神様になった右腕様 作:きまぐれ
「茨木様。今年の奉納酒です。お納めください。」
「分かった。味見していいか?」
「もちろんでございます。」
一応許可を取ってから味見をする。今年もいい出来のようだ。
「・・・味はいつも通りだな。よく造った。」
「ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。」
「うむ。」
なぜ鬼である私が神様の真似事なぞしているのか。話は平安時代までさかのぼる。当時茨木童子として都で名をはせていた私は、人間に腕を切り落とされてしまった。本体が取り戻そうとしたのだが途中で私(腕)を落っことしてしまい、ある人間に拾われてしまった。
「助けてください。お礼はします。」
「なぜ鬼である私が人間ごときを助けなければならんのだ。封印されているとはいえお前ひとり食い殺すくらいできるのだぞ。」
「ほかに頼れる人がいないんです。」
「人じゃない!私は鬼だ!」
「鬼はお酒に目がないとか。このお酒でもダメですか?」
「(この香りは最近流行ってる例の酒!飲んでみたかったんだよな。)・・・今回だけだぞ。」
あの時酒の代わりに人助けしたのが運の尽きだ。そこから酒を奉納すれば何とかしてくれる神様として人間に扱われてしまい、治水、疫病といろいろ頼りにされた結果、神力をまとってしまった。
(神力のせいか、酒が好きという程度まで鬼の性質が抑えられてしまった。)
神力は人間の信仰から得られるもの。つまり人間を食ってしまうと得られなくなってしまうのだ。人を食って得る力よりも神力の方が力が強いから、人を食らわずにダラダラと神様らしきことをやってしまい、今や醸造の神様ということになっている。
「茨木様。今年の味噌の出来はいかがでしょうか。」
「・・・よく出来ている。」
「ありがとうございます。こちら奉納酒です。今後ともよろしくお願いいたします。」
醸造の神様だから、味噌や酢、醤油などのアドバイスを求められる。初めは飲みたい酒の追求のためにアドバイスしていたのに、信仰のために手を広げすぎた感がある。出来ることなら、酒の神様になりたい。酒だけの神様になりたい。
「茨木様。今年の醤油の出来には自信があります。」
「茨木様。酢の出来がいまいちでして、何とかなりませんでしょうか。」
酒の神様にはなりたいけど、今更信徒を見捨てられない。鬼として、一度手にしたものを手放すことはできない。
「醬油の出来は良いようだ。酢については私が何とかしよう。」
「「ありがとうございます。」」
まあ、酒が飲めるしいいか。