学戦都市アスタリスクRTA 『星武祭を制し者』『孤毒を救う騎士』獲得ルート 作:ダイマダイソン
基臣は煌式武装のテストのために沈華を連れてアルルカントへと向かっていた。
「さて、そろそろアルルカントに着くが……」
「やっ、ほー!」
アルルカントの正門からエルネスタは飛び出してくると、その勢いのまま基臣へと飛びつこうとする。
前みたいなエルネスタの過剰なスキンシップを警戒していたため、事前に察知した基臣は沈華を盾にして回避すると、それに反応しきれなかった二人は抱き合う形となって床に倒れ込んだ。
「へぶっ!」
「ちょっ!?離れなさい……よ!」
抱き着いてきたエルネスタを引きはがすと沈華は疲れた様子で彼女を睨みつけるが、口笛を吹いて先ほどのスキンシップについて知らぬ存ぜぬを貫く彼女を見て怒る気力も削がれてしまう。
「ちぇー、剣士君を驚かそうと思ったんだけどなぁ」
「からかうのはよせ、今日はそんなことをしに来たわけじゃないだろう」
「親交を深めるための挨拶ってやつだよ。ま、それはともかく……これ、IDカードだから無くさないようにねー」
胸ポケットからカードを二つ取り出すとそれぞれを沈華と基臣に差し出す。
「それじゃ、こんなところで立ち話もなんだし中に入ってから話をしよっか。ついてきて」
エルネスタの案内に従って中に入っていくと中にいる学生から様々な視線を向けられる。しかし、どの視線も好意的なものではなく――
「どうやらあまり歓迎されているわけでは無いようだな」
「まあそりゃそうだよ。私達と財体側にとってはウルム=マナダイトを一つ貰えるわけだから美味しい話だけど、他の生徒からしてみれば入学して間もない私が増長する危険性があるわけだからねぇ。先に入学して地位をある程度確立したカミラはともかく」
話しながらもそんな視線をものともせずエルネスタは歩いていると、やがてたどり着いたのか一つの部屋の前で立ち止まる。
「ここがカミラの実験室。ほら、中にどうぞー」
扉が開くとそこには煌式武装を調整しているのか機材の前で集中しているカミラの姿があった。部屋に入ってきた基臣たちの存在に物音で気づいたのか椅子を回転させると立ち上がる。
「よく来たね、と言いたいところだけど……」
チラリと沈華を一瞥すると、エルネスタに文句を言いたげな顔を見せる。
「誉崎君はともかく、そこの女の子も入れて良いものかな……。あまり部外者を入れたくは無いのだが」
「まあまあ、剣士君だけだとデータが少ないから来るもの拒まずでいいってことで!オーダーメイド品の作成ってことでただでさえ獅子派から被験者が集まらないんだからさー」
「…………はぁ。まあそう言うなら良いという事にしておこうか。あぁ……そうだ、椅子はそこにあるから適当に座ってくれ」
壁に立てかけていたパイプ椅子を指すと、カミラは座るように促す。
基臣が人数分のパイプ椅子を置くとそれぞれ三者三様、好きな座り方で座る。
「一応、君のリクエストにある程度沿う形で二つともプロトタイプを作ったんだが、とりあえず君の感想をもらってフィードバックを得ようと思って呼ばせてもらうことにした」
「そうか、それで肝心の現物は……」
「もちろん用意してる、ついてきてくれ。あ、エルネスタと君はそこで待っててくれ」
カミラの指示に従い、基臣は煌式武装のテスト用に用意された隣の部屋へと移動する。
窓越しにエルネスタ達のいる姿が見える。恐らく、そこからテストの様子を観察するのだろうと基臣は考える。
「じゃあまずは遠隔誘導爆弾の方からだ。これを指にはめてくれ」
カミラはポケットから指輪を取り出すと、基臣へと渡す。
「これは?」
「遠隔誘導爆弾の母機に当たる物だな。遠隔誘導をするためには母機となる煌式武装が必要になるわけだから、その指輪を母機にしてそこにある爆弾を操作しようっていうわけだ」
カミラは基臣へと指輪を手渡すとそのまま部屋から出る。
「頭の中でそこにある爆弾を操作するイメージを持つと動くはずだ、やってみてくれ」
「分かった」
基臣は母機となる指輪を起動すると、頭の中で爆弾の移動する軌跡をイメージする。
すると、12個程の球状の爆弾がフワフワと浮かび上がり基臣の周囲をグルグルと移動する。
「うわーぉ、12個もかー」
