学戦都市アスタリスクRTA 『星武祭を制し者』『孤毒を救う騎士』獲得ルート   作:ダイマダイソン

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アスタリスク16巻が11月末に発売されるみたいなので初投稿です。

新刊は1年以上ぶりなのでマジで最新刊楽しみです(抑えきれない興奮)
みんなも16巻、買おう!(ダイマ)


裏話26 決戦

『どうなのー、身体の調子は?』

 

「もう半分ぐらいは治癒してるわ」

 

『よかったー。一応基臣には聞かされてたけど、心配だったからね』

 

「心配無用よ。それよりも、私の力不足で決勝戦には参加できなかった事、悪かったわね」

 

『だいじょぶだって、沈華はそこでゆっくり療養してなよー。基臣と虎峰がなんとかしてくれるからー』

 

『え!? なんで他力本願なんですか! セシリーも頑張ってもらわないと困りますよ!』

 

『あははー』

 

 決勝戦が始まる前という緊張感があってもおかしくない空気にも関わらず、いつも通りの姿を見せてくれるメンバー達に少し微笑ましいものを感じる。

 

 後ろでセシリーと虎峰がじゃれ合っている中、基臣と沈雲も沈華に話しかける。

 

『まあこんな感じだから沈華は気にしないでベッドで応援してくれればいいさ』

 

『決勝に進めたのも、あの時お前が庇ってくれたおかげだ。お前の分まで戦ってくるから、吉報を期待していてくれ』

 

「ええ、そうさせてもらうわ」

 

 しばらくの間、沈華と基臣たちが談笑に花を咲かせていたが、ステージに出るように指示が出たため惜しみつつも会話を終わらせる。

 

『そろそろ時間のようだ』

 

「それじゃあ、直接力にはなれないけどここから応援させてもらうわ」

 

『ああ、行ってくる』

 

 そのまま通話を切ると、沈華は治療院のベッドに身を委ねる。

 

「…………頑張りなさいよ」

 

 離れた場所からではあるが、精いっぱいの応援をしようと考えながら決勝戦が放送される映像を眺める。まだ決勝戦が始まるまで時間があるが、シリウスドームの観客席は大いに盛り上がっているようだ。

 

 事前の勝敗予想では人数差のアドバンテージがあるからか若干チーム・ランスロットのほうが優勢とみる人が多い様子。しかし、チーム・黄龍も準決勝で基臣が見せたあの活躍が大きな衝撃を与えたのか期待が集まっているようだった。

 

「……あら?」

 

 そんな時、病室の外から聞き覚えのある声が届いてくる。

 

 その声の正体を知るために映像の音量を下げて耳を澄ませる。

 

 先ほどまで話していたチーム・黄龍の面々はもちろん、星露も生徒会長なのでシリウスドームにいる。

 

 となると、このタイミングで沈華と親交があり、わざわざ病室に来る人間は限られている。

 

「元気してるー? 沈華ちゃん」

 

「沈華、調子どう?」

 

「あなた達、どうしてここに」

 

 病室のドアから入ってきたのはエルネスタと変装した姿のミルシェ。

 

「ほら、決勝がもうちょっとで始まるじゃん」

 

「だから、どうせなら剣士君が大好きな者同士で見ようということですよー」

 

「なるほどね……。あれ、でもそれなら二人足りない計算だけど……」

 

「それはねー、よいしょっと」

 

 エルネスタがバッグからタブレットを取り出すと電源をつける。

 

『やっほー』

 

 すると、タブレットから投影された空間ウィンドウから、変装していない素のシルヴィアが映る。

 

「あぁ、シルヴィアはシリウスドームのほうにいるのね」

 

『私は生徒会長の仕事で閉会式とかに出席しないとだからねー。その代わりこうやって間接的にだけど参加させてもらうということで、よろしくねー』

 

 そう言うと思い出したかのようにシルヴィアはミルシェに話しかける。

 

『あ、それとミルシェちゃん。ペトラさんから伝言』

 

 シルヴィアはペトラに渡されたであろう紙を広げると、原文のまま読み上げる。

 

『ミルシェ、注目度が上がって忙しい時期なのに仕事を抜け出してくるとはいい度胸です。帰ってからしっかりとお話をしましょう……だって』

 

「ひぃっ!?」

 

「あなた何やってるのよ……」

 

「だ、だって基臣の決勝戦ぐらい生で見たいじゃん!」

 

「まあ、気持ちはわからないでもないけれど……」

 

 行動力だけは人一倍あるミルシェに呆れを交えて苦笑しつつ、あと一人来ていないことに気づく。

 

「あれ、オーフェリアは? 基臣の誕生日に来たくらいだからいると思ったのだけれど」

 

