学戦都市アスタリスクRTA 『星武祭を制し者』『孤毒を救う騎士』獲得ルート   作:ダイマダイソン

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ベッドでぬくぬくしたい気分なので初投稿です。


裏話29-① 過ちはまた繰り返される

 クリスマス、それはカップルたちにとって特別な日。

 

 鍛錬バカが多い界龍(ジェロン)でもさすがに今日ばかりは別のようで、恋人同士や友達同士でなど、各々の楽しみ方でクリスマスを過ごしている。

 

 それは界龍きっての鍛錬バカである基臣にも当てはまり、シルヴィアとクリスマスを一緒に過ごすという約束を結んでいた。

 

 アイドルにとって繁忙期でもあろうクリスマスのはずだが、シルヴィアも随分と駄々をこねたようで、なんとかペトラから休暇を貰うことに成功したことを嬉しそうに基臣に話していた。

 

「……時間だな。そろそろ行くか」

 

 時間を確認し少し早めに着くために界龍の正門から出ようとする基臣だったが── 

 

「基臣」

 

 ちょんちょん、と可愛らしく基臣の肩を叩く手の感触に気づいて振り返ると、いつもの制服とは装いを変えて暖かな冬服に身を包んだ沈華が立っている。

 

「ん、沈華か。どうかしたのか」

 

「いえ、どうかしたという程でも無いのだけれど……」

 

 何が恥ずかしいのか視線を合わせずに話しかける。

 

「暇だったらクリスマス一緒にどうかしら」

 

「…………あー、今日はシルヴィと約束してるんでな、すまんがまた今度だ」

 

 基臣の返答に沈華はシュンとした様子で肩を落とす。

 

「……そうなの、ね」

 

「本当はもう少し話をしたいところだがシルヴィを待たせてる。もう行くぞ」

 

「……ええ、分かったわ」

 

 そのまま消えて行ってしまった基臣を見送ると、一人ため息を吐く。

 

「……仕方ない、かしらね。今まで忙しくて時間が取れなかったとはいえ、当日に予定を聞いても頷くわけ──」

 

「──やれやれじゃのぉ。せっかくのクリスマスというのに、基臣を歌姫殿に取られておるではないか」

 

「し、師父!? いつから私の後ろでっ!」

 

「最初からじゃよ。それにしても、相も変わらずお主もあやつの事となると心が乱れるのう。少しは鍛えんと、あやつに仕掛けるところで仕掛けれなくなるぞえ」

 

「余計なお世話ですっ!」

 

 恥ずかしくなってプイッと顔を背ける沈華に、星露はやれやれとばかりに首を振る。そんな星露の様子に腹を立てた沈華はキッと睨みつけると服の襟を掴みあげる。

 

「……こうなったら今日は、師父には私の憂さ晴らしに付き合ってもらいますから。覚悟してくださいよ」

 

「あ、今日は私用があるんじゃった。儂はこれで──」

 

「つべこべ言わず付き合ってください!」

 

「いやじゃ~~~~~!!」

 

 

 

 ──その日、星露が見た目通りの情けない声を上げながら沈華に引きずられていく姿が多くの学生の間で目撃された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「集合場所はここか……ん?」

 

 時間に余裕を持って待ち合わせ場所に着いた基臣。すると、いつもは時間丁度に着くシルヴィアにしては珍しく基臣よりも先に待ち合わせの場所で楽しそうにしながら待っていた。

 

(シルヴィが先に待っているのか、珍しいな)

 

「すまない、待たせたな」

 

「あ、基臣君。ううん、今来たところだから」

 

 基臣に気づくと微笑みながら小さく手を振ったシルヴィア。今来たところだと話すシルヴィアだが、明らかに待ってから随分と時間が経っていることを伺わせる。

 

「……嘘つけ、大分前から待っていたな」

 

「ふふっ、ばれちゃったかー。こういうセリフに少し憧れてたからちょっとね」

 

「そんなものか」

 

「そんなものだよ。ほら、行こ」

 

