月夜に閃く二振りの野太刀   作:刀馬鹿

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今回結構刃夜が外道wwww
外道というか卑怯?
意味は同じかwww
戦闘はほとんどないです
でもその分ネタは満載ですのでお楽しみいただけるかと思いますw
ちなみに今回びっくりするぐらい長いからw

本文約30000字以上(携帯で大体28ページ)、後書きは大長編で……何文字でしょう!?


あまりヒントにならないが(空白多いから)……携帯において6ページですね
機種によって誤差はあるかもしれませんが、そこはご容赦ください



当てたらすごいけど、特にプレゼントとかはないですよ?www



当てる人いるかね?
そんなくだらないことを考えながら、もしくは考えずに(後者の方が圧倒的に多いでしょうがw)読んでくれたら嬉しいですwww



ハーメルンにて追記
まぁ数えないでしょうけど、とりあえず後書きは渾身の出来です





魔法使い

エクスカリバー

 

数多の聖剣の一つであり、最も有名と言っても過言ではないその剣は、常に一人の英雄と供にあり、語り継がれた存在である。

その英雄は、英国史上屈指の大英雄のアーサー王のことである。

異国の侵攻や乱発する内乱で混乱していた時代、アーサー王は王たる資格を試すという「選別の剣」を岩より引き抜いて、ブリテンの王となった。

しかしその「選別の剣」がとある戦闘で折れたとき、泉の精霊が「エクスカリバー」をアーサー王に授けたという。

その剣と魔術師マーリン、円卓の騎士らと供に長い年月の多くの戦を、アーサー王は勝利へと導いてきた。

やがて王は実の息子、モードレットの反逆によって命を奪われる。

命を落とす間際に、アーサー王は自分の部下に命じて、聖剣を元の所有者である泉の精霊へと元へと返却させた……。

 

 

 

 

 

 

これがアーサー王とエクスカリバーの物語の終焉だった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

「ほぉ……これはまたすごい光景だな」

 

夜を切り裂く一条の光を、さらに強烈な光の柱が切り裂く光景を見て、小次郎が感嘆の声を漏らしていた。

そう言った知識がない小次郎としてはあれが何なのか全くわかっていないのだろう。

正直な話、俺としても明確にわかっているわけではない。

だがそれでも……細かいことはわからないでも問題はなかった。

 

……なんとまぁ

 

恐ろしい威力を有しているのがわかる。

アレではあの光を受けたサーヴァントは間違いなく消滅しているはずだ。

 

『凄まじいな』

『アレが何かわかるのか?』

『明確にはわからない。だがおそらくアレは魔力を光に変換しそれを射出しているのだろう。この距離からも見えることを考えれば……相当な規模の攻撃だ』

『だぁな』

 

封絶の予想を聞いて、俺も納得していた。

魔力を光に変換しているという封絶の予想が本当ならば相当に厄介な攻撃手段だ。

何せ光だ。

紛う事なき光であるかどうかは謎だが……それでもあれの速度は一瞬で夜空を横切ったことを鑑みても、光に近い速度を有していそうだった。

それはわかる。

わかるのだが……。

 

……っていうか何が起こってるんだ?

 

あの屋上で何が起こっているのか……見当が付かなかった。

さすがにこれほどの距離があっては気配を感じ取ることもできない。

戦闘が起こっていることはわかるのだが……何と何が戦っているのか……。

 

聞いてみるか?

 

「なぁ遠坂凜?」

「……何かしら?」

「あれ、何と何が戦ってるんだ?」

「……何で私が教えないといけないのよ。あんたはさっきこの場はこれで終わりと言ったから、もうあんたに何かを教える義理はないわよ?」

「……その通りだな」

 

実に刺々しい……純度120%の嫌がらせで出来ている言葉を受け取って、俺は苦笑することしかできなかった。

確かに「生かしておいてやるよ」と言われて腹立たない奴はいないだろう。

俺自身傲慢なことを言ったという自覚はあるのだが……それでもこうまで嫌われてしまっては、ちょっと傷ついてしまう。

そうさせたのは俺だが。

 

まぁ別に遠坂凜に嫌われても正直どうでもいいが……

 

この態度、そして士郎がこの場にいないことから、あの宝具はセイバーの物だと予想できるが。

ビルの屋上から光が溢れているアレは、セイバーの宝具なのだろう。

宝具という単語は何度か聞いていたが……実際目の当たりにしたのは初めてだった。

しかもライダーの宝具よりも派手だ。

無論派手と言うだけではないだろうが……。

 

今の俺では……一瞬で消し飛ぶだろうな……

 

気壁程度で防げるとは思えなかった。

全ての得物達の刃気を一斉に解放したとしても、俺の実力ではあれを防ぐことは無理だろう。

 

例外としては夜月が破壊神との戦いの時に見せた、あの気壁……

 

あれならば間違いなく防げるだろう。

あの光は確かに強大な力を有しているようだが、それでも「空間」までも破壊していない。

破壊神のあの力の奔流は空間すらも破砕していた。

その空間破砕の力を難なく受け止め、挙げ句の果てにはそれを押し返して霧散させた夜月の究極の気壁が負けるわけがない。

が……

 

任意に発動できないがな……

 

未だ夜月のあの気壁の発動条件はわかっていない。

何となくわかっているが……仮に俺が予想した通りの発動条件だとしたら、任意に発動することはほとんど不可能と言っても良かった。

 

まぁあれを撃たせなければいいだけの話だから対策はいくらでも立てられ――

 

 

 

そう思案していたその時……

 

 

 

 

 

 

左腕前腕が何かを捉えたのを……俺は感じていた……

 

 

 

 

 

 

……何だ?

 

 

 

左腕前腕の力、龍脈と魔力(マナ)を自在に操り、それの管理をしていた老山龍が地脈の乱れを捉えていた。

俺はそばにいる遠坂凜とアーチャーに悟られないように注意しながら、それを探った。

 

……これは乱れと言うよりも……一部が肥大化? いや……何か地脈ではない何かがどこかに移動している?

 

地脈の乱れではなく、俺が見つけたのは地脈の流れに沿って何かを運搬している感じだった。

地脈というものは大地の力の脈動だ。

そこで何かを運搬するというのならばそれは大地の力でしかないはず。

 

いや、これは……龍脈その物ではなく、なんかを運んでいる……これは……気?

 

その運搬してる物が何かに似ていると感じて、それに該当する物を探していたのだが……それに心当たりがあった。

俺が最も扱う……体力という気の力。

しかし何というか……混合物のような気である。

それがどこかに運ばれていく……。

 

いや……龍脈を経由する以上、終着点は……

 

 

 

この辺り一帯の龍脈の大元……

 

 

 

 

 

柳洞寺

 

 

 

 

 

 

ふむ……。これは調べてみる必要性がありそうだな……

 

「小次郎。行くぞ……。探索を続ける」

「……うん? いいのか? アレを見に行かなくて?」

「もうすでに終わっている。今更行ったところで無意味だ」

「……ふむ。承知した」

 

俺の何かを察してか、何も聞かずに小次郎が俺に追随した。

それを訝しく思いつつも、それでも士郎とセイバーを放っておく訳にはいかないと判断したのか、遠坂凜があの屋上へと向かっていく。

俺たちを睨みつけながら……アーチャーが安全のために先行していた。

 

さて……

 

『参るぞ小次郎。何か起こっているようだ』

『どこでだ?』

『柳洞寺だ……』

『ほぉ……懐かしい単語だな』

 

柳洞寺という単語に珍しく小次郎が知っているような仕草の言葉を漏らした。

 

『? 懐かしい?』

『以前……生前か。星を見に柳洞寺まで出向いたことがあってな』

『ほぉ……』

 

そんな会話を行いつつ、俺たちは夜の深山町へと向かっていく。

俺は柳洞寺へと直ぐに向かいたいところを必死に抑えて、探索しているふりをした。

直ぐに向かってしまっては何かが起こっていることを他の連中に悟られてしまう。

そうして長い時間を掛けて、俺は柳洞寺へと続く長い長い……石畳の階段へと来た。

そして……そこで俺は気がついた。

 

……これは?

 

長い長い階段へと続く石畳の道……参道。

それ以外の場所、つまり森木々が連立している所……つまりは森に強固な結界が張られていた。

否、別段それは不思議でもない。

以前から結界その物はあった。

寺という空間のために、悪霊と言った類を入れさせないためのものだと勝手に解釈していたのだが……。

 

それだけじゃなさそうだな……

 

しかしよくよく観察してみると、ある種の特徴があるようだった。

人間である俺にはそこまでの弊害はなさそうだが、それでもサーヴァントである小次郎にはきついと感じるような結界だ。

 

 

 

何というか……自然ではない霊体の侵入を拒むような結界である感じだ……

 

 

 

以前はこの結界がどういった類の物を排除するのかわからなかったが、傍らにいる小次郎のおかげで俺ははっきりとわかった

 

 

 

この結界は自然(・・)霊以外の不自然な霊体を排除するための結界なのだ……

 

 

 

小次郎……つまりはサーヴァントのような……

 

 

 

空気がよどむ都合上、一時的にではなく永続的に結界を張る場合は逃げ道が必要なので、正門へと続くその道には張り巡らされていない。

それも以前と同じままだが……以前には感じ得なかった違和感がある。

 

罠……だろうな……

 

もしもここに何かがいるというのならば、唯一の侵入口となる場所を放置するわけがない。

故にこの参道にはいくつかの罠なんかが張り巡らされていても何ら不思議はない。

俺の今の装備は軽装備……何が起こるかわからない上に、敵の本拠地に攻め入る以上、選択肢は多いに越したことはない。

 

……とりあえず何かがいることは間違いないな

 

山門へと続く参道に罠が仕掛けられていること。

以前になかったそれがあるだけで、この柳洞寺に何かがいることがわかった。

しかしそれだけでは張り巡らされた結界の特異性がよくわからないが。

 

……なんかきなくさいな?

 

そう思うのだが……材料が少なすぎて結論が出せない。

面倒になったので考えるのをすっぱりとやめた。

柳洞寺に何かしらの変化があったこと。

正体がわからないまでも、セイバーの切り札を知ることが出来たこと。

情報収集としては十分すぎるほどの収穫だ。

柳洞寺をさらっと流しながら見て……帰ろうと思ったのだがその時、視線を感じた。

 

!? 何だ!?

 

遙か彼方から俺を見つめる視線に気づいた。

俺から見ることは叶わないが……この視線は知っている。

 

 

 

……アーチャーか!!!!

 

 

 

まさに射貫くかのようなその目線は……弓兵のものに他ならない。

 

……なるほど『弓使い(アーチャー)』のクラス名は伊達ではないと言うことだ

 

視線が発せられているのは、大橋のアーチの上……

まさか大橋からここまで距離がある俺を見るとは……。

 

ちっ!? どうやら何かあると悟られたようだな……

 

注意深く行動したのが、返って裏目に出たかもしれない。

何かがあると知られてしまったために、明日やつらもこの柳洞寺へと来る可能性がある。

まだ動くべき状況ではないが……それでも明日、何かあると考えてもいいだろう。

 

面倒なことになったな……

 

もうすでに夜も更けている。

俺の装備も今宵は準備万端とは言い難い……。

今宵の活動はもうこれでいいだろう……。

 

「ちっ、帰るぞ小次郎」

「ふむ、やられたな?」

「あぁ」

 

さすが小次郎。

アーチャーの視線に気づいていたようだ。

クラス名からもっと相手の能力を考えなかった、俺の甘さに敗北感を味わいながら……夜の深山町を歩いて、店へと帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

(気づかれた!?)

