学戦都市アスタリスクRTA 『星武祭を制し者』『孤毒を救う騎士』獲得ルート   作:ダイマダイソン

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シルヴィのヤンデレパート投稿予定の行にここすきが集まってて少しクスッと来ました
やっぱみんな好きなんすねぇー
もちろんヤンデレパートはifルートとしてしっかりと書きますので少々お待ちを

後、六花園会議パートは自分が見返してもあまりにも見どころさんの作り場所がないので大胆にもカットさせていただきます。

快活な女の子を闇落ちさせる使命を天から授かったので初投稿です。


裏話13 黒い閃光

 

 案内された基臣はクインヴェールに行くと、ミルシェに仲介してもらい中に入れてもらうことが出来た。

 

 応接室まで通されると、既に中にはシルヴィアのプロデューサ―らしき女性がソファに座っていた。

 

「どうぞ、そちらに掛けてください」

 

「失礼する」

 

 一言断りを入れてソファに座ると、女性が先に話し始めた。

 

「シルヴィのプロデューサーをしています、ペトラ・キヴィレフトです。早速本題に入りましょうか」

 

「正直に申し上げましょう。彼女の今後を考えると、貴方は一種の爆弾になり得てしまう。したがって今後はシルヴィと会わないでもらいたいのです」

 

 ミルシェは立ち上がってペトラに詰め寄る。

 

「ペトラさん、基臣は悪い人間じゃないよ!前だって私のことを助けてくれたし、それに……」

 

「仮にそうだとしても、我々クインヴェールの人間はイメージが第一な以上、悪い噂は出来る限り排除しなければならないのですよミルシェ」

 

 ミルシェを宥めると、言い聞かせるように丁寧に話しかける。

 

「もちろん鳳凰星武祭優勝という栄誉は確かにプラスかもしれません。しかし、誉崎家の生き残り。この一点だけで悪いイメージも持ち込まれている。それはニュースサイトのみに限らず、SNS、個人ブログ。面白半分でその情報を拡散した人達によって、もうすでに幅広く、良くも悪くもイメージが広まり切ってしまっている」

 

 ペトラは端末を開くと、様々なページの画像を出現させる。言われてみるとなるほど、良くも悪くも基臣が注目されていることが分かる。

 

「貴方が有名である以上、これからは貴方と一緒にいる人間までチェックされる。特にシルヴィは変装はしていてもクインヴェールの校章を身に着けているのですから猶更です」

 

 私情を挟まず淡々とペトラは説明していく。

 

「仮に貴方が全く悪意のない善良な人間だとしても、噂の裏が取れている以上シルヴィのこれからを思えば会わせるわけにはいかない。噂を否定するにはそれこそ貴方が悪人でないという証明をしなければいけない。それは短期間では無理があることは貴方自身が分かっているでしょう?」

 

「…………」

 

「基臣……」

 

 基臣はソファから立ち上がると、ドアを開け部屋から出ようとする。

 

「邪魔したな」

 

「あ、基臣……っ!」

 

 どうあがいても説得できないことを悟った基臣はミルシェの制止を聞くことなくその場から立ち去った。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――

 

 

 

 再開発エリアの廃棄ビル群。

 

 シルヴィアはペトラの制止を聞かず無理やり人探しに出ていた。

 

「無理やり出てきちゃったな……」

 

 再開発エリアでの人探しに関しては、何も言わないというペトラとの約束があるが、少々罪悪感が胸の中に残る。

 

 そんな気持ちでは人探しなど上手くいくはずもなく、ただただ時間だけを浪費していた。

 

「もう帰ろうかな、こんな気分で探しても時間の無駄だし」

 

 そう思い、クインヴェールへ向けて帰ろうとした時だった。

 

「ん、あれは……」

 

 フードを被った人が現れ、思わず目で追いかけてしまう。ただ気になって少し見ていただけだった筈だったが、フードから覗くその顔を見た瞬間、驚愕がシルヴィアの頭の中を覆いつくす。

 

 見間違いのしようがない。あれは―― 

 

「ウル、スラ……?」

 

 しばらくの間、あまりの出来事に唖然とするがフードの女がビルの向こうへと消えてしまうのに気づいて慌てて追いかける。

 

「ウルスラ!」

 

 必死に追いかけてその姿を瞳に映すと声を掛ける。しかし、その人影は止まることなく、ビルの合間を潜り抜けていく。あるビルに入っていくのでそれを追いかける形でシルヴィアも中に入っていく

