神様になった右腕様 作:きまぐれ
「霊夢さん~。いらっしゃいませんか~?」
「何よ早苗。」
「神奈子様からこちらを華扇様にお渡ししてほしいと。」
「何よこの桐箱。」
「では、よろしくお願いしますね~。」
「あっ!待ちなさいよ!詳しく説明しなさい!」
どうやら本体はこの神社に出入りしているということで腕の状態で運んでもらった。こちらの姿の方が本体を油断させることができるだろうからだ。今の私は神力が多少あふれていて、腕の状態に自分を封印して押し込めていないと鬼のふりができないのだ。鬼のふりができていないと、もし本体が不埒なことを考えていた場合に出遅れてしまう。
「何なのよ一体。」
この子は八坂様から聞いた博麗の巫女だろうか。強い霊力を持っているのは間違いないようだ。
「封印がされているみたいだけど、そんなに古い奴じゃないみたいね。」
なんと。一応昔の封印を再現してみたのだが、あっさり見破られてしまった。もう少ししっかりやっておくべきだったか。
「きちんと封印されすぎてる。中の感じから言って強い妖怪?が入ってるみたいだから、昔のならもっとぼろくなってるでしょ。」
しっかりやりすぎてばれたのか。
「華扇は明日また来るって帰ったし、ここに置いておくしかないかぁ。」
う~ん。となるとここで一晩明かすわけか。宿の恩義をそのままにしておくのも調子が狂うな。ここはひとつ、酒でも贈ろう。
「巫女殿。巫女殿。」
「うわっ。びっくりした。何よ急に出てきて。」
「博麗の巫女殿、ですよね。」
「そうだけど。あんた何なの?」
「私は茨木童子の片腕です。故あって幻想郷に参りました。」
「へぇ~。華扇の腕ねえ。腕っぽくないけど。」
「私の本体は今日はこちらに来ないそうで。宿の恩に報いたいのですが。」
「えっ!?お賽銭くれるの?」
「あいにくこの箱に入って来ましたもので持ち合わせがありません。酒や味噌なら出せますが。」
「お酒くれるの?華扇の枡みたいに鬼になったりしないでしょうね。」
「大丈夫です。人間に害はありません。二日酔いにならないくらいですかね。」
「本当に!?ここのところ華扇がやかましくてあまり飲めてなかったのよね~。「巫女たるもの、お勤めの際酒が残っているとは何事ですか!」とかやかましくてさ。」
どうやら博麗の巫女は本体に締め上げられているようだ。巫女さんが締め上げられては神様も一緒に締め上げられているようで居心地が悪いだろう。神様の気持ちを推し量れないとは、本体の方は(神としては)未熟なようである。
「1升くらいだしますね。どうぞ。」
「やったぁ!久しぶりのお酒だあ!」
そこから私は酒を造りふるまった。悪酔いしにくいとはいえここまでグイグイいくとは。博麗の巫女、意外と酒豪である。
「それで、何で幻想郷に来たの?」
「本体の確認が主目的です。もし、鬼として本能のままに行動するようなら・・・」
「行動するようなら?」
「私の力で封印します。」
「華扇なら大丈夫だと思うけど。大体、そんなことできるの?」
「今の私はそこそこの神格を得ていますから、何とかできるとは思いますよ。本体が大丈夫かどうかの確認については、私に考えがあります。」
「どうするの?」
「本体と融合します。」
融合してしまえば噓をつくことはほぼほぼ不可能である。さらに、神力を防ぐことができないので、そのまま抑え込めるだろう。
「で、どうやって融合するの?」
「手っ取り早い方法は、私が今のように外に出ている状態で、本体に私を鬼だと思い込ませることです。その状態で私が呼びかければ応じるでしょう。それでですね。」
「何?」
「できれば、霊夢殿と戦ってる感じにしておきたいのですが。霊夢殿の霊力が充満しているような感じじゃないと、多分鬼ではないことがすぐにばれてしまいます。」
「まあ、お酒やお味噌貰ってるからいいけど、華扇をだませるほどの霊力出せないかもしれないわよ。」
「その点はご安心ください。今霊夢殿がお召しになっているその神酒は、霊力を有する人間が飲めば霊力増強になりますから。一晩寝れば効果を実感していただけるかと。」
「本当かなぁ。」
「鬼を信じてください。」
「今のあんたは神様でしょうが。」
夜が明けて日が昇る。幻想郷の夜明けは山に囲まれていることもあってか新鮮な感じだ。
「ちょっと、このお酒凄いわね。」
「霊夢殿。お加減はいかがですか?」
「あれだけ飲んだのにまったく二日酔いにならないどころか、ものすごく力が湧いてくる。感覚的には5ボム分くらいね。」
ボムとは何だろう?おっと。
「霊夢殿、来ました。ではよろしくお願いします。」
「よし、とどめよ、覚悟しなさい!」
「では失礼して・・・少々力を使いすぎたか、だがこれからだ博麗の巫女よ!」