修道院で子供達と一緒にカレーをごちそうになった呪術高専一年生達と五条悟。出された食事は、院長含み皆と同じ物であったので、遠慮無く食べていた。
口では文句を言いつつ面倒見が良い特級呪霊ジャンヌダルク・オルタ。子供達の食事の面倒を見つつ、片付けまでしっかり行う。更には、食後の昼寝には童話を読み聞かせるあたり、子守のお手本みたいであった……当の本人は、夜のお手本な体つきをしているのに全くけしからん存在だ。
子供達を寝付かした後、約束どおり呪術師達に立ち向かう。呪術師達の先鋒をきるのは釘崎野薔薇。
「ジャンヌダルクっだっけ? なんで、こんな事をやってんだ」
『ふっ、私は呪霊よ。当然、子供達に地獄を見せる為よ。どんな地獄か知りたいかしら?』
地獄……確かに、知性ある呪霊なら可能だろう。
先ほどまでの行動からは考えられない回答であった。だからこそ、釘崎野薔薇も悩む。コッチが本性であるならば、何の憂いもなく除霊に挑める。
ジャンヌダルク・オルタがチラチラと釘崎野薔薇を見る。まるで、何かを聞いて欲しそうな雰囲気だ。その眼差しは、まだかな~という子供のような眼だ。無視を決め込む釘崎野薔薇。
「ほら、釘崎……聞いてやれよ。なんだか、見ているコッチがいたたまれなくなってきたぞ」
「嫌だよ。だって、聖女の事、嫌いだから。あんなのが世に蔓延したら、困るだろう。私には分かる、アレは女の敵だ。虎杖もあんな女がいいってのかぁ?殺すぞ、この童貞野郎」
シクシク
「釘崎もいい加減、聞いてやれよ。泣き始めただろう。安心しろ呪言の類いの能力は持っていない。どうやら、性能は物理特化タイプらしい。いいから、聞いてやれ」
伏黒恵が「呪霊GO」のアプリを使い彼女の情報を収集していた。正式公開されていない隠しエネミーである彼女。その入手条件を求めていたが、情報が少なすぎて彼の手に余っていた。かといって、この情報を公開すれば日本全国から猛者があつまり、入手条件の特定に至るだろう。
無論、誰かが手に入れたジャンヌダルク・オルタを強奪するのも一つの手だ。
「はぁ~、で、地獄ってなんなのよ。言ってみな、聞いててやるから」
『知りたい? 知りたいのよね? 仕方ないわね、教えてあげるわ』
実に嬉しそうなジャンヌダルク・オルタ。その反面、釘崎野薔薇は疲労が溜まる。やる気が削がれるというレベルではなかった。
『この児童養護施設では、毎日7時に起床。バランスの取れた食事を与えているわ。朝寝坊したいとか、ジャンクフードが食べたいとか それができない子供にはさぞ地獄でしょうね。後ゲームも一日一時間まで』
「……で、他には?」
規則正しい生活と健康な食事……我が儘が言えず、好き嫌いが許されないなんて確かに辛い。呪霊は、人の嫌がる事を的確に捕らえていた。
『子供が嫌いな勉強も毎日やらせているわ。そんな自由がない生活を強いて、小学校、中学校、高校、大学までずーーと繰り返すのよ。高校生になったらアルバイトさせて、その内何割かはピンハネするんだから』
「………で、他には?」
子供達から不労所得を得ようなど、極悪人だ。人材派遣会社すら真っ青なピンハネだ。人間から恐れられる呪霊のやる事は非人道的すぎる。
『そうね~、授業参観にはママとして参加してあげるわ。きっと、恥ずかしい思いをして悶え苦しむでしょう。想像しただけで、気持ちが高まるわ。後は……洗濯物とかも一緒に洗うわ。いい年した子供は、親と洗濯物を一緒に洗われるのを嫌うらしいからね』
「…………で、他には?」
学校での子供の立場を考えない鬼畜な行為。そんな事をされたら、学校で虐められる事間違いない。更には、多感な年頃の子供の洗濯物を一緒に洗うなど、それが親のすることか!!
『ここからが本番よ。大学を出た子供は、数十年という残りの人生を社会の歯車として死ぬまで働く事になるのよ。確か、今では年金問題とかで少人数で沢山の老人を支えないといけないんでしょう。まさに地獄よ。それから、結婚して家庭までもてば地獄から簡単に逃れる事はできない。どう?この完璧なプランは』
恐ろしい計画であった。地獄とは、天国を知っている者しかそれを認識出来ない。地獄にずーっといればそれは、唯の日常なのだ。
ジャンヌダルク・オルタは、子供を育て上げて日本社会という高齢化まっしぐらの地獄に解き放とうとしているのだ。まさに、悪魔の所行だ。この真実を知った子供は、色々な意味で涙するだろう。
その自信満々の地獄プランは、確かに地獄だ。間違いなく地獄。それは現代人が保証する。この話を聞いていた呪術高専一年生も五条悟も確かに地獄だわと認めるほどだ。
「なぁ、先生。私らの前に二級呪術師が失敗したって言ってたよな。原因は?」
「任務放棄。なんでも、彼女を除霊するくらいなら、売買関係者を全員捕まえてくると意気込んでいたらしいよ。いや~、御三家の連中や呪詛師達も結構関連しているから大変だろうね」
知らされていない情報。だが、五条悟も任務放棄した決定的な理由までは知らなかった。しかし、今になって理解した。こりゃ、人の心を折りに来る呪霊だと。単体での強さも去ることながら、人の心をよく分かっている実にやりづらい相手だと。
「よーっし、虎杖。お前がやれ。得意だろう? 女を殴るの」
「酷い誤解!! あの時は俺が俺じゃなかったというか…」
YouTubeで既に100万再生を超えた全裸カシマフルボッコ動画。運営により不適切なシーンが多いという事で既に削除されているが一度出回った情報が消える事が無いのが現代だ。
そんな動画のお陰で不名誉な称号を得た虎杖悠仁であった。