学戦都市アスタリスクRTA 『星武祭を制し者』『孤毒を救う騎士』獲得ルート 作:ダイマダイソン
――界龍第七学院、
「今日は珍しゅう、豪華な面子が集まってますなぁ」
「冬香さん、あなたも呼ばれたんですね」
「おもろい事をやるって師父が言うさかい、来てみたんどす」
「面白い、事……ですか?」
(今日の話はチーム黄龍のメンバー発表でしょうし、特別面白い事はないはずですけど……)
冬香の話に少し疑問を持ったものの、その疑問も星露がやってくることですぐに消える。
「お、集まっとるようじゃの」
「師父!」
「よいよい、そのままでおれ」
立礼しようとする虎峰たちを手で制す。
「さて、回りくどい話をするのもなんじゃし、さっさと本題に入ろうかの。今日集まってもらった理由じゃが、そろそろ来年の獅鷲星武祭に向けてチーム黄龍のメンバーを選出しておこうと思ったからじゃ」
「チーム黄龍……」
「して、そのメンバーじゃが…………基臣、沈華、沈雲、虎峰、セシリー。以上の5名をチーム黄龍のメンバーとする」
星露がメンバーを発表すると、若干ざわつく。
「師父、大師兄はチームに入らないのですか?」
「まあ、待て待て。まだ、話は終わっておらん」
「え?」
星露はニヤリとしながら話を続ける。
「今回の獅鷲星武祭、チーム黄龍とは別にもう1チームを儂が直々に編成する」
「えぇーー!?」
「なんじゃあ、うるさいのぉ。静かにせい」
「いやいやいや、万有天羅が自らチームを2つ編成するなんて聞いたことありませんよ!」
「いつも同じ感じで獅鷲星武祭を迎えるのもつまらんじゃろうし、こういうのもありかのぉと思ってな」
「思ってな、じゃないですよ!前代未聞ですよこんなの!チーム黄龍は界龍の旗印となる存在。対抗となるチームを作るなんてことをするのはどうかと思いますけど」
「これは決定事項なのでな、もう今更変更することはできん」
「そんなぁ……」
「では、もう一つのチームである
もう一つのチームのメンバーも次々と読み上げられていき、これで広間にいる十人全員の名前が呼ばれたことになった。
(今回の獅鷲星武祭は大荒れの予感がしますね……)
「それでは解散じゃ!」
そんな考えをしている内に星露の話も終わり、広間から出ようと虎峰も歩き出すと肩を後ろから叩かれる。
「ん、どうしたんですか?」
「ちょっと集まってくれ。とりあえずチームのリーダーだけは決めておこうと思う」
「なるほど、分かりました」
広間から全員出ようとする前だったので、基臣の呼びかけによってすぐにチーム黄龍のメンバー全員が集まった。
「それで、チームのリーダーについてだが……」
「基臣でいいんじゃないんですか?この中で一番実力ありますし」
「いや、俺にはチームを率いるようなリーダーシップはないし、そんな安易に決めて良い物では――」
「どちらにしても、リーダーがやられたら負けなんだから一番強い人を置いておくのが安全でしょ」
「うん、それでいいんじゃないかな」
「私もリーダーって柄じゃないしねー」
基臣を除いたメンバー全員に推薦されてしまい、こういう展開になってしまったらもうダメだと理解した基臣は観念したのか承諾することになった。
――――――――――――――――――――――
ブー、ブー
「んー……?」
休日ということもあり、パジャマのままでダラダラと自室で寝ていたミルシェは聞こえてくる着信音で目を覚ます。
「んー、どしたのー?」
友達からだと思い、誰からかかってきたのかを確認せずそのまま電話に出る。
ミルシェはプライベートアドレスを一般に公開しておらず――アイドルをやっているなら当然のことだが――親しい友達にしか教えていない。故に、まさか電話をかけてきたのが基臣だと露ほども思いもしなかった。
「ミルシェ」
「へっ……?」
画面に映る基臣の姿に顔が赤くなっていきそのまま思考が固まる。
「今は都合悪かったか?ダメなら後でかけなおすが」
「ちょ、ちょっと待って!すぐ着替えるから」
ミュートにしてカメラを切ると、すぐに見てくれだけでも誤魔化そうと上着を着る。鏡を見て変な所がないかを確認するとミュートを切ってカメラを元に戻す。
「……そもそも、どうしてあたしのプライベートアドレスを知ってるの?」
『シルヴィから聞いた』
「はあ、シルヴィアかぁ。まあそうだよね」
番号を教えたなら、せめて教えたっていう連絡ぐらいくれればいいのに、とミルシェは内心思いながら溜息を吐く。
「それであたしに何の用なの?」
『もうちょっとでシルヴィの誕生日があるから、プレゼントに何を渡せばいいか意見を聞きたくてな』
基臣の口から誕生日の言葉が出たことにミルシェは少し驚く、
「へえ、意外。てっきり、そんなこと興味ないと思ったのに」
『ネットを見てたらたまたま知っただけだ』
「ふーん」
『それで、女性が好きな物は俺には分からないからな。変な物を渡して誕生日を台無しにするのも悪いし』
「なるほど、それであたしに頼ってきたわけか」
『そういうことだ』
「そういうことなら今度の週末に商業エリアの噴水前で待ち合わせしよっか。そこなら色々プレゼントを選ぶにも都合がいいし」
