なぜか、むりやり選手交代された虎杖悠仁。
状況が状況だったにせよ
「ほら、虎杖ファイト。除霊したら、うまい棒1本奢ってやるから」
「いらねーーよ。しかも、安いよ!! つーか、もう勘弁してよ。この間の動画だって、世に出回っててさ……俺、この間コンビニ帰りに知らない人に卵を投げつけられたんだぞ。『この人でなしが』って言われて。結構、心に来るんだぞアレ」
「安心しろ虎杖。俺は、赤の他人から『死ね』って言われて石を投げられたぞ。憑いていた低級呪霊《カシマ》を払ってやった事を今でも根に持っていやがった」
伏黒恵は、不幸な事に動画サイトに投稿された映像から、彼も映っており
それだけで済んだのは元の所有者が非呪術師であり常識人であったからだ。これが呪術師や呪詛師なら生死を賭けたリアルファイトに発展している。
『あら?怖じ気づいたの? 今なら見逃してあげても良いわよ』
「そんなことねーーよ。ただ……なんで、そんな防御力薄そうなの着ているんだよ。もっと、厚着しろよ!! 肌が見えてんだよ!! どうせ、またダメージが衣服に蓄積されて、徐々にパージされていくんだろう。本当に勘弁してくれよ」
これから打倒しようとする敵側の心配をする虎杖悠仁。
青少年の目に毒といえる特級呪霊ジャンヌダルク・オルタの戦闘用コスチューム。自らの体に絶対的な自信がないと着衣すらできない服装は、視線誘導する兵器となりうる。呪霊がそんな戦略を用いてくるとは卑怯といっても過言ではない。
『ば、ばっかじゃないの!? あんな、特殊変態仕様なのは
同じ呪霊でありながら大先輩の
特級呪霊ジャンヌダルク・オルタは、一般常識を持ち合わせている。当然、虎杖悠仁による全裸
服を抑える事で胸が無駄に強調される。そして、嫌がる様は、男心を擽る。これで聖女だ。……いいや、寧ろ、日本的に言わせれば『これが聖女だ』と言うべきだろう。
「するわけねーーだろ!! あれは、東堂の術式で俺にはできない。つーーか、この状況どうすりゃいいんだよ。呪霊を倒したら、子供達は親元。だけど、その親が糞過ぎて何も言えねーーよ。でも、ここに居たら子供が……あれ? 別によくね」
『いけないんだ~。子供達が地獄にいっちゃうのに、見捨てちゃうんだ。呪術師って案外冷酷なのよね。まぁ、いいわ。殺さない程度に痛めつけてあげる。……アッチでガキ共が見ているんだから、適当に負けなさいよ。手加減してあげるから(ボソリ)』
感性が強い子供だから感じた呪力の高まり。そして、目を覚ましてしまった。部屋の窓から、呪術高専の人達とジャンヌダルク・オルタが今にも争いをする所がよく見える。子供達がどちらの味方かと言えば、当然特級呪霊側だ。
「邪ンヌお姉ーちゃん!! 負けないで」
「邪ンヌ。そんな変な人達なんてやっつけちゃえ」
「邪ンヌお姉ーちゃん」
ちなみに、この状況……最初から最後まで全て動画サイトに投稿されている。地獄のくだりではネット視聴者からの共感が多数寄せられていた。そして、今現在、全国の「呪霊GO」の猛者達が、この児童養護施設に向けて移動を始めている。
けしからん聖女を手にれるため、守る為、命を賭ける男達が大集合だ。未成年呪術師は、あわよくば、お世話になろうと企てていた。
「よし、わかった。アンタがもっている、その旗で俺を殴ってくれ。それでやられたフリをするから……ってその旗に使われている棒、何か見覚えがあるんですが」
『これね、あの
虎杖悠仁、自分が言った言葉を訂正したくなる。
唯の棒きれならば、呪力と身体能力を駆使すれば何とでもなる。だが、あれは呪具。痛いどころでは済まない。
大事な事だが、特級呪霊ジャンヌダルク・オルタの身体能力は、特級呪霊の中でもトップクラス。更にその能力は身体能力強化系でもある。棒術の心得も当然あり、遠心力が最大になるポイントの最大速度は音速に迫る。
「ちょっと、タン……ぐべし!!」