「これは中々の才覚だな……」
二人の驚愕してる姿に、凄いか凄くないかの指標がないためいまいち分かっていない沈華は首を傾げる。
「……12個ってそんなに凄いの?あれ、結構小さいけど」
「まあ確かにあの程度の大きさなら星辰力のコントロールはあまり必要ないが、個数が増えていく程卓越した空間把握能力が必要になってくるんだよ。あれを6個も操作できれば超一流と言っても過言ではない」
「まあ聞くよりも実際に試したほうが早いんじゃないかにゃー。ほら、メスガキちゃんも試してみるー?」
「誰がメスガキよ!」
そう言いつつも沈華はテストルームに入っていき、基臣から母機となる指輪を受け取る。
遠隔誘導武装の起動をして爆弾を持ち上げようとする頭の中でイメージを固めていく。イメージの通りに爆弾は空中を浮遊はしたものの、浮かび上がったのは4個まで。5個目からはウンともスンとも言わずそのままだった。
「ふむ、4個か……」
「操作できない人間が多い事を考えたら、結構センスある方なんじゃないかなぁ。まぁ、さっきの見ちゃったら自信失っちゃうだろうけど」
(こんなのを基臣は12個も操作してるの……!?とてもじゃないけど4個持ち上げるだけでもせいぜいなのに)
少しして慣れない遠隔誘導の感覚に疲れたのか指輪を待機状態にして基臣に返すと、元の場所に戻る。
「これで剣士君がいかに普通じゃないか分かったんじゃない?」
「ええ……」
「まあ、あれは明らかに異常だ。一般の解釈で当てはめないほうがいい。4個動かせただけでも君は十分に優秀だよ」
カミラから慰めの言葉を受けるものの、自身と基臣との間に明らかな実力差があることを痛感させられることとなった。
(しっかり修行しないと置いていかれるわね……)
しばらくすると、操作する感覚を掴んだのか爆弾を自在に動かしながら、カミラたちに問いかける。
「とりあえず威力を確かめたいんだが、どれかぶつけていい的はないか?」
「威力の検証用に用意した自律式擬形体を出すからそれにぶつけてくれ」
カミラがアナウンスすると、部屋の中に一体の自律式擬形体が現れる。基臣は爆弾を一つだけそれに向かって誘導して着弾させる。
着弾した自律式擬形体はその爆発によってパーツがバラバラになるほど派手に弾け飛んだ。
「……うん。中々の威力だ、悪くない。火力もそうだがあとは小型化してくれれば文句なしだな」
「小型化に関してはまだ開発途中だから追々といったところになるかな。まだ時間はたくさんあるからそこのところは今後詰めていくことにしよう。次の武装を試すから戻ってきてくれ」
「分かった」
指輪を待機状態にすると、扉を開けてカミラたちの元へと戻る。帰ってきた基臣にカミラは少し呆れたような顔をしていた。
「にしても、君。最初からこんなに動かせるなんて本当にどんな空間把握能力をしてるんだ……。こんな数の遠隔誘導武装を操作できる人間、理論上ではいないはずなんだが」
「なんか操作するのにコツとかあるの?後学のためにも知っておきたいけど」
「なんとなくで動かしてたからコツとかそういうのは特には無いな」
「ふむ……。まあこういう操作は感覚的な物に由来しているから全員にできるものでは無いか……」
メモを取り終わり、机の上から剣型の煌式武装を手に取ったカミラはそれを基臣へと渡す。
「ではもう片方のテストもやろうか。もう一体自律式擬形体を用意したからそれで試し切りしてくれ。リミッターは
再び部屋に戻った基臣はリミッターがついた状態で何度か試し振りをすると、解除した状態も試そうと煌式武装に星辰力を注ぎ込む。すると、基臣の手にある煌式武装から出る眩い光が更に強くなっていく。煌びやかに輝くその青白い光に沈華は思わず見とれそうになる。
「わぁ、綺麗……」
「理論値だけしか算出できていなかったから実測値はどうかなと思ったけど結構良い数値を出してるな。ふむふむ……」
基臣は何度か自律式擬形体に試し切りして感触を掴んでいると、身体に身の毛がよだつような悪寒が駆け抜ける。
「っ!?」
その悪寒の正体が、手元にある煌式武装が原因であるといち早く勘付いた基臣は素早く持っていた煌式武装を人がいない方向へと放り投げる。数瞬後にその武装はけたたましい音を響かせると連結していたマナダイトが連鎖して爆発した。