『分かった』
その後、細かく待ち合わせの約束をして電話を切る。
「……って、普通に待ち合わせの約束したけどこれ傍から見たらデートだと思われるんじゃ」
少し前に基臣に抱っこされて恥ずかしがってたようにミルシェは色恋事に対して耐性がない。というよりも男性に対しての耐性があまり無い――もちろんアイドル活動をしているため、ファンとして接する分には特に問題ないのだが――というのが正しいだろう。
「あぁーもう!!考えたら負け負け!」
これ以上考えても仕方がないと思ったのか、ミルシェは気持ちを切り替えて週末に着ていく服を選ぶことにした。
――――――――――――――――――――――
ミルシェとの待ち合わせ当日。(あまりにも恰好が寂しすぎるということで)シルヴィアに選んでもらった服をそのまま着て、基臣は商業エリアの噴水広場で待っていた。
(少し早く来すぎたか……)
「おまたせー!」
声がする方向に基臣は顔を向けると、前とは違った雰囲気のミルシェがこちらにやってくる。
「その……似合って、る?」
いつものような丈の短いスカートとは違い、清楚な雰囲気を漂わせた薄ピンクのロングスカートを身に纏って恥ずかしそうにしながらミルシェは基臣を見る。綺麗に纏まったその服装は、可憐な容姿も相まって周囲からの注目を集める。
「……」
「……?どうしたの」
「ああ、いや……。前、尾行けてた時とはまるで雰囲気が違うから少し驚いただけだ。似合っている」
「っ……!そっか!ニヘヘ」
嬉しそうに微笑むミルシェを見て、前とは違った雰囲気に調子を狂わされそうになるがこのまま動かないわけにもいかないのでさっそくミルシェと一緒に歩き出す。
「とりあえず、プレゼントを探すか」
「あ、うん」
歩き出した二人はブティックや雑貨屋などを見て回り、良い物がないかを探すが実際はどれを選べばいいのか分からないのでミルシェに任せっきりに等しかった。
「シルヴィにならこれとかいいんじゃないかなぁ……ってうわ、高っ!」
「まあ買えないこともないが……」
「やめときなよ、高いの買うと向こうも今度返すときに気にするんだし」
「そういうものなのか」
「そういうものなの」
値段と相談しながら納得のできるプレゼントを買った基臣は手提げ袋を片手にミルシェと一緒に店を出る。
「手伝ってくれた礼だ、好きなだけ奢ろう」
「ほんと!」
奢るという言葉にミルシェは目を輝かせながら反応する。アイドルはやっているものの、まだルサールカを立ち上げて日も浅いこともありあまり財布事情は良くなかったミルシェにとって好きなだけ奢ってくれるという言葉は非常に魅力的だった。
「よし、じゃあ行こ行こ!」
「分かったからそう慌てるな…………ん?」
「ちょっと、押さないでよぉ!」
「しょうがねーだろぉ、こうしないと見えないんだからよぉ」
「明らかにバレてると思うけどねぇ、まったく……」
待ち合わせの時から視線を受け続けていたため、気づかれないように目だけ動かして視線を受けた方向をチラッと見ると、ルサールカのメンバーたちがそれぞれ変装した姿で尾行しているのが見えた。
ただし、変装といっても古い映画でも参考にしてきたのかベレー帽に新聞紙……etc、と明らかに周囲からは浮いている状態だった。
「相変わらずだな……」
「ん、どうかした?」
「いや、なんでもない。ほら、行くぞ」
「……?そう?」
――――――――――――――――――――――
「わぁー、おいしそう!」
「好きなだけ食え」
「それじゃお言葉に甘えて、っと」
テーブル一杯に埋め尽くされた料理を一心に食べていき、しばらくしてその全てを食べ終えたミルシェはデザートを頼もうとメニューを楽しそうに眺めている。
「何にしよっかなぁ、うーんマンゴープリンも捨てがたいしメロンパフェもありなんだけど……」
「ミルシェ」
「ん、何?」
「何か悩み事でもあるのか?」
メニューを見ていたその瞳は一瞬動揺からか少し泳ぐ。
「どうして分かったの?」
「人の感情を推し量るのが少し上手いだけだ。もしかしてと思ってたが……その感じだと図星の様だな」
「顔に出してないから大丈夫だと思ったんだけど……まいったなぁ」
少し困った顔をしながら流石に誤魔化せないかと思い、ミルシェは観念したように語り始める。
「最近さ、ライブをやっても思ったより人が集まらなくてね。それで少し自信失っちゃってさ……。デビューしたてのあたしたちがこんな事言うのは我儘なのかもしれないけど、本当にあたしらなんかが世界ナンバーワンなんかになれるのかなって思ってさ」
「…………」
「いっつもシルヴィアを超える超えるって言ってるけど、やっぱりあたしってシルヴィアを超える存在にはなれないのかな……って」
先ほどまでの快活な雰囲気とは打って変わって、後ろ向きな考えが頭の中を支配しているようだった。
その心中を感じ取った基臣は不器用ながらも慎重に言葉を選んで喋る。
「確かに人が集まらないっていうのはつらいかもな。自分に才能がないと思ってしまうかもしれない」
