呪霊GO   作:新グロモント

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37.渋谷事変(7)

 特級呪霊花御(カシマ)が祓われた。だが、五条悟の封印には成功。つまり、この時点で呪霊側の勝利に天秤が大きく傾いた。

 

 義善聖徳は、とりあえず安心した。

 

 ビジネスパートナーとの約束の一つを守れた。そして残る約束は、この線路から来る呪術師を相手に時間稼ぎであった。誰が来るか分からないが、少なくとも五条悟で無ければ、時間稼ぎ程度は可能だと考えていた。

 

 彼がコツコツと線路を進んでいくと、一組の呪術師達と遭遇。呪術師達の冥冥チーム、そのメンバーには、義善聖徳の顔を知る虎杖悠仁も含まれていた。そんな、彼の耳には、メカ丸擬きが付いている。

 

「救助隊の方ですか、助かりました」

 

「…いや、無理があるだろう。あんたは、サイバーダインシステムズで会った義善さんだっけ」

 

 虎杖悠仁は、記憶力がよかった。服装は違えど、一度会った人間をしっかりと覚えているあたり、社会人としても通じるスキルだ。尤も、彼が無理があるといったのは、義善の横に、ハロウィンといえども際どすぎる服装の2Bが居るからだ。

 

 そんな服装で街をあるけば、逮捕されてもおかしくなかった。

 

【虎杖悠仁、そこに居るのは義善聖徳で間違いないんだな。奴は、夏油傑とグルだ】

 

 義善聖徳は、虎杖悠仁の耳にへばり付いているメカ丸擬きをみて驚いた。あの状態の与幸吉が遠隔操作している事は考えられなかったからだ。特級呪霊真人の無為転変により、死ぬ寸前であった男は、肉体の何割かを機械化する事で生きながらえた。そんな運の良い男は、現在生命維持装置に繋がれてサイバーダインシステムズで仮死状態だ。

 

 つまり、生前に与幸吉が残したシステムが動き出した。しかも受け答えは、もはや自立AIレベルだ。

 

「与幸吉君、グルだったのは君だ。私と彼はビジネスパートナー。自分の罪を赤の他人に着せるのは止めたまえ。それに、虎杖悠仁の動画をネットにアップロードして金銭を稼いでいたのも君でしょう」

 

【エラー。エラー。虎杖悠仁、五条悟が封印された物はこの先にある。急げ】

 

 素晴らしい自立型AIであった。自己に都合の悪い真実は全てエラーとなる仕様。義善聖徳は、自社製品のスカイネットと勝負させてみたいと思った。一個人が作ったAIと会社が総力を挙げて作り上げたAI…どちらが素晴らしいか見て見たいと。

 

「そろそろ、私も話に混ざって良いかしら。貴方、非呪術師よね。横にいる呪霊?……違うわね、肉体があるわ。その子だけじゃ私達に勝てないわよ。素直にそこを通してくれるのなら見逃しても良いわ」

 

「確か、冥冥さんでしたね。私は、サイバーダインシステムズで「呪霊GO」の開発運営をしております義善聖徳と言います。貴方の要望ですが、お断り致します。私は、この場からくる侵入者を妨害する仕事を請け負っております」

 

 2Bは、特別製であった。呪胎九相図のクローンを利用して、肉体を持った呪霊。つまり、彼女は人間と子をなせる存在だ。そして、義善の生涯のパートナーでもある。全国数百万を超える「呪霊GO」のプレイヤー達が夢にまで見た存在が既に実在している。

 

『義善、彼女のデータはありますが分が悪い』

 

「でしょうね。冥冥さん、逃げるのなら追いません。私の仕事は侵入者を防ぐ事」

 

 義善聖徳の影の中に収まっていた呪霊達が全てはき出される。

 

 漏瑚(シノブ)の特級クラスのバックアップ。

 

 花御(カシマ)の特級クラスのバックアップ。

 

 陀艮(ルルイエ異本)の特級クラスのバックアップ。

 

 特級呪霊コッコロ。

 

 特級呪霊ジャンヌダルク・オルタ。

 

 一級呪霊ライザリン・シュタウト。

 

 そして、特級クラスの2B。

 

 おまけで、特級呪霊真人の劣化分身。

 

 まさに、特級呪霊のバーゲンセール状態だ。これだけの特級を同時に相手にして勝利する事が出来たなら、五条悟に次ぐ最強の称号が貰えるだろう。

 

「姉様!」

 

「分かっているわ、憂憂。虎杖君、ここは私が引き受けるわ。貴方は、上に上がって五条悟が封印された事を伝えてきなさい」

 

 実に大人の判断だ。損得勘定的に割が合わないと判断した冥冥。命を賭けたとしても全ての特級クラスを祓える可能性は低い。しかも、祓えたとしても無償労働だ。

 

 つまり、ここが引き際。

 

「分かった……絶対に死なないでくれよ」

 

「えぇ、勿論よ」

 

 虎杖悠仁は、冥冥からの命令に従う。今やるべき事は、何が大事か。彼は冥冥を残して来た道を戻っていった。そして、動物の目を通じて、外に出たことを確認し冥冥は行動を開始する。

 

「優しいのね。何もせずに待っていてくれるなんて」

 

「別に、侵入者を殺す約束はしていない。で、虎杖悠仁君が外に出るまで待っていたと言う事は、楽しいお話があると思って良いのですか?」

 

 現状、五条悟が封印された。呪術師側の状況は悪いと言える。更に言えば、この状況になっても自衛隊が動かないし、大企業が介入している状況だ。冥冥は薄々思っていた事に確信を得た。

 

 日本政府は、呪術師より呪霊と手を組んだと。ならば、自分が一番高値で売れる時に売り込むのは当然であった。

 

「えぇ、夏油君とはビジネスパートナーと言ったわね。私も一枚噛ませて貰えないかしら。損はさせないわ」

 

「勿論。ですが、"縛り"は結ばせて貰いますよ。まずは、弊社との専属契約についてお話しましょう。安心してください、呪術業界より条件は格段に上だと自負しております」

 

 冥冥と憂憂、この時をもって呪術業界から足を洗う。そして、新しい身分を手にした。サイバーダインシステムズの専属呪術師という真っ白な立場。

 




既に終わりは決めております。

ギャグ短編なので、そろそろね^-^

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