「到着だな」
「……ふむ、久しいな。この参道を見るのも」
時刻はすでに夜。
もうじき日付が変わろうかという時間に、俺と小次郎に封絶は、柳洞寺の山門へと続く参道前に来ていた。
昼の部のみ店を開いて、午後の部は手伝ってくれた美綴へのお礼と退院祝い、得物達の整備を行った。
といっても、手入れはいつもきちんと行っているので、あまり必要性もなかったのだが。
ちなみに俺の本日の装備はほぼフル装備である。
狩竜、夜月、雷月、蒼月、花月、水月、封絶こと封龍剣【超絶一門】、スローイングナイフ数点。
一人の人間では扱いきれないほどの凄まじい数の得物達である。
「しかしすごいな、刃夜よ。よもやそれ全部を扱えるとは」
「多いかもしれないが全部刃物だしな。扱いには慣れている」
小次郎の感想に俺は言葉を返しながら、得物達の位置を調整していた。
ポジションというか装備している箇所はいつものように、夜月、花月が左腰、雷月、蒼月が右腰、水月は後ろ腰、封絶は背中にシースを縛り付けている。
身体に固定できない規格外な長さの狩竜は当然、右手に握りしめている。
選択肢を多くするためにフル装備できたが……果たして使いどころがあるのだろうか?
「とりあえず向かうが……罠の場所とかはわかるか?」
『少々難しい。どうやらかなりの相手のようだ。ほどんど力を検知できない』
ほぉ、封絶すらも欺くか……。やるな……
封絶は元々、モンスターワールドの竜人族だ。
それが恨みと怨念で自身が鍛造した剣に宿り、俺と供にいる。
竜人族はかなり知識に長けていた存在だった。
魔剣としてなり得たからか、はたまた竜人族としての名残なのか、こういった類のことは得意だったのだ。
まぁ仮にそれがなくても食い破るがな……
「強行突破しかなさそうだ。小次郎準備はいいか?」
「無論だ。何がいるのかわからんが……力の限りを尽くそう」
撃ち出すようにして狩竜を抜き、狩竜が宙にいる間に手に残っている鞘を折りたたみ、背中の封絶のシースに結びつける。
ついでに左手で封絶を片方だけ抜き取り、俺は右肩に狩竜を乗せる。
小次郎も背中の鞘から愛用の野太刀を抜刀していた。
「では……」
「参ろうか!!!!」
参拝にはあまりにも常識外れな時間と格好で……俺たちは参道へと足を踏み入れる。
その瞬間に……影より幾重もの影が伸びる……。
そちらの方……影の元へと目を向ける。
階段の踊り場や階段に、大量の骸骨兵が骨で出来ている剣を携えていた。
「何だあれは? 骸の剣士というのはこれはまた奇怪よな」
「強くもなさそうだが……弱くもなさそうだな。が……俺たちならば問題はあるまい!」
気力にて強化された脚力で、俺は一気に階段へと躍り出て、狩竜で文字通り薙ぎ払った。
ゴシャッ!!!!
狩竜の間合いにあった骸骨兵が全て吹き飛び、粉々に砕けて吹っ飛んでいく。
狩竜を振り抜いた隙に、敵が殺到するが……。
「残念だが……刃夜には触れさせぬ」
その隙を、小次郎がカバーしてくれる。
狩竜ほどではないにせよ、野太刀という圧倒的な間合いで、敵は自身の間合いに入ることすら叶わずに、次々と斬り捨てられていく。
また、虚空に顕れた魔力溜まりから、魔力が球状に形成されたこちらへと目掛けて飛んでくる。
小次郎が魔力関係に強くないことはわかりきっているので、俺はそれらの飛んできた魔力弾を封絶にて斬り捨てたり、吸収させたりする。
「どうやら……」
「大したことはなさそうだな」
もう少し骨があると思っていたのだが……本拠地の割には余り歯ごたえがなかった。
俺の中の推論がますます現実味を帯びていくが、一切の油断をせずに俺たちはどんどんと参道を突き進んでいく。
罠を全て食い破り、やがて山門へとたどり着くが、山門自体には一切何かが仕掛けられている様子はなかった。
罠か?
てっきりこの辺りで門番でも出現するのかと思っていたのだが……随分と杜撰な警備体制である。
それともこれほど杜撰になってしまった理由があるのだろうか?
