月夜に閃く二振りの野太刀   作:刀馬鹿

12 / 69
わーい始まった始まったwww

もうね、これが本当に書きたくてしょうがなかったよ!!!!
編集者とアイディア提供者三人で話し合って、日常編をつらつらと書いていたけど、そのとき本当に書くのが暴走しそうだった!!!!

ようやく本編いけてうれしいね~。


ま、そう言うわけで刃夜の聖杯戦争始まり始まり~www






斬り合い

「……マスター……だと?」

 

目の前に突然出現した男の言葉に、俺は首を傾げることしかできなかった。

 

いきなり(マスター)と言われてもな……

 

それが正直な感想である。

しかも文字通り出現したのだ、この男は。

下にある、魔法陣のような紋様より突然に……。

 

だがそれを悠長に話し合っている場合ではなかった……

 

「らぁっ!!!!」

 

一本の引き絞った矢のように、突貫してくる……青い槍兵。

その高速の突きを、男は風に吹かれるように、ふわりと軽く避けた……。

 

「やれやれ、随分と無粋な男よな……」

「ごちゃごちゃとうるせえ!」

 

侍といえる格好をしている男に、槍兵が怒号を放つ。

それには気が込められているのかと思えるほど、裂帛の気迫を込められており、圧力を物質的に感じるほどだった。

 

「てめぇはその気配から言ってどうやらサーヴァントのようだな。マスターは状況が掴めていないようだが、かといってお前らほどの手練れを見逃すほど、俺はお人好しじゃないぜ?」

「ふむ……好戦的だな。まぁ気持ちはわからんでもないが……ランサーよ」

「そう言うてめぇは、何のクラスだ? ……得物から言ってセイバーに見えるが……それにしては……」

 

マスター? サーヴァント? ランサー?

 

正体不明の気配(・・)達が話し合い、意味のわからない単語が飛び交っている。

いや単語自体(・・・・)の意味はわかるが……。

 

その単語が、何を意味し、何を指すのかが……全くわからない……

 

完全に置いてけぼりの状態だ……。

 

「ふむ……拙者のクラスはどうやらアサシンのようだぞ?」

「……なにぃ? アサシン……だと?」

 

全身蒼い装束を着込み、血にも見紛うほどの紅い槍を両手で構えて、男が不思議そうにする。

しかしそれ以上に俺の方が不思議だった……。

 

 

 

……とりあえず、どういう状況だ……これ?

 

 

 

 

 

 

『ふむ、あっちの方でどうやら一悶着起こっているようだな……』

「本当? アーチャー」

 

深山町の山の上層部にある、西洋の館の一室でのんびりと優雅に紅茶を飲んでいた少女が、誰もいないはずの一室で何かを確認するかのような言葉を放つ。

それに呼応するように……今までその少女以外に誰もいなかったはずの室内に、突然赤い男が出現した。

怪奇現象とも言えるはずのその事象に、少女は眉一つ動かさず、その存在に質問する。

 

「どこの辺りかしら?」

 

卓上に広げられた地図を指さしつつ、少女がそう問う。

それに対して男の返答は簡潔だった。

すっと、音もなく指を動かしてその少女が問うてきた内容に答える。

 

「……少し距離があるわね」

「どうする? 凜?」

 

腕を組み、考える仕草をする少女に端的に訪ねる男。

しばしそのまま黙考していた少女が、ふっと緊張をゆるめる。

 

「ここからだと直ぐに出てもその何かが終わってしまっている可能性が高いわ。偵察とはいえ余りまだ大きく動く段階じゃないわ」

「ではこのまま静観……すると?」

 

問い詰めるかのような口調の男に、少女は……遠坂凜は簡潔に答えた。

 

「冗談。何か動きが起こっているって言うのなら、情勢にも変化が起こっているのかもしれない。アーチャー、霊体化して直ぐに偵察に」

「了解した」

 

少女の返答に、ニヤリと自信ありげな笑みを浮かべて、男が消えた。

出現したときと同じように、忽然と……。

顕れたときと同じように、凜はそれに全くうろたえなかった。

それはつまり、突然顕れて消える男がいることがすでに当たり前という事なのだろう。

凜は、そっと立ち上がり窓辺による。

そして先ほど男が示した方角へと、窓越しに視線を投じた……。

 

「何が起こっているのかわからないけど……何かは起こっているはず……」

 

何かが起こって欲しくない……そう思っているのと同時に、何かが起こっていて欲しいと、そう願っているかのようだった……。

相反する二つの思いを胸に秘めて……凜は鋭い眼光を、窓の外へと向け続けていた……。

 

 

 

 

 

 

じっと……まるで獲物の前で息を潜めた獣のように、敵は……ランサーと言うその眼前の敵は、低い姿勢のまま動かなかった。

対して俺の前に歩み出ている男……アサシンのクラスとか言う男は、悠然と直立に佇むだけだった。

何の構えもなく、右手に持った野太刀を肩に乗せて、敵を見つめるだけ。

それだけだ。

 

だがそれだけで……敵が動けていないとわかるのにさして時間はかからなかった。

動かないのではない、動けないのだ……。

 

……何という隙のなさ

 

野太刀を持ってただ佇んでいるだけのはずのその男には……文字通り一寸たりとも隙がなかった。

ただ佇むというそれだけで、全ての攻撃に対応できるという……あり得ないほどの技量。

実際に見なくてもわかる。

その手にした野太刀で、払い、流し、そして何の音もなく斬り捨てる……。

それが容易に想像できてしまう。

それを肌で感じ取っているのだろう……だからこそ、槍兵はじっと伏せる事しかできないのだ。

 

