学戦都市アスタリスクRTA 『星武祭を制し者』『孤毒を救う騎士』獲得ルート 作:ダイマダイソン
感情がない機械のような人という言葉が、目の前の男の子の事を指すのにふさわしいのかもしれない。
私が綾斗にいつものように道場で稽古をつけてあげていて、たまたまその様子をお父さんが見に来てくれてた時、突然扉が開いて綾斗と同じぐらいの小さい男の子がやってきた。
その子はお父さんに近づくと誉崎流という流派の人間であることと、立ち合いを所望することを言ってきた。
誉崎流という言葉を聞いた瞬間に、お父さんが今までに見たことがないぐらいに不機嫌になって、立ち合いを受けないことを男の子に言った。その時はなんでそんな不機嫌に対応をするのかと思っていたけど、後から聞いてみると誉崎流は今までに色んな流派を回り歩いて敬意の欠片も無い態度で道場破りを行って、時には殺すこともあったらしい。
何者かによって誉崎流に類する者は全員殺されてしまったため廃れてしまい、今となっては私のように聞いたことない人間も少なくはないらしい。
私はそんなこと分かっていないから、かわいそうだし、立ち合いを受けてあげようと軽い気持ちで思っていた。
でも、実際に戦ってみてその強さに驚かされ、そして少し恐れを覚えてしまう程だった。綾斗と同じぐらいの年齢のはずなのに、その読みの深さは私を凌駕していて、どの攻撃もほとんど外されてしまった。どれだけの経験を積めばその領域まで到達するのか想像もつかない。剣技の冴えも凄いものを持っていて、力や身長などアドバンテージがあるはずなのに
その剣先が首元まで迫ってきているような錯覚に陥る。
だけど、読みの深さとか剣の冴えとかそんなものよりもその子の目が何よりも怖かった。何を考えているのか全く分からないし、その目を見ていたら飲み込まれてしまいそうな気分になる。たった9歳程度のはずの男の子に私は恐怖を覚えてしまっていた。
戦い始めてからそう経ってないはずなのに、何十分も過ぎ去っているような感覚を覚える。それと共に焦りを感じる、もしかしたら負けてしまうんじゃないかと。どちらかというと形勢は私の方が有利になっている。でも、目の前から感じるただならない感覚が少しでも気を緩めれば殺されると告げてくる。
結局、勝負には勝ったけど決着を焦りすぎた私は極伝である『
驚きだった、初見ならば誰も防げないであろう
晦を、既に繰り出そうとしていた攻撃から修正するという形で防ぎ切ったのだ。
私と同等どころじゃない、この世界で一番強くなれるのではないかというぐらいのポテンシャルを秘めている。立ち合いを終わった後、逃げるように立ち去る男の子にどうしてそんなに強いのかなどを私は聞こうとしたけど、振り返ることなく立ち去って行ってしまった。
──────────────────────────────────
目の前の子はまだ幼いのに、とても子供らしくない無感情な子だった。娘である綺凛を愛情を持って育てているから余計に目の前の子の纏っている雰囲気に不気味な物を感じた。
聞けば名前からするに誉崎流の者のようだ。どんな日常を送ればそんな目ができるのかは分からないが、誉崎流は立ち合いで人を殺したなど良くない噂が絶えない。最近は例の事件のせいで不気味なほどに姿を見せなくなったが、一度だけ私も誉崎流との立ち合いを見たことがあった。
それは、私が14,5の頃だったか。誉崎流には凄まじい強さを誇った男の子がいた。その子もこの子と同じように周りに興味がないような目をして当時当主であった私の父をものの数秒で倒してしまった。当時の私は子供だったため、目の前で一方的に父が打ちのめされていた光景には恐怖を覚えてしまった。今になって思えばあの男の子は家の呪縛に縛られることしかできず、無機質に生きてきたのだろうと憶測だが思う。
その時の私は子供であったため見ていることしかできなかったが、今は違う。今からでもこの子を正しい道へ導いてあげる一助となる指導ができるかもしれない。そのつもりで周りの反対を押し切って立ち合いを受け入れてあげた。