まぁいい……
「では、開けるぞ?」
「あぁ。頼む」
小次郎とタイミングを合わせて山門を開ける。
そして開ききり、中へと入った瞬間に……
極大の魔力弾が飛来する……
なっ!?
先ほどまでの参道の所々に配置されていた魔力弾の比じゃない大きさだった。
俺の身長と同等の直径がある。
それを見た瞬間に……俺は動いていた。
刃気、魔力解放!!!!
狩竜に溜め込まれている刃気と魔力を解放し、俺は狩竜でそれを……打った……。
「バッター四番……鉄刃夜! 第二打席!! ウッチマ~ス!!!!」
バッキ~~~ン!
振り切ったときに狩竜の腹で殴れるようにして俺は、正面から飛来した魔力弾を撃ち返した。
「大砲の弾すら打ち返した俺が、こんな物で怯むかよ」
「……とんでもないことをするな」
小次郎が呆れたようにぼやいている。
それは遙か彼方へと飛んで行く前に……黒い大きな羽の中に吸収された。
「……でたな」
俺は宙に浮いているその存在へと視線を投じる。
四角く尖った羽のような形状……。
羽には奇怪な紋様が左右対称で描かれており、その紋章が鈍く光っている。
羽の中心部には、ローブのような物を着込んでいる華奢な女性がいる。
右手には何か巨大な杖が握られており、上の方に巨大な円の飾りが付いている。
フードを目深にかぶっているために表情は伺えないが……口元が歪んでいるのを見れば俺たちをどう思っているのかは簡単にわかった。
「こんばんはと……言うべきかしら? 招かれざるお客様にして異様な主従さん」
体つきでなんとなくわかっていたが、どうやら女のようだ。
寺よりも高い位置にローブを羽のように広げたそれは……宙に浮いていた。
「異様な主従?」
「私と刃夜のことか?」
「えぇ。私が従えようと画策していたというのに……頑なに召喚に応じなかった存在を従えていている。しかも主の方も異常なのね……。あなた、どうしてサーヴァントでもないのにステータスが見えるの? しかもクラス名……『|開拓者(フロンティア)』?」
「……開拓者ぁ? なんだそりゃ? しかもステータス?」
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【ステータス情報が更新されました】
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後書きをチェックだぜ! By作者
.
敵のサーヴァントからの言葉に、俺の表情は歪んだ。
言っている意味が全くわからないからだ。
「知らないの? マスターにはサーヴァントのステータスを読み取る能力が聖杯から付加されるの。私はサーヴァントだけど、そう言ったことは得意だから見ることが出来るわ」
ステータスが見えると言われても、俺にはそんな物は見えたことがない。
しかしそれに関しては自分の中で直ぐに結論が出た。
簡単だ……俺は正規のマスターじゃないからだ。
もしくは小次郎は狩竜とラインが繋がっているために、狩竜にその能力が付与されているのかもしれない。
……激しく意味がないが
「ほぉ~。んで『|開拓者(フロンティア)』ってなんだ?」
「さぁ? 私が聞きたい位よ。こんな巫山戯たクラス名。まぁ……あなたの存在も随分と巫山戯ているけどね」
「……出会い頭に随分な言いぐさだな?」
「竜牙兵は人間の達人程度なら軽く倒せる力を持っているのよ? それをあり得ないほど長い剣で倒しておいて人間面するのかしら? しかも……あなたから発せられる異様な威圧感は何? 一体身体に何を宿しているのかしら?」
……ひでぇ言われようだ
「加えて言うなら人の陣地に土足で上がり込んできてよく言えるわね。私は私の目的のために、あなたをなんとしても叩くわよ」
どうやらその言葉に嘘偽りはないらしい。
敵の身体に魔力が満ちるのと同時に、そこらから先ほどの骸骨兵が地中より次々と出現する。
まさに一触即発な状況だったのだが……。
「まぁ待て」
それを俺は構えを解くことで自ら戦う意志がないことを示した。
その態度に、敵だけでなく小次郎までもいぶかしんだ目を俺に向ける。
「どういうつもりかしら?」
「どういうつもりだ刃夜?」
敵だけでなく小次郎までも俺に疑問をぶつけてきた。
小次郎には悪かったが、とりあえず俺はキャスターへと視線を投じて言葉を投げかける。
「確かに土足で上がり込んだのは認めよう。すまなかった。だがどうしてもお前に聞きたいことがあってな」
「聞きたいこと?」
杖を俺へと向けながら、敵が睨みつけてくる。
俺はそれを軽く受け流しつつ、言葉をつづけた。
「お前が龍脈を利用して魔力を集めていることは知っている。そこで質問だが……それは何のためだ?」
「……それを貴方にいう意味はあるのかしら?」