 

薄暗い空間。

おそらく中心にあるであろう、浮遊している球体が発する光だけが、この空間の光源だった。

その球体には、何か映像が映し出されていており……そこには店へと帰還している刃夜と小次郎の姿があった。

それを覗き込んでいる人物は、フードで顔を隠しているためにその顔を見ることは叶わない。

だがその細い、華奢とも言える体つきを見れば、その人物が女性であることがよくわかる。

 

魔法使い(キャスター)』のクラスのサーヴァント、キャスターである。

彼女は刃夜が怪しいと感じ、偵察に来た柳洞寺の一室に自身の私室を構えており、そこで使い魔による視覚情報から刃夜と小次郎を監視していた。

 

(……失敗したわね)

 

新都にて、莫大な魔力の奔流を検知したキャスターは、それを隠れ蓑にして今までよりも多めな量の魔力を吸い上げて地脈に乗せて、この柳洞寺まで運んでいたのだが……それに気づいたのが刃夜だったのだ。

 

(まさか、気づくだなんて)

 

 

 

魔術師の英霊であるキャスターは当然魔力に特化したタイプなのだが……相性の問題もあり、聖杯戦争では最弱と言われている存在である。

それはクラス特製のスキル影響によるもので、大半のサーヴァントが「対魔力」というスキルを有しているからだ。

これは魔術攻撃を無効化する能力のことである。

ランクによって魔術の無効化が当然異なるが、最高クラスの対魔力を有する『剣使い(セイバー)』には魔術ではダメージを与えられないと断言してもいい。

むろん対魔力を超えるほどの魔術を行使すればいいのだが……彼女にはそれが出来なかった。

否、今の状況では出来ないといった方がいいだろう。

キャスター自身は非情に優秀な魔術師であり、その実力ははっきり言って「魔術師」という枠組みの中……いやそれどころかその分野の中では最強の実力を有している。

そのため、彼女は最優のサーヴァント『剣使い(セイバー)』であっても勝てなくはない(無論策を張り巡らせてだが)。

 

(……見つかることは覚悟していたけど、よりによってなんて厄介な存在に)

 

使い魔を設置した場所より、遠ざかっていく二人組を水晶玉の物から見送りつつ、キャスターは憎しみで歯がみしていた。

彼女自身は最強クラスの魔術師であることは間違いない。

だが……彼女、キャスターには魔力がないのだ。

ないといっても別段すぐさま消滅するほど少ないわけではない。

彼女が実力を発揮するほどの魔力の蓄えがないのだ。

「陣地作成」という固有スキルを使用し、柳洞寺に擬似的な「神殿」を造り上げて、龍脈より少しずつ魔力を吸収していた。

しかしいくら彼女が優秀とは言え、龍脈から直接魔力を吸い上げることは難しく、また生きているわけではない彼女には龍脈の力を自身の糧にするのは難しい。

故に彼女は龍脈という「運搬路」に、自身の力で吸収した生きた人間達の生気……「生命力」を乗せて、この辺りの龍脈の大元である柳洞寺へと運び、それを糧にしていた。

敵である他のサーヴァントに気づかれぬように、吸い出された本人でさえもほとんど体調不良にしか思わないほどの微細な量を、数え切れないほどの人間から吸い上げていた。

 

(あの人間……)

 

本来ならば、彼女の行っている行為はばれるはずがなかった。

何せ超優秀と断言できるキャスターが、細心の注意を払って行っていた魔力の吸い上げは、例えサーヴァントであろうとも気づけないほど自然な物だったのだ。

確かに今回、いつもよりも多めに吸い上げたことは事実だ。

だがそれでもセイバーやアーチャー、ライダーは全く気づいていなかった。

 

(……本当に人間なの?)

 

つまりこれはキャスターの失策ではないのだ。

 

 

 

気づいた人間……鉄刃夜という存在が普通じゃないのだ……

 

 

 

しかしそれもある意味で当然といえた。

 

龍脈や生命の魔力(マナ)を蓄え使役し、自在に使用し、従わせることの出来る老山龍の力を宿した刃夜が、世界が異なるとはいえ龍脈の異変に気づかないわけがなかった。

 

むしろそんな存在である刃夜が今まで気づかなかったことこそ、キャスターの実力を物語っている。

 

 

 

(……明日奴はここに来るはず)

 

それが恐ろしかった。

何せバーサーカーに普通に斬りかかることの出来た存在だ。

しかもサーヴァントまで従えている。

 

自身が従えるべきだったはずの……サーヴァントを……

 

それを思うとさらに憎念が彼女の心に渦巻くが、そんな場合ではなかった。

 

(……あまり魔力は使えないけど)

 

それでも、自身の望みのために生きていたい。

そのためにキャスターは、あまり多くない魔力を使用して、必死に対策を練った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

「う~ん……うまくいかないな?」

 

日が昇り始めた早朝。

まだほとんどの人間が眠りについているだろうその時刻に……廃墟のような武家屋敷でそんな声が上がった。

武家屋敷の広い中庭。

その場にいるのは腰に打刀を差して唸っている刃夜と、その後方で野太刀を振るっている小次郎だった。

今朝方の訓練という名の斬り合い……ちなみに刃夜の負け……を終えた後だ。

後方で野太刀を振るっていた腕を止めて、小次郎が不思議そうに刃夜へと向き直る。

 

「何がうまくいかないんだ? 先ほどから軽業師のように飛び跳ねているが?」

「いや……多分今の俺なら出来ると思ってやってるんだが……うまくいかなくてな……」

「何をだ?」

 

再度小次郎が問いかけるが、集中しているのか刃夜から反応がない。

付き合いが短いとはいえ、刃夜が武術に置いて無駄なことをしないと、小次郎もすでにわかっていた。

それに刃夜は小次郎では知りもせず、わかりもしない不思議な力を有していることも知っていた。

そのため小次郎が取った行動は……。

 

(ふむ。見学するか)

 

何をするのか興味が湧いた小次郎は、野太刀を鞘に収めて武家屋敷の道場縁側へと腰掛けて、刃夜の行動を見守ることにした。

その刃夜は、そんな小次郎に気づかずにただひたすらにジャンプを繰り返していた。

 

 

 

もしもこの場にわかる人がいたら……まるで青い格好の右腕バスター野郎がダッ○ュジャンプを練習しているような光景に見えたかもしれない。

 

 

 

もしくは鳥人族の赤いパワードスーツのスクリュージャンプだろうか?

 

 

 

それほどまでに刃夜は無駄に飛び跳ねては着地して思考し、跳んでは思考するを繰り返してた。

それをのんびりと小次郎は面白い物を見るように、眺めていた。

 

(相も変わらず……面白い奴だ)

 

それが刃夜に対する小次郎の感想だった。

確かに自分はその生涯のほとんどを、剣を振るうことのみに費やした。

それ故に一般的な世俗にも疎く、そしてそれ以上に裏のことはほとんど知らないといっても良かった。

 

ただ自分の剣技さえ磨ければそれで良かった……。

 

それは死後、正規ではないとはいえ英霊として祭り上げられても、その考えは変わらなかった……。

 

 

 

だがそんな彼が興味を惹かれたのが、刃夜だった。

 

 

 

確かに小次郎の野太刀は長い。

 

だが、彼以上の野太刀を所有し、それを振るっていた武人は数多く存在した。

 

しかしそれは彼にとってはどうでも良かった。

 

自分の剣技さえ磨ければそれでいい存在である小次郎が、自分よりも長い野太刀を扱う人間に、興味を引かれるはずがないのだ。

 

だが……それでも、刃夜の存在は見過ごせなかった。

 

 

 

刃夜の持つ、七尺四寸の野太刀、狩竜に……そしてなにより、刃夜に惹かれたのだ……

 

 

 

何故かは小次郎自身にもわかっていない。

 

だがそれでも小次郎は見たいと思ったのだ……。

 

 

 

あまりにも異質で異常な……刃夜の事を……

 

 

 

そして気がついたら現界して、刃夜のそばに佇んでいたのだ……。

 

サーヴァントという異質な存在となって……。

 

それもあり得ないクラスでサーヴァントとして現界したのだ……。

 

 

 

「マスターの天敵」と言われる、『暗殺者(アサシン)』。

最高クラスの「気配遮断」スキルを有しているために、常に気を張っていなければいけない相手である。

何せ気配遮断のスキルを用いた『暗殺者(アサシン)』には、おなじサーヴァントでも気配を捉えるのは難しい。。

サーヴァントが気づかないのであれば、必然的に性能で劣っている人間が気づくわけがない。

気配遮断を行ってマスターに近寄り、息の根を止める。

 

故にマスターの天敵。

 

だが、攻撃に転ずればその分気配を察知できるために、返り討ちに遇うこともままあり、そこまで優秀といえるサーヴァントではない。

実際マスター相手には天敵だが、同じサーヴァントと普通に白兵戦を行った場合、ほとんど勝機はないと言っていい。

そもそも『暗殺者(アサシン)』に、斬り合いを望むべくもないのだ。

この『暗殺者(アサシン)』のクラスは本来ならば、「暗殺者」の語源となった暗殺教団の歴代頭首「ハサン・サッバーハ」のみが呼ばれるクラスである。

歴代頭首、全19人の中から一名が選ばれて召喚されるのだ。

 

 

 

しかしそれに全く当てはまらないのが小次郎だった。

暗殺者(アサシン)』でありながら、侍である彼は暗殺者ではない。

だが、それは彼にとっても……刃夜にとってもどうでも良かった。

 

 

 

自分たちが心から惹かれあい、さらには己の技量を試すにはこれ以上ないほどの好敵手である二人にとっては……クラスなんていうものは全くもってどうでもよかった。

 

 

 

(……刃夜……か)

 

 

 

まるで恋いこがれる女子(おなご)のように、小次郎は刃夜に好意を抱いていた。

 

その気持ちは全く持って嘘ではない。

 

これ以上ないほどに純粋であり、互いに互いを認めて背中を預け合うにふさわしいと思っていた。

 

 

 

 

 

 

だが、本人も気づかないほどの心の奥深くに……黒い感情が芽生えているのを、小次郎は気づいていなかった……

 

 

 

 

 

 

一人の敵として……

 

 

 

一人の剣士として……

 

 

 

一人の……好敵手として……

 

 

 

 

 

 

小次郎は、刃夜との死合いを望んでいた……

 

 

 

 

 

 

二人してそれに気づかず……刃夜が気づくわけもないが……に、刃夜は軽業師のように飛び跳ね、小次郎はそれを道場の縁側で眺めている。

 

「よし……」

 

その刃夜が、何かを掴んだように目を閉じて……見開いて再び宙へと跳ぶ。

 

そして何もないはずの空を蹴り、再び空へと舞い上がる。

 

これまではいつも通りだった……。

 

 

 

だが……今回は違った……

 

 

 

「……こうだ!」

 

 

 

その声と供に、再び刃夜が宙へと跳ねた。

 

地を蹴り、空を二回蹴った……。

 

それを、小次郎は呆れるとも驚くともしない……実に曖昧な表情を浮かべている。

 

 

 

(全く……こやつは……)

 

 

 

小次郎としては苦笑を禁じ得なかった。

 

常人では振るうどころか持つことも出来ない長大な野太刀を軽々と振るい、それだけではなく様々な力を内包し、そして今は人間業ではない三段跳びという……意味のわからないことをしている。

 

その刃夜が宙から地面へと着地する。

 

顔には何かをやりきったような……達成した時の満面の笑みを浮かべていた。

 

その表情が余りにもすがすがしくて、思わず声を上げて小次郎が笑った。

 

 

 

「ふははははは。よもや三段も宙を跳ねようとは。一体どういった原理だ?」

 

「いや、以前に説明しただろ? 気の足場を造って跳んでいるって。二度目はそれとは別に魔力の足場を形成して跳んだんだ。今の俺なら出来ると踏んでいてな」

 

 

 

嬉々として語る刃夜の言葉を、小次郎は感心しながら聞いていた。

正直いって小次郎は刃夜の言っている意味がよくわかっているわけではない。

だがそれでも自分の戦友にして宿敵が、何かを成し遂げたことは簡単に理解できている。

新たな技を会得した刃夜を褒めつつ、小次郎は話を聞いた。

 

 

 

こうしてどんどんと人間離れしていく刃夜。

魔力壁だけでなく、それを足場として再度飛び事の出来るエ○ハイク(魔力の足場バージョン)を身につけたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

「追い出された?」

「はい、鉄さんが帰った後直ぐにです。うちの学校で何かあったみたいで」

 

翌日。

いつものようにやってきた美綴に体調のことを聞いてみた。

身体自体は見舞いの時に異常がないことを知っていたので、どちらかというとその後のことが知りたかったのだが……追い出されたというのは少しだけ驚いた。

 