 

「待って!ウルスラ!」

 

 もうこれ以上見失わないようにと精一杯走って、その人影に。会いたかったその人影に呼びかける。

 

 するとシルヴィアの呼ぶ声にやっと反応したのか足を止めて振り返る。フードを被りその顔の上半分は影で見えにくいが、美しく整えられた銀髪に影から覗いてくる綺麗な蒼い瞳。間違いようもない。

 

「ウルスラだ……」

 

 忘れるはずもない、自分に世界を教えてくれた人。この人がいなかったら間違いなく今の自分は無かった。そう言い切れるぐらいにはシルヴィアにとって、とても大切な人だった。

 

 出会えたことで思わずあふれ出てしまう笑み。あふれ出てくるこの気持ちをぶつけるために笑顔のまま近づこうとする。だが――

 

「だれだ、おまえは?」

 

 その言葉によって笑みは凍り付き、足は固まる。

 

「うそ、だよね?」

 

 彼女はいかに身体能力が高い星脈世代(ジェネステラ)と言えど、初等部を卒業してから少ししか経っていない。故に心はまだ未成熟。そんな心でその言葉は受け止めるにはあまりにも重すぎるものだった。

 

「ほら、私だよ。ウルスラ、覚えていないの?」

 

「だから誰だと言っている」

 

「あはは。もしかして私にしばらく連絡しなかったから気まずいと思って忘れてるフリをしてる?別に私はそんなことで怒らないよ」

 

 シルヴィアの様子に得心がいったのかフードを被った女はある結論を導き出す。

 

「……ああ、()()()()()()()()()()()()

 

「あ、はは……は?」

 

 あまりにも他人行儀な言葉、そしてこの身体という穏やかではない言葉にシルヴィアは笑うことが出来なくなる。

 

「マディアスめ、身内はいないと言ったはずだがな……」

 

 悪態を吐くとフードの胸元部分が露出する。

 

 そこには首に下げたネックレスのような物が黒い輝きと共にあった。

 

「……っ!?これは……な、なに……」

 

 黒い輝きが見えたと同時にシルヴィアの頭に激痛が走り、思わず蹲ってしまう。

 

「お前にいられると、いや覚えられると都合が悪い。その記憶消させてもらおう」

 

「あっ、あああああああ!」

 

 痛みを必死に堪えて、その場から飛び退くとさっきの痛みが嘘のように引いていく。

 

「はあ……はぁ……」

 

「思ったよりも星辰力(プラーナ)があるな。通りで効きが悪いわけか」

 

 攻撃されたことでシルヴィアもようやく現実を受け入れる。目の前にいるのはウルスラであってウルスラではないナニカだと。

 

「あなたは、誰?」

 

「お前に名乗る理由がない」

 

「なら無理やりにでも……」

 

 動こうとするが、シルヴィアの脳裏でウルスラの顔がちらついて二の足を踏んでしまう。

 

「やはり、人間は甘いな」

 

 再び黒い輝きがシルヴィアを包み込む。

 

「ぐ、あ、ああああああああああああああ」

 

「この記憶か、消させてもらおう」

 

 黒い光は頭の中に侵食してきて、ウルスラとの記憶を、大切な思い出を消そうとする。

 

(いやだ、忘れたくないっ!忘れたくないよっ!)

 

「だれか、助、けて……」

 

 記憶が思い出が塗りつぶされて消え去って――

 

「――っ、…………ぇ?」

 

 さっきまで頭の中を這いまわっていた痛みが突然消えた。記憶を消そうとしていたその不愉快な感覚が消えシルヴィは疑問を覚え目を開けると、目の前にいるはずの無い人がいた。

 

「基臣、くん?」

 

「大丈夫かシルヴィ」

 

 その登場の仕方はまるで小さい頃に読んでいた絵本に出てきた白馬の王子様みたいで――。

 

 様子をのぞき込んでくる基臣の瞳を真っすぐ受け止めれず、思わず顔を反らしてしまう。ドキドキと激しくなる胸の高鳴りを押さえつけてシルヴィアは質問する。

 

「あ、あのっ!どうして、ここに?」

 

「理由については後だ、それよりも……」

 

「やはり我の能力を容易く破ってくるか。これだから魔剣と呼ばれる類の存在は……」

 

「あいつとは面識があるのか?」

 