「……」

「……」

 

風も吹かない今宵では音もなく……ただ無言で相手を睨みつけることしかしない……。

呼気すらもするのをはばかれるような……それほどの静けさ。

だが静けさとは裏腹に、この場は張り詰めた空気に包まれている。

完全に静寂が、この場を支配していた……。

が、それも直ぐに終わりを告げた。

 

「……ふぅ」

 

突如として、息を吐き捨てたかと思うと、槍兵が構えを解いて立ち上がった。

そして顕れたときと同じように、槍が忽然と姿を消す。

 

「……退くのか?」

「あぁ。俺のマスターの指示でな。攻めきれないというのならばさっさと帰ってこいと宣いやがる」

 

指示……だと?

 

指示を受けたと言うが、何かと交信している気配は見られなかった。

となると考えられるのは念話……つまりは意識を共有した相手と交信したと言うこと……。

 

……何なんだ? この状況?

 

先ほどから渦巻く疑念……疑問……。

目の前の存在達もそうだが、自身が一体何の状況に巻き込まれたのかがわからない。

 

何が何だかわからないが……厄介な状況になったようだな……

 

一体どういう状況に巻き込まれたのか知らないが……敵の力を鑑みるに、生半可な状況でないことだけは確かだった。

 

「おい坊主」

 

敵が退く間際、俺に声を掛けてくる。

敵に殺気はなかったが、それでも油断しきるわけにはいかないので、俺は一応戦闘態勢を取りつつ、敵に言葉を放った。

 

「何だ?」

「どうやらお前とは今後とも付き合いがありそうだな……。お前と真に死合えるのを……楽しみにしておくぜ?」

「……」

 

敵の実力と俺の実力は拮抗してはいた。

といっても、俺はほぼ全力を出していたが、敵はそうじゃない感じがした。

確かに得物の不利はあったが、果たして夜月でも拮抗できるかどうか……。

 

正直……難しくはあるだろうな

 

不可能ではないだろうが……どちらにしろ文字通り殺し合い、命の取り合いの真剣勝負になることだけは間違いない。

どう返答したものか考えていると、敵は風景と同化するように、ふっと透明になり姿を消した。

そこでようやく俺は敵の不可思議さに合点がいった。

 

なるほど……。突然顕れたと思った俺の考えは正しかったのか

 

ナイフを投げる寸前まで、確かに実体(・・)としての気配は感じ取れなかった。

突如として顕れたという俺の考えは間違っていなかったらしい。

 

勘までは鈍っていないようだな……

 

どうやって突如として顕れたのかは謎だ。

だがこれで生きている人間でないことだけはわかった。

そしておそらく、俺の目の前にいる男……。

こいつも同じような存在だろう。

 

ならばこいつに聞くか……

 

「……一応礼を言うべきだろうな」

 

こいつが完全に味方と言いきれない以上、警戒を解くのは迂闊。

そのため一応の用心として腰の水月に手を伸ばしておく。

が、はっきり言ってほとんど意味がない。

理由はいくつかある。

一つ目はこの侍といえるような格好をしている男から全くと言っていいほど殺気を感じず、それどころか俺を友好的に見ているらしいような感じを醸し出している。

 

そしてもう一つ……これが決定的だった。

こいつ相手に、水月だけでは絶対に勝てない……。

 

 

 

絶対(・・)にだ……。

 

 

 

……夜月でも勝てるかどうかわからんな

 

気力による力、モンスターワールドにて習得した、僅かながらも魔力(マナ)を扱い事が可能になったこの俺が、絶対に勝てないと……。

それほどの実力差が眼前の男と俺にはあった。

といっても水月だけではという条件が付くので、フル装備ならばわからず、モンスターワールドにて最後の死闘で使用できた究極の状態……魔力(マナ)が俺に進んで力を貸してくれた、究極の戦闘状態ならば勝つ事は可能だろう。

だがフル装備はともかく、究極の戦闘状態はあくまでもその世界にとって害意であった煌黒邪神を倒すために魔力(マナ)が協力してくれたためなので、この世界であの状態になることはよほどのことがない限りないだろう。

眼前の男は確かに強いが、煌黒邪神ほど絶望するほどに圧倒的ではない。

 

「……そう警戒するな。主よ。お主が殺気立つのは致し方ないかもしれないが、拙者にまで殺気を向けるな」

「……お前は()だ?」

 

それが一番聞きたかった……。

いやそれを言うのならば先ほどのランサーとか言う男にもだが。

顕れたり消えたりする、それはいい。

別段不思議でも何でもない。

いや、普通の現象ではないが家柄故にか……そう言ったことで別段不思議とは思わない。

それが一つだけならば別に問題はない。

だがこれほどの戦闘能力を有している幽体だが精霊だかの類が、同じ場に二つ以上存在しているというのは……あまりにも不可解だ。

間違いなく自然に発生したものではない。

そこで思い出される、まるで体中に気の循環を巡らせている、雪の妖精のような少女……。

 

……先日の少女の背後にいたのも……同じ類か?