ガラス越しに見ていたカミラたちは爆発を受けて基臣が無事か確認しようとするが、爆発の煙で中の様子が見えないため、カミラはマイクを使って基臣に呼びかける。
「大丈夫か!!」
しばらくして煙が徐々に晴れていくと、特に爆発に巻き込まれた様子もなく基臣が煙を払うようにしながら現れた。
「ケホッ……。問題ない、少し煙たいだけだ」
「そうか。……想定したよりも出力が大きくなって煌式武装の耐用限界を超えていたか。さっきの出力を保持しつつ本体が耐えれるようにする必要があるな」
ぶつぶつと呟きながらメモを取りながらカミラは机の上を見る。
「予備がない以上リミッター剣の煌式武装はこれ以上は試動作できない。仕方ない……、今回はこれぐらいにしておこうか」
カミラはメモ帳をしまうと、今度は袋からパッドを取り出すと丁度帰ってきた基臣にそれを向ける。
「あとは君の身体データを採取しようか。君の体格に合わせて武装を調整しておく必要があるからな」
「上を脱げばいいのか?」
「ああ、上半身だけで大丈夫だ」
カミラの言葉に頷くと、基臣はシャツを脱ぐ。
「っ……!」
服を脱ぐと、その身体には無数の痛ましい傷が刻まれていた。その傷だらけの身体に沈華は思わず顔を背けてしまう。
(どんな事をしてたらこんなに傷が……)
「さーてと、それじゃデータを取りますかな」
気にした様子もなく作業を続けるエルネスタ達は、基臣にパッドを貼り付けていきデータを収集していく。
しばらくして収集し終わったのか、パッドをはがしてカミラは服を着るように促した。
「これでとりあえずテストは終わりか」
「とりあえずはこれで終わりだな。あとはエルネスタが何かあるなら――」
「まったく、何をしているかと思えば他学園の戦力増強とは。これが未来を担うアルルカントの才気ある生徒の一人というのですから泣けますね」
「貴方は……」
突然部屋に現われた男にカミラは顔を歪める。後ろに何人か生徒を連れていることから獅子派の幹部らしき存在である事が伺えた。
「君のせいで我ら獅子派の面子が丸潰れなんですよ。汎用性を捨ててワンオフ品に逃げていると思われてしまっている。その意味は理解していますか?」
「それは……」
「やはり君よりも私の方が獅子派のトップになるに相応しい能力を持っている。君にはこの研究室をあげるのすら惜しい――」
「おい」
「ん?他学園の人間が我々の問題に入ってこないでもらえますかねぇ」
「お前らの権力闘争なんぞに興味はないが……。才能がない癖に、自分の方が上と勘違いしているとは随分とおめでたい考えをしているみたいだな」
基臣の挑発混じりの言葉に、アルルカントの生徒達は殺気立つ。
「勝手に言わせておけば、素人がよくもまあそんな口を叩けますね」
「確かに俺は煌式武装の技術に関しては素人だが、勘で人の才覚の有無程度ならば分かる。カミラやエルネスタと違ってお前は無い側の人間だ」
「私がそこの一年や、異端児に劣るとでも言いたいのですか」
「ああ、そうだ」
「……そこまで自身の勘を信用しているなら、我々の武装とそこの二人が作った武装のどちらが優秀なのか獅鷲星武祭でハッキリさせようじゃないですか。勝った方の言う事を一つ聞くというルールで」
その言葉に基臣は少しエルネスタ達の方を見る。
(俺はともかく、二人まで迷惑をかける訳にもいかないしな……)
「俺だけなら構わないが、二人まで巻き込むのは――」
「別に構わないよ」
「私も大丈夫だよー」
「……決まりですね。では次の獅鷲星武祭まで首を洗って待っておくことです」
アルルカントの生徒達は睨め付けながら部屋を出て行ったため、部屋は四人だけとなり静まり返る。
「面倒な事態に発展させてしまったな、すまない」
「別に構わないよ。こちらこそ、意図していないとはいえ我々の派閥の争いに巻き込んでしまってすまなかった」
「アルルカントの内情は噂程度の事は知っていたからな。こうなる事は大体予想が出来た事だ、問題ない」
「そう言ってくれると助かる」
手を叩いて気持ちを切り替えるとエルネスタは椅子から立ち上がる。
「さーて、次は買い出しに行こうかー。ほーら、剣士君も行くよー」
「俺はその手のパーツに関する知識は無いしお荷物になるだけだと思うが……」