「大いにあるな。まぁ言わせてもらうとだ……。今のお前では俺たちには勝てないだろうよ」
俺たちに勝てないと言うことは、半ば確信を持っていた。
なぜならば、相手は実力を発揮し切れていないからだ。
というよりもおそらく発揮できないのだろう。
本拠地の割には、罠も雑魚兵の数も少ない……
今までの攻撃方法、そしてなによりもその出で立ちは間違いなくキャスターのそれだ。
まぁ残ったサーヴァントはキャスターのみで、俺が見ていないサーヴァントもキャスターだけなので間違いないだろう。
であるにも関わらず罠が余りにも貧弱だった。
魔術師という物が果たしてどれほどのことが行えるのか俺にはわからないが、それでもこの程度ではないことは確かだろう。
しかも人間の魔術師ならばともかく、英霊として招かれるサーヴァントの『|魔法使い(キャスター)』がこの程度というのは非常におかしい。
骸骨兵……竜牙兵といったかな?……も数はそこそこいるがそれでも俺と小次郎にかかれば一分と経たずに全滅させられる程度の数しかいない。
無論キャスターの妨害を考慮に入れての所要時間だ。
そして最後……これが決定打なのだが……。
龍脈の大元に溜められている魔力が余りにも少ない……
地面の下……地下に眠るはずの龍脈。
魔力を集めたのはいいが、それを貯蓄できる空間がなければ意味がないが……貯蓄に関しては何の心配もいらない。
何せ足下に絶好の保管場所である……龍脈があるからだ。
だが、さきほどから老山龍の能力でそれとなく探りを入れたが……集めていると思われる魔力がかなり少なかった。
それこそ……俺が昨日使用した魔紅獅刀【炎王】が、三~四回しか使用できないほどの少なさだ。
これでは大した魔術は使用できないだろう。
その証拠に、キャスターは宙に浮いているのと、最初に放ってきたでかい魔力弾しか魔術らしい魔術を使用していない。
しかも魔力弾は俺が撃ち返したそれを、そのまま吸収したにもかかわらずこの貯蓄。
はっきり言って負ける要素がほとんどない。
宝具という隠し球がある以上油断は禁物だが……それでも負ける気はしなかった。
「魔力が相当少ないな? これで本当に集めていたのか?」
「!? ……そうね。そういえばあなたは霊脈のことを探れたのだったわね。確かに少ないかもしれないわ。けど……それだけで負ける要因にはならないわ」
「探れるというか……まぁいい。負ける要因と言うが……その自信は俺たちに密かに近づいている達人がいるからか?」
「!?」
今度こそキャスターが絶句した。
俺はもちろん、小次郎も気づいていた。
壁伝いに、俺たちへと無感情、殺意の欠片もなく忍び寄ってきている男が。
眼鏡を掛け、こんな夜中にもかかわらずスーツを着込んでいる。
目には全く色がない……。
何というか……人間味を感じない人間である。
だが……こいつを俺は知っていた。
「ふむ。確かに侮れない相手のようだぞ刃夜? 佇まいに一分の隙もない」
「あぁ。確かに以前からただ者ではないと思ってはいたが……まさかマスターだったとは思いませんでしたよ? 葛木先生」
そちらへと視線を投じながら……俺はそう口にした。
そう……大河の出前で何度か見たことがあり、大河を呼びに来たことで互いに面識もあった、葛木宗一郎先生だった。
面識と言っても、顔を合わせたくらいで互いに自己紹介はしていないのだが、俺は大河が名前を呼んでいるので知っていた。
「……出前の青年か」
ぼそりと……あまり話さない葛木先生から声が発せられる。
実に平坦で淡々とした声だった。
「私達に何のようだ?」
「確認したいことがあっただけです。そしてそれはほとんど終わったような物ですよ」
戦うつもりがないと意思表示のために、とりあえず俺は諸手を挙げる。
しかし狩竜は握ったままなので、あまり説得力はない。
「……戦うというのかしら?」
「あまり強がるなキャスター。確かに葛木先生は結構やるようだが……それでも俺たち二人がかりで戦えば直ぐに殺せる」
「……それを私が黙ってみているとでも思っているのかしら?」
おぉ……圧力が増えたな
どうやら葛木先生というマスターを大切に思っているようだ。
まぁマスターというわりには……ライン的な物が全く見えないのだが……。
「話は最後まで聞け。お前魔力がほとんどないんだろ?」
「……」
「加えて言うならば……葛木先生を慕っているようだが正式なマスターではないな? ラインのような物がまったく見あたらない」
「……あなた本当に何者なの?」
わからんでもないが……いつものような質問がキャスターの口から放たれる。
俺は半ばそれにうんざりしながら……言葉を続ける。
「もう本当に聞き飽きたなその台詞。まぁいい。そこで相談なんだが……」
「……何かしら?」
.