優しい特級呪霊が手加減したおかげで、青あざ程度で済む。だが、派手に転がったお陰で砂まみれになり、衣服はボロボロだ。
「ナイスファイト、虎杖」
「ナイス、うまい棒は二本くれてやろう。感謝しろ」
伏黒恵と釘崎野薔薇から有り難いお言葉も貰い。虎杖悠仁は、不幸だと涙を流しそうになった。だが、子供達が見る手前、その役目に徹する男でもある。
「こ、これで勝ったと思うなよ!! ……で、五条先生本当にどうしよう、これ」
「今まで色々考えていたけどさ、この程度の特級ならいつでも払える。それに、現状維持の方が上層部への嫌がらせになるでしょう。だから、依頼は随意継続中…なーに、問題無いさ。文句があるなら、僕を倒してからにしろって押さえつけるから」
五条悟、特級呪霊を監視下におくという名目で依頼を現状維持にする事を決めた。どうせ依頼元は御三家や呪詛師などの後ろ暗い連中ばかりだ。せいぜい、困るのは子供を捨てようとした非呪術師達だけだ。
『ガキ共、服が汚れるから泣きつくな』
一戦を終えた特級呪霊ジャンヌダルク・オルタの元には、彼女を慕う子供達が泣きついていた。もし、彼女がいなくなったら子供達は呪詛師に落ちることだろう。それもその標的は呪術師になるだろう。
□□□
バラライカは、呪術高専の人達が帰り支度をする最中、伏黒恵を呼び止めた。コレは、出資者から依頼されている事で、一定基準を満たしている者に伝えるように言われている事だ。
「貴様に良いことを教えてやろう。「呪霊GO」には、特定団体への寄付が可能だ。最近実装された機能があるだろう。その中に、サイバーダイン・システムズが運営する児童養護施設も含まれている」
「ま、まさか…!?」
「理解が早くて助かる。なんせ、子育てには金がかかるからな、一企業からそれなりの融資こそあれど、大学まで出すには費用も馬鹿にはできない。1本100万。5本寄付すると低級呪霊がお前さんのものだ。見込みがある貴様には、これもやろう」
一枚の通信販売パンフレットがバラライカより手渡される。
俗に言う施設で作った商品を一般消費者に購入してもらい、施設運用の足しにするアレだ。だが、バラライカより手渡されたラインナップは、修道服やジャンヌダルク・オルタ専用の礼装など他では手に入らない品々。
一般市場では出回らないような商品で、完全受注生産。実に、素晴らしい。
その中で、伏黒恵が気になった商品があった。そして、スマホで自らの残高を調べる。二級呪術師である彼は並みの高校生とは、懐事情が違う。
既に、
「この檜造りの懺悔室を一つ。あぁ、配送はクロ○コヤマトで」
「最近の子供は、金をもっているな。まぁ、こちらとしては有り難い限りだ。これからも末永くよろしく頼むよ」
伏黒恵…ロシアマフィアに悪人は居ないと理解した。
□□□
伏黒恵がロシアマフィアと仲よくやっている頃。
虎杖悠仁は、またもや窮地に追い込まれていた。あの一戦の後、流石に砂まみれのまま返すのは申し訳ないと特級呪霊ジャンヌダルク・オルタからの申し出をうけて、お風呂を借りていた。
だが、そこに大きな問題があった。
『へぇ~、なかなか鍛えているじゃない。年の割には悪くないわ』
「どうしてだよ、どうしてこうなったんだよ」
特級呪霊ジャンヌダルク・オルタにとっては、高校生など子供と同じ。よって、敗北してくれたお礼も兼ねて背中を流しに来たのだ。彼女としては、完全に善意からの行為である。
『あら、どうしたのそんな顔を真っ赤にして。私がこんなことしてあげるなんて滅多にないんだから、光栄に思いなさい』
虎杖悠仁……この時、本気で両面宿儺に状況を説明して助けを求めていた。だが、冷たく見放される。
後日、その事を伏黒恵にこっそり話したら、真顔で「俺が幾ら消費したと思ってんだ。この天然ジゴロめ、死ね」と言われ、友達を止めようかと思う彼であった。
閑話を挟んで、呪胎九相図のあたりかしらね^-^
単行本って15巻までなのか
大人買いできる範囲だな。