まぁ学園で昏睡事件起きたらな

 

美綴の話では、学園で全校生徒並びに教師が一成に昏睡してしまうという事件が起こったらしい。

結界が発動したこと自体は知っていたが、それがどのような効果をもたらすのかわかっていなかったので、それを知ることが出来た。

 

衰弱した状態で一部の例外を除く人間が運ばれたと言うことは……魂食いとか言う奴の広範囲版か……

 

どうやらあの結界は魂食いとおなじ作用を、結界内部の人間全員に食らわせるための物だったようだ。

遠坂凜に聞いていたが、それでも信頼できる人間……敵であるが故に完全には信用できない……から聞くとまた違う物がある。

程度の具合は人それぞれらしいが、死人は出ていないことからそこまで大事には至らなかったようだ。

 

「なんかベッドが足りなくなりそうだから帰ってくれって言われちゃって。まぁ暇だったからちょうど良かったんですけど」

「ふぅむ。何というか……運が良かったな」

「私は運が良かったかもしれないけど……知り合いがほとんど倒れちゃったから、あまり素直に喜べないんですけどね」

 

ライダーに襲われかけて意識を失って学園に行かずに済んだ美綴が良かったのか、ライダーに襲われずに学園で吸収された方が良かったのか……どちらがいいのかは謎だが、それでも俺としては美綴が無事なのは喜ばしかった。

 

「ふむ、友に気遣って心を痛める必要はない。運が良かったのは事実かもしらんが、それでもお主が無事なのは喜ばしいことだ。それでも気になるのならば、お主が元気な分、他の者を見舞ってやればいい」

「……そうですね」

 

小次郎の言葉にしばし考える仕草をしていたが、それでもそれが一番だと美綴自身も思ったのか、決意を新たに頷いていた。

その二人の会話を見つめつつ……俺は美綴に心の中で詫びていた。

 

今情報収集のために利用している感じがするのがいやだな……

 

だがそれでも情報収集と言う意味でも美綴の存在は貴重だった。

学園というのは一種の閉鎖空間だ。

外から内部の様子を探るのは難しい。

学園の人間で士郎と凜、二人のマスターがいるために、放置しておくわけにはいかない。

 

まぁあの二人は学校で暗躍するとか、学園を利用して何かを企むとかそう言うタイプじゃないけどね……

 

士郎は人助けのために生きているような物なので、人を襲うと言うことはほぼあり得ない。

遠坂凜は冬木の管理者として頑張っている人間だし、それになによりそう言った暗鬱とした行為を行うような人間とは思えない。

だから放置してもあまり問題はないが、何が起こるのかわからないので情報は収集しておくべきだ。

という言い訳の元、俺は毎朝美綴とのお話を楽しむのである……。

 

『何というか……言い訳にも程があるな。会話を楽しんでいること自体は嘘ではないのだろう? ならば素直に楽しみきれば良かろうに』

『やかましいぞ封絶』

 

的確なつっこみをしてきた封絶を切って捨てて、俺は美綴にさらに話しかける。

 

「となると学園はしばらく休校か?」

「そうですね。また暇になっちゃいました」

 

たはは、と苦笑しながら美綴が笑っている。

学園のほぼ全員が昏睡してしまっては、いくらなんでも二、三日は休日にするしかないだろう。

いくら途中で終わり、死者が出なくても全員が一斉に倒れたのだ。

学園側に責任がないとはいえ、それを無視するわけにはいかないだろう。

 

教師陣大変だな~。大河に出前でもしてやるか?

 

本来ならば学園に全く非はないのだが、それでも管理がどうとかなんか言ってくる輩もいるだろう。

教師はそれの対応に追われることになる。

故に大河も大変な目に遭っているはずだ。

自身も倒れたというにもかかわらず、走り回っているのが容易に想像できた。

 

大河は生徒思いなのは間違いないからな。普段のふざけた言動に目を奪われがちだが……

 

実は大河……教師とはしては結構優秀であるらしい。

まぁ若干25歳にして、すでにクラス担任をしていることを鑑みれば優秀なのは当然だろう。

しかも剣道五段らしく、武道も強い。

美綴は武道を習得し、それをきちんとした使い方をしている人間には敬意を払うような子なので、大河には最終的には頭が上がらないらしい。

 

ここで「最終的には」という単語が付くところが大河らしいな……

 

普段はやはり普段の大河らしいので、尊敬しているが困ってもいると言っていた。

 

「そう言うわけ何で、鉄さん。またお手伝いさせてくれませんか?」

「え、いやいいよ。っていうかこういった事情の時は基本的に自宅待機じゃないのか?」

 

いくらやむにやまれぬ事情があるとはいえ、平日に休みを設ける場合は、生徒は自宅待機のはずだ。

 

と、わかっていながら、こうしてランニングしている美綴を招き入れている俺がいえたことではないかもしれないが……

 

「そうなんですけど、家にいても暇っていうか……それに、お礼だってしたいですし」

「お礼って……。だから俺がお前を助けたのは別に……」

「そ・れ・で・も・で・す!」

 

……不退転だなぁ

 

もう手伝わせてもらうまで帰る気がないようだ。

そんな美綴と俺を見て、小次郎がクツクツと愉快そうに笑っていた。

 

『笑ってないで助けろよ?』

『いやなに。美綴がもしも働いてくれると言うのであれば、私としても愛でる対象が増え……』

『あ~はいはい』

 

何を言うのかわかったので、俺は念話を一方的に終わらせた。

そしてもう一方の相手に助言を頼むことにする。

 

『封絶。この場合どうすればいい? 竜人族の英知で助けてくれ』

『そう言ったくだらないと言えなくもないことで私を頼られてもだな……まぁ構わぬが。しかし仕手よ。それで美綴の気が済むというのであればさせてやってはどうだ? どこかに出かけるよりもよほど安全だと思うぞ?』

 

お前も(ブルータス)か!?

 

意外や意外。

まさか封絶までもそちらに回るとは……思わなかった。

 

まぁ確かにその通りか……

 

俺の店にいる分には、そんなに危険な目には遭わないだろう。

ならば手伝ってもらうという名目で、保護しておくのも悪くはない。

 

「わかった。頼んだ」

「!!?? はい! わかりました!」

「といっても、今日は夜の部ないんだけどな」

「? 何でですか?」

「ちょっと気になることがあってな……。調べ物にな」

 

お礼として頑張ろうと意気込んでいた美綴には申し訳なかったが、それでも夜の部をやるつもりはなかった。

夜になる前に、武装のチェックを行いたかったからだ。

他にも柳洞寺を遠目から観察して、何か変化がないか見たかったのだ。

 

『わかっていると思うが、今宵は敵の陣地に乗り込むぞ?』

『ふむ。何が出てくるか見物よな……』

『了解した。仕手よ』

 

相方達に念話でそう伝えておき、俺はそれとは全く違うことを、口にする。

 

「よ~し。んじゃ今日は美綴にも料理を作ってもらおうかな?」

「え!? む、無理ですよ! 私そんなに料理できないです」

「そんなにって事は少しは出来るんだろ? ならそれをやってくれ」

「えぇぇぇぇぇ!?」

 

そんな談笑をしつつ、俺たちは開店の準備を行う。

普段よりも人数が一人増えて騒がしいというか……和気藹々といった感じに作業を行う。

 

 

 

ちなみに余談だが……

美綴は確かに料理が余り出来なかった。

名誉のために言うが、美綴が造った料理は好評だった。

何というか、凝る料理よりも大量に造れるような料理……今回はお好み焼きを作ってもらった……が得意なようだ。

しかも量を造れば造るほど美味かった。

ある種不思議な才能である。

かわいい女の子がいるからか男性陣には好評であり、しかも女性側からも何人か学生が昼食を食べに来たときに、熱視線を送っていた。

 

……あなどれんな、この子

 

改めて、美綴のハイスペックぶりを認識した俺だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

思わぬ休日なってしまったとある日の昼食後。

作戦会議と言い出した士郎に凜が同意し、衛宮家の居間にて、士郎、セイバー、凜で今後の作戦会議が開かれていた。

ちなみに例によって例のごとく、アーチャーは見張りに立っているためにいなかったりする。

 

「刃夜が柳洞寺に偵察に行っていただって?」

「……えぇ、そうよ」

 

(何でそんなに不機嫌なんだ? 遠坂)

 

そして会議が始まって刃夜の動きを士郎が聞いて返ってきた答えがそれだった。

何故か刃夜の事で苛立ちを覚えていると見抜いた士郎は、あえてそれを聞くような愚かなことはしなかったが、その原因がわからないので困惑した。

士郎もまさか凜が、自分が死ぬ気で屋上へと上っているときに、刃夜に敗北して屈辱的な思いをさせられたとは思うまい。

 

「アーチャーが、あいつが何気ない仕草を装いつつも、柳洞寺に探索に行ったのを見ていたらしいの。あいつが何かを感じ取ったのだとしたら、きっと何かあるはずよ」

「しかし凜。一体何があるというのですか?」

「一晩あったからそれは考えておいたわ。でもね、正直考えるまでもなかったのよ。残ったサーヴァントを考えれば、あそこに何がいるのかは自然とわかるわ」

「残ったサーヴァント?」

 

凜の言葉に、士郎が残りのサーヴァントを思い浮かべてみた。

 

刃夜のサーヴァント、アサシン。

士郎のサーヴァント、セイバー。

凜のサーヴァント、アーチャー。

イリヤのサーヴァント、バーサーカー。

ゲイボルグを使用するランサー。

昨夜セイバーが戦ったライダー。

残るクラスは……。

 

「残りは……キャスターか」

「えぇ。きっとあそこにはキャスターがいるわ。ランサーの線もなくはないけど……。でも不思議なのは、一体どうしてあんな場所にいるのかってことなの」

「確かにそうか……」

 

凜の言葉に、士郎が同意を示す。

確かに柳洞寺は、冬木市でも結構へんぴなところに立っている。

寺に行くにも相当長い階段を上らなければいけないこともあるのだ。

まぁ霊体の存在であるサーヴァントに、階段なんぞ意味はないだろうが……。

そんなその二人の言葉を、真っ向から否定する存在がいた。

 

 

 

「いえ、別段不思議でもありません。柳洞寺を拠点にするのは都合がいい」

 

 

 

今まで黙って聞いていたセイバーである。

 

「都合がいいって……セイバー、どうして柳洞寺のこと何で知ってるんだ? 俺はまだ連れて行ったことないぞ?」

 

セイバーの言葉に、士郎が疑問を口にする。

士郎がセイバーを召喚してからまだそんなに日数が経っていない。

その間にも色々と合ったこともあり、セイバーにこの冬木市の事を案内しなければいけないと思いつつも、士郎にそんな時間も精神的余裕もなかった。

 

 

 

確かにサーヴァントは、時代の違う世界へと赴くために、生活などに支障を来さないために、その時代の知識などは聖杯より与えられている。

しかしそれはあくまでも一般的な知識であるために、地形や、霊脈と言った戦術及び戦略に直接関わりのある事まで詳細に教えられることはない。

 

 

 

「……そう言えばまだ話していなかったですね」

「何をさ?」

 

セイバーが何か重大な事を話すと思い、身構える士郎と凜。

しかし身構えた程度ではどうにもならないほどの爆弾だった。

 

 

 

「私がこの聖杯戦争に参加したのはこれで二回目です。前回の戦争に参加したので、この町の事は熟知しています」

 

 

 

「え?」

「へ?」

 

恐るべき事実に……二人は揃って固まった。

前回の聖杯戦争。

それは士郎が災害に巻き込まれた、冬木大災害の直接の原因となっていた、第四次の聖杯戦争のことを示している。

 

「ちょ、ちょっと待てセイバー! ぜ、前回の聖杯戦争って……十年前のやつにか!?」

「えぇ。正直な話、それほど時間の経たない今回の戦争に参加することになるとは私も予想外でした」

「……十年前に」

 

士郎は驚愕し、凜は呆然と言葉を発していた。

その言葉には……寂しげな感情が込められていた。

凜の様子に気づきつつも、聞くべきではないと察したセイバーが、言葉を続けた。

 