「う、うん。そうなんだけど、でも前見た時とは雰囲気が違うの」

 

 シルヴィアの説明を聞きながらフードの女の様子を見ると何か感じたのか、胸元のネックレスをジッと見つめる。

 

「なるほど。……おそらくあの首飾りか」

 

 その異質な雰囲気の正体をなんとなく察していると、フード姿の女は基臣へと近づいてくる。

 

「割り込んできたから誰かと思えばだったが、お前を探す手間が省けたな」

 

「……俺を?」

 

「私の名はヴァルダ=ヴァオス。要件を端的に言わせてもらおう。お前を金枝篇同盟に勧誘に来た」

 

「何の同盟なのか知らんが、お前のようなやつに――」

 

「お前には聞いていない、潔白の純剣(インヴィズ=ピューレ)に言っている。早く出てきたらどうだ」

 

『……貴方の前にわざわざ姿を見せる義理は無いわ』

 

 ヴァルダの問いかけに姿は現さないものの、脳内へと直接声が響いてくる。

 

「お前には同じ存在としてその強さに敬意を払っている。故に、忠告しよう。そこはお前のいるべき場所ではない」

 

『貴方に私がいるべき場所を指図されたくない。金枝篇同盟とかいうよく分からない同盟に参加するぐらいならこの中で納まっているのが一番』

 

「私には理解できんな。そんな窮屈な場所に閉じ込められるぐらいならその男の身体を乗っ取ればいいだろう。所詮はひ弱な人間、貴様ぐらいの能力の持ち主なら精神を壊すことぐらい容易い――ッ!!」

 

 ヴァルダはその言葉を言い切る前に凄まじい殺気を感じ取り、すぐさま基臣から距離を取る。ヴァルダの額にはその殺気からか意思とは関係なく本能的に冷や汗が流れる。

 

『貴方、言ってはいけないことを言ったね』

 

『私にとってモトオミは大切な存在なの。それを精神を壊す?身体を乗っ取る?馬鹿じゃないかな?』

 

『今のモトオミが大好きなのに。愛しているのにそんなことするわけないでしょ』

 

 ピューレの愛を語る言葉にヴァルダは鼻で笑う。

 

「長い年月を経て人間に絆されたか。惰弱な」

 

『もういいよ耳障りだから』

 

 その言葉と同時にピューレを取り巻く万能素(マナ)が煌々と光り輝く。

 

「ピューレ、やれるか」

 

『うん、任せて』

 

「勧誘は失敗か。だが人間に絆されてしまった純星煌式武装(オーガルクス)は計画の不安材料になり得る。これ以上の勧誘は得策ではないな」

 

 能力でわざとヴァルダと基臣の間にしかピューレの言葉が伝わらないようにしているため、見ていたシルヴィはどういう状況なのかまるで分からない様子だった。

 

「ね、ねえ基臣くん。どういう状況なのこれ?」

 

「すまんが余り説明する暇はない。それよりも離れておけ、今のお前を守りながら戦うのは無理がある」

 

「私も――ッ!?」

 

 立ち上がろうとシルヴィは足に力を込めるが、ヴァルダの攻撃を受けた影響かどことなく足元がおぼつかない。

 

「無理をするな、後は俺がやる」

 

 シルヴィは悔しそうな顔をするが、自分が足を引っ張ることを悟ると大人しく引き下がった。

 

 場の空気は既に双方が臨戦態勢になっていることから重圧がかかったかのように重々しい。

 

 不意打ち気味に首元のネックレスが妖しく光ると、黒い輝きが基臣を包み込もうとする。

 

 しかしピューレでその光を両断すると、ビルの柱を盾にしながら近づこうと動く。

 

「なるほど、柱を盾にするか。だが……」

 

 ネックレスは更に輝き、広範囲に光がばら撒かれる。

 

 基臣はピューレでその光を切り払いながら近づこうと試みるが、光の対処に気を配っている間に距離を取られてしまう。

 

「あの光が厄介だな」

 

 袖を捲ってピューレを己の腕の前に持っていくと、そのまま躊躇いもなく自傷行為を行う。

 

「お前……狂ったか?」

 

「さあ、どうだろうな」

 

 そう言うと基臣の姿は段々と薄れていき、数秒も経たないうちに視認できなくなるだけでなく星辰力や鬼気の気配すらも完全に消えてしまった。

 

「透明化か……小癪な能力を使う」

 