 

こいつに先ほどのランサーという奴が幽体……精霊の類だというのならば、少女の背後から感じたあの威圧も納得が出来る。

こいつと同じように幽体ないし精霊が背後から俺を威圧していたと言うのならば、あの違和感……少女から感じなかったが、確実に俺を圧していたこと……がうなずける。

 

「ふむ……拙者が何であるかと聞くか。となるとまずは名乗らねばならんだろう」

「……それもそうだな。失礼した。俺の名前は鉄刃夜だ」

 

人に名乗らせる前に、己の名前を言うのは至極当然のことだ。

俺はそれに気づいて素直に己の名前を言った。

それに対して相手は頷くと、こういった……。

 

 

 

 

 

 

「アサシンのサーヴァント、佐々木小次郎」

 

 

 

 

 

 

そう……名乗ったのだ……。

 

……ささきこじろう……って、「佐々木小次郎」か?

 

佐々木小次郎。

身長とほぼ同じ長さの野太刀……「物干し竿」という長刀を操り、「燕返し」という剣技を振るうという男。

二天一流という二刀流の使い手、宮本武蔵との巌流島での決闘で知られる剣客……のはずだ。

 

少なくとも俺の世界では……

 

俺の世界においても実在していたのか実在していないのかわからない、謎の存在。

宮本武蔵は確かに存在していたという証拠はあるのだが、佐々木小次郎にはそれがない。

故に人々が作り出した偶像だと考えられているのだが……。

 

……その存在を名乗るこいつは何だ?

 

「……偽名か?」

「ふむ……偽名か……。偽名と言えば偽名と言えなくもないのだろうが……此度の戦にはこの名、そしてアサシンというクラスで現界している」

「……現界? つまりお前は人間ではないと?」

「人間ではあるが、生きてはいない。亡霊のようなものだ」

「……戦? というかアサシンって何だ?」

 

何故かいつの間にか問答になってしまっている。

といっても俺が一方的に聞いているだけだが……。

だが、今のところ事情を知っていると思えるのは間違いなくこいつだけだ。

だから聞かざるを得ないのだが……

 

 

 

「知らぬ」

 

 

 

それがこの男からの返答だった……。

 

 

 

「……はい?」

 

 

 

その返答に俺は……間抜けな響きを返すことしかできなかった……。

 

 

 

「……ならマスターってのは?」

「知らぬ」

「……サーヴァントってのは?」

「知らぬ」

 

 

 

「……うぉい」

 

 

 

男の返答に……俺は若干切れ気味になりながら声を上げる。

問答をしていたはずなのに……答えられたのは一つだけだった……。

 

「アサシンってことと、自分の名前しかわからないじゃねぇか!!!!」

「そうなのだ。実は拙者もそう思っていた……」

 

 

 

「そう思っていた……じゃねぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

 

張り詰めていた空気が俺の怒号で一気に吹き飛んでしまった……。

何を問うても答えられない目の前の存在に俺は吼えた……。

だがそれで状況が改善されるわけもない……。

俺は吐き出した空気を補給し、改めて男に聞いた。

 

「……つまりどういった状況にあるのかわからないと言うことか?」

「そう言うことになるな。まぁ、少なくともお主が拙者の(マスター)であるということはかわらんよ」

「何故そう言いきれる?」

「それだ」

 

男が……佐々木小次郎が俺の右手を……正しく言えば右手の甲を指さす。

俺はそこに目をやって……目を見開いた。

 

「……これは?」

 

先ほど槍で切られたはずの傷がなく、代わりに……何か形容しがたい刺青のような絵が……あった……。

血のように赤い色で彩られた……そんな紋章が……。

 

「それは令呪(れいじゅ)

「令呪?」

「そう、お主と拙者との契約を表す印。それがある限り拙者はお主に付き従い、剣を振るおう」

 

………それだけ?

 

さらなる説明を待ってみるが、それ以上令呪とやらの説明はなかった。

だが、この紋章がただそれだけの存在であるとは思えなかった。

しかし唯一事情を知ってそうな存在がわからない以上、これ以上のことは知れそうになかった。

 

まぁそこまで重要なものでもなさそうだし

 

いうなれば幽霊だか精霊だかの存在を使役している証なのだろう。

とりあえず最低限聞きたいことは聞けたのでこの件はこれでいいだろう。

 

この目の前の幽霊みたいな存在の名前、そしてこいつが敵じゃないのであればそれでいい……

 

「とりあえず帰ろう。まだ店を開けっ放しにしたまんまだ」

 

そう言って俺はようやく、自分の店を空けたままにしていることを思い出した。

一応結界を張っているとはいえ、店を長い間無人にしておくのはよくない。

 

「承知した」

 

その言葉とともに、俺は男とともに歩き出した。

蹴られた腹部がまだ完全に癒えきっていないので普通に歩く。

大した距離でもないし、なんとか無防備に食らうことは避けられたので、歩きながら気を回して治療すれば店に帰る位には完治するだろう。

 

「ところで主よ」

「ん?」

「店というのは?」

「俺が開いている定食屋だ。近くでそこの店主として毎日料理作って生活している」

「ほぉ。料亭の店主か?」

「料亭って……そんなに大したものじゃない」

「となるとその布切れは暖簾……か?」

「布切れ?」

 

佐々木小次郎の言葉に気付いて、狩竜に取り付けていた暖簾を改めて見てみたら……ボロボロになっていた。

あの槍兵との斬り合いで、敵の槍を狩竜で受け止めて、流していたら暖簾は見る影もなくなっていた……。

辛うじて文字が読みとれるか否かくらいになってしまっている。

 

「うっわ、暖簾がボロボロに」

「気付いていなかったのか?」

「……そんな余裕はなかったよ」

 

