呪術師界隈では、とある企業が出している秘密の高額アルバイトで除霊より稼いでいる者達が多い。その大半が、呪具の制作技能を持つ者や珍しい術式を持つ者達ばかりだ。当然、儲け話には裏がある。誰もがアルバイトを終えた後、どんな仕事内容だったか記憶していない。
金を切実に必要としている呪術師――三輪霞。
姉妹校交流会にて、活躍の場がないだけでなく、特級呪霊襲撃の際は寝て過ごした強者。更には、禪院真希に取られた呪具の刀剣は真っ二つ。そのお陰で、仕事にも影響が出ていた。
彼女の家は、貧乏であり、二人の弟がいる。それ故に、彼女は家庭を支える為にも早期に前線復帰して稼ぐ事が必要だ。だが、新しい呪具を用意するにしても、高い。レンタルするにしても求める品質の呪具でなかったり、得意な獲物でなかったり、散々だ。
ここ最近では、呪術師に依頼が回ってくる仕事は2級呪霊が関わる案件が殆どであり、3級呪術師の彼女には荷が重い。仕事道具の呪具次第ではどうとでもなる範囲だが、今の彼女にはどうしようもなかった。
しかし、捨てる神あれば拾う神あり。
三輪霞は、メカ丸の紹介で大口案件のお仕事が回ってきていた。メカ丸の製造にも関わっている日本屈指の大企業サイバーダイン・システムズ。今現在、彼女は、お仕事について説明を受けて契約直前であった。
「あの~義善さん、本当に仕事というのは呪霊と全力で模擬戦をするだけですか?」
「その通りですよ、三輪霞様。一週間、我々が指定した場所で指定したターゲットと模擬戦をするだけ。万が一怪我などをされた場合でも完璧に治癒致します。我々はクリーンな企業ですので、企業イメージを損なうような事は致しません」
三輪霞は、信頼できる仲間からの紹介である為、前向きであった。
更には、流石は大企業といえる契約金。前金で1000万、後金で1000万。更には、気に入った呪具を一つ貰えるという大盤振る舞い。コレに乗らない手はなかった。短期間でこれだけ稼げるなど特級呪霊の除霊くらいだ。
「分かりました!! この役立たず三輪、お仕事をしっかりやり遂げます」
「それは僥倖です。我々の仕事は機密が多いので、注意事項は絶対厳守です。損害賠償は、一般人の生涯年収を遙かに凌駕しますので、
金額に似合った縛り。
だが、命の危険が無く短期間でこれだけの金額を稼げるのだから当然だ。しかも、違法性のない仕事だ。相手も縛りを結んでいる以上、絶対安全であった。
………
……
…
三輪霞、契約書にサインしてそのまま仕事にうつる。彼女は、義善聖徳の後に続きサイバーダイン・システムズを歩く。道中では、一般人が見ることがないような最先端技術の研究が行われている。
その最奥にまで辿り着き、エレベータにのる二人。
「三輪霞様。呪術師の方において縛りは絶対です。我々は貴方に危害は加えません。ここで知り得た事は外部に漏らさない。命を賭けて貰っています」
「えぇ、その通りです。なんで今更?」
エレベータを降りた先にある扉を幾つも進んだ。最後の扉の前で義善聖徳は、改めて契約内容と縛りを再確認する。その理由は……。
「この先は、呪力に当たられて暴れられても困りますからね。ようこそ、三輪霞様」
扉が開いた瞬間に漏れ出す凶悪なまでの呪力。
三輪霞は、うまい話には裏があると理解する。だが、知っていたとしてもあれだけの好条件の依頼を無視できるかと言えばそうでもない。いっそう、金の為と割り切ってしまえばいい。どうせ、ココで見聞きした事は全て忘れる縛りなのだからと彼女は大人になった。
この地下の扉を潜ってから、義善の側には何人もの特級呪霊が側についた。三級呪術師の彼女……しかも呪具もない彼女にはどうすることもできない。
「コッコロ、彼女の部屋を用意してあげてください。これから、一週間しっかりお世話をお願いしますね」
『はい!! 主さま。さぁさぁ、三輪様どうぞこちらへ』
人生で特級呪霊にお世話して貰えるなんて滅多にできない経験だ。そんな最中、彼女はある物に目を奪われた。培養液に浮かぶ胎児のような物体。
「三輪霞様、お目が高いですね。あれは先日ビジネスパートナーから借用させて頂きました受胎九相図達です。素晴らしいですよね、人と呪霊のハーフが既に実在していたんですよ。我々が求める到達点。その完成形が既にあるとは、世界には素晴らしい私見を持つ方が溢れている。既に実物がある以上、後は我々の得意分野です」
自慢げに説明する義善聖徳。だが、傍らでその話を聞く三輪霞には理解が及ばなかった。理解したくもないと本能で拒絶していた。見た目に反して、ここまで壊れた人間を初めて見た彼女であった。
………
……
…
呪具の研究の末、生み出された科学の力で生み出された人造呪具。並べられている刀剣、槍、鎧、銃など古今東西の武具。これだけの呪具があるなど、御三家の宝物庫でも早々にお目にかかれない。
そんな宝の山を目の前に三輪霞は、真剣に獲物を選ぶ。
「得意な獲物を選んでください。シン・陰流と伺っておりますので、その刀などお勧めですよ。江戸時代の名工が作った作品で2級呪霊の体液に二ヶ月漬け込んだ一品です」
「うーーーん、一応呪具ですが~コレじゃあ弱いですね」
義善聖徳も呪具の善し悪しの見分け方はまだまだであった。
そこに専門家の登場だ。新しい先生の到着が遅く、態々足を運んできた
『義善の目利きは、まだまだですね。で、この方が新しい先生ですか?』
「
三輪霞、この地下施設に入ってから薄々感じでいた。姉妹校交流会で生徒を襲った謎の特級呪霊達。加えて、昨今呪術業界を騒がせている特級呪霊。全て、サイバーダイン・システムズが関わっていたんだと。
『顔色が悪いですね。体調が悪いなら真人に治させましょう。さぁ、シン・陰流の奥義を見せてください』
「いや~…あの~、彼女って確か呪術高専を襲撃した特級呪霊じゃなかったけな~なんて思って」
「その通りですが、何か? 三輪霞様、深く考える必要はありません。貴方は、約束どおり仕事をこなしてお金と呪具を貰って帰れば良いんです。どうせ、ココでの事は覚えていません。さぁ、模擬戦を始めましょう」
約束どおり、全力で模擬戦にのぞみ、手の内を全て晒す三輪霞であった。
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【皆さん、役立たずの三輪です。ここ一週間、メカ丸から紹介された秘密の高額アルバイトをしましたが、内容を全く全然覚えていません!! なぜか、口座に2000万円と準一級相当の刀が手元にあります。とても恐いです。アレですか、これが噂の催眠おじさんに催眠をかけられた的なアレでしょうか。弟たちがそんな本を隠し持っていました。今から将来が心配です】
三輪霞は、全てを忘れて、大金と新しい呪具を手にしていた。そして、仕事を紹介してくれたメカ丸に感謝として単四電池を贈る。
閑話で露骨な引き延ばし!!
受胎九相図……原作通りで行くべきか、兄弟なので中の人繋がりで3人痴女を選ぶか迷う。