「俺と手を組まないか?」
.
――――――――――――
「手を組む……ですって?」
手を組む、と言う言葉を聞いて、キャスターの胸中に疑念が渦巻いていく。
それも当然だろう。
認めたくないことだが、刃夜の言うことはほとんど正解だったからだ。
魔力は集めていると言っても、ほとんど溜まっていないのが現実だ。
人々から集めたと言っても質が良くない上に量も少ない。
他のサーヴァントに知られないために少しずつ集めていたからだ。
葛木が正規のマスターでないことも事実だ。
何しろ葛木宗一郎という人間は魔術師ではない。
故にキャスターに魔力を与えることは出来ないので、当然キャスターは実力を発揮することは出来ないのだ。
ちなみに彼女だけではなく、サーヴァント全員に言えることだが……サーヴァントに魔力を生成する能力がないわけではないのだ。
魔力を生成するための機関などをエンジンに例えるならば、サーヴァントにはそれこそ巨大なエンジンが備えられているのだ。
だがそれでも魔力を生成できないのは、エンジンの一分……それこそ小さな歯車程度の部品が欠けている状態なのだ。
この欠けた部分を補填し、歯車を動かす動力として、マスターからの魔力供給によってそれがまかなわれているのである。
「英霊」という、莫大な魔力を有し、圧倒的な戦闘力を誇る存在を、マスターの力だけで現界させているわけではないのだ。
故に正式なマスターのいないキャスターは、存在するだけで魔力を消耗してしまう。
だからこそ人々から魔力を吸い上げていかなければいけない。
何もしなければ消滅してしまうからだ。
だがかといって敵に自分がここにいることを知られるわけにはいかなかった。
上記にも説明したようにサーヴァントには魔力を生成することが出来ない。
仮にマスターがいない状況でも、他のサーヴァントであればまだ何とか出来るかもしれない。
いくら魔力を使用するとはいえ、武器になる宝具があり、それがなくても圧倒的な身体能力がある。
自分が持ち得ている魔力の蓄えによっては、戦闘を行うことも可能だろう。
しかし……彼女にはそれらが全てなかった。
直接的な攻撃をすることの出来る武器も、圧倒的な身体能力も、そして……魔力の蓄えも。
そのために少ない魔力を使用して罠も仕掛けたのだが、それはあくまで人間……つまりはマスターのために設置したものだ。
マスターさえ殺せばサーヴァントも存在を維持できなくなる。
マスターが死んだ瞬間に消えてなくなるわけではないが、それでも現界に支障を来すのは事実だ。
だからこそ少ない魔力で効率的に敵を撃退するのならば、マスターを倒すしかない……。
そのためにキャスターは少ない魔力で人間を殺す罠を参道に張り巡らした。
仮に士郎が、罠があるとわかった上で参道を通ったとしても、軽く殺せるぐらいの罠をだ。
しかしその罠が……刃夜に通ずるわけもなかったのだ……
そして今キャスターを窮地へと陥れているのだが、圧倒的有利な状況であるにもかかわらず、戦闘を自ら中止してキャスターに同盟を持ちかけている。
これを疑わない人間が……いないわけがなかった。
「一体どういうつもりなのかしら?」
「怪しむのはわかるが聞いてくれ。まず聞くがキャスター……。この聖杯戦争に疑問を感じたことはなかったか?」
(!?)