ここまでぼろぼろになっては修復も再利用も不可能だ。

仕方なく俺はそれを完全に取っ払った。

夜なべして新しい暖簾を作ろうか考えたが……どっと疲れたので今日はもう作らないことにした。

そんなやりとりをしつつ、夜道を歩いていく。

佐々木小次郎が背負う野太刀と、俺が手に持っている認識阻害の術が解除されてしまった超野太刀狩竜。

これらが警察官に見られるんじゃないかと少々ビクビクしながら歩いていたが、なんとか問題なく帰れた。

 

まぁ仮に見つかっても速攻逃げるだろうが

 

俺は確実に、それに佐々木小次郎とやらもそう簡単には捕まることはないだろう。

たかだか警察官ごとき止められるほど柔な人間だとは思えない。

それだけの実力は有しているはずだ。

だがかといって殺人鬼には見えないし……まだ断定は出来ないが生粋の剣客だろう。

 

「……ただいまっと」

 

無人だが、挨拶を返してくれる存在がいるこの家に、俺の帰宅の声が響く。

 

『!? 無事だったか仕手よ!!!!』

「……封龍剣【超絶一門】。済まない、心配を掛けたな」

『敵の気配がしたとほぼ同時に戦端が開かれてしまっては、注意を促すことも出来なかった。済まない、私のミスだ』

「気にするな、とりあえず命はあるからよ」

『……その隣りにいる男は何だ?』

 

若干の警戒をしつつ、封龍剣【超絶一門】が俺に説明を求めてくる。

もうほとんど生きているんじゃないかと言うほどに感情豊かなこの剣の意志は、やはり優秀らしい。

佐々木小次郎が、普通の人間でないと言うことを一瞬で見抜いていた。

 

「アサシンのサーヴァント、佐々木小次郎と申す。姿の見えぬ者よ、以後よろしく頼む」

『アサシン? サーヴァント?』

「こいつに命を助けられたのだが……。封龍剣【超絶一門】、お前は何かわからないか?」

 

封龍剣【超絶一門】に宿っている意志は、元々はモンスターワールドにて知識に長けた種族、竜人族だ。

世界が違うので望みが薄いとは思っていたが、それでも聞かずにはいかなかった。

 

『さすがに別世界のこの世界の事象までは……。すまない』

「まぁそうだよな。こちらこそ済まなかった」

 

自身は全く悪くないというのに、律儀に謝ってくる封龍剣【超絶一門】にこちらからも謝罪する。

そしてその封龍剣【超絶一門】を居住区より引っ張り出してきて、シースより抜剣し、小次郎に見せる。

 

「こいつがさっきから念話で話しかけてきている存在、封龍剣【超絶一門】だ」

「なんと、剣が話しているというのか? それはまた面妖な」

『……お前も十分に怪しいぞ?』

「いやいや、バカにしたわけではないのだ、剣の意志よ。妖刀の類を見るのは初めてでな。少し驚いただけだ」

 

俺が手にしている封龍剣【超絶一門】をしげしげと見つめながら、佐々木小次郎がそう答えた。

それで会話が途切れてしまい、俺の店に静寂が降りる……。

 

「……」

「……」

『……』

 

……何でこんなに気まずい?

 

おそらく、まだこの佐々木小次郎という男が完全に味方かわかっていないからだろう。

封龍剣【超絶一門】はともかく、俺はもうそこまで疑っていなかったが。

当の本人は何も感じていないというか、気まずいとさえ思っていないらしく、イスに座ってあちこちを見回していた。

 

さきほどの状況……殺ろうと思えば簡単に殺れたはずなのだから……

 

「先送りしちゃいけない気がするが、とりあえずこれ以上わからない以上、一旦放置だ。飯にしよう。お前は……飯食うのか?」

「食べないでも問題はないが……せっかく主が料亭の主というのならば頂こう」

「だから料亭じゃないって。了解。余り物が主になるが文句言うなよ」

「うむ」

『……いいのか?』

「ま、しょうがあるまい」

 

何が起こっているのか激しく謎だが……それでもこれ以上わかることがないのならば考えても仕方がない。

ならば飯を食って寝て、特訓に精を出すことにすればいい。

そうして微妙な空気の中、佐々木小次郎と飯を食った。

 

「ほぉ……」

「ん? どうした?」

「いや、予想以上に美味かったのでな。それに、これほど豪華な食事というのは初めてだ……」

「そらよかった……」

 

会話は余り弾まなかった。

しかし令呪というのがあるからか……はたまた意味のわからない親近感からか……雰囲気はそんなに悪いものではなかった……。

 

 

 

 

 

 

「帰ったぞ、凜」

「どうだった、アーチャー。何が起こっていたの?」

「済まない、後れたようですでにその場には誰もいなかった」

 

帰還した己の赤き男、アーチャーに、凜が詰め寄る。

だがそのアーチャーより帰ってきた言葉に、凜は落胆を禁じ得なかった。

 

「……そう」

「痕跡はあったが有益な情報はほとんどなかった」

「……まぁいいわ」

 

実際余りいいことでもなかったが、まだ聖杯戦争は序盤なのだ。

ならば慌てることはないと、凜は己を律した。

だがそれでも気になることはあった。

 

まだ全員のサーヴァントとマスターが現れていないと言うこと

 

聖杯戦争とは全部で七人のマスターと七人のサーヴァントによって繰り広げられるのだ。

だが現時点ではまだ数が出そろっていない。

果たして誰がマスターになるのか?