「いやいや、剣士君にそういうのは求めてないのよ。まあ、簡単に言っちゃえば荷物持ちってことだねー」
「ふむ」
基臣はチラリと沈華を見ると、彼女は口を開く。
「元々私は無理言ってついてきたんだから、その子が変なことしないんだったら特に意見するつもりはないわ」
「まあそれなら、同行させてもらおうか」
「よーし、じゃあレッツゴー」
調整のためにアルルカントに残るカミラを除いた三人は、エルネスタの楽しそうにする声を聞きながら商業エリアへと向かうことにした。ただの荷物持ちになるだけだと二人は考えていたが、そうは問屋が卸さなかった。
「これは持ち主の星辰力を駆動部へと伝達させて、過励万応現象に近似する現象を引き起こす事で出力を増大させるパーツで、あれは――」
「何を言ってるのかさっぱりだな……」
「私も同じだわ……」
エルネスタが早口で説明するものの、技術屋ではないため理解することができない二人は荷物運びをするよりも話を聞くことによって疲労が徐々に蓄積していく。
「早く終わらないかしら……」
「まあ、仕方ない。これも必要な事だと思うしかないだろう」
その後、必要なパーツを見つけては長々と楽しそうな表情で解説するエルネスタの話を聞くという疲れる作業もなんとか終わった。満足したのかエルネスタがほくほく顔で先導して歩いていく。
「こっちの方が早いから、ほら!」
「ちょっと!」
「……仕方ない、ついていくか」
勝手に先行していくエルネスタに二人は仕方なく後ろからついていく。
しかし、ついていく途中で違和感を基臣は覚える。まるで何者かが自分たちを狙っているかのように――
(……っ!?何か来る!!)
全力で前へと駆けると、スライムもどきが元いた場所へと飛びかかってきていた。スライムを境に後ろへと退避した沈華と分断されるが、なんとか戦闘能力が皆無であるエルネスタを保護することに成功する。
「俺の後ろに隠れておけ、下手に動いたら死ぬぞ」
「はいはーい」
背後に隠れるエルネスタを確認した基臣はスライムもどきを
何度か切り払っていくと、分裂せずそのまま液状の物質へと変化して動かなくなるスライムもどきも現われ始める。
(一回切るだけでは足りないのか……。とはいえ、一定のサイズより小さくなるとその機能を停止するらしい)
「沈華!」
「分かってる!」
数は多かったものの一つ一つはそこまで強くなかったため、攻略法を理解した二人は順調に倒していく。
少し時間はかかったものの手間取ることなく倒すことができた二人はそれぞれ戦闘態勢を解く。
「……終わったか」
「ふー、何なのこの物体……」
「これが何なのかは知らんが、一つだけ分かったことがある」
そう言うと、基臣はエルネスタの元へ行って問い詰める。
「今の襲撃は全部お前が仕組んだもの。違うか?」
「……いやー、そこまで分かっちゃうかぁ。本当、君の勘って冴えてるね」
その言葉に沈華はエルネスタに対する警戒を一気に高める。
「まさか貴方、私達を嵌めるつもりで!」
呪符を取り出す沈華を見たエルネスタは慌てて手を振って否定する。
「いやいや、違う違う。自然体な状態での剣士君の戦闘データを取る必要があったんだよ。不意打ち気味になって申し訳ないとは思うけどね」
「……本当なの?」
先ほどの襲撃のこともあり、あまりエルネスタのことを信用していない沈華は基臣の方を見る。
「特に悪意を向けられてはいないから、本当にデータ集めのためだろう。……だがエルネスタ、次からはそんなことするなよ。事あるごとにお前を疑うようなことはしたくない」
「りょーかーい」
エルネスタは基臣に近づくと腕に胸を当てて絡めさせる。
「おい、ひっつくな」
「いーじゃんいーじゃん。まあこれもお詫びということで」
戯れにひっついてくるエルネスタを振りほどこうとするが、非星脈世代であることも相まって引き剥がすための力加減に苦労する。今まで見てきた人間の中でも一際考えが読みづらいエルネスタに基臣は振り回されてしまう。
「ふふーん、剣士君はやっぱり面白いねー」
「離せ――」
「随分と、楽しそうだね」