 シルヴィアに促され基臣は手を握り歩き出す。だが、基臣達が向かうのはクリスマスの装いに包まれた商業エリアではない。

 

 というのも、シルヴィアの要望で先日再開発エリアの戦闘があった場所を散策することに決めていた。今は、彼女の能力で《ヴァルダ=ヴァオス》を探知しようと試みているところだった。

 

「ここでウルス……《ヴァルダ=ヴァオス》と戦闘になったんだっけ?」

 

「あぁ、その時に俺を金枝篇同盟に勧誘してきた。もちろん断ったがな」

 

 周囲を見渡すが、ビルの壁が一部損壊した事以外に手がかりとなるような物は見つからない。

 

 その時、ちょうど探知能力による結果が示されるがヴァルダがどこにいるかは不鮮明で参考にならない。

 

「痕跡は全く残ってないね。……何かしらの手がかりが残ってたらと思ったんだけど」

 

 いつまで経ってもウルスラに繋がる物が見つからない事実に、肩を落として残念そうにするシルヴィア。手がかりが掴めそうで掴めない、そのもどかしさだけが彼女に残る。

 

「……俺に接触を図ってきたという事は、今後も何かしらのタイミングで遭遇する可能性はあるだろう。何かあったらお前に伝えるし、できる事なら《ヴァルダ=ヴァオス》を捕らえる。だからそう気を落とすな」

 

「……うん、ありがと」

 

 励ましが少しは効いたのか、シルヴィアは元気なさそうにではあるがニコリと笑う。

 

「一通りは捜索した事だ、そろそろ昼ご飯にしよう。シルヴィは何がいいんだ?」

 

「そうだねー、何にしよっかなー」

 

 意識したわけでもないが、話しながら自然に手を繋ぐ。すると、彼女は嬉しそうに微笑む。

 

(俺にはもったいないやつだ……本当に……)

 

 今まで、父からの虐待紛いの鍛錬によるトラウマで基臣は自分を偽ってきた。本当の自分を見せてしまえば皆から距離を置かれるのではないか、そう思ったためアスタリスクに来てからもずっと本当の自分を隠したままだった。

 

 でも、本当はシルヴィア達がそんなことを気にする人間ではないことは理解していた。

 

 だから、曝け出したかった。今まで隠していた本当の自分を。

 

「なあ、シルヴィ」

 

「ん? どうかした?」

 

 このまま偽るのが苦しくて、どうしてもその事を言わなくてはいけない気がして──

 

「お前に言うことが──」

 

 ──その言葉は、周りの建物から物音が聞こえて口にすることが出来なかった。

 

「ちっ、誰だ!」

 

 周囲の建物の2,3階ほどの高さから基臣達を見下ろす黒装束を被った集団。その数は……

 

「────なっ!?」

 

 十、二十……少なく見積もっても百以上に昇る数が周囲を取り囲んでいた。

 

「……こいつら全員敵なのか」

 

(どうする……俺だけならまだしも、シルヴィがついてこれるか……む?)

 

 後ろに控えさせているシルヴィアに視線を向けると、彼女の足元がフラフラとしておぼつかなくなっていた。

 

「あ、れ……あたまがふわふわ、って……ぁ、っ」

 

「シルヴィ! おい、シルヴィ! …………クソッ!!」

 

 いきなり倒れて気絶してしまったシルヴィ。揺さぶっても起きない彼女に思わず悪態を吐く。周りにいる黒装束の者たちによる影響でないことは理解できるだけに、彼女の突然の変調に困惑する。

 

(とにかく逃げなければ)

 

「誉崎流皆伝、神依(かみより)

 

 身体能力を逃げる事だけに特化させ、逃亡を図る。それを追うように黒装束の集団も基臣を追いかける。

 

 そんな命がけの追いかけっこが始まった。──いや、始まってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソっ! しつこすぎるぞ、こいつら!」

 

 敵との接触から時間にして2,3時間ほど。依然として黒装束の集団との追いかけっこは続いている。

 

 誉崎流皆伝の制御ができるようになったと言っても、それが長時間持続できるというわけではない。そのため徐々に基臣の体力は削られていく。肩で息をするようになり、シルヴィを抱えている腕も微かに震えている。

 

 ピューレを使って探知能力でどこから再開発エリアを抜けれるかを探しているが、巧妙に隠しているようで見つけることが出来ていない。

 

(見つけたよ、モトオミ!)