それを考えてもしょうがないのだが……気が急いてしまうのか、凜はその思考から抜け出すことが出来なかった。

そんな凜を気遣ってか、アーチャーが紅茶の用意をし出す。

そのアーチャーを見て、凜は呆れながらも紅茶を飲む事にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

「っ!!!!」

 

昨夜……あの青い槍兵に襲われた翌日……。

昨日よりもさらに早起きをして、俺はまだ夜ともいえる時間に、昨夜俺が襲われた廃墟と化している武家屋敷へと来ていた。

まさかこれほど太刀を振るいやすく、人目に付きにくい場所があるとは思わなかったので、棚からぼた餅という感覚でやってきたのだ。

そして昨日ひょんな事から解呪してしまった、抜刀状態の狩竜の訓練も再開していた。

他に夜月、封龍剣【超絶一門】、水月も一緒だ。

 

そして……

 

「いやはやすばらしいな。主よ。まさかと思わなくもなかったが……よもやそれほどの長さの野太刀を軽々と、それも恐ろしい速度で振るうとは……」

「……お褒めいただきありがとうよ」

 

昨日までと違い、今日からはこの佐々木小次郎を名乗る霊体も一緒だった。

佐々木小次郎は俺が縦横無尽に狩竜を振るうのを、少し離れた道場の縁側で、呑気に座りながら眺めていた。

 

「しかし……実に面妖な得物だな。黒い刃紋か? それは? 何か普通ではないようだが」

「……まぁ普通じゃないことは確かだろうな」

 

一旦狩竜を振るうのをやめて、俺は佐々木小次郎へと向き直る。

狩竜の刀身にある……いや、刀身全てが赤黒く変色している。

煌黒邪神を吸収したと思われるのだが……それでも見た目以外に変化が見られなかった。

不吉ではあるが、それでも棄てる訳がないし、何となくわかっていた……。

 

 

 

不吉ではあるが……俺を不幸にするための存在ではないと言うことを……

 

 

 

ちなみに槍兵と同じように霊体化出来るか聞いてみたら出来たので、基本的には霊体として俺のそばにいてもらうことにした。

常に実体化していても良かったのだが、俺の店にいきなり同居人がいたら周りの人間が不審に思う。

別段思われても構わないのだが、攻め込まれても面倒だし、雷画さんあたりが事情説明を要求してきた場合、うまく答えられる自信がない。

雷画さんは俺の恩人だ。

その人にいくら方便とはいえ嘘を吐くことはしたくないからだ。

 

「佐々木小次郎。お前は……」

「待て、主よ」

「……なんだ?」

「佐々木小次郎とわざわざ姓名をいう必要性はない。姓か名、もしくはクラス名で呼んでくれないか?」

 

……一理あるな

 

どういった関係なのか未だ謎な俺と佐々木小次郎の関係だが……しかし敵でないことは確かであり、また佐々木小次郎が俺を主と呼び、俺もこいつの主であるのが別にイヤというわけではない。

ならば戦友と言えなくもない関係の間柄で、フルネーム呼ばわりは確かに良くないかもしれない。

 

「……どれがいい?」

「別に構わぬよ。どれであっても。だが姓名をいちいち口に出しているのはな……」

「……ならば、小次郎でいいか?」

「委細承知した。私はなんと呼べばいい?」

「主……っていうのは俺としてもむずがゆいからな。名前で呼んでくれ」

「了解した。ならば刃夜、と……呼ばせてもらおう」

 

互いに互いの呼び名を決め、俺たちの距離が少しは縮まった……かもしれない。

別段この佐々木小次郎という男が怪しいといっているわけではない。

だが如何せん不可思議な現象の塊であるこいつを、そこまで瞬時に信じていい物かわからないのだ。

 

……いや、ごちゃごちゃ考え過ぎか

 

俺は確かに人間だが……それと同時に剣士でもある。

そして佐々木小次郎……小次郎も野太刀を背負っているのならばやるべき事は一つ……。

 

「……小次郎よ」

「……何だ?」

 

俺の雰囲気の変化を察してか、小次郎が俺に鋭い眼光を向けてくる。

その鋭さは、まさに日本刀のように鋭利で鋭い視線だった。

それに身体がゾクリと……興奮し高揚したが、それを抑えて俺は言葉を続ける。

 

「昨夜言っていた、佐々木小次郎という名は、偽名と言えなくもないといっていたな?」

「いかにも。私は佐々木小次郎であって佐々木小次郎ではない。あくまでも佐々木小次郎という存在の殻をかぶった人間に過ぎん」

「だが、佐々木小次郎を名乗り、そして得物に野太刀を持っている以上、相当できるんだろう?」

 

おそらく小次郎自身も、ここまで言えば俺が何を言いたいのかわかっていただろう。

だがそれでも小次郎は、俺をバカにするのでもなく、悠然と腰掛けたまま、俺に鋭い目を向け続ける。

 

「俺は今日も店の仕事がある故に、長時間は不可能だが……夜明けまでまだ時間がある。どうだ? 互いに剣士として、口で語るのは無粋だと思わないか?」

「……なるほど。まさしくその通り」

 

その言葉で、小次郎は静かに立ち上がり、俺へと近づいてくる。

狩竜の間合いよりも数歩離れた場所で、停止した。

距離にしておよそ一丈(いちじょう)程(約3m)。

そして静かに、背中に背負う鞘から、野太刀を抜き放った。

 