その意外な投げかけに、キャスターは思わず動揺してしまった。
いくら夜で暗く、ローブで顔を隠しているとはいえ、それに刃夜が気づかないわけがなかった。
思わずニヤリと笑みを浮かべながら、刃夜は言葉を続ける。
「やはりあるか?」
「……少しでも考えればわかる事よ」
キャスターは吐き捨てるように、そう口にした。
それは刃夜のいう疑問に対する答えだった。
七人の英霊を召喚し、聖杯の所有権を得るための殺し合い。
聖杯によって選ばれた|魔術師(マスター)は英霊の依り代となって最後の一人になるまで殺し合う。
これは本当であって本当ではない。
サーヴァントは聖杯に呼び出される存在であり、聖杯を得る人間がふさわしいかどうかを選定するための道具として英霊を召喚する。
呼び出された英霊は聖杯を手に入れるために、令呪という縛りを受けながらも『|魔術師(マスター)』と契約して自分たち以外の存在を殺す。
倒され、殺された英霊は消え去らずに聖杯に取り込まれる。
英霊は聖杯にふさわしいマスターを選定するための道具でしかない。
そのはずなのだが、ようずみになったはずのサーヴァントが何故聖杯に取り込まれるのか?
ちなみに余談ではあるが、刃夜が言っているのはこのことではなく、限りなく個人的な予測と推論からの言葉であるが……それをキャスターが知るはずもなかった。
「何をするのかもわからないけど……それでも私はそれを呑んでこの戦争に参加したわ」
「サーヴァントはそうだろうな。だが俺たちマスターは違う奴だっている。俺は正直聖杯なんて物自体に興味はない。願望機の能力で俺の故郷に帰れることを願っているが……おそらく無理だろう。聖杯戦争のルールもきちんとしているようできちんとしていない。それに加えて……俺の事情も相まって、俺はこの聖杯戦争には何か裏があるんではないかと思っているんだ。それも何か、尋常ではない最悪な裏が」
「……なるほど」
刃夜の言葉に、キャスターは頷かざるを得なかった。
確かに自分はサーヴァントとしてこの世界に現界し、聖杯を求める争いに参加した。
だがルールの矛盾もあり、またこの地の不吉な物を感じ取って、キャスターも何かきな臭い物を感じ取っていたのだ。
「だから俺はその裏がわかるまでは極力サーヴァントを殺したいと思っていないのだ。それこそ敵であってもだ。何が起こるのかわからない以上、切り札は多いに越したことはない」
「……それがどうして同盟に繋がるのかしら?」
「わからないのか? 切り札というのは英霊であるサーヴァントに他ならない。だが今のままではキャスター……お前が一番危ない。故に協力して欲しいと言っているんだ」
「……それは脅しかしら?」
「……何故そう思う?」
平然としたその切り返しに、キャスターは苛立ち混じりに怒鳴りつける。
「とぼけるんじゃないわよ。あなた……わざと大事にしながらここへ来たでしょう? 同盟が目的なら最初に何か言っても罰が当たらないんじゃないかしら? あなたなら使い魔の存在だって気づいていたはずよ」
そう、刃夜がこうして今晩こうしてキャスターの陣営にいち早く来たのには理由があったのだ。
理由は簡単だ……。
アーチャーに見られてしまったためだ。
「本当ならこっそり来るつもりだったんだがな。だがアーチャーに知られてしまったためにこうすることにした。なぜならこの同盟を断れば……」
「セイバーとアーチャーがこの寺に押しかけてくるかもしれない……ということね」
もしも刃夜との同盟を断った後に、士郎と凜が柳洞寺へとやってきた場合、キャスターは天敵を二人を同時に相手しなければならなくなるのだ。
『|剣使い(セイバー)』、『|槍使い(ランサー)』、『|弓使い(アーチャー)』は三騎士と呼ばれており、その三騎士には基本的にクラス別スキルの固有スキルに置いて、対魔力スキルが付与する場合が多い(というよりもその能力を有している英霊が召喚される場合が多い)。
今回の聖杯戦争においても、セイバー、アーチャーはともに対魔力スキルを有している(セイバーとアーチャーの対魔力スキルの性能は雲泥の差だが……)。
そんな天敵を二体も同時に相手することなど……今のキャスターに出来るはずもなかった。
「あなた……自分が最低なことをしていると理解してる?」
「理解はしている。だがそれでも必要だと思ったからしたまでだ。この聖杯戦争には何かがある。これは間違いない。だからこそ切り札は多い方がいいから、俺は昨夜もアーチャーを消すことはしなかった。それにこれは俺の勘だが……魔術がらみであればキャスターが必要になると思ったからだ」
「魔術がらみ?」
「今回の聖杯戦争も、元をただせば魔術による儀式だ。故にあんたの力は何かの役に立つと踏んでいるんだ。つ~かあの二人が絡んでいる以上絶対に何かあるのは間違いないからな……」
(? 何をぼそぼそと?)