「あー、なんか断られちゃったんだよねー」

 

「断られた?」

 

「詳しい事情は知らないからなんとも言えないけどね。お! 剣士君が出てきたよ」

 

 テレビを見ると、基臣率いるチーム・黄龍がステージに出てくる様子が映し出される。ステージに出ると、相手であるチーム・ランスロットのリーダー、アーネストとも握手を交わしてそれぞれチームの元に戻る。

 

 そして、基臣のホルダーにある一つの武器に目を引かれる。

 

「わぁ……」

 

 誰が漏らした声か、基臣の取り出した得物に皆、思わず見入ってしまう。

 

 基臣が取り出した剣型の武装は儚さを感じさせながらも、どこか芯の通った気高さも感じさせる美しさを帯びている。放送の実況や解説もその剣の美しさに思わず熱が入ったように正体に関する考察を語っている。

 

「実況の人も言ってるけど、実際何なんだろあれ? 今まで見たことないから隠していた切り札とか?」

 

 部屋にいる殆どの者が彼の持つ剣について何なのか知らない様子だったが、一人だけ、エルネスタは不敵な笑みを浮かべて自慢するように話す。

 

「そっかー、みんなはまだ知らないんだねぇ」

 

「知らない? どういうことかしら?」

 

「あの剣、いつも彼が持ってるピューレちゃんだよ」

 

「え!? あれが、ピューレちゃん!?」

 

 基臣以外見ることが叶わなかったため、伝聞でしか知らなかったピューレの姿に皆驚きを覚える。

 

「実は昨日、修理を依頼されて一目見させてもらったけど本当にきれいだったんだよねぇー。そのついでにピューレちゃんの剣じゃない人間の姿も実体化してもらってたくさん堪能できたし」

 

『いいなぁー、ちょっと卑怯じゃないー?』

 

「まあまあ。剣士君に頼めばいくらでも触らせてくれるんじゃないかなー? 本人は若干嫌がるけど」

 

『それなら、私も今度会わせてもらうことにしよっかなー』

 

 ぐへへ、と顔をにやつかせながら手をワキワキさせるシルヴィアに、病室にいる三人はどこか呆れ顔だ。

 

 そんなシルヴィアを放っておいて、エルネスタは肝心の話題を振る。

 

「そういえばこの試合、どっちが勝つと思う?」

 

 そんなエルネスタの問いに対し──

 

「基臣に決まってるじゃん!」

 

『それ、私たちに聞くかなぁ……』

 

「まあ、私はチームメンバーなんだからうちが勝つとしか言いようがないわね」

 

 ──皆、口をそろえて基臣たちチーム・黄龍が勝つと予想した。

 

「そう言うに決まってるよねー、にゃはは」

 

 全員基臣を狙うライバル同士ではあるが、だからこそ考える事は一緒。負けるだろうと予想する者はいないだろう。基臣の事を好いているのだから。

 

「それに準決勝で見せた技があれば大丈夫でしょ!」

 

『うーん……そこが問題なんだよねぇ』

 

「…………? どうしてさ。あの状態の基臣ならまともに対抗できるの各学園の一位クラスぐらいじゃん。それに、あたしたちの時に見せたあの爆弾もあるし」

 

『たぶんだけど、あの技はそこまで長持ちしないと思うよ。持って数分ってところじゃないかな』

 

「え、本当なの沈華?」

 

「……鋭いわね。その通りよ」

 

『やっぱりそっか。ほんの少しだけ、違和感があったんだよね』

 

「それについてだけど、肉体の制御が追い付かなくて、一歩間違えれば自壊するような技だと基臣は言っていたわ。それに、制御できると確信を持って言えるのは3,4分だとも」

 

「それ、あたし達が聞いちゃっていいことなのー? 弱点バラしちゃってることになるけど」

 

「本人からも許可はもらってるから、別に問題ないわ。というよりも、それぐらいの弱点は王竜星武祭までに解消してみせると本人は豪語してたわよ」

 

『となると、今度の王竜星武祭の時点ではともかく、現時点でいかにその時間的制約を乗り切るかにかかってるかなー』

 

「まあ、別にあたしは贔屓してるからって理由だけでチーム・黄龍が勝つって思ったわけじゃあないんだけどねー」

 

 その言葉に沈華が反応する。

 

「……何か秘策があるの? 私はそれといった物は聞かされてないけど」

 

「んー……勘、かな?」

 

「勘って……」

 

「いやいやー、あたしの勘を舐めてもらっちゃ困りますよ。こういう勘は確実に的中するんだからさ」

 