「私はどうやら幸運だったようだ。私よりも長い野太刀を使う男に興味を持ち、それの召喚に応じたのは半ば気まぐれだったのだが……よもやこれほどの使い手だとは思わなんだ……」

 

切っ先を一度直上へと向けて、静かにそれを俺へと向けてくる。

小さくはあるが、決して弱くはない……当然軽くもない殺意を、同時に向けて……。

 

「さぁ……果たし合おうぞ……。刃夜……」

「期待に応えられるか謎だが……。おそらく俺の方が弱い上に、これほどの相手の対人戦は久方ぶりでな。少し手加減してくれると助かる」

「ふふふ……その必要性は、あまり感じないがな……」

 

小さく笑い……そして直ぐに互いに口を閉じ、お互いを見つめる……。

 

 

 

 

俺が手にし、構えるは……刃渡り七尺四寸の超野太刀、狩竜……

 

それとは別にいつものように左腰に打刀夜月を、後ろ腰には水月を差す……

 

 

 

対するは……

 

 

 

刃渡り五尺の野太刀を持つ、侍……佐々木小次郎……

 

 

 

構えている俺と違い、小次郎は自然体……直立のまま構えを取らなかった……

 

どうやら無形……つまり構えを取らないのが、佐々木小次郎のスタイルらしい……

 

しかしその姿を見ればわかる……

 

決して俺を舐めて、構えていないのではないと言うことを……

 

 

 

「……」

 

「……」

 

 

 

互いに言葉を発しない……

 

発しえない……

 

今、この場に置いて言葉は不要にして、不純なもの……

 

互いに刀剣を携えて、互いに斬り合いを求めるならば、語るのは言の葉ではなく、剣戟にて……血と技で語る……

 

だが直ぐに斬り合うのも無粋というもの……

 

互いにどう手を出し合うのか……

 

いかに敵の剣を躱し、懐に入りて敵を切り裂くのか……

 

気当たりによる、殺意と殺意の鬩ぎ合い……

 

敵の隙を、攻め気を誘い、己が有利になるために、殺意をぶつけ合う……

 

だがこれの勝負は直ぐに決着が付いてしまった……

 

 

 

……やばい

 

 

 

昨夜の様子から間違いなく一級品だと思っていたが誤りだった……

 

一級ですら収まらない、否、それどころか特級でも収まるか怪しい……

 

規格外だ……

 

測定不能でもいい……

 

目の前で野太刀を手に佇む相手の実力を推し量るのは、俺の未熟な眼力では不可能だった……

 

 

 

ならば……

 

 

 

気迫の勝負で負けても、剣戟にて勝利すれば問題はない……

 

正直言えばそちらも、対人戦のブランクが長い今の俺では勝てるとは思わなかったが……

 

だがそれでもやりもしないで敗北を認めるなどあり得ない……

 

ましてやこれは互いが互いを知るための儀式……

 

斬り合いもせずに終わるという選択肢はあり得ない……

 

 

 

「……どうやら殺意のやり合いでは足下にも及ばないようだ」

 

「そうか? なかなかに心地いい殺気を放ってくるが……。巨大であり、強大な殺意を……」

 

「お褒めいただきありがとう……」

 

「……」

 

 

 

殺意を膨らませ、それを徐々に徐々にすぼめ、鋭くし、鋭敏へと変化させる……

 

それを感じ取ってか……小次郎の眼光がより鋭くなった……

 

冬の冷え切った夜気とは違う……冷たい何かが……俺の身体を震わせた……

 

 

 

殺意という……冷気が……

 

 

 

それを感じ取り……俺は気力にて強化した身体能力にて一歩進み……狩竜を薙ぎ払った……

 

開始の合図は、必要はない……

 

そんなものはあり得ない……

 

元来真剣による斬り合いとは、そんなものなどないのだから……

 

ただだた……互いに互いの隙を、切り込むべき場所を見つけて刀を振るうのみ……

 

そこに一切の容赦はなく……刀による呵責ない斬撃を繰り出すだけの単純にして明快な……殺しの意志……

 

 

 

「!?」

 

 

 

一瞬予想外の速度に驚いたのか、小次郎が驚愕の表情を浮かべたが、それはまさしく刹那の時間のみ……

 

直ぐに俺の剣戟に備えて、静かに刀を移動させる……

 

夜と言ってもまだ差し支えない時間に、硬質な音が響き渡る……

 

それ以外に音はしない……

 

戦闘が始まる前より、虫も、鳥も、音を発していなかった……

 

むしろこの場にいるのは俺と小次郎だけかもしれない……

 

殺意の奔流を感じ取って、ここら一帯の生物全てが軒並み移動してしまったかのような感じがする……

 

 

 

二人だけの空間で……二振りだけの、殺し合い……

 

 

 

!!!!