 

 そんな中、ようやくピューレが探知能力でこの場所を抜ける隙を見つけ出す。精神的にも疲弊していた基臣にとっては朗報ともいえたその情報に再び士気を上げる。

 

「そうか、場所は?」

 

(ここから北東に500メートル先の場所が認識阻害の結界の穴になってる!)

 

「分かった!」

 

 急いで駆け抜ける基臣だったが、ちょうど結界の穴に相当する箇所には立ちふさがるように二人の黒装束が立っている。まともに相手にするのは得策ではないと思い、基臣は逃げる事だけを考える。

 

「誉崎流皆伝、染霞(そめがすみ)!」

 

 本来、染霞は攻撃の技ではなく回避としての技術の側面が強い。

 

 染霞の、殺気の瞬時の放出と消失による気配絶ちの技術は想像以上に相手の居所を正確に掴むことを困難にする。それをたまたま攻撃に転用しているだけで、今回のように使用者が逃げ一択の行動をしている場合は相手はそれを補足する事は普通ならばできない。

 

 だが──

 

「誉崎流奧伝・(あらた)絶界(たちのさかい)

 

「…………なっ!?」

 

 そんな絶対回避の技をあっさりと看破され攻撃を受けてしまう。

 

(何なんだ今の技……! どうやって俺を捉えたんだ)

 

 目の前にいる黒装束を相手に正面突破するのは分が悪すぎると悟り、黒装束とは真逆の方向へと逃亡する。

 

「やれ」

 

「承知しました」

 

 片方の黒装束の人物の指示に、もう片方の黒装束は青鳴の魔剣(ウォーレ=ザイン)を瞬間的に二回空振らせる。

 

「くぅ……っ!」

 

 そんな青鳴の魔剣から放たれた防御不可避の空間斬撃は基臣の脇腹を掠める。思わぬ痛手に顔を歪めるが足を止めず逃げ続ける。

 

「流石にそう甘くないか」

 

「逃げられましたがどういたしましょう。追いますかな」

 

「部下にやらせておけ。俺たちは唯一抜け穴になってるこの場所だけは確実に死守する」

 

「承知しました」

 

 

 

 

 

 ……………………

 

 

 

 

 

「誉崎流奧伝、天地開闢(てんちかいびゃく)!」

 

 黒装束の者たちから一斉に放たれる銃撃を全て防ぎきる。

 

「く、っ!」

 

 しかし、遠距離からの攻撃に対応しようとすると、その間に間合いを詰めてきた敵が基臣に短剣型の煌式武装を突き刺す。

 

「がっ、くふ……ッ!」

 

 抜いてから止血する暇も無いと思い腕に突き刺さった煌式武装をそのままにして、刺客を足で蹴り飛ばし吹き飛んだ相手を一瞥することもなく、煙幕を起動して逃げに徹する。

 

 誰にも気づかれることの無いよう音を立てず、気配も絶つ。息も絶え絶えなこの状況でそれを実行に移すのは至難の業であると言ってもいい。だが、命がけの状況に陥ってる基臣はそれを意地でもとばかりに成功させる。

 

「はぁ、っ……はぁ……っ。撒いたか」

 

 抱えていたシルヴィアに気をつけながら崩れるように壁に寄り掛かって座る。彼女を床に置き、腹に刺さっている煌式武装を抜いて止血する。

 

「――っふぅ…………」

 

 止血をし終え、ふと気になって顔を上げると、空が濃紺に満たされている。

 

「もう完全に夜だな……」

 

 既に敵の襲撃が始まってから9時間経過。最低限の動きでなんとか凌いできたが肉体的疲労が限界に達しつつあり、潰しても潰しても湧いてくる敵に嫌気が差してきつつあった。

 