 エルネスタの発言には信憑性が欠けるため、怪しむ沈華だったが、シルヴィアがそんな二人にも声をかける。

 

『ほら、二人とも。試合始まるよー』

 

 

 

 ……………………

 

 

 

 

 

 

 

「……おみ」

 

 

 

 

 

「も……おみ」

 

 

 

 

 

「基臣」

 

「ん?」

 

 虎峰の声に気づくと、アーネストがこちらの方へと歩み寄り右手を差し出してくるのに気づく。

 

 試合が開始するまでステージ上で精神統一していた基臣だったが、どうやら彼が近づくのに気づいていなかったようだ。少し間を置く形になったが基臣からも手を差し出す。

 

「人数が合わなくて公平な試合とは言えないが、良い試合にしよう」

 

「あぁ」

 

 握手だけすると、アーネストは爽やかな笑みを浮かべると自分のチームの元へと戻る。

 

 両者の交流を終えると、試合はまもなく始まる時間になり、基臣もピューレを取り出す。

 

 いつもより(まばゆ)く輝くその光が、彼女(ピューレ)の意気込みを物語るようだ。

 

 そして──

 

 

 

「《獅鷲星武祭(グリプス)》決勝戦、試合開始!」

 

「いきますわよ!」

 

 試合の開始を機械音声が告げると同時に、レティシアの能力である光の翼が何対も現われ、チーム・黄龍に対して牙を向く。

 

「散開しつつ作戦通りに動け!」

 

「はいよー」

 

 それぞれ、違う敵に向かって光翼を回避しながら走る。

 

 基臣が担当する相手はリーダーであるアーネスト。

 

「君とは一対一で戦いたいところだが」

 

「オレも混ぜてもらおうかい!」

 

 そして、ちょうど横槍を入れてきたケヴィンだった。

 

(ピューレ、やれるな)

 

(うん、任せて)

 

 刀身の純白の輝きがいっそう高まり、基臣の望むようなサイズにピューレが最適化される。

 

「誉崎流初伝、薙霞(なぎがすみ)

 

 左上から斜めへの切り払いで構えている盾ごとケヴィンを押しのけ、続く横への薙ぎ払いでアーネストへの胸元と攻撃する。

 

「くぅ……っ!!」

 

「……中々の力だね」

 

 基臣の攻撃を受けた二人はピューレの想像以上の火力に顔を(しか)める。

 

 ピューレの透明化を解いたことで本来の力を発揮できるようになったことが、ここまでの火力を実現していた。

 

 そこから数合の切りあいで互いに実力の度合いを測り取る。

 

 基臣がこの中で一番総合力があるため、一歩有利に動けている状況だが時折、アーネストたちが人数差のアドバンテージを利用し一進一退の攻防を繰り広げていた。

 

「急急如律令、勅!」

 

 幾度かの攻防を行っている内に、レティシアの相手をしていたセシリーが呪符を放って印を組む。

 

 すると上空から無数の、文字通り雷の雨がチーム・ランスロットへと降り注いだ。

 

 普通ならばセシリーの雷撃はそれほど狙いが定まらないため、回避は容易だった。しかし、特定座標に雷撃を落とすという基臣の指示によって正確性の問題は解決。それぞれが指定した座標を中心にして戦う事で雷撃の落下点への誘導に成功し、雷撃の一つ一つの威力の高さから戦局を変動させる力を生み出した。

 

「やべっ!?」

 

 巨大な盾を持っていることから他のメンバーに比べて一歩機動力が劣るケヴィンにとって、無数の束となって落ちてくるセシリーの雷撃は相性が良くない。

 

 すかさずケヴィンは盾を上空に掲げ耐え忍ぶが──

 

「なっ!? 正気かよ!」

 

 事前の作戦で雷撃の落下点を知る基臣は、雷撃の防御で動けないケヴィンを倒すべく最短で動き、その刃を振りかざそうとする。

 

「そんなに簡単にはやらせはしないよ、誉崎君」

 

「さすが、だな……!」

 

 そんな中、アーネストも落下点を予想して危険を回避しつつ、基臣を鍔迫り合いに持ち込む。そうしている間に雷撃も止まり、戦線復帰しったケヴィンがアーネストの補助に回る。

 

「ケヴィン、大丈夫かい」

 

「ああ……。助かった、アーニー」

 

 アーネストの割り込みにより、ケヴィンを早期に脱落させるチャンスを一つ取りこぼしてしまったが、それを差し引いても序盤の猛攻によってチーム・黄龍の士気は上がりに上がる。

 

「憤ッ!」

 

「ハァッ!!」

 

