に二人分の飲み物を注文するとさっそく話を始める。
「で、本題に移ろうか」
「ああ、そうだな」
「今回の要件だが、お前たちに俺の武器を作ってもらいたい」
「……君の武器をか?」
「ああ、この前の例の多腕のカラクリ。あれを開発したのはお前たちの学園だろう」
「ああ、センティマニデバイスの事か。確かにあれは我々《
「俺の学園の煌式武装に関する技術は俺の要求を満たすものを作れないレベル、正直に言ってしまえば鈍らレベルだ。だが、アルルカントはこのアスタリスクの中では煌式武装に関して一番の技術力を誇ると聞いている」
「君は私がどういう信念を以て、
「確か、お前は誰でも使用できる強力な武装を目的として研究している……だったか」
「それを理解して尚、私に依頼するということの意味は理解しているだろうな」
「まあ私はそこらへんのこだわりはないからどっちでもいいんだけどねー」
「もちろん、お前の矜持を傷つける行為だという事は理解している。だから、こちらもそれ相応の誠意として納得できる報酬を出そう」
その言葉にエルネスタは目を細めると基臣をじっと見つめてくる。
「で、剣士くんはどんなものを差し出してくれるのかな?」
「ウルム=マナダイトを1つ」
「「……!」」
その言葉にエルネスタとカミラは思わず息を呑む。それだけ基臣の提示する報酬は一介の学生に充分すぎるほどの物であるということを意味していることはその場の雰囲気で分かる。
「ウルム=マナダイトも直接お前たちが選別してもらって構わないし、もしそれが気に入らないなら俺の
想定以上の報酬に二人は少し考えるが、やがて考えは纏まったようだった。
「……これは中々大盤振る舞いだねー、さすがに断り切れないかなー」
「君の覚悟は分かった。こちらもそれ相応の覚悟を決めさせてもらおう」
「ということは」
「ああ、交渉成立だ。よろしく頼む」
基臣とカミラは互いに力強く手を握ると、交渉成立の意を示した。
「それで、どんな武器を欲しいんだ」
「剣と遠隔誘導爆弾の2つだ」
「剣はともかくとして遠隔誘導爆弾か……。まだ構想段階でまともな検証をしていない代物なんだがな。中々無茶なお願いをしてくるな」
「優勝1回分の願いをお前たちに報酬として提供するんだ。当然の要求だろう」
「まあ、それもそうか。できるだけ要望は聞かせてもらうとしよう。他に要求は?」
「次の王竜星武祭が終了するまでは開発した武装のデータを利用することを禁止させてもらう。それ以降は好きにしてもらって構わない」
「まあそれはそうだろうな。了解した」
「それと、武器に関する要求は流石に口頭で言うのも限界があるだろう。素人ながらだがある程度の要求が書かれているデータをそちらに送る。確認してくれ」
端末を開くと基臣はそれぞれに武装のデータを送付する。
「おー、これは中々の面白武器だねぇ。専門外とはいえ
「リミッターを敢えて用意することでロボス遷移方式による出力を爆発的に増加させるのか……。まあある程度の制約はあるだろうが出来ないことはないな」
その後、武器の要望に関する話もある程度煮詰まったため今日はこれでお開きということになった。
「それでは、また今度アルルカントに来てもらうということで」
「じゃあ剣士くん、まったねー」
「ああ」
アルルカントの二人組が去っていったのを確認すると、
「どうしたんだ?」
「基臣はああいう女の子が好きなのかしら」
「……ん? どういうことだ」
いきなり脈絡もない質問をされ少し話が詰まるが、先のエルネスタのキスの事を思い出して得心する。
「あまり落星工学に興味の無いやつには聞き覚えがないかもしれんが、あいつらはアルルカントの中でもトップクラスの才を持っている。だから、俺の武器を作ってもらうよう交渉しただけの話だ。他意はない」
「そう、なのね。よかった」
基臣は
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鳳凰星武祭が終わってから一週間程、ピューレを用いて何度か素振りをしていると、端末からメールの着信音が聞こえたためいったん鍛錬を中止する。端末を開くと、基臣はメールの送り主を確認する。
「シルヴィからか」
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やっほー基臣くん
この前は鳳凰星武祭優勝おめでとー
それで、今度の週末なんだけど優勝のお祝いということで一緒に遊ばない?