「一体いつまで続くんだこれは」

 

 既に時間は20時ちょうど。本来なら帰ってこない事を怪しまれる時間帯かもしれないが、丁度クリスマスという事もあって二人とも外泊届を提出済み。今頃楽しくどこかで過ごしているだろうと思われて、気にされることも無い。

 

「出ようと思っても出れない。万事休すか……」

 

 何度も再開発エリアから脱出しようと試みているが、その目論見は悉く抜け穴で構える二人組のせいで失敗する。何度試しても抜け出すことが出来ない事実が、じわりじわりと基臣の神経を徐々にすり減らしていた。

 

「すぅ……すぅ……」

 

 そんな中、寝息を立てて腕の中にいるシルヴィアの頭を優しく撫でる。

 

「何があってもシルヴィだけは……」

 

「ん……っ、もと、おみくん……?」

 

「…………! シルヴィ! 起きたのか!」

 

 かれこれ9時間は眠りに落ちていたために心配していたが、様子を見るにどうやら何事もなかったようだった。どこか呆けた様子でジッと見つめたままでいるシルヴィアだが、追いかけられている立場なので基臣にはそんなことを気にする余裕もない。

 

「ねぇ、もとおみくん」

 

「シルヴィ、今はあまり時間がない。質問は後にしろ」

 

「どうして他の女の子の事ばかり見るの」

 

「……シルヴィ?」

 

 ゾッとするような声音に周囲を警戒していた視線をシルヴィアに合わせる。すると、彼女の綺麗な薄紫の瞳が、どこか黒く濁っているように見えた。

 

 シルヴィアであってシルヴィアではない、そんな違和感を抱える。

 

(嫌な予感が────ッ!?)

 

 長時間の戦闘で集中力が欠けていた基臣。

 

 ──気づけば基臣の腹部を先ほど抜いたばかりの煌式武装が刺し貫いていた。

 

「な、んで、おれを……」

 

「わたしだけ見て。もう他の子なんて目に入れずに私だけ……」

 

「く、そ……。いしきが……」

 

 肉体的疲労に加え、腹部からの出血で身体に力が入らなくなっていく。ぎりぎりの所で踏ん張ろうと止血をする基臣。だが、それを止めるかのように基臣の頭をシルヴィアは抱きしめる。

 

「し、るヴぃ……」

 

「だめだよ、基臣君。じっとしてなきゃ」

 

 力が抜けていく基臣を愛おし気に優しく撫でるシルヴィア。

 

(せん、のう……されてる……のか?)

 

 それならば先ほどの気絶も説明ができる。最初から基臣を油断させるための布石だったのだ。このシルヴィアによる不意の一撃のための。

 

(っ……もう、だめ、だ……)

 

 瞼が下り、意識を暗闇へと落ちていく基臣。

 

「もとおみくんは、わたし、だけのも、の……」

 

 繰り糸を切られたかのように、シルヴィアも基臣の後を追ってその意識を途切れさせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カッ カッ カッ

 

 

 

 手放していた意識の中、誰かが迫ってくる靴音に基臣は目を覚ます。

 

「…………ッ!こ、こは?」

 

 周囲は暗くて見えないが、基臣のいる場所だけが明りに照らされて(まばゆ)い。その場所に一人の男がやってくる。

 

「もうお目覚めか。随分と早かったな」

 

「お前は……っ!」

 

「久しぶりだな。まあこれで会うのが三回目だからただの知人程度の認識だろうがな」

 

 黒装束の集団の首魁。その正体は、今まで二回ほど面識のあった榎本朧だった。だが、動揺を表に出さずに基臣は努めて冷静に質問をする。

 

「……どうして、俺を……殺さない……。お前なら俺が気絶した段階で殺すことが出来たはずだ」

 

「それをやれるなら、最初からやっている。だが──」

 

 朧は基臣の目の前にあるピューレに目線を送る。

 

『モトオミ!』

 

「ピューレ……!」

 