 そこからは基臣とアーネスト達、お互い一歩譲らぬ闘いを繰り広げる。基臣が攻撃の軌道を予測させない連撃を繰り返して相手を圧倒したかと思えば、今度はアーネストとケヴィンが人数的有利を用いて巧みに仕掛けてくる。

 

「さすがは《幽鬼の魔術師(ラダマンテュス)》だ! まったく攻撃の軌道が読めないとは、ねっ!」

 

 剣線を辿ってギリギリでガードしてくるケヴィンに、盾が生み出す死角から鋭い刺突を放ってくるアーネスト。息がぴったりなコンビの攻撃に舌を巻く。

 

「他の奴の相手をしたらどうだ? あまり状況が芳しくないやつがいるようだが」

 

 少しでもほかの事に意識を向けさせて隙を作ろうと煽るようにケヴィンに話しかける。

 

 その意識を反らすために話題にされていたレティシア。本来なら、もっと動けているはずの彼女だが、獅鷲星武祭の途中でライバルであるクローディアに校章を破壊されてからというもの、動きに固さが目立ち、この決勝でも思うように動けていない。

 

 その予兆はチーム・ランスロットの準決勝から見て取れた。そこで基臣は、普通の状態だったら荷が重かったであろう相手のレティシアをセシリーに任せることにした。結果は見事に作戦的中。全員の支援にも手を出せるぐらいの余裕がセシリーにはあるようだ。

 

「本当は援護をしたかったんだけど、君の方が恐ろしいからね!」

 

 そんなおしゃべりに興じている間に徐々にセシリー以外の場所でも戦局が変わりつつあった。

 

 ライオネルと相対している虎峰は、今のところ若干優勢のようだった。といっても、相手もそう簡単には校章は割らせないだろう。その証拠に徐々に虎峰を自身の間合いに引きずり込もうとしている様子が目に見えて分かる。

 

 沈雲はどうやら、上手いこと自身が優勢になる局面に持ち込めているようで、基臣の視線を感じて顔を向けてくるだけの余裕はあるようだった。

 

 それを確認した基臣は事前に確認した作戦を実行すべく懐に手を入れて沈雲に呼びかける。

 

「沈雲!」

 

「…………! 急急如律令、勅!」

 

「あれは……」

 

 基臣は、準々決勝の時にも見せたあの爆弾を取り出すと、空中へと放り投げる。放り投げられた物体は空中でしばらく浮遊すると独りでに飛翔し始める。しかも、その数は──

 

「四十……いや五十!?」

 

 遠隔誘導武装の操作できる数は操作する本人の空間認識能力の高さに左右される。遠隔誘導武装に関する見識がないチーム・ランスロットの中でも、基臣はせいぜい7,8個動かすのが限界だろうという見解を作戦会議の中で立てていた。

 

 それゆえに、とてつもない数の爆弾にチーム・ランスロットの中でも動揺が生まれる。

 

「冗談じゃない! こんな数捌ききれるかよ!」

 

 しかし、そんな動揺の中でアーネストだけは冷静に状況を解析する。

 

「いや……少なくとも半分以上は偽物だ」

 

「そうはいってもさすがに見分ける暇がないぜ、これは!」

 

 喋っている間にも爆弾は複雑な軌道を描きながらアーネスト達の元へと接近してくる。

 

 レティシアが光の翼でそのいくつかの迎撃を試みるが、そのすべてがダミー。その間に懐まで詰め寄った爆弾は眩い光を発しながら爆発をまき散らす。

 

「キャッ!」

 

 凄まじい爆発を起こし、それに当たったレティシアには少なくないダメージが入る。

 

「……うっとうしいですわね、これは!」

 

 その間にも残る爆弾はそれぞれチーム・ランスロットのメンバーたちへと向かっていく。

 

「お前には早々に退場してもらおうか」

 

 その中でも数ある遠隔操作爆弾の殆どがケヴィンへと差し向けられる。

 

「グッ……!」

 

 蜂のように変幻自在な動きで盾を回避し、右足、左腕、腹部……と次々に当たって爆発していく。

 

「うっ……!!」

 

 両足に爆発を浴びてしまったケヴィンは崩れ落ちるように膝から地面に倒れていく。そして──

 

「ケヴィン・ホルスト、校章破壊(バッジブロークン)

 

 そのままがら空きの身体に叩き込まれた爆発は、ケヴィンの校章を破壊した。

 

「ライオネル! ケヴィンを頼む!」

 

「…………! 分かった」

 

 気絶したケヴィンを背負ってステージ端まで向かうライオネルを横目に見ながら、アーネストへと改めて剣を構える。

 

「これでようやく一対一(サシ)でやりあえるな」

 

「ああ、そうだね」

 

