五条悟は、渋谷平定に乗る気はなかった。
状況的に考えて、罠以外の何物でもない。自他共に認める世界最強の呪術師を呼び寄せるからには、相応の準備がされている可能性がある。だが、彼は、善人の部類だ。だからこそ、渋谷の一般人を人質にされては動かざるを得なかった。
だが、何より彼が気にくわなかったのは…
「僕が折角お土産で『喜久福』を買ってきてあげたのに、年休とか誰の許可を得て休んでいるんだい。ねぇ、君の立場分かっている?」
渋谷ホームに降りてきた五条悟は、線路に待ち構えていた特級呪霊達に苦情を言った。中でも、特級呪霊ライザリン・シュタウトに対しては厳しくあたる。
彼女との雇用契約は呪術専高と結ばれている。だから、五条悟の許可など不要。だが、勤務時間後に監視という名目で家の家事全般をやらせている五条悟。偶には、それに報いてやろうとお土産を買って帰ったら、不在で今この場にいるのだから許せなかった。
『さ、悟さん。私にも立場がありまして…。それに、元々コチラ側です。そりゃ、悟さんには感謝しています。家賃が掛からないように部屋だけでなく、生活用品から何から何まで用意してもらいましたから』
「まぁ。いいよ。どうせ、僕が勝つし。で、コレで負けたら君達、言い訳できないよ」
地下ホームの入り口各所が樹木で覆われる。これで、地下ホームは、密室状態となった。
五条悟は、辺りを見渡して敵の狙いを理解する。この密室に集められたのは、人間と特級呪霊ライザリン・シュタウトの分霊が半分ずつ。つまり、"縛り"で五条悟がライザリン・シュタウトの分霊を祓えない事を盾にして戦いを有利に運ぼうという算段だと。
何処を見てもムチムチの呪霊がいるとは、狂気を感じる空間だ。
『貴様こそ初めての言い訳でも考えてきたか』
「へぇ~、前にあったときより強くなっているね。えーーと、
五条悟は、「呪霊GO」のアプリで対象の情報を調べた。
『何も我々のデータまで更新しなくてもよいのですがね。後で、
「さっさと、終わらすかな。僕が逃げたら、お前達はここの人間を殺すだろうから」
『逃げたらか……いいや、正解は逃げずともだ』
その瞬間、線路とホームの仕切りが解錠される。一部の「呪霊GO」変態プレイヤーが、特級呪霊目がけて飛び込んでいく。そして、床に伏せてシャッターを切る。まさに、命がけの行為であった。
特級呪霊達は、そんな人間などお構いなしに肉壁として存分に利用する。一般人にとっては、呪霊は見えないので、何が起こっているか理解できる者はすくない。アプリ越しでこの状況を確認出来ていない人間が早死する。
だが、五条悟に当たる前にピタリと止まる。無下限呪術を展開している為、近付けば近付くほど速度が落ちるという鬼畜な防御を前に並みの攻撃では届かない。
『『領域展延』』
特級呪霊達が自らの身に纏う形で領域展開する技―領域展延。五条悟の無下限呪術を中和し、攻撃を当てるための手段の一つだ。瞬間的に相手の呪力を上回れば、五条悟に攻撃を当てることも可能。
そして、当てるからには、当てたら勝ちの一撃必殺にするべき。
「わお、凄い威力だね」
攻撃を難なく回避した五条悟。特級呪具游雲によって、コンクリート壁が大きく陥没しているのを確認した。
『逃げるなと言ったはずだぞ』
「正直驚いたよ」
『なんだ、言い訳か』
「ちげーよ、ロリ幼女。この程度で僕に勝てると思っている脳みそに驚いたって言っているんだ。まず、最初に、そこの淫乱呪霊を祓ってやる。周囲のオタクども見ておけ、大破判定したら衣服がパージされるからな」
特級呪霊