「……」
「ただ、そんな時こそ何を成したいのかを思い返すのと仲間に頼るのが大事なんじゃないのか」
「何を、成したいのか……?」
「何も目標を立てず突き進むよりは、目標があったほうが自分が頑張ってるんだって実感が湧く。俺も剣の道で行き詰った時はそうしてた、といっても俺は父を上回りたいってだけの単純な目標だったが。それに、お前にはグループの仲間がいる。困った時はグループの仲間を頼れる、それがシルヴィとの最大の違いだろう」
「そう……そっか」
「あまり参考にはならないと思うがな」
「ううん、少しは参考になったと思う。ありがと」
基臣のアドバイスがどこか頷ける部分があったのかさっきまでの暗い顔は少し消える。
「あー!クヨクヨしてもどうにもならないし練習あるのみだ!店員さん、メロンパフェ一つ!」
ファミレスでの食事も終わり外に出ると夕陽も沈む時間帯になる。プレゼント選びに付き合うだけだと思っていたが、ミルシェにとってこれからの自分たちを見定めるきっかけになったこともあって今日の時間は有意義なものになった。
「今日は助かった」
「こっちこそ相談に乗ってくれてありがと、じゃあね!」
「ああ」
基臣が界龍の方へと帰っていくのを見送った後、ミルシェはクインヴェールに帰りながら、今日の基臣との買い物のことを思い返す。
最初に会った時は無機質な奴だと思っていたが、今日一緒にいて基臣は不器用なだけなんだと理解する。ただ、不器用ではあるもののその中に僅かにだが優しさのようなものを感じた。
「はぁ……、シルヴィアが惚れるのも分かる気がするなぁ」
基臣と一緒にいると心を見透かされている気がした。しかし、その感覚は決して冷たさを含んだような嫌なものという訳ではなく、むしろ暖かい。そうミルシェは感じた。恐らくシルヴィアも同じ感想を基臣に対して持ったから惚れたんだろうと考える。
「ミールーシェ―!」
「うわっ!トゥーリア、それにみんなも!?」
「ほらほら、シルヴィアの男との密会はどうだったんだよー!」
「んもー、そういうのじゃないってば」
「その恰好で何もないっていうのは無理があると思うけどぉ」
「だから違うってば」
「はぁ、まぁ実らぬ恋だったとしても私は応援するよ」
「だーかーらー、違うってー!」
興奮するルサールカのメンバー達をたしなめ、ミルシェが誤解を解くのに一日かかることになったのはまた別の話。
――――――――――――――――――――――
「「「「「「シルヴィア、誕生日おめでとう」」」」」」
クラッカーを引くと派手な音と共にテープや紙吹雪が部屋の中に舞い散る。
「これでシルヴィアは13かー。いやーめでてーなー」
「はい、シルヴィア」
トゥーリアをミルシェはカバンから包装された箱を取り出す。
「これ、あたしからのプレゼント」
ミルシェに続くようにルサールカのメンバー達はプレゼントをシルヴィアに渡していく。
「わぁ……。ありがとね、みんな」
「これは俺からだ」
基臣は手に持った箱をシルヴィアへと渡す。
「こういう事はやったことがないから、大したものでは無いと思うが……まあ、あまり期待しないでくれると助かる」
差し出された包装された四角い箱にシルヴィアは頬が緩む。
「基臣くんがくれるものなら何でも嬉しいよ。ありがとう」
さっそく渡されたプレゼントを開けると、そこには簡素ながらも綺麗に小さな宝石があしらわれたブレスレットが入っていた。
(あ……)
『今日一番ラッキーなのは10月生まれのあなた!思ってもいないサプライズに遭遇するかも!ラッキーアイテムはブレスレットです』
箱から出てきたブレスレットに思わず朝、テレビで流れていた占いを思い出す。
(偶然だとは思うけど、ドキッとしちゃうな……)
「ありがとね、基臣君!」
「ああ」
「あ、そうだ!写真撮ろうよ写真!」
「いいなーそれ!モニカ、カメラ持ってたはずだろ」
「はいはーい、ちょっと待ってねー」
「ほら、基臣君もおいでよ」
「あ、おい……」
楽しそうにしながら手を引いてくるシルヴィに基臣自身も意図せず口を緩める。
「こういうのもたまには悪くないかもな」
「ん、何か言った?」
「いや、何でもない」
何のために生きているのかをまだ見つけれていない基臣だったが、少なくともこんな幸せな毎日が末永く続けばと願わずにはいられなかった。
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シルヴィア・リューネハイム
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オーフェリア・ランドルーフェン
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ミルシェ
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エルネスタ・キューネ
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黎沈華