 互いに交わした言葉は少ない。

 

 

 

「やるか」

 

 

 

「やろうか」

 

 

 

「誉崎流皆伝、神依(かみより)

 

 その言葉と同時に 先ほどとは比べ物にもならないほどの星辰力が練り上げられる。

 

「……素晴らしいッ!」

 

 劇的な基臣の変化に対し、アーネストの心は歓喜に打ち震える。

 

「行くぞ」

 

 先に仕掛けるのは基臣からだった。一撃一撃が今までと比べて速く、そして鋭さや重みも増していた。

 

「フンッッ!!」

 

 先ほどまでの腹の探り合いのような剣戟の応酬はどこへ行ったのか、繰り広げられているのは力と力のぶつかり合い。

 

 剣戟は幾度も積み重ねられ、一撃ごとにその鋭さが増していく。完璧なタイミングでセシリーによる援護も入るが、流石にガラードワースの序列一位に座しているアーネスト相手には上手いこと回避されてしまう。

 

「前見た時よりも活き活きとしている。ミス・リューネハイムに界龍のチームメンバー……仲間たちに恵まれているんだろうね」

 

「ああ、俺には過ぎた友だ」

 

「だけど、君はまだ縛られている。見えない強いしがらみに」

 

「……しがらみ」

 

「それが、僕たちと同じような生まれから来るものかもしれない……だが!」

 

「……っっ!! ぐ……ッッ!」

 

「そのしがらみは、御さなければ時として自分を破滅に追い込む。君は自由としがらみ、どちらに傾くのかな?」

 

「……っ、はぁ……っ」

 

「できることならば……もっと見せてくれ、君の自由な剣技を!」

 

(ここに来て更にその強さを昇華させている。……いや、これが本来の戦い方なのか)

 

 荒々しさを感じる剣技だが、先ほどまでのそれよりも明らかに厄介極まりない。

 

(ならば、こちらもそのまま迎え撃つ)

 

「もらった!!」

 

 両手剣を使うにはあまりにも不利な間合いにまで詰め寄り、身体の捻りを利用して白濾の魔剣(レイ=グレムス)で基臣の胸にある校章を切り裂かんとしていた、その時だった。

 

「誉崎流皆伝が二、荒之王(すさのお)!」

 

 必中と思われた攻撃を寸での所で受け止められてのカウンター。

 

 至近距離だったため強引に白濾の魔剣(レイ=グレムス)を引っ込めてカウンターを受け止めるが、暴風が吹き荒れたかのように荒々しい攻撃の余波がアーネストを襲い、攻撃を受けた剣を持つ手が麻痺するような痺れに見舞われる。

 

「っ……! 今のは中々効いたよ……」

 

(今確実に攻撃を当てれると確信できたのに、彼はそれを遥かに上回る速度でカウンターをしてきたのか……! しかも今の力、とても片手剣のそれとは思えない)

 

 改めて基臣の姿を見る。先ほどのアーネストの挑発に当てられたのかは定かではないが、明らかに感情の揺れ動き方が強くなっている。

 

 この時点でも六学園最強の一角を名乗るにふさわしい実力。だが──

 

(ここに来て、まだ強くなり続けるのか……君は……)

 

「ふ……。フフフ……ハハハハハハハハ!!」

 

「……今、何か可笑(おか)しな事を言ったか?」

 

 変貌。

 

 先ほどまでとはまるで雰囲気が変わったかのようなアーネストの姿に基臣は不気味な何かを感じ取る。

 

「いや失礼。久しぶりに戦いを本心から楽しめる相手に出会えて嬉しくなってね。さて、続けようか」

 

 白濾の魔剣(レイ=グレムス)を構えなおして待ちの姿勢を取るアーネストに対し、爆弾を放り脱力の姿勢を取る基臣。

 

「誉崎流皆伝が一、染霞(そめがすみ)

 

 基臣の姿を注視していたはずのアーネストだったが、いつの間にか雲隠れしたかのようにその姿を見失い、残ったのは爆弾だけ。

 

「さあどう来るっ!」

 

 そんな状況でも(アーネスト)は闘争から生を感じ、そして楽しむ。

 

 至ってシンプル。至極単純な話だ。

 

 相手の思惑、そして動きを看破できなければ負け、看破すれば勝ち。

 

「捉えたッ!」

 

 ギリギリで基臣の攻撃を読み切り、つば鍔迫り合いまで持ち込むアーネスト。

 

 読み勝った、そう思っていたアーネストだが基臣はそこまで読んでいたかのように退かず両手剣相手に不利であるはずの鍔迫り合いを続行する。

 

(何を、考えている……?)