最後の方はキャスターには聞こえていなかったが……それは別段キャスターにとってはどうでもいいことだった。
この聖杯戦争には何かがあることはキャスターも気づいていた。
しかし今は存在することに必死でそこまで頭を回す余裕がなかったのだ。
どこまで本気かキャスターにはわからなかったが……それでも刃夜との共闘はメリットがあった。
確かに今回、脅迫以外の何物でもない話を持ちかけてきているが、仮に共闘するのならばキャスターは防衛に関しての心配事が減るのだ。
何せ異端とはいえ剣術の腕が相当いい|アサシン(サーヴァント)と、バーサーカー相手に生身で斬りかかってかすり傷一つ負わなかった|刃夜(マスター)の二人組だ。
そうそう負けることはない。
加えてキャスターも微細とはいえ援護をし、柳洞寺に立てこもった場合……これほど厄介な陣営はないだろう。
何せ柳洞寺には初めから強力な結界が張り巡らされているので、正門である山門以外に道がない。
人間には結界は関係ないために森の中を突っ切ることも可能だが、それは刃夜も同じである。
そして刃夜という存在がいる以上、サーヴァントと別行動をするのは自殺行為に等しい。
必然的にキャスターや刃夜を倒すためには正門を通るしか手段がないことになるのだ。
しかし……そこには当然のように刃夜と小次郎、さらには竜牙兵という数の暴力……。
はっきり言って……城塞にも等しい拠点と化すのだ。
これならばさすがにバーサーカーとはいえ容易に迫ることは出来ない。
何せマスターを殺されてしまっては現界するのが難しいのだ。
マスターが来ないという選択肢もあるが……それはそれで問題がある。
仮にその状態で攻めてきても小次郎とキャスターが奮闘している間に、刃夜がイリヤを始末しに行くことだって出来るのだ(もっとも、刃夜はそれを行わないだろうが)。
そのため、バーサーカーは自分のそばにマスターを連れているのがもっとも安全だが……、上記の通りイリヤを伴って攻め入れば、イリヤを護りながらの戦闘となってしまうので苦戦は必至だ。
つまり……メリットの方が大きいのだ。
刃夜としては別段、キャスターの能力が絶対に必要という訳ではない。
ただまだ状況が完全に把握して切れていない以上、選択肢を減らしたくないというためにキャスターを生かしておきたいという事なのだ。
が……キャスターも言っていたが、脅しや脅迫と思えるような状況でその話を持ちかけたのはあまり褒められた物ではなかった。
確かにアーチャーに見られたがためにそうせざるを得なかったという事もある。
だがそれでももう少し誠意という物を見せた方が、キャスターも信じることが出来ただろう。
しかしそれも刃夜としては、断られて戦闘に発展したらデメリットしかないから、半ばそうせざるを得ない状況に追い込んだというのもあった。
戦闘に発展することはないが……というか発展したらそう時間がかからずに刃夜と小次郎が勝利する……険悪ともいえる状況に、キャスターに取っては招かれざる、刃夜にとってはある意味で好都合な存在が来訪した。
金紗の髪を邪魔にならないように後ろでまとめており、鋭い目線で辺りを見回し……こちらへと目を向けてくる。
銀の甲冑に、青い法衣。
銀の手甲が何かを握っているような形をしていた。
おそらく、相手の見えない得物……そのクラス名にふさわしい、見えない剣を手にしているはずだ。
最優と言われる……『|剣使い(セイバー)』のサーヴァント。
セイバー
が来訪した。
.
