世論は、未だに呪術高専の存在について色々と議論が飛び交っている。火消しに動く呪術業界であったが、収まる気配はなかった。本来であれば、政府も協力してマスコミに圧力を掛けるのだが、昨今、政府と呪術業界との関係が変わりつつあった。
政府からの直接的な依頼が減るだけでなく、窓口担当もベテランから新人に変わったりとあからさまな待遇の変化があった。本来なら文句の一つもあるが、呪術高専に所属している虎杖悠仁が原因で世論が盛り上がった事もあり、呪術業界としても我慢した。
そんな息苦しい空気から脱却する為、五条悟はフリーの依頼を受ける事にする。こういう場合は、体を動かして気分転換するのが良いだろうという配慮だ。
その依頼内容は、人が変わったかのように勉学に励む息子がいる。雇っても居ないのに家庭教師がなど妄言を吐いたり、日に日にやつれていく様は見ていられないとの事だ。まるで何かに取り憑かれているようだったので、両親が気をきかせて除霊の依頼を出した。
幸いな事に、その依頼を受けたのが五条悟が率いる呪術高専一年生達だ。特級呪霊であろうと簡単に祓える者達が来てくれたのだから、もう安心であった。
「で、君達は資料に目は通した? いつも、特級ばかりが相手だったから、こういう低級呪霊の祓うやり方も覚えておかないとね。息抜きだと思って、構わないよ」
五条悟の言うとおりだ。一生のうちに一度も特級と出会わない呪術師の方が多いのに、半年もしない間にであった特級の数が多すぎる生徒達。呪術師の文字通り、呪われているレベルだ。
「五条先生、頭をよくしてくれる呪霊なんているの? 本当にいるなら、俺の学力も上げて欲しい。呪術高専で勉強した記憶がないから、本気で将来が心配なんだよ。このままじゃ、俺の最終学歴って中卒と同じじゃん」
「虎杖、その手の呪霊は、"成り代わっている"か"乗り移っているか"の2パターンだ。そういえば、俺も呪術高専に来てから普通の勉強をした記憶がないな。五条先生って、担当科目なんだっけ?」
呪術高専では、高校の授業は存在しない。呪術高専とは、呪術師の派遣業を生業にしている。その為、教えることは呪術に関する事と報告書などの書類事務だ。だから、呪術高専に入学した時点で世間一般で言う学力向上は、全て自己学習でしか賄えない。
「恵、面白い事を言うね。僕は、呪術高専の卒業生だよ。世間一般で言う学問なんて君達に教えられるはずないじゃん。それに、教員免許なんて持ってないしさ。ハハハ」
「いや、笑い事じゃないって!! 呪術高専って無法地帯過ぎるだろう。ここに来た時点で、私等には、呪術師になるしか道がないって奴か」
五条悟の無免許発言で、釘崎野薔薇は自らの進路が呪術師しかないと理解してしまう。勿論、独学で勉強する事も可能だが、除霊のため各地に行くことも多い。つまり、勉強する時間などよっぽどやる気がないと取れない。
「安心していいよ。呪術師は、稼げる職だから。良い大学出て、良い企業に務めるよりよっぽど稼げる…命がけだけどね。ほら、喋っている間に着いたよ。今回のクライアントの家」
車が止まった場所は、一般民家。
民家の二階から感じる呪霊の気配。多く見積もっても4級上位といった程度だ。それを除霊するだけで50万というお金になるが、事はそう簡単にはいかなかった。
玄関前に素晴らしい太ももを携えた美少女の呪霊が待ち構えていた。五条悟含めて、呪術高専一年生は思った。またこのパターンかと。
その美少女こそ、政府の要望でサイバーダインシステムズ社が用意した特級呪霊ライザリン・シュタウト。ムチムチの太もも、ショートパンツ、胸元が強調されるような服を着る新しいエロス。これが政府公認の家庭教師像だというならば、日本が始まりすぎていた。
『こんにちは』
ライザが挨拶をする。人付き合いは挨拶から始まるのは常識だ。
だというのに、伏黒恵は即座に「呪霊GO」を起動するが目の前の特級相当の呪霊の情報が開示されない。五条悟も同じくアプリで確認するが、同じ結果であった。
「っち、また女の敵みたいな呪霊が出てきた。虎杖、出番だぞ」
「なんで、俺ってそんな役回りなの!? いい加減、ぐれちゃうよ俺。五条先生も伏黒もさっきから何しているの?」
『聞こえなかったのかな。こんにちは~』
今までに無いタイプの特級呪霊に多少混乱する五条悟達。だが、対話が成り立つなら楽に解決出来る可能性もあった。
「ごめんごめん、こんにちわ。僕、五条悟ね。こっちが、呪術高専の一年生。紹介はいるかな?」
『知っているから、大丈夫だよ。私は、特級呪霊ライザリン・シュタウト。ライザでいいよ』
「で、君は何者? 堂々と僕たちの前に出てきたって事は目的があったんでしょ?」
『そうそう、良いことを聞いてくれるね。この家に私の分霊がいるの。全国模試が明後日だから、今除霊されたら困る。今、私が消えたら多分…あの子の心が壊れちゃう。そんなの、
呪霊から信じられない言葉を耳にし、家庭教師とは何かの隠語かと思う次第であった。だが、仮に言葉通りだったとしてもそれは大変宜しくない事だ。こんな家庭教師がいたら性癖がねじ曲がる。
灰色の学生時代を過ごした五条悟が思わず声を上げる。
「お前のような家庭教師がいるか」
この発言には一年生達も そうだそうだ と頷く。
ライザさんの性格や口調がよく分かる動画あったら教えてクレメンス。