 

「……生憎俺は勝ち方にこだわる人間じゃない。恨むなよ」

 

「…………? 何を…………っ!?」

 

 言葉の真意を掴めず話を聞こうと思った瞬間、視界(自分の世界)は眩い光に覆われた。

 

 そんな光とともに膨大な熱量がアーネストの身体を焼き尽くさんと包み込む。

 

「うッッ!!」

 

 そんな熱波の中、せめてと校章を守り続ける。

 

「誉崎流中伝、断蒼(だんそう)!」

 

 不意打ちで校章以外の守りが疎かになっているアーネストを、立ち込める爆煙の中、上下の二連撃で断ち切る。

 

「…………ぬ」

 

 だが、校章を割ったような感触は基臣の手には感じなかった。

 

 煙が晴れると、アーネストは一連の攻撃から校章を守ったものの四肢にダメージを受けており、片や基臣はダメージを一切受けていなかった。

 

「……まさか、そんな器用な真似ができるなんてね」

 

「お前のそれではガードするには不十分だろう」

 

 再び懐から爆弾を12個キッカリ取り出すと、宙へと浮かべる。

 

「これから、俺はこれを繰り返すが……宣言しよう。お前をあと2回同じ手を使って倒す」

 

「…………言ってくれるね」

 

 その宣言にアーネストは冷や汗をかく。事実、今受けた攻撃をそう何回も受けることはできないと自身でも理解していた。

 

「まだまだストックはある。まあ、2回で終わるだろうが存分に味わってくれ」

 

 そうして再び同じ動作を繰り返す基臣。

 

「誉崎流皆伝が一、染霞(そめがすみ)

 

 再び同じ手を以て攻略してくる基臣に、アーネストもそう容易に。

 

(詰められるくらいならば!)

 

 できる限り、距離を離そうと動く。

 

「急急如律令、勅!」

 

 しかし、その動きも想定内とばかりに遠くにいた沈雲が星仙術を発動させる。

 

(星仙術でダミーを……。なるほど、まるで隙がないな)

 

 まともに受けても確実にダメージを受け、距離を取ろうとするとダミーの爆弾による視覚的圧力が待っている。

 

 アーネストの持っている白濾の魔剣(レイ=グレムス)はその性質上、対集団での強みは殆どない。それはこの状況にも適応される。50近くの爆弾の内から本物の12個すべてを見極め、切りきらないといけない。一個たりとも切り損ねるものなら身を焼き尽くすような高威力の爆発が襲ってくるだろう。

 

 そんな不利な状況だったが、自然と笑いがこみあげてくる。

 

 いつぶりだろうか、こんなに血沸き踊るような戦いは。

 

 そして自らがここまでの窮地に陥らされた戦いは。

 

 今まで滅私の精神で己の願望を律してきていたアーネストだが、目の前にいる存在にその心を揺れ動かされる。

 

 環境によって縛られてしまった己のしがらみを、周りにいる友人の存在によって少しづつだが壊していき、自由を手に入れていく。目の前にいるのはまさに自分が羨望するそんな存在だった。

 

 そんな存在だからこそ全身全霊を以て戦う価値がある。

 

(こうなるとジリ貧だ。それならばいっそのこと!)

 

 迫ってくる大量の爆弾に敢えてアーネストは正面から迎え撃つ。気配を感じ取り、できる限りの爆弾を幾重もの連撃を以て対抗する。

 

 いくつかの爆弾が着弾するが、四肢には当てられることはなかった。

 

「よし……!」

 

 再び爆弾を基臣が放っている隙に、あらんばかりの膂力を以て組討術で基臣を組み伏せようとする。

 

 立っているならまだしも、倒れていたら操作している本人である基臣もガードできず爆発に巻き込まれるため躊躇するだろう。そういう考えでの行動だったが。

 

(なんだこの力は……!? それに押しても引いてもビクともしない)

 

「逃がさん」

 

「くっ!」

 

 山のようにビクとも動かないため基臣から離れようとするが、思い切りしがみついてきているため、逃れることができない。もがいている間にも展開し終えていた爆弾はアーネストの元へと殺到する。

 

「あっ」

 

 いつの間にか目と鼻の先にあった爆弾の起爆する光が見えたその瞬間、基臣による拘束は解かれていた。もちろん、次の瞬間には基臣はピューレの能力ですでに完全な防御態勢をとっている。

 

(…………参ったね、これは)

 

 どれだけ抵抗しても、やって来た宣言通りの結末にさしものアーネストも苦笑する。

 

 最後の抵抗とばかりに白濾の魔剣(レイ=グレムス)でガードをするが、それも中途半端だったため爆風で体勢を崩すだけの結果になった。

 