――――――――――――
余り風の吹かない……夜。
すでに時刻は深夜と言って差し支えがない。
大地にも空にも、すでに生き物の姿はほとんどなく、住宅街である深山町は、深い眠りについている。
その一角……大きな武家屋敷の庭に、一人の少女が立っていた。
(風が出るな)
風がほとんど吹いていないが、それでも遙か上空の雲は大きく流動している。
それを感じ取ったのか……はたまたそれを見たのか定かではないが、セイバーのその声には確信に似た何かが込められていた。
澄んだ緑の瞳を空へと向けながら、その目を月へと移す。
綺麗な満月が浮かぶ……月へと。
その目線をおろし、武家屋敷の土蔵へと視線を投じる。
土蔵には士郎がいつものように眠っている。
彼女の主は、柳洞寺にいる敵のサーヴァントと戦わないと言った。
まだ情報が少ないからだと。
士郎は聖杯に願う願いがない。
故に焦る必要性もない。
だが……彼女は……セイバーは違った。
彼女には叶えたい……それこそ聖杯でしか叶わないような願いがあった。
「貴方が戦わないというのならば……それでいい。だが……」
瞳を閉じて……まるで過去を思い出しているかのようだった。
その胸中に去来するのは……かつての自分。
かつての自分の国、戦友。
そして……国の崩壊……。
それをただ、屍で築かれた丘の上から眺めることしか出来なかった……自分。
(私は……)
自分が聖杯に望むことを確認し、セイバーは閉じていた瞳を力強く開く。
その時……彼女の姿は一変した。
銀に輝く甲冑を纏い、青い法衣を包んだその姿は、すでに格好も気配も……少女ではなかった。
圧倒的な魔力を有して編み上げられた鉄壁の護りと、人を凌駕する魔力で第二の鞘に纏われた不可視の剣。
戦場に置いて不敗であり、最強とも謳われた彼女は、この現代に置いてもなお、その圧倒的な強さは健在だった。
七人のサーヴァント中、最優であり、最強と言われる剣士。
実際彼女は……セイバーは優秀だ。
見えない剣という間合いを計らせない剣技を用いて敵の攻め気をくじき、その圧倒的な魔力によるブーストで常人を遙かに凌駕した身体能力で敵を圧倒する。
剣技だけでなく、その見えない剣の中……彼女の象徴とも言える剣は、圧倒的な力を昨日目の当たりにしたばかりだ。
あれほどの破壊の力を用いたにもかかわらず、彼女に疲労の色は全くなかった。
それどころか、わかる人間が見れば一目で見ぬいただろう。
彼女を包む魔力が、全く減っていないことを
むしろ昨夜で消費された魔力を補うために、竜の因子がうごめいているのか……昨夜以上に魔力で溢れていた。
セイバーは彼女が生まれるときに、魔術師マーリンの計らいで、人の身でありながら竜の因子を持って生まれたために、魔術回路を用いなくてもただ生きているだけで魔力を生成することが出来る。
それが彼女の力の根底を支えている。
「貴方は甘い。そのままでは敵に殺されてしまうかもしれない」
実際、士郎は甘い。
敵が襲ってこなければこちらから戦いを仕掛けることはない。
無論正義の味方を目指す彼は、被害者を出さないための戦いには無条件で首を突っ込むだろう。
理想であり、理想論である彼の戦闘姿勢は……端から見たら甘すぎる。
自分の身さえも守れない小僧でしかない……
だがそんな士郎を、セイバーは好いていた。
全てを救う……。
そんな理想が……自分にもあったから……
彼のひたむきなまでのその姿勢が……自分は正しかったと、思わせてくれるから……
確かにセイバーは聖杯が欲しい。
だがそれでも……自分の主君のために聖杯を捧げたいと思っていることもまた事実だった。
聖杯戦争に望んでいるにもかかわらず、聖杯に願う望みはないという彼が……心配だったから。
自分のためにも、士郎のためにも……セイバーはこの聖杯戦争を勝ち抜かねばならなかった。
故に……主君に対する裏切りと知りながら、彼女はその視線を遙か先、柳洞寺へと向ける。
(本来ならば、サーヴァントに従わなければならない……けれど……)
主君の命に背くことを、セイバー自身、すごくためらいがあった。
礼節をわきまえ、主の意志を代行する騎士の中の騎士とも言える彼女は、本来であれば命令に背くことなどよしとはしない。
だが決して士郎を裏切ったわけではないのだ。
セイバーはセイバーなりに考えを下して、主である士郎を勝たすために……何よりも生かすために、この決断を下したのだ。