 基臣が姿を消すや否や黒い光を自身の半径数メートルの範囲を円状に薄く膜状に広げると動かずにじっとすることで相手からの攻撃を待つ。

 

 数秒後、ヴァルダの後ろ側から黒い光をかき消して向かってくるのを感知する。すぐさま振り向き迎撃のためにネックレスから漆黒の光が円弧状に放たれる。

 

「手ごたえがない。…………っ! 上か!」

 

 ヴァルダは直感でその場から飛び退くと、数瞬後にはそこにはクレーターが出来上がる。能力の時間限界なのか基臣は足元から姿を徐々に現わす。

 

「仕留めたと思ったがやり損ねたか」

 

 ピューレを構え直すと、基臣は仕掛けるタイミングを計る。

 

 しばらく状況が膠着していると今度も先にヴァルダから仕掛けてきた。ネックレスが光り輝き、先ほどよりも早く基臣へと襲い掛かる。

 

「何度も同じ手が通じると思うなよ」

 

 光が迫ってくるのに対し、基臣はその場へと留まって回避行動を取ろうとしない。

 

「誉崎流奧伝」

 

 剣を身に近く寄せて構えると、星辰力(プラーナ)を足に集中させる。

 

獄爛(ごくらん)

 

 

 

 一閃

 

 

 

 単純な動作だが、今まで使ってきた技と違ってその技は素早く、そして力強かった。

 

 

 

 間合い、黒い閃光――

 

 基臣とヴァルダの間にあるそれらの障害は一閃のもとに振り払われ、ヴァルダの身体を刃が捉える。

 

 

 

 予想外の痛手にヴァルダは大きく目を見開き、目の前に迫っていた基臣を見つめる。

 

 ようやくヴァルダにダメージを与えることが出来たが、あくまで借り物の身体だからなのかダメージを受けても痛みを感じる様子も無く距離を取ろうとする。そのついでに首飾りから黒い光を発散させて散弾の要領で放つことで基臣の機動力を封じに掛かった。

 

 しかし、基臣がピューレを一振りすると迫り来る光が一瞬で消失する。

 

「ちっ、厄介な……」

 

 手元に黒い光を収束させると斧を形作り、足元まで迫っていた基臣を薙ぎ払う。両足で踏ん張ることで薙ぎ払われる戦斧を受け止める。戦斧を消そうと能力を発動させるが相手は精神干渉の能力を持つこともあってか思うように消えない。耳障りな音と共に一撃に籠められた重さによって大きく後ろに滑っていく。

 

「遠距離だけのタイプかと思ったが……中々面倒だな」

 

 再び距離が離れ、それぞれ攻撃するタイミングを計りかねていると、ヴァルダは溜息を吐くと攻撃の体勢を崩す。

 

「……やめだ。これ以上は目立ちかねん」

 

「俺が逃がすと思うか?」

 

 致命打を与えるために基臣は動き始め――

 

「ウルスラ!」

 

 後ろから聞こえるシルヴィアの声に、あくまで今の目的は彼女を助け出すことだという事を基臣は思い出し、攻撃の手を止める。

 

 それを好機と見たのか一瞬眩く光り輝くとその場からヴァルダは消えていた。

 

「消えたか……」

 

「基臣くん!」

 

 柱にもたれ掛かって座り込むと、シルヴィアが駆け寄ってくる。

 

「大丈夫!?」

 

『私、疲れたから。おやすみ』

 

 基臣のことを気遣ったのかピューレは自ら待機状態へと変わる。

 

「ああ、大丈夫だ。能力の発動のために腕を多少切ったが、それ以外は特に問題ない」、

 

「見せて。治癒能力は使えないけど、応急処置ぐらいはできるから」

 

「いや別に――、分かった」

 

 一瞬断ろうとしたが、そうするとシルヴィアが不機嫌になる予感がしたので基臣は素直に受け入れることにする。応急処置をしながらシルヴィアはばつが悪いような顔をしながら話す。

 

「あー、ごめんね。私、大体の能力なら再現できるんだけど、治癒能力だけは出来なくてさ。ちょっと痛いかもしれないけど我慢してね」

 

「別に構わない。それよりもだ」

 

 基臣は応急処置をしてくれているシルヴィアに顔を向ける。憔悴した様子でいつもの快活な様子は今はどこにもない。

 

「さっきのフードを被った女とお前の間にどんな関係があるか聞いてもいいか?」

 