「終わりだ、アーネスト」

 

 爆風の中、その言葉とともに基臣は校章目掛けて刃を振るった。

 

「アーネスト・フェアクロフ、校章破壊(バッジブロークン)

 

「勝者! チーム・黄龍(ファンロン)!」

 

 リーダーであるアーネストの校章が破壊され、決勝戦の勝者を告げる機械音声が試合の終了をアナウンスした。

 

 

 

「…………や、やった!」

 

「やった~~!!」

 

 普段は冷静な言動を心がける虎峰も嬉しさが勝ったのか、衆目の中でセシリーと抱き合って喜びをあらわにする。

 

 そんな二人とは別に基臣と沈雲も互いに勝利の喜びを分かち合う。

 

「これで沈華にいい報告ができるね」

 

「ああ、勝ててよかった。特にこの決勝戦はお前の星仙術のおかげだ」

 

「さすがに今まで良いところがなかったからね。これぐらいはしないと僕の面目が立たないさ」

 

「そうか」

 

 これで二つ目の優勝を達成した基臣。残るは一対一の個人戦である王竜星武祭を残すだけとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 ……………………

 

 

 

 

 

 

 試合の後行われた表彰式も終わり、待機室に向かうため廊下を歩いていると通路の向こう側からアーネストたち、チーム・ランスロット面々がやってくる。

 

「まさか、終始ずっと圧倒されるとはね。完敗だよ」

 

「アーネスト……。白濾の魔剣(レイ=グレムス)には見限られなかったのか?」

 

 試合後、基臣が唯一懸念していた事がアーネストが白濾の魔剣から使い手として不適格であると愛想をつかされるのではないかという事だった。アーネストレベルの剣の使い手が白濾の魔剣を失ってしまうのはこれからの事を考えるともったいない。そう思い、そんな事にならないよう試合中も注意していたが、そこら辺の裁量は白濾の魔剣が決めることだ。

 

「あぁ、おかげ様でね。といっても、彼も君との戦いを楽しんでいたようだからね。厳格なルールを課してくるはずの彼が、そのルールからの逸脱行為を大目に見てくれるなんて初めての経験だ」

 

「まったく。私からしてみれば、アーネストがいつ暴走するか気が気ではありませんでしたわ」

 

「ははは、まあ今回の試合で大分すっきりできたことだし、そう何度もこんな事をするつもりはないさ」

 

「勘弁してほしいものですわ。……それと」

 

 セシリーに顔を向けてキッと睨むと、指を向けて宣戦布告とばかりに声高らかに宣言する。

 

「今回は散々辛酸を舐めさせられましたが、次は絶対に私があなたを上回って見せますわ!」

 

 そんなレティシアの宣言だったが、少し面倒くさそうな顔をしながらセシリーは頭を掻く。

 

「いやー、さすがに次は勘弁かなぁ」

 

「なんですって!」

 

「まあまあ、それぐらいにしておこうかレティシア。今回の勝負、負けは負けだ。僕たちがどうこう言っても仕方がない」

 

「アーネスト、そういうあなたこそ不甲斐ない試合をしたのではなくて! あの時点で私はまだ負けていませんでしたのよ!」

 

「かなりズバズバ言うね……」

 

 レティシアがアーネストに対して苦言を呈している間に、ケヴィンが基臣に話してかけてきた。

 

「オレも君には随分と策に嵌められてしまったなー。……だけど、次はそうは簡単にやらせない。いつかまた戦える日が来た時には覚悟していてくれよ」

 

「そう遠くない内にお前と再戦できる機会もあるだろう。楽しみにしている」

 

「…………? それはどういう意味で──」

 

「ほら、あまり彼らを引き留めておくのもよろしくない。会話するだけならまたいつでもできるさ」

 

 各々好き放題に喋っているのをアーネストが止める。

 

「それじゃあ、そろそろお暇させてもらうけど、その前に言い忘れてた事を一つ」

 

 

 

「チーム・黄龍の諸君、優勝おめでとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アーネストたちとの会話の後、待機室に戻るとソファに座っていた星露が楽しそうにしながら茶を飲んでいた。

 

「よくやってくれたのう、皆の者」

 

「星露、いたのか」

 

「まあ、ねぎらいの言葉の一つぐらいは掛けてやらなければいかんと思っての」

 

「そういえば、暁彗はどうしたんだ。いつもなら傍にいるんじゃないのか」

 

「あやつなら、界龍で必死に己を磨きなおしておるよ。おぬしとの闘いから何か感じ取るものがあったんじゃろうて」

 

「そうか」

 

「まあ、それはともかくじゃ」

 

 茶を入れた器を置き、基臣たちに向き直る。

 

