月夜に閃く二振りの野太刀   作:刀馬鹿

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出会い

「はぁ~~~~~~~疲れたわ」

 

私は、仕事帰りに、弟分の家に原付を走らせながら、そう一人でぼやいた。

新学期が始まったばかりでまだ授業が始まっていないので、ある意味では楽だけど、その分クラス替えなどの書類仕事をこなさなければいけないので、結局いつもよりも忙しい。

 

「これはもう今日士郎にマッサージさせるしかないなぁ」

 

士郎のマッサージは実に心地がいい。

ご飯を食べた後のマッサージとなればまた格別だった。

 

そう言えば今日のご飯なんだろうな~?

 

士郎と桜ちゃんの料理に思いを馳せながら、私はさらに住宅街を走っていた。

その時……

 

 

パッ

 

 

と突然前方に人が現れた。

 

 

「え?」

 

 

と行った瞬間には遅かった。

そこそこの速度で走っていた私の原付はその人と激突し……私は宙を舞った。

 

 

「ノォオオオオオオ!?」

 

 

バキッ……グシャ ドサ

 

 

盛大に吹き飛んで、私は運良く植木の分部に突っ込んだ。

そして直ぐに起き上がる。

 

「やばい! 人引いちゃった!?」

 

突然の出来事ながらも、私は盛大に折れてしまった植木の木の幹を踏みつけながら先ほど音場所へと戻る。

 

 

 

※ちなみに普通の人間なら死ぬような勢いで吹っ飛んでいた……

 

 

 

私は決してよそ見運転をしていなかった。

だけどそれはいいわけにならないので私はその人へと駆け寄った。

 

「だ……」

「あいててて。ったくなんなんだ? 今の声は」

 

アレ? 無傷?

 

先ほど私が引いた事故現場へと戻ると……びっくりなことにその人は引かれたはずのに……というか私の原付がまっぷたつ!? だというのにその人は……。

 

全く何も感じていなかった。

 

 

……この辺では見かけない人ね?

 

典型的な日本人的な身長と体型。

だけどその服の下には相当に鍛え込まれた体をしているのが何となく感じられた。

今も地面にあぐらで座っているというのに、この人に斬りかかれる光景を浮かべることすら出来なかった。

所持品も普通だったけど……一つだけ普通じゃない物を手にしていた。

 

長く、長く……それこそ本人よりも遙かに長い湾曲した木の棒を……

 

って! 観察してる場合じゃねぇー!

 

「あの、だいじょ……」

「おぉ!?」

 

私の問いかけに気づかずに、その人は勢いよく立ち上がると、辺りを見渡し始めた。

キョロキョロと忙しなく……。

そして懐かしい物を見るような目で……。

 

「電灯だと!?」

 

……なんか変な単語を口にした。

 

特に何の変哲もない。電柱の中間当たりにある電灯を目にして驚愕していた。

また近くの家の塀や屋根を見て一喜一憂したり、新都の方の夜景を見て感涙に噎びいていた。

 

……頭うっちゃった?

 

見かけは今時の若者だって言うのに……。

私はおそるおそると、その人に声を掛ける。

 

「あの~。もしもし?」

「? はい?」

「……大丈夫ですか?」

 

なんか余り大丈夫そうじゃない気がしたけど……。

でも見た感じ本当に怪我をしている様子は見られなかった。

 

「え? 何がですか?」

「いやその……私のバイクでひいた」

「バイクだと!?」

 

私のその言葉に、男の人は先ほど引かれた場所付近に、真っ二つになっている私のバイクへと近寄った。

そしてそれにも感動していた……。

 

「おぉ、文明の利器だ……。ってちょっと待て? 今の日本語?」

「え? えぇ。日本ですから」

「日本だと!?」

 

なんかいろいろと当たり前の事に驚きすぎな気がするんだけど……。

 

本当に危ないところをうっちゃったのかしら?

 

「つかぬ事をお聞きしますが、ここはどこですか?」

「? えっと冬木市ですけど?」

「……冬木市?」

 

冬木市に何か引っかかりを覚えたのか、男の人はなんか考える素振りを見せるたけど、すぐに考えるのをやめた。

 

「まぁいい。何とかしよう。色々と教えて下さってありがとうございました」

 

そう言ってそのまま、立ち去ろうとしてしまった。

 

「ちょ!? ちょっとちょっと!?」

 

その人の袖を、私は大急ぎで掴んだ。

 

「何か?」

「何かって……その……私引いちゃったんですよ? どこか怪我とかないんですか!?」

「え? 引かれてたんですか俺?」

 

気づいてなかった!?

 

その事実に本格的に危ないと思えてしまう私だけど……でも見た目危なそうに見えないし、何よりどこにも異常は見られなかった。

だけど引いてしまったのは事実な訳で……。

 

「と、とりあえずここだと埒が明かないので私の家にきて下さい! 治療します!」

「え、しかし……」

「い~から! 男の子が遠慮なんてしないで!」

 

そう言って半ば強引に連れて行く。

それに観念したのか、男の人が私に自己紹介をしてくれた。

 

「ご親切にありがとうございます。俺の名前は鉄刃夜です。あなたは?」

 

お。最近の若者にしては礼儀を知ってる

 

先に自分の名前を告げてきたこの人に好感を持つ。

実際最近の学生はひどい子が多い。

けどこの人には何か、礼節というか礼儀があった。

それに嬉しくなった私は元気よくこうしゃべった。

 

 

 

「私の名前は藤村大河。この近くで先生やってます」

 

 

 

 

 

 




口調がおかしい気がするが……気にするな!!!!!
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