 

 

 

敵の剣が移動し、硬質な音が響きかせながら、俺の狩竜を流すようにして斬撃が回避される……

 

そして技後硬直の俺に……明確な殺意が迫り来る……

 

瞬時の踏み込みで……一足にて一丈もの距離を駆け抜ける小次郎……

 

ぞわりと……肌が粟立つのが感じられる……

 

狩竜での迎撃は不可能なので……俺は精神を研ぎ澄まし、肌で敵の攻撃を感じ取って、大幅に動いて避ける……

 

余りにも鋭すぎたその閃きを、完全に見切ることは不可能だと……悟ったからだ……

 

初撃による奇襲が失敗し、あげく狩竜の重き斬撃をいとも容易く流した敵の技量は計り知れない……

 

だが、これで負けるわけがない……

 

俺は必死になって身体を動かし、距離を離す……

 

小次郎も、狩竜の間合いより一歩離れた位置に移動する……

 

そして、互いに静止する……

 

無論視線だけでなく、五感全ての感覚を……第六感すらも相手に向けたままだ……

 

 

 

「驚いたな……」

 

 

 

その静止の状況で、小次郎がぼそりと言葉を漏らす……

 

俺はそれに意識を傾けつつ、一切の油断をしない……

 

 

 

こいつを相手に……出来るわけがなかった……

 

 

 

「先ほども驚異的な速度だったが……今の斬撃はより恐ろしかったぞ……。お主……先ほどまで力を抑えて太刀筋を読まれないようにしていたな?」

 

「……卑怯だったか? お前ほどの相手を前にして、全ての手の内をのっけから晒すのは危ないと判断したのでな。そういうお前も俺の特訓を見るだけで、自分の剣は全く見せていないのだからな……おあいこだろう? 俺の特訓を見ているときも舐めるように俺の動きを観察していたしな」

 

「いやいや……感心したよ。本当に私は幸運だったようだ……」

 

 

 

味方であり、明確にわかってはいないが……主従の関係であるはずだというのに、俺たちは、互いに互いを、まるで好敵手のように見ていたのだ……

 

 

 

 

 

 

まるで初めから……こうして斬り合いを望んでいたかのようだった……

 

 

 

 

 

 

「さて……続きを……」

 

 

 

「……しようか!!!!」

 

 

 

ぼっと、空気を押しのけて、俺の殺意をはねのけて、小次郎が突貫してくる……

 

得物の間合いで負ける野太刀を持つ小次郎がその間合いを潰し、自分の刃圏に潜り込もうと……

 

それを黙って見ているわけにはいかない……

 

俺は狩竜を全力で……気だけでなく、魔力さえも行使して、最強の斬撃を繰り出す……

 

 

 

「!? さらに剣速と威力が増したか!!!!」

 

 

 

歓喜に震える……小次郎の声……

 

狩竜の長さに重さ……

 

それに気と魔力が合わさって、最強の一撃を放った……

 

だが敵も恐ろしき男……

 

その狩竜の斬撃を、小次郎はその野太刀で流した……

 

普通であれば、刹那の時間で迫るこの薙ぎ払いの野太刀を躱すことは叶わず……ましてや剣で捌くことなど、出来る物ではない……

 

だが敵は凄まじかった……

 

避けるのではなく、己が得物で俺の狩竜を流したのだ……

 

 

 

 

 

 

その技量は……もはやあり得ないといってもなんら問題はない……

 

 

 

 

 

 

これほどの技量を持ち得た存在がこの世に存在していたのか!?

 

 

 

そう思えてしまうほどに、俺は内心で驚愕する……

 

それと同時に、手が、背中が、脳が、心が……沸騰した……

 

肌が泡立ち、歓喜に身体と心が震えた……

 

狩竜は威力があり間合いがある分、取り回しに難がある……

 

一度防がれてしまっては、容易に敵の侵入を許してしまう……

 

先ほどとは違い、敵の剣撃を避けるのは難しかった……

 

それを防ぐために、俺は咄嗟に左手で腰の水月へと手を伸ばし、即座に抜刀した……

 

 

 

 

 

 

!!!!

 

 

 

 

 

 

硬質な音が……俺たちの腕を、心を震わせる……

 

目と鼻の先で、朱い花が散って、俺たちを一瞬照らした……

 

水月には鍔がないが、根本で受けたその剣戟は、そのまま鍔迫り合いへと移行した……

 

防いでいなければ、間違いなく命を絶っていたと思われるほどの、鋭い一撃だった……

 

 

 

「……咄嗟に腰の物を抜くとは……。先ほどのさらなる剣撃といい……お主、本当に人間か?」

 

「昨日の槍兵にもそう言われたよ……。確かに普通とは色々と言い難いだろうが……俺は……」

 

 

 

その言葉と供に力を込める……

 

するとあっという間に力の均衡が崩れる……

 

どうやら技量はともかく、身体能力及び筋力では、俺に分があるようだった……

 

 

 

「人間だ!!!!」

 

 

 

そう吼えると同時に、左手に力を込めて水月を敵事薙ぎ払い、鍔迫り合いを終わらせる……

 

さらにそのまま体当たりを刊行し、身体事相手へとぶつかる……

 

が、それもひらりと、至極あっさりと避けられてしまった……

 

さらに俺の狩竜が襲うが……それも紙一重ですっと、躱されてしまう……

 

俺の得物が得物だからか、互いにヒット&アウェイのような戦闘になってしまう……

 

再び一丈ほどの距離が……俺たちの間に生まれた……

 

これほどの間合いを持った相手とやり合うのは、小次郎自身初めてなのだろう……

 

攻めあぐねているような感覚がある……

 

だからこそ俺がこうして拮抗できているのだろうが……

 

 

 

 

く、クククク

 

 

 

 

笑った……

 

心の底から……

 

それこそ身体の奥底から絞り出した……俺の穏やかならざる笑み……

 

敵も俺と同じなのか……

 

その精悍な表情が笑みで歪んだ……

 

互いに、互いを斬り合うという……穏やかでない、その行為を……

 

 

 

 

 

 

俺たち二人は……至上の喜びで行っていた……

 

 

 

 

 

 

愉しかった……

 

愉快であり痛快であり爽快であり壮快だった……

 