「……」

 

「無理にとは言わん。だが、今のお前の顔はとても無事とは程遠い」

 

 基臣はじっとシルヴィアを見つめていると、しばらくして観念したのかシルヴィアは話し始めた。

 

「昔の私は今とは違って引っ込み思案でさ、快活とは程遠い性格だったんだ。いつも一人で家に籠ってて本ばかり読んでばかり。でも、ある時にウルスラと出会った」

 

 シルヴィは端末を操作すると、一枚の写真を基臣の前に映し出す。そこには幼き日のシルヴィアともう一人――

 

「これはさっきの女……」

 

「そう。あの人、ウルスラは私の師匠だった人なんだ」

 

 写真は切り替わり、ウルスラとの思い出なのかたくさんの写真が出てくる。幼いシルヴィアがウルスラと歌っている姿や修行をつけてもらっている姿、一緒に動画を見ている姿――どれも楽しそうにしているのがよく分かる。

 

「歌だけじゃなくて色んなことを教えてもらったの、外の世界の事も身の守り方も」

 

「……いい、先生だな」

 

「うん、今の私があるのもウルスラのおかげだと思う。こうして基臣くんと仲良くなれたのも、ね」

 

 端末を操作して写真を閉じると、次は通話履歴を見せてくれた。

 

「別れた後も連絡を取ってたんだ。それがいつからかいきなり連絡が取れなくなって」

 

 そこには定期的に連絡をとっていたのかウルスラの名前がいくつか並んでいる。しかし、スクロールするとその名前も途中で途切れて見当たらなくなる。

 

「でも、連絡が出来なくなる直前、アスタリスクに行くって言ってたからもしかしたらと思って来てみたんだ」

 

「それで能力でウルスラを探したら詳しい場所までは絞り込めなかったけど再開発エリアにいるってことまでは分かった」

 

「だからこの場所をうろついていたのか」

 

「うん。それで今日ようやくウルスラを見つけることが出来た」

 

「やっと出会えたって、その顔を見た時は物凄い嬉しかった、でも……」

 

 拳を握りしめるとシルヴィアは顔を悔しそうに歪める。

 

「久しぶりにあったのにあんな事言われてさ。ちょっと……ううん、かなりショックだったんだ」

 

 話はそれで終わりなのか、そこでプツリと話が途切れる。暗い雰囲気にしてしまったのを自覚したのか無理やり笑って見せると基臣に話しかける。

 

「あはは、ごめんねこんな暗い話しちゃって。忘れて――」

 

「お前の師匠の捜索、手伝ってやる」

 

「え?」

 

「俺にも協力できることはあるだろう。お前一人でやるよりは遥かに効率的だ」

 

「でも、私のせいで基臣くんを危険な目に合わせちゃうし、さっきもそうだった。そんな目に合わせるくらいなら私は――」

 

「シルヴィ」

 

 基臣は背けているシルヴィアの顔に触れると、目と目が合うようにその顔を動かす。

 

「危険だとかそんな理屈は置いておけ」

 

 その瞳をのぞき込むように基臣はシルヴィアに顔を寄せる。

 

「お前はどうしたいんだ」

 

「…………」

 

「会いたいか、会いたくないか。どっちだ」

 

 しばらく黙ったままでいたシルヴィアだが、内に秘めている本当の思いを述べるために口を必死に動かす。

 

「……いたい」

 

「ウルスラに会いたい……。会ってちゃんと話がしたいよっ!」

 

 シルヴィアの告白を聞いた基臣は頷く。

 

「そうだ、それでいい」

 

 その後、基臣は応急処置が終わると立ち上がって何度か腕を曲げたりして調子を確かめる。あくまで応急処置なのでまだ傷は痛むが十分だと満足する。

 

 そんな基臣にシルヴィは問いかける。

 

「ねえ、基臣くん」

 

「ん、どうした?」

 

「どうしてウルスラを探すのを手伝おうと思ったの?」

 

 その質問にしばらく考えこむ。

 

「まあお前にはいつも助けてもらってる、その恩返しというのが一つ。あとはお前のことを大切な仲間だと思ってる、これが二つ目」

 

 そしてこれが最後だが、と言うと遠い目をしながら自分の事を語るかのように語る。

 

「師匠が手の届かないところにまで行ってお前が後悔している姿を見たくはないから、だな」

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――

 

 

 