「それで柳洞寺なのですが、あそこは落ちた霊脈なのです」

「落ちた霊脈!? それって遠坂邸(うち)のはずよ!?」

 

落ちた霊脈。

つまりは龍脈の大元であるという意味。

冬木の管理者として代々この町で生きてきた遠坂は、当然ながらそれだけの権利を有している。

そのために、魔術師としては見逃すことの出来ない、龍脈の大元の上に家を建てて、この町の管理を行って来た。

そのために、凜の言葉は当然のように正しかった。

だが……それだけで、この冬木市に大元が一つ限りであるということにはならないのだ。

 

「私も詳しいことは知りませんが、この町には二つの落ちた霊脈が存在しているのです。そしてそれのおかげか、あの土地は魔術にとっては神殿に等しい。この地域の霊脈の大元とも言える場所だそうですから、魂を集めるのには絶好の拠点となるはずです」

 

魂を食らうことによって強化することが可能なサーヴァント。

それの強化には魂という代価が必要だが、それは当然リスクを伴う。

ライダーが行っていたのを考えれば当然だろう。

個々を狙い、夜に実行したとしても人目がないとは言い切れず、結界を発動させた場合、いくら外に漏れないと言っても、完全に情報が漏れないと言うことはないのだ。

しかしそれを龍脈の元締めとも言える柳洞寺を占拠することによって、そこから龍脈の力と本人の力量によって、遠隔地からの魂食いが可能となる。

今回の聖杯戦争がいつ始まったのか、明確にはわからない。

最初に呼び出されたサーヴァントが誰だかわからないからだ。

しかしもしも仮にキャスターが早期に召喚され、そしてそれとほとんど同じ時期に柳洞寺を占拠し、龍脈を利用しての魔力吸収を行っていたら、相当量の魔力を有している事になるのだ。

 

「知らなかったわ。それが本当だとすると、確かにうってつけの土地ね」

 

自身が知らなかったことに嘆きつつも、それを感情にまかせて否定するほど凜は子供ではなかった。

むしろ彼女にとっても有益な情報といえた。

しかしそうなると次なる疑問が浮上するのだ。

 

「でもそうなるとどうして真っ先にあそこを制圧しないの? 修行僧はいるけど、魔術師じゃないから何とでも出来るはずでしょ?」

「確かに霊脈だけをみればいいのですが、サーヴァントにとっては都合が悪い場所なのです」

「サーヴァントにとっては?」

 

今まで半ばついて行けなくなっていた士郎が、率先して疑問の声を上げる。

このままだと取り残されると思ったのかもしれない。

 

「あの山には自然霊以外を排除する法術が作用しているのです。生身の人間なら問題ないのですが、サーヴァントにとっては鬼門です。と言っても寺院の中は問題ありません。そして正門へと通じる参道だけはその結界がないみたいです」

 

龍脈の大元である寺院を密閉してしまってはどんな不具合が起こるかわからない。

故に一本道だけではあるが、柳洞寺に通ずる道が存在している。

それが正門である山門へと通ずる、参道だった。

 

「なるほどね~。だから陣地にしないのね。それにそれを知ってないとそもそも拠点にしようとしないんだから、それもある意味で仕方がないことか」

「それで、どうするのですか? サーヴァントはまだ確定していませんが、それでもマスターがいるのは明白です。このまま指をくわえて敵が強大になるのを見ているだけなのですか?」

 

一応疑問形で聞いてはいるがセイバー自身、行うことは決定しているような響きだった。

セイバーには自負があるからだ。

 

大概の敵には負けないという……自身という名の自負が……。

 

今の会議の結果、柳洞寺にいるのはキャスターである可能性が高いことがわかっている。

実際、残ったサーヴァントであるランサーにライダーは柳洞寺に潜伏していない。

ランサーはアーチャーが追跡したときも、柳洞寺には戻っていなかった。

こちらに潜伏先を知られないためという事も考えられなくもないが、ランサーの性格上それはない。

ライダーに至ってはセイバー自身が滅ぼした。

故に残ったサーヴァントと、今セイバーより語られた柳洞寺の特製を鑑みればキャスター以外にあり得ない。

だが……。

 

「待って、セイバー。それは賛成できないわ」

 

凜が、それに反対する。

その凜の言葉に、セイバーは驚いた。

 

「意外ですね。凜ならば即座に戦いに挑むというと思っていたのですが」

「それ、どういう意味かしら……? まぁいいけど。いくら何でも情報が少なすぎるし、仮にもしもキャスターが霊脈を使って魔力を蓄えているのならば相当手強い相手になっているはずよ? それに敵の本拠地に行くのなら、それ相応の準備が必要でしょ?」

 

実際情報が少なすぎる。

士郎と凜の生活圏内に入ってはいるものの、普段寺に用事があるわけもなく、また参道の長い長い階段がさらに行く気をそいでしまう。

士郎にはまだ凜よりも行く理由はある……柳洞一成の家のために……が、それでもここ最近柳洞寺に行く事はなかった。

 

「なるほど……。ではシロウ。我々だけでも行きましょう」

 

凜が断ったが、それで止まるセイバーではなかった。

すぐさまに自身の主である士郎へと言葉を向ける。

だがその士郎も……。

 

「俺も遠坂の意見と同感だ。まだあそこには手を出さない方がいい」

 

凜と同じように、セイバーの意見を却下した。

 

「なっ!? 貴方まで戦わないというのですか!?」

「そうはいってない。遠坂の言うとおり情報があまりにも少ない。しかも本拠地であるなら罠だってあるのは当然だ。だからもう少し情報を入手してからじゃないと危険だ」

 

士郎も凜とほとんど同じ意見だった。

実際そうだ。

何せ士郎と凜は人間なのだから。

確かに二人とも一般人とは言えないだろう。

魔術師と魔術使いの違いはあれど、ふたりとも魔術という力を有している。

使い方によっては人なんて簡単に殺せるほどの力なのだ。

だが……それでも二人はどこまでいっても人間なのだ。

故に慎重にならざるのも当然といえる。

だが……セイバーが違った。

 

「そのような危険は当たり前です。無傷での勝利などほとんどあり得ない。だが、敵の罠に身体を貫かれたとしても、この首と心臓さえ渡さなければ戦える。どのような傷を負おうとも、マスターさえ倒せばそれで終わるのです」

 

彼女は……人間にして人間でない存在、サーヴァントなのだ。

彼女の剣撃は常人では防ぐことも避けることも叶わない。

身体能力も、その小柄な身体であるにも関わらず、凄まじいほどの力を有している。

さらには自身の宝具に、自身のスキル……それらが合わさっているために、セイバーには苦戦を強いられたとしても、負けるという考えは頭には浮かばなかった。

 

 

 

その二つの……二人の決定的なまでの存在としての違いが、士郎とセイバーの間に齟齬を生じさせる。

 

 

 

それになによりも、士郎には断じて許せることではなかった……

 

 

 

自身のために戦ってくれている彼女が……無意味に傷つくのを……

 

 

 

 

「バカを言うな! 無茶をして怪我をして……そもそもこの前の傷だってまだ癒えきってないんだろう!?」

「ほとんど癒えていますし、戦闘に支障はありません。傷のことで私を気遣うなど無用です」

 

 

 

セイバーは相手を倒すといい、士郎はセイバーに無理をさせたくないという。

 

完全な平行線の言い合いは……やがてどんどんと感情が入り交じる。

 

故に士郎にも当然のごとく感情が入り……。

 

 

 

 

 

 

最悪の一言を口にしてしまう……

 

 

 

 

 

 

「無茶をして無理をして……それでバーサーカーの時みたいになったらどうするんだ!? 無理を承知で戦って、あの時は刃夜が助けてくれたから良かったけど、あのままだったら俺もお前も共倒れだったんだぞ!?」

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

士郎の言葉……。

それは確かにセイバーを止めるのに足る言葉だった。

何せセイバーにとっては失策とも言える、バーサーカーとの戦闘。

自身のマスターを守りきれずに敗北した。

それは例え表に出さなくとも……彼女の心をえぐっていたのだ。

 

(あちゃ~)

 

成り行きを見守っていた凜が、思わず内心で嘆いていた。

止めるべきだったかもしれないというのは……セイバーの俯いた表情を見れば一目瞭然だった。

 

「……それを言うのは卑怯です」

「卑怯でもいい。ともかく、まだ仕掛けない」

 

そう言って士郎は口を閉ざした。

もうすでに語るべき事は語り尽くしたというように。

セイバーも一言だけ口にして、後は黙り込んだ。

 

「……わかりました。マスターがそう言うのならば」

 

微妙な空気のまま、話し合いは終わり、凜とセイバーは自室へと戻っていった。

それを居間で見届けながら……士郎の胸中では後悔が渦巻いていた。

 

(……なんだって俺はあんな言い方を)

 

去り際に見せたセイバーの表情を見せて、自分が失策したことを自覚した。

自分のためにあんなにも懸命になってくれている彼女を傷つけてしまったことで自己嫌悪に陥るが……それを止めてくれる存在は、いなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

「到着だな」

「……ふむ、久しいな。この参道を見るのも」

 

時刻はすでに夜。

もうじき日付が変わろうかという時間に、俺と小次郎に封絶は、柳洞寺の山門へと続く参道前に来ていた。

昼の部のみ店を開いて、午後の部は手伝ってくれた美綴へのお礼と退院祝い、得物達の整備を行った。

といっても、手入れはいつもきちんと行っているので、あまり必要性もなかったのだが。

ちなみに俺の本日の装備はほぼフル装備である。

 

狩竜、夜月、雷月、蒼月、花月、水月、封絶こと封龍剣【超絶一門】、スローイングナイフ数点。

一人の人間では扱いきれないほどの凄まじい数の得物達である。

 

「しかしすごいな、刃夜よ。よもやそれ全部を扱えるとは」

「多いかもしれないが全部刃物だしな。扱いには慣れている」

 

小次郎の感想に俺は言葉を返しながら、得物達の位置を調整していた。

ポジションというか装備している箇所はいつものように、夜月、花月が左腰、雷月、蒼月が右腰、水月は後ろ腰、封絶は背中にシースを縛り付けている。

身体に固定できない規格外な長さの狩竜は当然、右手に握りしめている。

 

選択肢を多くするためにフル装備できたが……果たして使いどころがあるのだろうか?

 

「とりあえず向かうが……罠の場所とかはわかるか?」

『少々難しい。どうやらかなりの相手のようだ。ほどんど力を検知できない』

 

ほぉ、封絶すらも欺くか……。やるな……

 

封絶は元々、モンスターワールドの竜人族だ。

それが恨みと怨念で自身が鍛造した剣に宿り、俺と供にいる。

竜人族はかなり知識に長けていた存在だった。

魔剣としてなり得たからか、はたまた竜人族としての名残なのか、こういった類のことは得意だったのだ。

 

まぁ仮にそれがなくても食い破るがな……

 

「強行突破しかなさそうだ。小次郎準備はいいか?」

「無論だ。何がいるのかわからんが……力の限りを尽くそう」

 

撃ち出すようにして狩竜を抜き、狩竜が宙にいる間に手に残っている鞘を折りたたみ、背中の封絶のシースに結びつける。

ついでに左手で封絶を片方だけ抜き取り、俺は右肩に狩竜を乗せる。

小次郎も背中の鞘から愛用の野太刀を抜刀していた。

 

「では……」

「参ろうか!!!!」

 

参拝にはあまりにも常識外れな時間と格好で……俺たちは参道へと足を踏み入れる。

その瞬間に……影より幾重もの影が伸びる……。

そちらの方……影の元へと目を向ける。

階段の踊り場や階段に、大量の骸骨兵が骨で出来ている剣を携えていた。

 

「何だあれは? 骸の剣士というのはこれはまた奇怪よな」

「強くもなさそうだが……弱くもなさそうだな。が……俺たちならば問題はあるまい!」

 

気力にて強化された脚力で、俺は一気に階段へと躍り出て、狩竜で文字通り薙ぎ払った。

 

ゴシャッ!!!!