刀を交えてみるとよく分かる。いかにこの子が歪んだ感情を持って育てられたかを。一見わからないが、感情が元から失われていたということはないようだ。少なくとも最初は両親から愛情を受けて育てられていたように思える。それだけに、この子が哀れでならない。そのまま愛情を受けたまま育っていれば歪むこともなかったはずなのに。
できるだけ長く粘ろうとするが、私の連鶴の未完成な部分を狙って崩しにかかってくる。もう、そんなに長くは持たないことが嫌でも理解できる。
結局、私は攻撃を一撃も与えることすらできずに防戦一方で敗れるしかなかった。この結果に周りはざわざわしている。当然だろう、刀藤流最高位の人間である私が手も足も出ずにまだ成長途上の小さい子供に負けてしまったのだ。動揺しないわけがない。ただ、私としてはそれはいいのだ。剣の道を究める以上、自分の遥か上を行く存在はいくらでもいる。それが子供であろうと、年寄であろうと年齢に関係なく存在する。
ただ、この子に何の変化も与えられなかったのが悔やまれる。ずっと意味も持たずに剣を持ち続けるということはさせたくない。だから、この子を泊めさせてあげることにした。
泊まることに対して最初は断っていたが、何度か言うと渋々ではあるが了承してくれた。その後、夕食になるまで鍛錬を行っていたがその様子は傍から見て非常に危うく見えた。休憩を一切取らず一心不乱に刀を振るう一連の動作は堂に入っているが、少年の体付きで行うべき練習量ではない。私が定期的に休憩を取るように言って休ませてはいるが、すぐに練習に戻ってしまう。
夕食の時に私はなぜ剣を振っているか聞くと、それが自分に与えられたものだからと答える。若干要領を得ない回答だったが、この子に剣の神に好かれるだけの才能があることは剣を交えているのでよく分かる。しかし、それを与えられたからという理由だけで剣を振っていては間違いなくその実力はいつか打ち止めになってしまう。大切な人を守りたい、復讐したい、金が欲しい。その善し悪しは別にしても様々な人間がそれぞれ目的を持つことで高みへと向かっていく。しかし、この子にはそれがない。というよりも、目的を見つけるためのきっかけすら無いという感じだった。
基臣くんが風呂場へと向かって行ったところをたまたま見かけたので私も風呂へ入ることにした。
扉を開けると彼は私が入ってきたのを見て少し驚いたように目を見開いたが、数瞬後には何もなかったように湯舟に浸かると私が入ってきたのを見て初めて彼の方から口を開いた。
なぜ私がこんなに基臣くんに構っているのかが疑問だったらしい。
曰く父からも鍛錬以外では存在しない物として扱われていたそうだ。
剣の先達として基臣くんに人のつながりの重要性について自分の経験も交えて話したりした。仲間や恋人など色々なことについて聞いてみたが、それとは程遠い生活だったのかそういうものはいなかったらしい。
しばらく話をすると基臣くんは風呂から上がっていった。その時に少し表情が和らいだ気がして、彼の中で何かが少し変わったのではないかと思う。
翌朝、妻の琴葉に起こされ居間に連れられると、座卓に一枚の手紙が置いてあった。その手紙を読むと簡潔に泊めてくれたことに感謝する旨が書いてあった。温泉から上がった時に一瞬あの子がほんの少し口元を緩めていたところを見るに少しは心境に変化があったのかもしれない。彼がほんの心を開いてくれたことに喜びを感じながらも、この先、良き好敵手や仲間と出会い真っ当な人間として成長してくれることを祈った。
現在開示できる設定
誉崎流
開祖である初代誉崎重信と血縁のあるものにしか受け継がれていない
閉鎖的な流派。当時敵なしと呼ばれていた初代の実力に近づくことを目的と
している。相手に容赦がなく、剣を極めるためならば殺しも厭わないため
他流派からは嫌われている。
本作の中であなたが一番好きなヒロインは?
-
シルヴィア・リューネハイム
-
オーフェリア・ランドルーフェン
-
ミルシェ
-
エルネスタ・キューネ
-
黎沈華