知り合いの少ない基臣にとって後ろから聞こえてきたその声は余りにも聞き覚えがある声だった。己の身に第六感が警鐘を鳴らす中、その声の方向へと振り返るとそこには帽子を深くかぶり、尋常じゃないオーラを発しているシルヴィアがいた。
「私も混ぜてよ」
「いやー、歌姫様に会うなんて偶然だなー。しかも、剣士君とお知り合いだなんて」
「っ!? なんで……」
「勘って奴かなー。といっても、そこの剣士君のそれとは全然種類が違うけどね。あ、別にばらすつもりは無いから心配しないでいいよー」
「そう……」
シルヴィアもエルネスタがなんとなく悪い人間ではないことを理解したのか、警戒を解く。といっても、それ(正体の露見)とこれ(恋敵の登場)とは話が別である。
「そ、れ、で。どうして基臣君がその女の子と腕を組んで歩いていたのかなー」
笑顔で基臣に質問をするシルヴィアだったが、その口調は責めるような雰囲気だった。
「それは私が剣士君のかの……ウブッ!?」
嫌な予感しかしなかったためエルネスタの口を手で塞いで黙らせると、正直に事の経緯を基臣は説明していく。
「煌式武装の開発を頼んでいて、それのテストに付き合ってただけだ。さっきは色々あってパーツの買い出しに出かけてた」
「ふーん。で、その子と腕を組んでたのもテストの一部だってことですか」
ジト目で基臣を見つめるシルヴィアに基臣は原因を頭の中で考えるしかできなかった。
しかし、基臣を振り回していることに怒っているのなら、エルネスタの方に怒りの方向を向けるはずであるため、恋愛のれの字も知らない基臣にはシルヴィアが怒ってくる理由が分からない。
とはいえ、自分に非があるのだろうと思った基臣は素直に頭を下げる。
「悪かった」
「え?」
いきなり頭を下げる基臣にシルヴィアだけでなく、沈華も驚く。
「正直に言うとシルヴィアが怒る理由はちゃんと理解できていない。しかし、俺がお前の機嫌を損ねたことは間違いない。すまなかった」
頭を下げる基臣にシルヴィアも、うっ、と言って言葉を途切れさせる。しばらくして気が削がれたのか溜息を吐くと、ひとりごちる。
「あー、もう!惚れた弱みだから強く言えないじゃん……怒ってる理由を言う訳にもいかないし……」
シルヴィアはポケットから何かを取り出すと基臣へと差し出す。
「ん」
「これは?」
差し出されたものを基臣は見るとアスタリスクの中で最大の規模を誇るシリウスドームで行われるシルヴィアのライブのチケットだった。しかも、席は最前列で手に入れようと思って手に入るものではない代物だった。
「私のライブのチケット。見に来てくれたら許してあげる」
怒っている表情をしながらも内心ではドキドキしているシルヴィアの様子に表情を緩めると、基臣はシルヴィアから差し出されたチケットを受け取った。
「それぐらいならお安い御用だ。行かせてもらうとしよう」
「……」
「どうしたんだ、そんな顔をして」
「いや、基臣君がアスタリスク来たばっかりの時と比べて大分表情が柔らかくなったかなぁと思って」
シルヴィアに指摘され、基臣は自分の顔をぺたぺたと触る。
「そうなのか? あまりそういう実感はないのだが……」
「まあ、いい事だと思うよ。最初の時の基臣君、結構怖い顔してたから話しかけづらい雰囲気がすごかったし」
「そうか……」
鏡を持っていなかったため基臣は窓を見ると、そこには確かに無骨な表情を和らげている自身の姿があった。
本作の総合評価が3000ポイントを超えました。まさか処女作でここまで行くとは夢にも思いませんでした。頑張って執筆していきますのでこれからもよろしくお願いします。
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シルヴィア・リューネハイム
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オーフェリア・ランドルーフェン
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ミルシェ
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エルネスタ・キューネ
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黎沈華