 

狩竜の間合いにあった骸骨兵が全て吹き飛び、粉々に砕けて吹っ飛んでいく。

狩竜を振り抜いた隙に、敵が殺到するが……。

 

「残念だが……刃夜には触れさせぬ」

 

その隙を、小次郎がカバーしてくれる。

狩竜ほどではないにせよ、野太刀という圧倒的な間合いで、敵は自身の間合いに入ることすら叶わずに、次々と斬り捨てられていく。

また、虚空に顕れた魔力溜まりから、魔力が球状に形成されたこちらへと目掛けて飛んでくる。

小次郎が魔力関係に強くないことはわかりきっているので、俺はそれらの飛んできた魔力弾を封絶にて斬り捨てたり、吸収させたりする。

 

「どうやら……」

「大したことはなさそうだな」

 

もう少し骨があると思っていたのだが……本拠地の割には余り歯ごたえがなかった。

俺の中の推論がますます現実味を帯びていくが、一切の油断をせずに俺たちはどんどんと参道を突き進んでいく。

罠を全て食い破り、やがて山門へとたどり着くが、山門自体には一切何かが仕掛けられている様子はなかった。

 

罠か?

 

てっきりこの辺りで門番でも出現するのかと思っていたのだが……随分と杜撰な警備体制である。

それともこれほど杜撰になってしまった理由があるのだろうか?

 

まぁいい……

 

「では、開けるぞ?」

「あぁ。頼む」

 

小次郎とタイミングを合わせて山門を開ける。

そして開ききり、中へと入った瞬間に……

 

 

 

 

 

 

極大の魔力弾が飛来する……

 

 

 

 

 

 

なっ!?

 

先ほどまでの参道の所々に配置されていた魔力弾の比じゃない大きさだった。

俺の身長と同等の直径がある。

それを見た瞬間に……俺は動いていた。

 

刃気、魔力解放!!!!

 

狩竜に溜め込まれている刃気と魔力を解放し、俺は狩竜でそれを……打った……。

 

 

 

 

 

 

「バッター四番……鉄刃夜! 第二打席!! ウッチマ~ス!!!!」

 

 

 

 

 

 

バッキ~~~ン!

 

振り切ったときに狩竜の腹で殴れるようにして俺は、正面から飛来した魔力弾を撃ち返した。

 

「大砲の弾すら打ち返した俺が、こんな物で怯むかよ」

「……とんでもないことをするな」

 

小次郎が呆れたようにぼやいている。

それは遙か彼方へと飛んで行く前に……黒い大きな羽の中に吸収された。

 

「……でたな」

 

俺は宙に浮いているその存在へと視線を投じる。

 

四角く尖った羽のような形状……。

羽には奇怪な紋様が左右対称で描かれており、その紋章が鈍く光っている。

羽の中心部には、ローブのような物を着込んでいる華奢な女性がいる。

右手には何か巨大な杖が握られており、上の方に巨大な円の飾りが付いている。

フードを目深にかぶっているために表情は伺えないが……口元が歪んでいるのを見れば俺たちをどう思っているのかは簡単にわかった。

 

 

 

 

 

 

「こんばんはと……言うべきかしら? 招かれざるお客様にして異様な主従さん」

 

 

 

 

 

 

体つきでなんとなくわかっていたが、どうやら女のようだ。

寺よりも高い位置にローブを羽のように広げたそれは……宙に浮いていた。

 

「異様な主従?」

「私と刃夜のことか?」

「えぇ。私が従えようと画策していたというのに……頑なに召喚に応じなかった存在を従えていている。しかも主の方も異常なのね……。あなた、どうしてサーヴァントでもないのにステータスが見えるの? しかもクラス名……『開拓者(フロンティア)』?」

「……開拓者ぁ? なんだそりゃ? しかもステータス?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ステータス情報が更新されました】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後書きをチェックだぜ! By作者

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

敵のサーヴァントからの言葉に、俺の表情は歪んだ。

言っている意味が全くわからないからだ。

 

「知らないの? マスターにはサーヴァントのステータスを読み取る能力が聖杯から付加されるの。私はサーヴァントだけど、そう言ったことは得意だから見ることが出来るわ」

 

ステータスが見えると言われても、俺にはそんな物は見えたことがない。

しかしそれに関しては自分の中で直ぐに結論が出た。

簡単だ……俺は正規のマスターじゃないからだ。

もしくは小次郎は狩竜とラインが繋がっているために、狩竜にその能力が付与されているのかもしれない。

 

……激しく意味がないが

 

「ほぉ~。んで『開拓者(フロンティア)』ってなんだ?」

「さぁ? 私が聞きたい位よ。こんな巫山戯たクラス名。まぁ……あなたの存在も随分と巫山戯ているけどね」

「……出会い頭に随分な言いぐさだな?」

「竜牙兵は人間の達人程度なら軽く倒せる力を持っているのよ? それをあり得ないほど長い剣で倒しておいて人間面するのかしら? しかも……あなたから発せられる異様な威圧感は何? 一体身体に何を宿しているのかしら?」

 

……ひでぇ言われようだ

 

「加えて言うなら人の陣地に土足で上がり込んできてよく言えるわね。私は私の目的のために、あなたをなんとしても叩くわよ」

 

どうやらその言葉に嘘偽りはないらしい。

敵の身体に魔力が満ちるのと同時に、そこらから先ほどの骸骨兵が地中より次々と出現する。

まさに一触即発な状況だったのだが……。

 

「まぁ待て」

 

それを俺は構えを解くことで自ら戦う意志がないことを示した。

その態度に、敵だけでなく小次郎までもいぶかしんだ目を俺に向ける。

 

「どういうつもりかしら?」

「どういうつもりだ刃夜?」

 

敵だけでなく小次郎までも俺に疑問をぶつけてきた。

小次郎には悪かったが、とりあえず俺はキャスターへと視線を投じて言葉を投げかける。

 

「確かに土足で上がり込んだのは認めよう。すまなかった。だがどうしてもお前に聞きたいことがあってな」

「聞きたいこと?」

 

杖を俺へと向けながら、敵が睨みつけてくる。

俺はそれを軽く受け流しつつ、言葉をつづけた。

 

「お前が龍脈を利用して魔力を集めていることは知っている。そこで質問だが……それは何のためだ?」

「……それを貴方にいう意味はあるのかしら?」

「大いにあるな。まぁ言わせてもらうとだ……。今のお前では俺たちには勝てないだろうよ」

 

俺たちに勝てないと言うことは、半ば確信を持っていた。

なぜならば、相手は実力を発揮し切れていないからだ。

というよりもおそらく発揮できないのだろう。

 

本拠地の割には、罠も雑魚兵の数も少ない……

 

今までの攻撃方法、そしてなによりもその出で立ちは間違いなくキャスターのそれだ。

まぁ残ったサーヴァントはキャスターのみで、俺が見ていないサーヴァントもキャスターだけなので間違いないだろう。

であるにも関わらず罠が余りにも貧弱だった。

魔術師という物が果たしてどれほどのことが行えるのか俺にはわからないが、それでもこの程度ではないことは確かだろう。

しかも人間の魔術師ならばともかく、英霊として招かれるサーヴァントの『魔法使い(キャスター)』がこの程度というのは非常におかしい。

骸骨兵……竜牙兵といったかな?……も数はそこそこいるが、それでも俺と小次郎にかかれば一分と経たずに全滅させられる程度の数しかいない。

無論キャスターの妨害を考慮に入れての所要時間だ。

そして最後……これが決定打なのだが……。

 

龍脈の大元に溜められている魔力が余りにも少ない……

 

地面の下……地下に眠るはずの龍脈。

魔力を集めたのはいいが、それを貯蓄できる空間がなければ意味がないが……貯蓄に関しては何の心配もいらない。

何せ足下に絶好の保管場所である……龍脈があるからだ。

だが、さきほどから老山龍の能力でそれとなく探りを入れたが……集めていると思われる魔力がかなり少なかった。

それこそ……俺が昨日使用した魔紅獅刀【炎王】が、三~四回しか使用できないほどの少なさだ。

これでは大した魔術は使用できないだろう。

その証拠に、キャスターは宙に浮いているのと、最初に放ってきたでかい魔力弾しか魔術らしい魔術を使用していない。

しかも魔力弾は俺が撃ち返したそれを、そのまま吸収したにもかかわらずこの貯蓄。

はっきり言って負ける要素がほとんどない。

宝具という隠し球がある以上油断は禁物だが……それでも負ける気はしなかった。

 

「魔力が相当少ないな? これで本当に集めていたのか?」

「!? ……そうね。そういえばあなたは霊脈のことを探れたのだったわね。確かに少ないかもしれないわ。けど……それだけで負ける要因にはならないわ」

「探れるというか……まぁいい。負ける要因と言うが……その自信は俺たちに密かに近づいている達人がいるからか?」

「!?」

 

今度こそキャスターが絶句した。

俺はもちろん、小次郎も気づいていた。

壁伝いに、俺たちへと無感情、殺意の欠片もなく忍び寄ってきている男が。

 

 

 

眼鏡を掛け、こんな夜中にもかかわらずスーツを着込んでいる。

目には全く色がない……。

何というか……人間味を感じない人間である。

だが……こいつを俺は知っていた。

 

 

 

「ふむ。確かに侮れない相手のようだぞ刃夜? 佇まいに一分の隙もない」

「あぁ。確かに以前からただ者ではないと思ってはいたが……まさかマスターだったとは思いませんでしたよ? 葛木先生」

 

そちらへと視線を投じながら……俺はそう口にした。

そう……大河の出前で何度か見たことがあり、大河を呼びに来たことで互いに面識もあった、葛木宗一郎先生だった。

面識と言っても、顔を合わせたくらいで互いに自己紹介はしていないのだが、俺は大河が名前を呼んでいるので知っていた。

 

「……出前の青年か」

 

ぼそりと……あまり話さない葛木先生から声が発せられる。

実に平坦で淡々とした声だった。

 

「私達に何のようだ?」

「確認したいことがあっただけです。そしてそれはほとんど終わったような物ですよ」

 

戦うつもりがないと意思表示のために、とりあえず俺は諸手を挙げる。

しかし狩竜は握ったままなので、あまり説得力はない。

 

「……戦うというのかしら?」

「あまり強がるなキャスター。確かに葛木先生は結構やるようだが……それでも俺たち二人がかりで戦えば直ぐに殺せる」

「……それを私が黙ってみているとでも思っているのかしら?」

 

おぉ……圧力が増えたな

 

どうやら葛木先生というマスターを大切に思っているようだ。

まぁマスターというわりには……ライン的な物が全く見えないのだが……。

 

「話は最後まで聞け。お前魔力がほとんどないんだろ?」

「……」

「加えて言うならば……葛木先生を慕っているようだが正式なマスターではないな? ラインのような物がまったく見あたらない」

「……あなた本当に何者なの?」

 

わからんでもないが……いつものような質問がキャスターの口から放たれる。

俺は半ばそれにうんざりしながら……言葉を続ける。

 

「もう本当に聞き飽きたなその台詞。まぁいい。そこで相談なんだが……」

「……何かしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺と手を組まないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

「手を組む……ですって?」

 

手を組む、と言う言葉を聞いて、キャスターの胸中に疑念が渦巻いていく。

それも当然だろう。

認めたくないことだが、刃夜の言うことはほとんど正解だったからだ。

魔力は集めていると言っても、ほとんど溜まっていないのが現実だ。

人々から集めたと言っても質が良くない上に量も少ない。

他のサーヴァントに知られないために少しずつ集めていたからだ。

葛木が正規のマスターでないことも事実だ。

何しろ葛木宗一郎という人間は魔術師ではない。

故にキャスターに魔力を与えることは出来ないので、当然キャスターは実力を発揮することは出来ないのだ。

 

 

 

ちなみに彼女だけではなく、サーヴァント全員に言えることだが……サーヴァントに魔力を生成する能力がないわけではないのだ。

魔力を生成するための機関などをエンジンに例えるならば、サーヴァントにはそれこそ巨大なエンジンが備えられているのだ。

だがそれでも魔力を生成できないのは、エンジンの一分……それこそ小さな歯車程度の部品が欠けている状態なのだ。

この欠けた部分を補填し、歯車を動かす動力として、マスターからの魔力供給によってそれがまかなわれているのである。

「英霊」という、莫大な魔力を有し、圧倒的な戦闘力を誇る存在を、マスターの力だけで現界させているわけではないのだ。

 

