呪霊GO   作:新グロモント

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28.メカ丸(2)

 特級呪霊が通常兵器で除霊可能とした場合、必要な火力はクラスター爆弾だと定義されている。ならば、クラスター爆弾に呪力を付与できる技術が完成すれば、通常兵器でも十分に祓える。

 

 つまり、人造呪具を開発に成功しているサイバーダインシステムズが製造した決戦兵器メタルギア サヘラントロプスの搭載兵器は対呪霊にも有効であった。お値段時価の兵器であり、最新鋭の戦闘機5台は購入できるお値段になっている。

 

 そんな決戦兵器と特級呪霊真人の戦いを、見学する者達。

 

「でも、彼…究極メカ丸絶対形態って言っているよ」

 

「愛機に名前を付けるのはパイロットの自由ですからね。夏油傑様は、お手伝いをしなくてよろしいのですか?」

 

 特級呪霊真人は、他の特級と決定的な違いがある。呪力だけでは、祓うことは困難であった。魂にダメージを与える事ができない限り、致命傷となり得ない。

 

「真人の邪魔をしたら悪いからね」

 

 暇をもてあまし、義善の影から漏瑚(シノブ)が現れる。存在を上書きされ、宿儺の指12本換算の本体から分かれた唯一の分霊。その実力は、特級クラス。

 

『アレを甘く見ていると死ぬぞ。サイバーダインシステムズは、儂等の能力を十分に研究した。あの頭のおかしい馬鹿達が、それに対応していない兵器など作るはずもあるまい』

 

漏瑚(シノブ)様がおやつの時間以外に外に出られるのは珍しいですね。後で、皆さんから苦情を言われても知りませんよ」

 

『ふん。別に好きで出てきた訳じゃない。非呪術師であるお主は、流れ弾でも死んでしまうじゃろう。だから、儂等が守ってやるんだ。他の者達も文句は言うまい』

 

 影の中から「呪霊GO」で実装された呪霊達が漏れ出す。サイバーダインシステムズによって生み出された呪霊のオリジナル達。並みの呪術師ならば、裸足で逃げ出す。「呪霊GO」のプレイヤーなら全裸で突っ込んできそうな光景になった。

 

「あのさ~、義善。ここは、ワンフェス会場じゃないんだよ」

 

 身を守る術を呪霊に任せている義善は、別に悪くは無い。ただ、特級相当の呪力出力を出せる兵器から身を守る為にも必要な措置であった。

 

 だが、夏油傑以外にも文句が言いたい人物はいる。

 

□□□

 

 究極メカ丸のコックピットは、全天周囲モニターを採用している。与 幸吉は、真人と戦闘する最中であっても、夏油傑への警戒を怠らない。だが、非呪術師という事で警戒レベルが低かった男…義善聖徳の傍らが特級呪霊の見本市となっている。

 

「ふざけるな!お前のような非呪術師が居てたまるか」

 

 真人との戦闘で既に三年分くらいの呪力を消費していた。今までの人生で稼いだ呪力を全て使っても勝てるか状況が不透明になりつつある。特級呪霊真人を相手に出し惜しみなど出来ない。

 

 残った呪力で夏油傑との戦いを征する予定でいた。

 

「くっそ、だがやる事は変わらない。まずは、一気に真人を祓う」

 

 与 幸吉が切り札を取り出す。通常兵器や人造呪具では、真人に対して致命傷にならない。だが、彼は今までの戦闘を撮影し、分析し、対策を練っていた。そして、虎杖悠仁が呪霊をボコボコにする動画などを投稿して稼いだお金で用意した4本の秘密兵器。

 

 その一本を使用する。

 

【術式装填】

 

 シン・陰流の簡易領域を封じ込めた代物。それを兵器転用すれば、真人が相手でも確実にダメージを蓄積できる。

 

 その攻撃は、完全に油断している真人に直撃する。その様子には、傍観している者達も驚いた。

 

「期待していましたが、効果無しですか」

 

「……いいや、効いているね。場合によっては、止めておこう」

 

 夏油傑は、美少女呪霊達を確認して何かを思い直した。

 

【追尾弾~五重奏~】

 

 究極メカ丸が膨大な呪力消費を引き替えに、非呪術師でも視認できる程の追尾弾を放つ。物理法則を無視する機動性は、今の科学技術の水準を上回っていた。

 

「真人様の攻撃にも耐えられる装甲の評価は◎。機動性は、辛うじて○ですね。やはり軽量化が課題ですが、あのサイズだから一定以上の装甲は必要なのが難題ですな。燃費は×ですね」

 

「こんな時まで仕事なんだね。勤め人は辛いね~。そういえば、アレの動力って呪力と何で動いているの?」

 

 夏油傑も興味を持ち始めた。

 

 天与呪縛という肉体的な制限と引き替えに得た呪力を利用しているにしても特級呪霊真人とここまで闘う近代兵器。一研究者として興味があった。

 

「プラズマ核融合炉です。呪力と核エネルギーのハイブリットですよ。呪力へのエネルギー変換効率が悪いので、課題は山積みですが」

 

「……真人!! そのロボット、丁寧に壊せ。いいや、中の奴だけ殺せ。万が一、それが爆発したら助からん」

 

 ロボットに搭載される兵器で一番あるのは、自爆スイッチである。勝てないと察した場合、自爆されるのが最悪な展開だ。だからこそ、パイロットだけ速やかに殺せと夏油傑は指示する。

 

 重装甲の中にいるパイロットをピンポイントで殺せる方法がある事を夏油傑も特級呪霊真人も知っていた。それに、魂にダメージを与える術を持つ相手と長く闘うのは得策ではない。無駄に体力と呪力を浪費するだけだ。

 

『はいはい、じゃあコレでお終い。領域展開――自閉円頓裹。「無為転変」』

 

 領域展開から身を守る術が無い限り、必殺のコンボを繰り出す特級呪霊真人。

 

 コックピットにいる与 幸吉に無為転変が炸裂する。無意識下で呪術師は、魂を呪力で守っている。だが、それが分かっていれば対応も可能であった。そして、対呪術師相手でも一撃で「無為転変」を決める事が出来るように真人も成長している。

 

 領域展開が閉じられて究極メカ丸が転倒し、ダム底へと沈んでいった。

 

「システムダウンしましたね。パイロットや全身を支えていた人工筋肉が「無為転変」の影響で変形しましたか。アンブレラ謹製の人工筋肉が術式の影響範囲下にあるとは……一体、原材料はなんなのか気になるところです」

 

 義善聖徳は、比較的満足なテスト結果が得られたと考えた。そして、ポケットの中にあった緊急停止ボタンから手を離す。

 

 そのタイミングで特級呪霊真人が戻ってきた。

 

『いや~楽しかったよ。義善達が作ったロボットも中々良い感じじゃない。俺じゃなかったら結構良い線いっていたと思うよ。で、俺にダメージを与えたあれってなんなの?』

 

「シン・陰流の簡易領域を擬似的に再現したものです。花御(カシマ)様の先生に呼んだ女性の方が居たでしょう。あの人から採取したデータをベースにしました」

 

 義善聖徳は、何食わぬ顔で説明した。どのみち、花御(カシマ)が既に簡易領域を取得している。戻って聞けば一発で分かるので、知るタイミングが遅いか早いかだけであった。

 

「アレも簡易領域か。本番前にいいものがみれたんじゃない?」

 

「あぁ、嘱託式の帳の調整も終えた。呪力や言霊ごと他人に託しても問題無い」

 

 三人は、来るハロウィンに向けての準備をするため、その場を後にした。

 




閑話を幾つか挟んで、渋谷編にいきます。

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