東京の呪術高専襲撃事件。
物理的被害として、規模が一番大きかったのは建物への被害ではなく…五条悟の「虚式 茈」による地形への大ダメージだ。業者を呼んで元通りにするにしても、長い工期と莫大な予算が必要となる。しかも、元通りにしたところでメリットなど何もない。
建造物への被害総額は、表向きは宗教系の学校である呪術高専が払える額ではない。純和風の木造建築物。歴史的建造物にも登録されておかしくないレベルがボロボロになっていた。この手の建造物は、直せる人も限られており人件費が時価の職人達だ。
つまり、この負担は地方自治体や国家……言い換えれば税金で賄われる。
当然、呪霊側が悪いという意見もある。だが、なんで全校生徒合わせても2桁ちょっと居るか居ないかの学校にコレほどまでの助成金を出さないといけないのか、説明に困る国のお役人達は胃痛に悩まされている。
「えぇ~、次に人的被害ですが~」
伊地知潔高は、纏められた人的被害の報告を行った。人材不足が悩まされる呪術師達が大量に殺されるなど、今後の仕事の割り当てに困る……と言うのが少し前までの事情であった。
だが、昨今、4級以下の低級呪霊の除霊に関しては既に呪術師に仕事が来る事はほぼ無くなった。「呪霊GO」というアプリのお陰で良くない呪霊達がドンドン数を減らしていた。
おかげで、今や二束三文の価格で仕事をする呪術師、呪詛師達があぶれている。なにより、呪術業界で暗黙の了解となっていた、自作自演の除霊のお仕事も「呪霊GO」のお陰で簡単にはできなくなった。低級呪術霊など見えてしまえば簡単に払えるからだ。
最悪、人的被害までなら何とか許容出来た楽巌寺嘉伸。だが、呪術界の重鎮として、特級呪物の紛失まであったとなっては、沽券に関わる。よって、生徒達から聞いた大事な情報を審議の場にぶちまける。
「此度の被害は確かに甚大だ。だが、儂の元に、伏黒恵が呪霊と通じているのではないかと情報が入ってきている。捕まえた呪詛師同様に情報を吐かせるべきだろう」
「恵がぁ?ないない……でも、僕のそんな発言だけだと納得しないよね。いいよ、尋問でもなんでもやってくれて。だけど、恵には嘘偽りを言わない縛りを設ける。我々は、呪霊と通じていないと分かれば、それ以上疑わないという縛りを設ける。これでどうかな」
楽巌寺嘉伸は、勝利を確信していた。生徒達から集めた情報だけでも、どう考えても内通者であると確信が出来る事ばかりだったからだ。
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尋問室の伏黒恵の前に、熱々のカツ丼が置かれていた。胃に優しくない料理である事は間違いない。
そして、対面には本日の尋問官である禪院真希が笑顔で座っている。彼女秘蔵の特級呪具游雲が呪霊側の手に落ちた事で帰らぬ物となった。その責任が、伏黒恵にないのは分かっている彼女ではあるが……流石に、末端価格5億超えの品物がなくなったのだ。理解できても感情が許さなかった。
楽巌寺嘉伸より、伏黒恵に全てを吐かせれば……学校の催し物での事故という事で、補填すると確約を貰えていた。つまり、彼女は何が何でも伏黒恵の口を割らせる覚悟があった。
ちなみに、弁償は税金での補塡だ。
「伏黒、お互いの為にも正直になろうな。良いか、私の質問に嘘偽りなく確実に答えろ。沈黙したら、話したくなるまでボコるからな。いいか、こっちは游雲の代わりを手に入れるためにも手加減はしねーーぞ」
「分かっていますよ、真希先輩。俺だって、誤解を解きたいですからね」
尋問室の外では、監視カメラと集音マイクから二人の様子をしっかり観察されていた。
「よーーし!! じゃあ、さっそくやるぞ。伏黒……お前は、呪術高専襲撃を事前に知っていたか?」
「知っているわけないでしょう」
伏黒恵は、名誉挽回のチャンスだと思い正直に答える。そもそも、縛りのせいで嘘偽りはいえない。
「だよな~。じゃあ、次な。先日の襲撃してきた呪詛師または呪霊は、お前の仲間か?」
禪院真希の質問に、伏黒恵は必死に答えをシミュレートした。呪詛師については、知らないので問題無い。だが、問題なのは、野良
まさか、2問目にして窮地に追い込まれる伏黒恵。
【彼女達の存在がバレない程度の真実を全て吐き出す。具体的な縛りのアウトラインは後回し。真実だけを押し出していき……都合の悪い事は口を割るな。誰もが望む真実だけを口に、この場を乗り切れ。乗り切れば、この鬱憤を夜戦でぶつけてやれ!! 】
伏黒恵は、人間としてランクアップした。
「呪詛師に仲間なんて居ませんよ。それに、
「はぁ?恵~、私は何も特級呪霊
鋭い禪院真希。だが、それも伏黒恵の想定内。いつ何処で誰と何をといった具体性のない質問の回避など容易い。全ては、伏黒恵の誘導による成果だ。
「(襲撃されてから今まで、厳重の監視下にいました。どうやって、性的に繋がれるって言うんですか。だから、)繋がっていませんよ。(無事に解放されたら、繋がる予定はありますが)」
「おっかしいいな~。じゃあ、なんで、相手の特級呪霊は恵の事を知っていたんだ?心当たりくらいあるだろう」
「(分霊であるカシマには、寝床で色々と話ましたが、特級呪霊がどうやってそれを知り得たかなんて)皆目見当もつきません」
まさに、完璧な回答であった。縛りの拡大解釈による対応。まさか、直近まで呼んでいた○滅の刃の某柱のコミュニケーション方法が役に立つ時が来るとは伏黒恵も思ってもみなかった。
だが、今はそれが正解だ。
「おい、どうすんだ。こりゃ、流石に白だろう。じいさん、ソッチからの質問もあるんだろう。私からは、とりあえず聞きたい事はきいたぞ」
『
マイク越しで隣室から覗いていた楽巌寺嘉伸が厳しい口調で詰問する。
「楽巌寺学長は、ゲームとかしないですよね。
監視カメラや禪院真希からは、見えないように顔を伏せた伏黒恵。乗り切ったと顔がにやけていた。自らの身の潔白は証明され、これからはその呪霊の正体把握に動く事になるだろうと推測していた。
『ほら、だから僕が言った通りでしょう。恵は、そんなんじゃないって。じゃあ、これで無罪放免って事で良いよね』
『ぐぅ!! 分かっておる』
伏黒恵、無事に無罪を勝ち取る。
だが、彼は忘れていた。彼の隣室には誰が住んでいるかを。今までは、死亡したと言う事で空室になっていたので、ベットがギシギシ言おうが、艶っぽい声が多少漏れようが問題なかったが、今は問題がある。
魔女裁判的の状況から無罪を勝ち取り生還した伏黒恵を心底喜ぶ虎杖悠仁。そんな仲間に、この金で今日は外泊してくれとお願いするか、本気で考える男がここにいた。
何時も誤字脱字のご指摘誠にありがとうございます!!
本当に助かっております。
やばい。
アニメしか見ていない作者……もうすぐネタが切れる。
単行本購入せねば。