 

 

故に正式なマスターのいないキャスターは、存在するだけで魔力を消耗してしまう。

だからこそ人々から魔力を吸い上げていかなければいけない。

何もしなければ消滅してしまうからだ。

だがかといって敵に自分がここにいることを知られるわけにはいかなかった。

上記にも説明したようにサーヴァントには魔力を生成することが出来ない。

仮にマスターがいない状況でも、他のサーヴァントであればまだ何とか出来るかもしれない。

いくら魔力を使用するとはいえ、武器になる宝具があり、それがなくても圧倒的な身体能力がある。

自分が持ち得ている魔力の蓄えによっては、戦闘を行うことも可能だろう。

しかし……彼女にはそれらが全てなかった。

直接的な攻撃をすることの出来る武器も、圧倒的な身体能力も、そして……魔力の蓄えも。

そのために少ない魔力を使用して罠も仕掛けたのだが、それはあくまで人間……つまりはマスターのために設置したものだ。

マスターさえ殺せばサーヴァントも存在を維持できなくなる。

マスターが死んだ瞬間に消えてなくなるわけではないが、それでも現界に支障を来すのは事実だ。

だからこそ少ない魔力で効率的に敵を撃退するのならば、マスターを倒すしかない……。

そのためにキャスターは少ない魔力で人間を殺す罠を参道に張り巡らした。

仮に士郎が、罠があるとわかった上で参道を通ったとしても、軽く殺せるぐらいの罠をだ。

 

 

 

しかしその罠が……刃夜に通ずるわけもなかったのだ……

 

 

 

そして今キャスターを窮地へと陥れているのだが、圧倒的有利な状況であるにもかかわらず、戦闘を自ら中止してキャスターに同盟を持ちかけている。

 

 

 

これを疑わない人間が……いないわけがなかった。

 

 

 

「一体どういうつもりなのかしら?」

「怪しむのはわかるが聞いてくれ。まず聞くがキャスター……。この聖杯戦争に疑問を感じたことはなかったか?」

 

(!?)

 

その意外な投げかけに、キャスターは思わず動揺してしまった。

いくら夜で暗く、ローブで顔を隠しているとはいえ、それに刃夜が気づかないわけがなかった。

思わずニヤリと笑みを浮かべながら、刃夜は言葉を続ける。

 

「やはりあるか?」

「……少しでも考えればわかる事よ」

 

キャスターは吐き捨てるように、そう口にした。

それは刃夜のいう疑問に対する答えだった。

 

 

 

七人の英霊を召喚し、聖杯の所有権を得るための殺し合い。

聖杯によって選ばれた魔術師(マスター)は英霊の依り代となって最後の一人になるまで殺し合う。

 

 

 

これは本当であって本当ではない。

 

 

 

サーヴァントは聖杯に呼び出される存在であり、聖杯を得る人間がふさわしいかどうかを選定するための道具として英霊を召喚する。

 

呼び出された英霊は聖杯を手に入れるために、令呪という縛りを受けながらも『魔術師(マスター)』と契約して自分たち以外の存在を殺す。

 

倒され、殺された英霊は消え去らずに聖杯に取り込まれる。

 

英霊は聖杯にふさわしいマスターを選定するための道具でしかない。

 

そのはずなのだが、用済みになったはずのサーヴァントが何故聖杯に取り込まれるのか?

 

 

 

 

 

 

ちなみに余談ではあるが、刃夜が言っているのはこのことではなく、限りなく個人的な予測と推論からの言葉であるが……それをキャスターが知るはずもなかった。

 

 

 

 

 

 

「何をするのかもわからないけど……それでも私はそれを呑んでこの戦争に参加したわ」

「サーヴァントはそうだろうな。だが俺たちマスターは違う奴だっている。俺は正直聖杯なんて物自体に興味はない。願望機の能力で俺の故郷に帰れることを願っているが……おそらく無理だろう。聖杯戦争のルールもきちんとしているようできちんとしていない。それに加えて……俺の事情も相まって、俺はこの聖杯戦争には何か裏があるんではないかと思っているんだ。それも何か、尋常ではない最悪な裏が」

「……なるほど」

 

刃夜の言葉に、キャスターは頷かざるを得なかった。

確かに自分はサーヴァントとしてこの世界に現界し、聖杯を求める争いに参加した。

だがルールの矛盾もあり、またこの地の不吉な物を感じ取って、キャスターも何かきな臭い物を感じ取っていたのだ。

 

「だから俺はその裏がわかるまでは極力サーヴァントを殺したいと思っていないのだ。それこそ敵であってもだ。何が起こるのかわからない以上、切り札は多いに越したことはない」

「……それがどうして同盟に繋がるのかしら?」

「わからないのか? 切り札というのは英霊であるサーヴァントに他ならない。だが今のままではキャスター……お前が一番危ない。故に協力して欲しいと言っているんだ」

「……それは脅しかしら?」

「……何故そう思う?」

 

平然としたその切り返しに、キャスターは苛立ち混じりに怒鳴りつける。

 

「とぼけるんじゃないわよ。あなた……わざと大事にしながらここへ来たでしょう? 同盟が目的なら最初に何か言っても罰が当たらないんじゃないかしら? あなたなら使い魔の存在だって気づいていたはずよ」

 

そう、刃夜がこうして今晩こうしてキャスターの陣営にいち早く来たのには理由があったのだ。

理由は簡単だ……。

アーチャーに見られてしまったためだ。

 

「本当ならこっそり来るつもりだったんだがな。だがアーチャーに知られてしまったためにこうすることにした。なぜならこの同盟を断れば……」

「セイバーとアーチャーがこの寺に押しかけてくるかもしれない……ということね」

 

もしも刃夜との同盟を断った後に、士郎と凜が柳洞寺へとやってきた場合、キャスターは天敵を二人を同時に相手しなければならなくなるのだ。

 

 

 

剣使い(セイバー)』、『槍使い(ランサー)』、『弓使い(アーチャー)』は三騎士と呼ばれており、その三騎士には基本的にクラス別スキルの固有スキルに置いて、対魔力スキルが付与……というよりもその能力を有している英霊が召喚される場合が多い……する場合が多い。

今回の聖杯戦争においても、セイバー、アーチャーはともに……セイバーとアーチャーの対魔力スキルの性能は雲泥の差だが……対魔力スキルを有している。

 

 

 

そんな天敵を二体も同時に相手することなど……今のキャスターに出来るはずもなかった。

 

「あなた……自分が最低なことをしていると理解してる?」

「理解はしている。だがそれでも必要だと思ったからしたまでだ。この聖杯戦争には何かがある。これは間違いない。だからこそ切り札は多い方がいいから、俺は昨夜もアーチャーを消すことはしなかった。それにこれは俺の勘だが……魔術がらみであればキャスターが必要になると思ったからだ」

「魔術がらみ?」

「今回の聖杯戦争も、元をただせば魔術による儀式だ。故にあんたの力は何かの役に立つと踏んでいるんだ。つ~かあの二人が絡んでいる以上絶対に何かあるのは間違いないからな……」

 

(? 何をぼそぼそと?)

 

最後の方はキャスターには聞こえていなかったが……それは別段キャスターにとってはどうでもいいことだった。

この聖杯戦争には何かがあることはキャスターも気づいていた。

しかし今は存在することに必死でそこまで頭を回す余裕がなかったのだ。

どこまで本気かキャスターにはわからなかったが……それでも刃夜との共闘はメリットがあった。

確かに今回、脅迫以外の何物でもない話を持ちかけてきているが、仮に共闘するのならばキャスターは防衛に関しての心配事が減るのだ。

何せ異端とはいえ剣術の腕が相当いいアサシン(サーヴァント)と、バーサーカー相手に生身で斬りかかってかすり傷一つ負わなかった刃夜(マスター)の二人組だ。

そうそう負けることはない。

加えてキャスターも微細とはいえ援護をし、柳洞寺に立てこもった場合……これほど厄介な陣営はないだろう。

何せ柳洞寺には初めから強力な結界が張り巡らされているので、正門である山門以外に道がない。

人間には結界は関係ないために森の中を突っ切ることも可能だが、それは刃夜も同じである。

そして刃夜という存在がいる以上、サーヴァントと別行動をするのは自殺行為に等しい。

必然的にキャスターや刃夜を倒すためには正門を通るしか手段がないことになるのだ。

しかし……そこには当然のように刃夜と小次郎、さらには竜牙兵という数の暴力……。

 

はっきり言って……城塞にも等しい拠点と化すのだ。

 

これならばさすがにバーサーカーとはいえ容易に迫ることは出来ない。

何せマスターを殺されてしまっては現界するのが難しいのだ。

マスターが来ないという選択肢もあるが……それはそれで問題がある。

仮にその状態で攻めてきても小次郎とキャスターが奮闘している間に、刃夜がイリヤを始末しに行くことだって出来る……もっとも、刃夜はそれを行わないだろうが……のだ。

そのため、バーサーカーは自分のそばにマスターを連れているのがもっとも安全だが……、上記の通りイリヤを伴って攻め入れば、イリヤを護りながらの戦闘となってしまうので苦戦は必至だ。

つまり……メリットの方が大きいのだ。

刃夜としては別段、キャスターの能力が絶対に必要という訳ではない。

ただまだ状況が完全に把握して切れていない以上、選択肢を減らしたくないというためにキャスターを生かしておきたいという事なのだ。

が……キャスターも言っていたが、脅しや脅迫と思えるような状況でその話を持ちかけたのはあまり褒められた物ではなかった。

確かにアーチャーに見られたがためにそうせざるを得なかったという事もある。

だがそれでももう少し誠意という物を見せた方が、キャスターも信じることが出来ただろう。

しかしそれも刃夜としては、断られて戦闘に発展したらデメリットしかないから、半ばそうせざるを得ない状況に追い込んだというのもあった。

 

 

 

戦闘に発展することはないが……というか発展したらそう時間がかからずに刃夜と小次郎が勝利する……険悪ともいえる状況に、キャスターに取っては招かれざる、刃夜にとってはある意味で好都合な存在が来訪した。

 

 

 

金紗の髪を邪魔にならないように後ろでまとめており、鋭い目線で辺りを見回し……こちらへと目を向けてくる。

 

銀の甲冑に、青い法衣。

 

銀の手甲が何かを握っているような形をしていた。

 

おそらく、相手の見えない得物……そのクラス名にふさわしい、見えない剣を手にしているはずだ。

 

 

 

最優と言われる……『剣使い(セイバー)』のサーヴァント。

 

 

 

 

 

 

セイバー

 

 

 

 

 

 

が来訪した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

余り風の吹かない……夜。

すでに時刻は深夜と言って差し支えがない。

大地にも空にも、すでに生き物の姿はほとんどなく、住宅街である深山町は、深い眠りについている。

その一角……大きな武家屋敷の庭に、一人の少女が立っていた。

 

(風が出るな)

 

風がほとんど吹いていないが、それでも遙か上空の雲は大きく流動している。

それを感じ取ったのか……はたまたそれを見たのか定かではないが、セイバーのその思いには確信に似た何かが込められていた。

澄んだ緑の瞳を空へと向けながら、その目を月へと移す。

綺麗な満月が浮かぶ……月へと。

その目線をおろし、武家屋敷の土蔵へと視線を投じる。

土蔵には士郎がいつものように眠っている。

彼女の主は、柳洞寺にいる敵のサーヴァントと戦わないと言った。

まだ情報が少ないからだと。

士郎は聖杯に願う願いがない。

故に焦る必要性もない。

だが……彼女は……セイバーは違った。

彼女には叶えたい……それこそ聖杯でしか叶わないような願いがあった。

 

「貴方が戦わないというのならば……それでいい。だが……」

 

瞳を閉じて……まるで過去を思い出しているかのようだった。

その胸中に去来するのは……かつての自分。

かつての自分の国、戦友。

 

そして……国の崩壊……。

 

それをただ、屍で築かれた丘の上から眺めることしか出来なかった……自分。

 

(私は……)

 