もし大丈夫なら商業エリアの噴水広場に集合ということでよろしくね
シルヴィア
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鍛錬をする以外特にやることもない基臣は同意のメールを送ると、再び鍛錬を再開しようと待機状態だったピューレを再び起動させる。
剣を正眼に構えると神経を研ぎ澄ませる。極限まで研ぎ澄まされようという直前に集中力が持たなくなり、膝から崩れ落ちた。
「極伝はまだ習得できないか……」
アスタリスクに来てから数か月、たくさんの戦闘経験を積んできたが初代の秘奥である誉崎流極伝を未だ習得できていなかった。
──『シゲノブ以外に極伝を使う人間は見た事がないよ。まあでも基臣なら極伝を習得できる素質はあると思うけどね』
鳳凰星武祭が終わってからしばらく、ピューレとのお茶会に呼ばれたため、そこで極伝に関する情報をもらったが、それを参考にしても上手く再現できていなかった。
「まあピューレも習得できるだろうと言っていた。後は修練あるのみか」
自分に出来るようになると言い聞かせると、再び習得のための鍛錬に励むのだった。
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「遅いな……」
待ち合わせの噴水広場で待っていることしばらく。既に約束の時間から1時間は経過しようとしており、手持ち無沙汰にしていると後ろから騒がしい音がするので振り返る。
「基臣!」
突然後ろから息を切らしてやってきた少女を見て、前にシルヴィの追っかけをしていたグループのリーダーだったことを思い出す。
「たしかミルシェ、だったか。どうしたんだいきなり」
「はぁ、はぁ……。シルヴィが大変なんだよ!」
「シルヴィが? どういうワケか一から説明してくれ」
「それが……はぁ、はぁ……」
「まずは落ち着け。水だ、まだ口を付けてないから飲め」
息を整えたミルシェは渡された水をゆっくりと飲むと落ち着いたのか事の経緯を話し始める。
「今、基臣に例の噂が流れてるじゃん」
「ああ、ニュースサイトに載っていたから知っている」
あの噂と言われてニュースサイトで流れていた基臣に関する噂のあれこれを思い出す。
「べ、別に私達は基臣が事件に加担するような人間だなんて思ってないから! でも……そのせいで、シルヴィがペトラさんに缶詰にされて身動きが取れないって……」
「なるほどな……まあ当然と言えば当然か」
今の基臣は良くも悪くも世間から注目されている。仮に悪い方向にイメージが向いていった場合、万が一でも交友関係をシルヴィが持っていることがバレたらトップアイドルという肩書きに傷がつく可能性があるということはアイドルの世界に詳しくない基臣にも理解できた。特にクインヴェールはアイドル育成機関の側面を持っているので他の学園に比べて世間からのイメージには敏感だ。基臣を警戒してもおかしくない話ではある。
「……とりあえず行くだけ行ってみるか」
「どこに行くの?」
「クインヴェールに。そのペトラという人間に詳しい事情を聴かないと話が始まらん」
「い、いや多分基臣の事入れてくれないはずだよ。普段でも女子校ってことで中々男は入らないのに、基臣だって知ったら間違いなく門前払いに……」
「とりあえず行ってみるしかないだろう。現状他に打てる手がない」
基臣の真剣な顔を見て、何か揺り動かされたのかミルシェは一人頷く。
「……分かった! それなら私もついていく。その方がペトラさんに話を通しやすいだろうし」
「そうか。すまないな、俺の事情に巻き込んで」
「いいのいいの。ライバルが勝手に調子を落とされたら張り合いがないじゃん。ほら、ついてきて」
「ああ」
ミルシェに手を引かれるままに基臣はクインヴェールへの道を進むのだった。
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シルヴィア・リューネハイム
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オーフェリア・ランドルーフェン
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