愉しいと……心の底からはき出せるほどに、愉しかった……

 

これほどの力量を持った相手との斬り合いは……至高であり至宝だった……

 

さらに、互いの得物が……冷え切った空気を斬り裂いた……

 

 

 

一合……

 

 

 

二合……

 

 

 

三合……

 

 

 

何合斬り合ったのかもわからない……

 

 

 

そんな事は些細なこと……

 

 

 

ただ、ただ……斬り合い、太刀を振るう度に、衝撃が、感触が……俺たちの肌を振るわせ、気分を高揚させた……

 

 

 

己の顔を見ることは出来ないが……間違いなく俺の顔は歓喜で満たされていたはずだ……

 

 

 

それは相手……小次郎の表情を見れば一目瞭然……

 

 

 

なぜなら、佐々木小次郎も……笑っていたからだ……

 

 

 

「……ふ、ふふふふ」

 

「……く、くくくく」

 

 

 

低く、低く……笑った……

 

 

 

ありのままに笑えば、感情のままに笑えば、隙が出来てしまうから……

 

 

 

それで勝負が終わってしまうから……

 

 

 

そんなことは許されない……

 

 

 

 

夜明けが近づき、森の木々の上の方が、赤く染まっている……

 

 

 

夜と朝の境界線……

 

 

 

その狭間の時間とでも言うべき時間に、響き渡る……俺と小次郎の剣戟の音……

 

 

 

心地よく響く……澄んだ音……

 

 

 

 

 

 

二人で奏でる……死の……剣の旋律……

 

 

 

 

 

 

まだだ……

 

 

 

まだ、足りない……

 

 

 

もっと……もっと……

 

 

 

可能であれば永遠に……これを続けていたい……

 

 

 

だがそれは当然出来るわけもない……

 

 

 

だからこそ、今のこの時間が……ひどく……狂おしいほどに愛おしい……

 

 

 

まだまだこの時間を……

 

 

 

 

 

 

続けていたい……

 

 

 

 

 

 

「はっ!」

 

「づぁっ!」

 

 

 

!!!!

 

 

 

小次郎に流されそうになった狩竜の軌道を一瞬で無理矢理変えることによって、俺は小次郎との野太刀と鍔迫り合いを行う……

 

 

 

互いの顔が間近に迫り……俺たちは互いに笑んでいた……

 

 

 

互いに、どれほどこの時間を愛おしいと感じているのか……

 

 

 

それを見ただけでわかるし、仮に見えなくても関係なかった……

 

 

 

一合、一合……

 

 

 

刀を振るう度に、刀が交差する度に、わかるからだ……

 

 

 

まさに剣による、剣のための……語り合いだった……

 

 

 

一瞬の均衡を崩し、俺が小次郎を吹き飛ばす……

 

 

 

吹き飛ばすと同時に間合いを詰めて、俺は狩竜で小次郎を薙ぎ払わんと薙いだ……

 

 

 

だがそれを小次郎は紙一重で避けて……

 

 

 

俺へと突貫した……

 

 

 

今度も水月を抜こうとしたが、その前に……直ぐに結果が訪れてしまった……

 

 

 

「私の勝ちだな……刃夜」

 

 

 

「……そうだな。まいった」

 

 

 

狩竜の攻撃を躱され、懐に入られてしまった俺の首筋に、小次郎の野太刀がひたと当てられていた。

それで俺たちの朝の斬り合いは終了した。

そしてこれでわかったことがあった。

 

この佐々木小次郎という人物は……間違いなく最強クラスの剣士であると言うこと

 

何よりも、信頼に足る人物であると言うこと

 

これだけわかれば十分だった。

元々敵ではなかったが、今回の斬り合いで確定したのだ。

それを喜ぶべきだろう。

それに何より、これほどの対人戦を出来る相手というのは俺としてはかなり貴重だった。

 

「また明日も付き合ってくれるか?」

「無論だ。むしろ私からお願いしたいくらいだ、刃夜」

 

互いに互いをライバルとして認識した瞬間だった。

そしてそれと供に、俺たちは信頼に値する人物であると、互いに認識したのだった。

別に俺が主だと言い張るつもりはさらさらないが、それでも俺たちはこのときやっと主従となり、仲間となったのだ。

俺と小次郎は朝焼けに染まりつつある冬木の深山町を供に歩いて、店へと帰還したのだった。

 

 

 

 

 

アーチャー

筋力D

魔力B

耐久C

幸運E

敏捷C

宝具???

 

単独行動B

マスターが存在しなくても活動できる能力。Bならば二日間は存命可能

 

対魔力D

一工程による魔術を無効化。魔術避けが施されたアミュレット程度の能力。要するに気休め程度

 

 

 

 

 




はい終了~
なんか1.5万字使ってもこれだろ?
果たしてこの作品終わるのにどれほどの時間がかかるやら……

もうすこし短く書いた方がいいかな?



後一応忠告しておく
私、刀馬鹿は基本遅筆ですので、今は奇跡的にすごい短いスパンで掲載してるけど、四月になったら私も忙しくなるので一ヶ月に一話とかが普通になるかもしれないのでそこを注意しておいて下さいね?
実際モンハンの話は一時期一ヶ月に一話だった


ともかく終了~
次はようやく最優のサーヴァントが登場しますよ~www


ハーメルンにて追記
実際にじファン停止してから早二ヶ月以上が経過してますが・・・・・・
新しい話はたったの二話しかかけていません・・・・・・
遅筆だ・・・・・・
涙が出るね
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。