自分が聖杯に望むことを確認し、セイバーは閉じていた瞳を力強く開く。

その時……彼女の姿は一変した。

銀に輝く甲冑を纏い、青い法衣を包んだその姿は、すでに格好も気配も……少女ではなかった。

圧倒的な魔力を有して編み上げられた鉄壁の護りと、人を凌駕する魔力で第二の鞘に纏われた不可視の剣。

戦場に置いて不敗であり、最強とも謳われた彼女は、この現代に置いてもなお、その圧倒的な強さは健在だった。

 

七人のサーヴァント中、最優であり、最強と言われる剣士。

 

実際彼女は……セイバーは優秀だ。

見えない剣という間合いを計らせない剣技を用いて敵の攻め気をくじき、その圧倒的な魔力によるブーストで常人を遙かに凌駕した身体能力で敵を圧倒する。

剣技だけでなく、その見えない剣の中……彼女の象徴とも言える剣は、圧倒的な力を昨日目の当たりにしたばかりだ。

あれほどの破壊の力を用いたにもかかわらず、彼女に疲労の色は全くなかった。

それどころか、わかる人間が見れば一目で見ぬいただろう。

 

彼女を包む魔力が、全く減っていないことを……

 

むしろ昨夜で消費された魔力を補うために、竜の因子がうごめいているのか……昨夜以上に魔力で溢れていた。

 

 

 

セイバーは彼女が生まれるときに、魔術師マーリンの計らいで、人の身でありながら竜の因子を持って生まれたために、魔術回路を用いなくてもただ生きているだけで魔力を生成することが出来る。

それが彼女の力の根底を支えている。

 

 

 

「貴方は甘い。そのままでは敵に殺されてしまうかもしれない」

 

 

 

実際、士郎は甘い。

敵が襲ってこなければこちらから戦いを仕掛けることはない。

無論正義の味方を目指す彼は、被害者を出さないための戦いには無条件で首を突っ込むだろう。

理想であり、理想論である彼の戦闘姿勢は……端から見たら甘すぎる。

 

自分の身さえも守れない小僧でしかない……

 

だがそんな士郎を、セイバーは好いていた。

 

全てを救う……。

 

そんな理想が……自分にもあったから……

 

彼のひたむきなまでのその姿勢が……自分は正しかったと、思わせてくれるから……

 

確かにセイバーは聖杯が欲しい。

 

だがそれでも……自分の主君のために聖杯を捧げたいと思っていることもまた事実だった。

 

聖杯戦争に望んでいるにもかかわらず、聖杯に願う望みはないという彼が……心配だったから。

 

自分のためにも、士郎のためにも……セイバーはこの聖杯戦争を勝ち抜かねばならなかった。

 

故に……主君に対する裏切りと知りながら、彼女はその視線を遙か先、柳洞寺へと向ける。

 

 

 

(本来ならば、サーヴァントに従わなければならない……けれど……)

 

 

 

主君の命に背くことを、セイバー自身、すごくためらいがあった。

 

礼節をわきまえ、主の意志を代行する騎士の中の騎士とも言える彼女は、本来であれば命令に背くことなどよしとはしない。

 

だが決して士郎を裏切ったわけではないのだ。

 

セイバーはセイバーなりに考えを下して、主である士郎を勝たすために……何よりも生かすために、この決断を下したのだ。

 

彼女は、士郎が今のままでは危ういと判断したのだ。

 

サーヴァントであるはずの自分を、人間である自分自身よりも尊重し、自分の命も省みずに救おうとするその行動。

 

尊いが、それ故に歪んでいた。

 

それを彼女は危惧したのだ。

 

だからこそ、命令に背いてまでこうして今宵、単身乗り込もうとしているのだ。

 

 

 

 

 

 

士郎とセイバーの関係は良好と言えるが、当然のように相容れないサーヴァントとマスターというのももちろん存在した。

どちらも、相手が死ねば代役がいることもあり、時にはマスターが、逆にサーヴァントが、お互いを殺して別の存在と契約を結ぼうとすることもある。

そのために、令呪という物が存在するのだ。

令呪が手にある限り、マスターの安全はある程度……といっても本当にある程度だが……保証される。

キャスターにマスターがいないのはこれの典型的な例である。

あまりに自分をぞんざいに扱うマスターに嫌気がさしたキャスターは、自分を召喚したマスターを殺したのだ。

そのために彼女はマスターが不在の状態となっている。

 

 

 

 

 

 

「……行こう」

 

 

 

そして……一足で塀を越えて、闇を駆けた。

彼女とて、寺に閉じこもっているキャスターを討つのが容易でないことはわかっていた。

だがそれでも彼女には絶対的な力と、培ってきた力があった。

英雄としての誇りを胸に……セイバーは駆けていく。

そして参道へとたどり着き……拍子抜けした。

 

 

 

(何もない?)

 

 

 

彼女は魔術師ではないために、完全に魔術の気配を辿ることは出来ないが、危険があるか否かは経験で察知できる。

その彼女の経験と勘が、この参道に何も罠がないことを教えていた。

否……なくなっているといった方が正しいだろう。

何せ、刃夜と小次郎が少し前にこの参道を圧し通ったのだから。

何物かが駆け抜けた後だと気づいたセイバーが……用心しつつも最速で石段を駆け上る。

そして開かれている山門をくぐり抜けて……その場へとたどり着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「……鉄刃夜にアサシンのサーヴァント!?」

「ほぉ、セイバーが来るとは……」

 

突然の来訪者に、全員がその来訪した少女……セイバーへと視線を投じる。

小次郎は血が騒いだのか……好戦的な気迫を身体から発露させていた。

俺は誰かしら来ることはわかっていたし、気配も捉えていたので驚きはしなかったが……。

 

てっきり、四人で来ると思っていたのだが……

 

セイバーだけでなく士郎に、遠坂凜&アーチャーの四人で来ると思っていたが……どうやら違ったらしい。

どちらにしろ、都合がいいことに代わりはない。

セイバーの出で立ち、さらにはその総身からあふれ出す気配は戦闘時に出すそれに他ならない。

つまり……セイバーはキャスターを討伐するために来たのだ。

そして当然、それを俺が黙ってみているわけがない。

 

なかなかに最低なことをしているが構いやしない……

 

これでほとんどキャスターは俺の提案を受けざるを得なくなる。

ここでもしも俺と小次郎が消えた場合、セイバーの相手を葛木先生が行うことになる。

葛木先生がどの程度の実力を有しているのかわからないが、それでもセイバーが負けることはないだろう。

何せ小娘とはいえ最優と名高いセイバーのサーヴァントなのだから。

だが、だからといってキャスターが敗北することはない。

 

俺と小次郎が、それを阻止しないわけがない。

 

仮に同盟を結ぶことが出来なくても、みすみす優秀な存在であるキャスターを放って置くわけがない。

あの二人が俺をこの世界に送り込んだときに言われた言葉。

修行不足。

あの二人が何の意味もなくこの世界に俺を送ったとは思えない。

故に……キャスターを死なせるわけにはいかなかった。

 

ったく……何を企んでいるのやら……

 

何があるのかわからないが、手札不足で敗北するわけにはいかない。

故に俺は全力を持ってキャスターを援護する。

 

……戦闘開始かな?

 

気取られることのないように静かに心身を戦闘態勢へと移行させる。

小次郎もセイバーの気迫につられて、野太刀を静かに抜刀していた。

それを見て、セイバーも俺たちが邪魔な存在であると理解したようだ。

先ほどよりもさらに睨みつけて、その見えない剣を構えた。

 

 

 

半ば混沌の様相を呈しているこの柳洞寺。

 

 

 

静かに……戦闘が始まろうとしていた……。

 

 

 

 




サーヴァント 開拓者(フロンティア)
真名 鉄刃夜
特技 刀の鍛造、料理
好きな物 刀、料理、読書
嫌いな物 人に迷惑を掛けて平然としているクズ
天敵 祖父、親父
属性 混沌、多重(パラレル)



ステータス

筋力 B
耐久 C+
敏捷 B+
魔力 B+++
幸運 C
宝具 EX+++



スキル

単独行動EX
生きているので単独行動もくそもない。ある意味でバグのスキル。生きているが故にマスターからの魔力供給の必要性は皆無。また宝具も普通に使用可能だが、本人の力量に大きく依存する

故郷の料理A
モンスターワールドにて作り上げた一つのジャンル和食。和食のみ味が最強の領域に達している。また他の洋風、中華もかなりのレベルの物を作ることが可能。しかし元々の腕がいいのであまりこのスキルは効果がない

温泉探知A
匂いさえ出ていれば、どこに温泉があるのか直ぐにわかる。武装があれば、掘ることも可能。が、この世界で発掘する機会はない

刀鍛造A
普通の鍛造と違い気を注ぎながらの鍛造のため、普通の刀よりもより強力な刀の鍛造が可能。が、この世界で鍛造する機会はない

農作業A
米、大豆などの農作業を行うとすばらしい実力を発揮、スキルの恩恵でほぼ確実に豊作になる。がこの世界で農作業を行う機会はない

鎧鍛造A
新たな鎧を作り上げたことに寄る恩恵。が、この世界で鎧鍛造の機会はない

外道B-
己の願いのために数々の女性を棄てた男。理由を知らない人間が聞けば嫌われること間違いなし

陣地作成D 
運があるのかないのか……行く先々で己の生活拠点を得る能力。当然拠点を手に入れるだけで特に効果はない



宝具

夜月
ランク 測定不能
種別 対人宝具
最大補足 不明
刃夜の祖父が、刃夜が誕生したのと同時に造り上げた一振りの打刀。ただの打刀だが、守護者としてのアーチャーの力を持ってしても完全なる投影は不可能。上っ面は投影できるが、それはただの打刀であって夜月では絶対になり得ない。究極の防御壁を展開可能だが、持ち主であり主である刃夜の意志で発動することは不可能で、何かしらの発動条件があるが以前として不明のままである。つまり刃夜にとっては超頑丈な打刀でしかない。だが、一番の武器であり相棒である。


雷月
ランクC
種別 対人宝具
レンジ 1~30
モンスターワールドの雷狼の素材を用いて作られた打刀。そのモンスターの性質と、碧玉に気を注ぎ込むことで電磁を用いた高速の斬撃「電磁抜刀」が可能。それの応用で鞘や他の得物を飛ばすことも出来る。モンスターの素材を用いているため普通のよりは強いが、それほど頑健というわけではない《気も注がずにエクスカリバーなどと打ち合えば普通に破壊される》。だが目に見えぬほどの速度で繰り出される剣速は脅威の一言。現在の刃夜の最速の剣撃。他の武器に電磁を纏わせることも可能。


蒼月
ランクC++
種別 対人宝具
モンスターワールドの魔力(マナ)を扱う蒼い火竜の素材で作られた打刀。呪いの塊である、蒼い紅玉に気と魔力を注ぎ込むことで炎熱を操る事が可能である。炎熱を刀身に宿し、焼き切る事の出来る「炎熱剣(ヒートソード)」が使用可能。他の武器に炎熱を纏わせることも可能。雷月よりは遙かに頑健。が、これも宝具としてのランクは低い。また今の刃夜の実力では炎熱剣程度の力しか使えないが、実力が上がればさらに強くなる可能性がある。


封龍剣【超絶一門】
ランクB+++
種別 対龍宝具
モンスターワールドで手に入れた武器。不思議な鉱石で作られている。魔力(マナ)を切り裂きそれを吸収する性質を持ち、意志が込められた生きた魔剣。魔力(オド)で作られたものも同様に切断、吸収するが魔力(マナ)と比較すれば精度や量が落ちる。刃先にのみではなく、剣全体にその効果を持つ。発動された魔術も切り裂くことが可能。だがどれだけの規模の魔術を切り裂き吸収するかは仕手の力量に大きく左右される。呪いなどの解除も行えるが、これも仕手の力量次第。またその出自、剣に宿った意志の働きで、強力な「龍殺し(ドラゴンキラー)」の性質を備えている。龍だけでなく、龍の因子をもつ存在に対してもその能力が発動する。恨みを果たしたことで効果が薄れているが、微々たる量しか違いがない。斬られればかなりのダメージを及ぼす。