「このままお前をクインヴェールに一人で帰すのは危ないしな。俺もついていく」

 

「あ、待って」

 

 先に行こうとする基臣を呼び止める。

 

「手」

 

 シルヴィアは右手を差し出すと、基臣の左手の前に持ってくる。

 

「繋いでよ」

 

「……これでいいか?」

 

 誰かと手を繋ぐことをしたことが無い基臣は拙くぎこちないものだったが確かにシルヴィの手を繋ぐ。

 

「にへへ……」

 

 指を絡め合わせると自分よりも大きい手の温もりにシルヴィアは思わず頬が緩んでしまうのを感じる。いつものどこか大人びたような態度とは違って、年相応の姿を見せたシルヴィアに基臣は少し戸惑うがこれで正しいのだと分かると成すがままにさせる。

 

 昔から一部の感情を除いて人の感情の機微に関してだけは敏い基臣だったが、横からシルヴィアの顔を見て思った。

 

「ありがとう、基臣くん」

 

 その笑顔はシルヴィアと今まで過ごしてきた中で一番輝いていると。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――

 

 シルヴィアをクインヴェールまで連れ帰ると応接室、ではなくペトラの仕事部屋に入れられる。

 

 最初、シルヴィアが基臣を連れた姿を見た時、ペトラは少し驚きの顔を見せるがそこは統合企業財体の幹部、すぐに事務的な顔へと戻した。

 

「まずは感謝を。シルヴィを助けていただきありがとうございます」

 

「偶然遭遇しただけだ。礼は必要ない」

 

「偶然、ですか」

 

「ああ、偶然だ」

 

 両者の間に少し間が生まれるが、咳をするとペトラは話を進める。

 

「とにかく、誉崎さんの問題に関してはバレない様にこちらでなんとか裏で手配します」

 

「本当、ペトラさん!」

 

「……アイドルのメンタル管理もプロデューサーの仕事です。その手の根回しは任せなさい」

 

「ありがとう、ペトラさん!」

 

「その代わり誉崎さん。これからは行動にしっかり注意を払ってください。あなたが一緒にいるのは世界でもトップレベルの人気を誇る歌姫であることをお忘れなく」

 

「了解した。それこそ、噂のように人でも殺そうものならこのアスタリスクから出て行く。そんなことはする訳がないがな」

 

「それだけ聞ければ十分です」

 

 ペトラは時計を見ると既に短針は6の数字を回っており、もう日も暮れようとしていた。

 

「シルヴィ、彼を門まで見送ってあげなさい」

 

「はい!」

 

 シルヴィアは席を立つと、基臣を連れて部屋を出ていった。

 

 部屋で一人になったペトラは張りつめていた空気を緩めると、少し溜息を吐く。

 

「シルヴィのさせたいようにさせつつ、世界の歌姫として活動の障害を作らないようにする。……まったく、ままならないものですね」

 

 ――――――――――――――――――――――

 

 正門から出ると目立つため、普段はあまり使われない裏門からシルヴィは基臣を送り出すことにした。

 

「基臣くん、またね」

 

「ああ、またな……ん?」

 

 何かに気づいたのか基臣はシルヴィアに顔を近づける。それぞれが少し顔を近づければ口づけできるほどの距離まで接近する。基臣の想定外の行動にシルヴィアは柄にもなく胸が熱くなるのを感じてしまう。

 

「な、何かな?」

 

「いや、よく見たら疲れが溜まってるようだからな。ミルシェから聞いたが、最近仕事ばっかりやっていたんだろう?今日はしっかり休め」

 

「う、うん」

 

 シルヴィアから顔を離した基臣はそのまま界龍(ジェロン)へと歩いて帰っていく。その後ろ姿が見えなくなるまでシルヴィアは小さく手を振り続けた。

 

 やがて、基臣の姿が見えなくなるとシルヴィアはポツリと言葉を漏らした。

 

「はぁ、もう……。ほんと、ドキドキさせるだけさせて自分はどこ吹く風なんだから。ずるいよ、基臣くんは」

 

 

 その顔は夕陽に照らされても尚分かる程紅く染まっていた。

 

 

 




いきなり高評価を5つ貰ったのでびっくりしました。
こんな拙い作品ですが評価していただきありがとうございました。

本作の中であなたが一番好きなヒロインは?

  • シルヴィア・リューネハイム
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  • エルネスタ・キューネ
  • 黎沈華
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