「よくやってくれた。今回、チーム・黄龍をおぬしたちに任せてよかったわい」

 

「はっ! ありがたきお言葉」

 

 虎峰たちは膝をついて、星露からの言葉を聞くが──

 

「相変わらず我が道を行くって感じですね、基臣……」

 

 虎峰たちと同じようにはせず、座って星露と同じ茶を飲んでいる基臣に呆れ半分の感情を送るチームメンバーたち。だが、それを意に介さず座ったままだった。

 

「他の奴に強制するつもりはないが、俺はそこまで堅苦しい関係は好きじゃない」

 

「ま、それは儂も同感じゃの。今更へりくだられても、むず痒いだけじゃわ」

 

「……はぁ。師父の世話ばっかりしてるので忘れてましたけど、基臣も大概問題児ですよね」

 

 そういうことなら、とばかりに虎峰たちも椅子に座って師父の話を聞くことにする。

 

「まあ、基臣は言わんでも勝手に望みは叶えるじゃろうが……他の者たちもしっかりと考えて叶えたい願いを見つける事じゃ。おぬしらの場合、力を試す目的で出場した故、望みなどあまり真剣に考えてなかったじゃろうからな」

 

「承知しました」

 

 久しぶりにまともな事を言うな……、と虎峰は思ったがもちろん口には出さない。そんな事を言おうものなら腹いせに任せられる仕事が倍増することは間違いない。

 

「それで表彰式も終わったことじゃが、どうする? おぬしらは獅鷲星武祭終了後のレセプションには参加せんじゃろうから、界龍まで送ってやるが」

 

「いや、沈華のいる治療院まで送ってくれ。チームメンバーであるあいつに、一番に優勝を報告したい」

 

「そうだねー、とりあえず沈華の様子も見たいし」

 

 基臣やセシリーの言葉に星露は頷く。

 

「うむ、それなら早速送ることにするかの。ほれ」

 

 星露が印を組むと、空間が切り裂かれその場所に穴が生じる。

 

「治療院の近くにまでつなげておいたわい。行って優勝の報告でもして来るとええわ」

 

「助かった星露。それじゃあな」

 

 そう言い残して空間の裂け目に入り込んでいった基臣たちを見送ると再び椅子に座る。

 

 その瞳は獰猛な獅子のように爛々と輝いている。身体の(うず)きを抑えながら星露は笑う。

 

 

 

「若い芽がここまで伸びるとはのぉ。ククク……楽しくなってきおったわ」

 

 

 

 ……………………

 

 

 チーム・黄龍の優勝が決まった日の夕方。

 

 レヴォルフの生徒会長であるディルクとオーフェリアが生徒会室で向き合っていた。

 

「誉崎のやつとは接触せず、おとなしくしているようだな」

 

「……それで何の用かしら」

 

「……ちっ」

 

 なんとも思っていないようなオーフェリアの反応に少し苛立ちを覚えるが、ダラダラ話をするのも好きではないディルクは本題を話す。

 

「今度の王竜星武祭(リンドブルス)、俺が用意する純星煌式武装を使え」

 

 純星煌式武装を使う。今の時点でも優勝する目算が立っているはずのオーフェリアにそれを指示することが意味することは──

 

「このままでは、私が負ける可能性があるということかしら」

 

「そういうことだ。誉崎の奴は王竜星武祭に間違いなく参加してくる。あの野郎の今の状態から見るに、確実に勝利するための保険が必要だ。忌々しいことだがな」

 

 確かに今の基臣の成長速度は想定を上回るものだという事はオーフェリアにも理解できる。だが、それでもあくまでその成長は今の状態では一般の域を越えることはない……そう踏んでいるが、不安要素を作りたくないのだろう。素直にディルクの指示に従うことにする。

 

「……分かったわ」

 

 

 

 長く話をするつもりもないのか、オーフェリアは背を向け立ち去った。

 

「ちっ、どいつもこいつも俺の計算外の行動をしやがるが……一番の異物は誉崎の野郎だ」

 

 一度だけ六花園会議でその姿を見たことがあったが、まるで考えが読めなかった。少し挑発して探りを入れたが、何の反応を示すこともなくそっけなく返すだけ。徹頭徹尾ディルクの思うようにはさせないことが見え透いて苛立ちが増す。

 

「王竜星武祭までにきっちりと潰しておきたいところだが……ちっ、仕方ねぇ。足がつかない程度にあの野郎に支援してやるか」

 

 そういってディルクが端末を開くと受信したメッセージの中に書かれてあったのは、12月24日。つまり、クリスマスイヴに基臣を抹殺する旨だった。

 

 

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