龍刀【朧火】
ランク測定不能
種別 対魔獣、魔龍、神獣、神龍宝具
レンジ 不明
最大補足 不明
モンスターワールドの魔力(マナ)を管理する老山龍より授かった神器。封龍剣【超絶一門】と同じような効果を持つが桁違いの力を持つ。また封龍剣【超絶一門】と違い、魔力壁なども使用でき、顕現する武器によって形を変えることが出来る。また全ての魔力(マナ)が力を貸してくれれば龍刀【却火】に進化可能。ほぼ全ての魔力(マナ)を用いた現象を切り裂くことが出来るが……魔力(マナ)が少なく、刃夜の未熟な腕では顕現はほぼ不可能に近い。
登場予定なしw


炎王の護り
ランクC
種別 対人宝具
紅炎王龍テオテスカトルの力の結晶炎属性を完全無効。また炎熱、呪い、腐敗から身を守る。マグマでスイミングも可能。炎を膂力に変える力を持つ。その力は意志と力量に比例する。この世界での魔力(マナ)容量、そして刃夜の未熟な腕により、炎属性無効、呪い、腐敗防御、炎を少し吸収して膂力に還元する程度まで能力がダウンしている。龍刀【朧火】同様、武器に顕現できるが、魔力(マナ)が少なく、刃夜の未熟な腕では能力だけでの顕現はほぼ不可能。だが、何か媒介物があれば刃夜が貯蓄した魔力を全て解放し、武器に注げば武器の顕現は可能。


魔紅獅刀【炎王】
ランクA
種別 大軍宝具
炎王の護りを使用して夜月に顕現した得物。炎を自在に操る能力と、炎王の力を具現化した剣。本来であれば炎という暴力で衝撃と炎熱で対象を破壊する能力を有しているが……刃夜の今の力量では一振り、しかも出力も一割程度までしか発揮できない。




















少女はただ、願った……

純粋に……

切実に……

助けて欲しい……

と……

本来であればそれは叶わないはずだった……

少女は、心が摩耗し疲弊し、壊れてしまうほどの艱難辛苦の日々を歩む運命(Fate)だった……



それを……



運命(Fate)を……






原点(Zero)






一人の青年が切り裂いた……






一振りの超野太刀を持って……













「おにいさん……だれ?」


意志の全く籠もらない瞳を向けてくる……全裸の少女が、そう俺に問いかけてくる
いつも以上に意味のわからない状態にも驚きだがそれ以上に……これほどの小さな子供がまったく意志の感じられない瞳をするのが、俺には許せなかった
俺はその子に上着を掛けつつ、返事を返す


「いや、俺は呼ばれたから来ただけなんだが……君は?」


いつものように……そうそれこそいつものように流されていた状況で、少女の声が聞こえた
助けてと……
それに呼応した結果が……これだった


「私? 私は……」


色彩の籠もらない目を向けて、少女は自分の名前を口にした
当然だが……知らない名前だった













「今すぐここから逃げてくれ! あいつが来る前に!」


とある洋館の入り口に悲痛な声が木霊する。
左目が完全に潰れてしまっており、顔色もなく、死相を完全に浮かべたその人間に対して……上着を掛けた少女を庇いながら、青年が言葉を返した。


「事情説明をしてくれ。意味がわからないのはいつものことだが……それでも今回のはなかなかに切実そうだ」


いつもと違って最初から怒濤の展開であることを青年は明確に感じ取っていた。
それもそうだろう。
呼び出された場所があまりにも異質な空間だった。
常人ならば吐いていたかもしれない。
それを見て青年も、今回はせっぱ詰まった状況であると瞬時に理解した。


「……信用していいのか?」


突然の出現。
あり得なくもない状況かもしれないが、それでもその男にとって、青年はあり得ない存在だった。
だが……彼にはそれでも縋るしかなかった。
自分の救いたい……青年が庇っている、少女のために。


「少なくとも訳もわからないまま子供を殺すほど、とち狂っちゃいない」


嘘偽りのない言葉。
それだけはない感情が込められていることを感じた男は……その青年に事情だけでも説明することにした。


「……わかった。俺の名前は間桐雁夜だ。君は?」

「俺か? 俺の名前は……」






「おい……征服王……」


見渡す限りの荒野。
青年と巨漢の男が居並び……その背後には数百を超える兵士が群れをなしていた。


「何だ?」


青年の言葉に、巨漢の男が声を返す。
その響きには愉快そうな感情があった。


「どうして俺まで結界の中にいるんだ?」

「何、貴様に我が軍団を見せたくてな。これが我の魂の力。王の軍勢(アイオニオ・ヘタイロイ)!!!!」


己の自慢の兵士達を青年へと見せつける。
背後の兵士達の個人の力は青年よりは劣る。
だが……それでも数という暴力は単純故に恐ろしいことを、青年は十分に理解していた。


「数による攻撃……。単純故に最強の力だな。恐れ入った」

「そこで相談なのだが? 余の軍勢に入らんか?」

「……これほどの力を見せて貰い、さらには、かの征服王から勧誘の言葉を賜って至極光栄だが……遠慮しておこう。俺には……やらねばならないことがある」


自身の願い、自分がなしえなければならないこと。
そのために……青年は今まで戦ってきたのだから。


「ふぅむ……待遇は弾むぞ?」

「というかあの怪物を前にしてそんな馬鹿なこと言っている場合じゃないだろう? 行こうぜ? 怪物退治に!!!!」


眼前の巨大なたこのような真っ黒い生物へと自慢の得物を向けつつ……青年は吼えた。






「それをよこせ、雑種」

「何?」


出会い頭に偉そうな事を行ってくる金色の鎧を纏った男の言動に、青年が眉をひそめる。
が、相手はそれに構わず話を続けた。


「この世の全ては我が宝物。しかれば貴様の持つその剣も当然私のものだと言うことだ」

「傲慢だな。だが残念ながらこれはお前の物じゃないぞ?」

「……何?」


世界全てが自分の物。
それが完全に嘘ではないと言い切れないのがこの男の恐ろしいところ。
だがそれも……青年には絶対に当てはまらなかった。


「何せ俺は……異世界の住人でこの世界の存在じゃない。故にこの剣とかも全てお前の物ではない」






「ランサーとセイバーの決闘を妨害するというのならば……容赦はしないぞ、衛宮切嗣」


刀を抜刀し、その剣先を相手へ……真白色のコートを着込んだ、長い銀髪の女性へと向けながら、青年は少し先の黒いコートの男へと声を上げる。


「……お前はいったい何なんだ?」


黒いコートの男……衛宮切嗣は、鋭く目を青年へと向けつつ、質問をした。
だが、青年としてもそれを明確に答えられる訳じゃなかった。


「サーヴァントとかいう存在らしいぞ? なんかよく知らんが正直どうでもいい。聖杯とやらの万能の願望機にも興味もなければ欲しいとも思わない」

「ならば何故僕の邪魔をする?」

「邪魔をするさ。自身の妻を戦場に立たせて自身は暗殺に走るような輩相手には。俺も同業者みたいな物だがな。それでも自分に取って大切な者を矢面に立たせるのは感心しない」






「ふ……イレギュラーなサーヴァントも粋なことをする物」


小さな体躯だが、その総身から発せられる気迫を感じ取れれば、その存在がただちいさいだけではないことが直ぐにわかる。
銀の甲冑を着込んだ少女が……握っている見えない何かを、相手へと向ける。

「あぁ……これで我らの決闘に対する憂いはなくなった! では……死合おうぞセイバー! 我が主の名にかけて……私は全力でお前を止めてみせる!」


赤き槍を持つその男の顔には、言葉以上に晴れやかな表情が浮かんでいる。
それを見て、相対する人間も……セイバーも、朗らかに笑みを浮かべた。


「……いいだろうランサー。この剣の名にかけて……貴方と全力の決闘をしよう!」






見えない剣と漆黒の剣が、交差している。
そのたびに澄んだ剣戟の音が……辺りの空気を震わせていた。

力任せに振るっては……感情にまかせたまま振るっては絶対に出せない……本当に綺麗で澄んだ音だった……。

全身を真っ黒なプレートアーマーで包んだ男が、その剣技を遺憾なく振るい、本能任せではない確かな技量の剣を振るう。



そこに……その剣に、狂気は微塵もなかった……



それを感じ取って、その少女は心を震わせる。

斬り合いをしている二人以外にはわからない……二人だけの時間が行われている。

それぞれのマスターは、ただそれを見つめることしかできなかった。

至高とも言える剣戟を……皆が黙って見つめていた……。













「これを防ぐか小僧!? ならば今度こそ……全身全霊を持って貴様を倒そう!!!!」



凄まじい力を有する物を振り上げながら、遙か先の敵が吼える。



薄暗い地下の空間という場所ですらも、そいつが着込んだ黄金の鎧は燦然と輝いていた。



そして右手に持った奇怪な剣が、その輝きすらも飲み込む膨大な魔力というその暴力が、赫く輝いていた……



それを見て……俺は腹を据えた。



右手の野太刀へと俺は手を添えて握り直し……吼えた。






「……全力を持ってあいつを倒すぞ!!!! 相棒よ!!!!」













「セイバー……聖杯を破壊しろ」


静かに衛宮切嗣より紡がれる……言葉。
まだ逡巡もあったのだろう。
その声には重い感情が込められている。
だがそれでもそれを口にし……それを眼前の少女は受け入れた。

言葉ではなく……剣を掲げることで……。


「いいのか?」

「……はい」


確認のために、青年が言葉を投げかける。
仮の主君同様に、セイバーにも重い感情があった。
だけど……それだけじゃないとわかったのだ。


「今際の際で望んだんじゃなかったのか? それでもか?」

「礼を言おう開拓者。だが……私にはもう、聖杯は必要ない」


後ろへと振り向きながら、セイバーが青年へと笑いかける。
その顔には……悲しげでありながらも、吹っ切った感じのする……朗らかな微笑が浮かんでいた。
それを眼前のそれへと向けて……気を引き締めて、彼女は吼えた。



高らかに……清らかに……そして何よりも尊い……手に執る真名を謳う。



その剣の真名は……












約束された勝利の剣(エクスカリバー)!!!!」












それが……聖杯戦争の終焉を告げる……最後の言葉だった……













――――――――――――












Fate Zero






超野太刀を持つ開拓者(フロンティア)













At least one year later writing






はいネタ満載な後書きでした~www
いやぁ書いてて楽しかったわw

最初はただ、「生きている人間なのにステータスが見える」というネタから始まった

そう……本当に最初はそれだけだったんだよね~

それがいつからか、本当にサーヴァントとして行かせようという話になって……

五次にいかせようとしたが、ほとんどパクリみたいな話になってしまうので断念

しかしここでアイディア提供者が

「五次がだめなら四次に行けばいいじゃない」

という、マリーでアントワネットな逆転の発想にて考え出されたお話

まぁ開拓者(フロンティア)だけでなく、刃夜自身のスキルはまだあるし、宝具もまだいっぱいあるのですがw
それはおいおい登場次第出していきますね~w

ちなみに予告だから、それこそ予告なく変更《本編を執筆するかどうかも含むwww》するかもしれませんのでご容赦願います~






ではここから本編の事に少し触れましょう



一応言っておきますが

暗殺者(アサシン)のクラス解説の時に

暗殺者の語源となった~

みたいな事が書いてありましたが、あれはあくまでも「原作においては」という前書きがつきます。
「原作=Fate stay Night」に置いてはアサシンの語源が暗殺教団となっているだけで、現実世界に置いてはその限りではないことをご注意願います。



次回は……ついに刃夜&小次郎タッグの恐ろしさを皆様にお見せできそうだ!
ようやく刃夜にスポットライトが当たります!

剣VS野太刀、双剣VS双剣

だぜ!!!!
お楽しみに~



あ、忘れてた

前書きの正解はですね?ww


後書きはルビなんかの文字数も含めて全部で6358でした~www


バカじゃないの?

バカじゃないのwww




ハーメルンにて追記
この後書きはにじファン時代から内容には一切手入れしてません!
誤字脱字程度だから内容はマジで変わってないです

故に……





書くかどうかも謎www
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