「捕縛することは出来ても、この純星煌式武装がお前の殺害を邪魔するからな。やるなら、お前が自害するか……所有者であるお前の心を折ってこいつを機能停止させてから殺すしかない」

 

「……ならもう一つ。なぜ俺を殺そうとする。俺は今まで人に妬みや恐れを持たれたことはあれど、害したことなど無い」

 

「なぜ、か……特段お前個人に恨みがあるわけでは無い。俺が恐れているのはお前が行きつく先だ」

 

「……行きつく先?」

 

「誉崎流の極伝まで行きつく者は間違いなく、その意識を何者かに汚染される。そうなってしまえば、誰彼構わず無差別殺人を犯す人間の出来上がりというわけだ」

 

 誉崎流という言葉を聞いて全ての点が繋がる。今まで襲撃を度々繰り返してきた誉崎家の人間というのは、目の前の男だった。しかし、その事実よりも朧が話したことに疑問が生じる。

 

「無差別殺人? にわかには信じがたいが、何の根拠があって……っ!?」

 

 基臣の疑問に答えるように黒装束の男は袖を(まく)り上げると、腕にはかきむしった跡がくっきりと残っている。

 

「根拠は俺自身だ。俺自身もお前のように皆伝まで習得したが、極伝の断片をつかみ取りそうになったとたんに殺意衝動に身を侵された。正気を保とうとして暴れまわった結果がこれというわけだ」

 

「…………」

 

「お前の父が俺の家族を殺した当初は恨みもあった。だが、()()を理解してしまったらもう恨みも何もあったものではない」

 

「解決策はあるはずだ、俺とお前とで探せば……!」

 

「あったら既に試している。だが、無かった。……それに、もう俺が俺でなくなるのも時間の問題だろう。極伝を習得する可能性が高いお前も殺して俺も死ぬ。それだけの事」

 

「……くっ」

 

「さて……本題だ。連れてこい」

 

 朧がそう部下に指示させて連れてきたのはシルヴィアだった。殴られたりとかしていないのかと心配になり観察するが、傷つけられた跡は無いようだった。

 

「基臣君!」

 

「……ッ、シルヴィ!」

 

「お前が自害してくれるなら楽に済むわけだが、もし拒否するようならこいつを殺す」

 

 シルヴィアの首元に刀の刃先を当てる。

 

「っ、私の事はいいから!」

 

「シルヴィ!! ……朧、分かった! 俺が──ッ!」

 

 

 

 

 

 ──生きて、基臣

 

 

 

 

 

「──っ!!」

 

 自害する選択を取ろうとすると突然脳内に聞こえる母親の遺言(のろい)に基臣は口から言葉を紡ぎだせなくなる。

 

「なんで今になって……ぐっ!」

 

 自害を選ぼうと口を開こうとすると頭を酷くかき乱され、まともに言葉を発せなくなる。

 

「はぁっ、はぁ……! なぜだ、なぜっ……」

 

「今の口ぶりから自ら死を志願するかと思ったが……そういう選択をするのなら仕方がない」

 

「ちがっ! ちがう……! おれ、はっ!」

 

「……もういい、自害しないならお前の心を折ることにする」

 

 朧はシルヴィアに向けていた刃先を胸へと突き立てる構えを見せる。

 

「やめろ!!」

 

「よく目に刻んでおけ。お前の選択がこいつを見殺しにしたという事実を」

 

 

 

 

 

「死ね」

 

 

 

 

 

 その刃は心臓を寸分違わず刺し貫き、辺りには鮮血が舞い散った。

 

「あ、ああ……うそ、だ……」

 

 しばらく刀で貫かれた後、身体から刃を抜かれてシルヴィアは崩れ落ちていく。

 

 

 

「ごめんね……」

 

 

 

 そう呟く彼女の顔が母の死に際に被って見えた。

 

「あい、してるよ。も、とおみ、く……ん」

 

 

 

 

 

 第六感が嫌でも理解させる

 

 

 

 

 

「シル、ヴィ……?」

 

 

 

 

 

 愛しい人が死んだのだと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シルヴィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!」

 

 

 

 

 

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