彼女は、士郎が今のままでは危ういと判断したのだ。
サーヴァントであるはずの自分を、人間である自分自身よりも尊重し、自分の命も省みずに救おうとするその行動。
尊いが、それ故に歪んでいた。
それを彼女は危惧したのだ。
だからこそ、命令に背いてまでこうして今宵、単身乗り込もうとしているのだ。
士郎とセイバーの関係は良好と言えるが、当然のように相容れないサーヴァントとマスターというのももちろん存在した。
どちらも、相手が死ねば代役がいることもあり、時にはマスターが、逆にサーヴァントが、お互いを殺して別の存在と契約を結ぼうとすることもある。
そのために、令呪という物が存在するのだ。
令呪が手にある限り、マスターの安全はある程度保証される(といっても本当にある程度だが)。
キャスターにマスターがいないのはこれの典型的な例である。
あまりに自分をぞんざいに扱うマスターに嫌気がさしたキャスターは、自分を召喚したマスターを殺したのだ。
そのために彼女はマスターが不在の状態となっている。
「……行こう」
そして……一足で塀を越えて、闇を駆けた。
彼女とて、寺に閉じこもっているキャスターを討つのが容易でないことはわかっていた。
だがそれでも彼女には絶対的な力と、培ってきた力があった。
英雄としての誇りを胸に……セイバーは駆けていく。
そして参道へとたどり着き……拍子抜けした。
(何もない?)
彼女は魔術師ではないために、完全に魔術の気配を辿ることは出来ないが、危険があるか否かは経験で察知できる。
その彼女の経験と勘が、この参道に何も罠がないことを教えていた。
否……なくなっているといった方が正しいだろう。
何せ、刃夜と小次郎が少し前にこの参道を圧し通ったのだから。
何物かが駆け抜けた後だと気づいたセイバーが……用心しつつも最速で石段を駆け上る。
そして開かれている山門をくぐり抜けて……その場へとたどり着いた。
.
――――――――――――
「……鉄刃夜にアサシンのサーヴァント!?」
「ほぉ、セイバーが来るとは……」
突然の来訪者に、全員がその来訪した少女……セイバーへと視線を投じる。
小次郎は血が騒いだのか……好戦的な気迫を身体から発露させていた。
俺は誰かしら来ることはわかっていたし、気配も捉えていたので驚きはしなかったが……。
てっきり、四人で来ると思っていたのだが……
セイバーだけでなく士郎に、遠坂凜&アーチャーの四人で来ると思っていたが……どうやら違ったらしい。
どちらにしろ、都合がいいことに代わりはない。
セイバーの出で立ち、さらにはその総身からあふれ出す気配は戦闘時に出すそれに他ならない。
つまり……セイバーはキャスターを討伐するために来たのだ。
そして当然、それを俺が黙ってみているわけがない。
なかなかに最低なことをしているが構いやしない……
これでほとんどキャスターは俺の提案を受けざるを得なくなる。
ここでもしも俺と小次郎が消えた場合、セイバーの相手を葛木先生が行うことになる。
葛木先生がどの程度の実力を有しているのかわからないが、それでもセイバーが負けることはないだろう。
何せ小娘とはいえ最優と名高いセイバーのサーヴァントなのだから。
だが、だからといってキャスターが敗北することはない。
俺と小次郎が、それを阻止しないわけがない。
仮に同盟を結ぶことが出来なくても、みすみす優秀な存在であるキャスターを放って置くわけがない。
あの二人が俺をこの世界に送り込んだときに言われた言葉。
修行不足。
あの二人が何の意味もなくこの世界に俺を送ったとは思えない。
故に……キャスターを死なせるわけにはいかなかった。
ったく……何を企んでいるのやら……
何があるのかわからないが、手札不足で敗北するわけにはいかない。
故に俺は全力を持ってキャスターを援護する。
……戦闘開始かな?
気取られることのないように静かに心身を戦闘態勢へと移行させる。
小次郎もセイバーの気迫につられて、野太刀を静かに抜刀していた。
それを見て、セイバーも俺たちが邪魔な存在であると理解したようだ。
先ほどよりもさらに睨みつけて、その見えない剣を構えた。
半ば混沌の様相を呈しているこの柳洞寺。
静かに……戦闘が始まろうとしていた……。
サーヴァント
真名 鉄刃夜
特技 刀の鍛造、料理
好きな物 刀、料理、読書
嫌いな物 人に迷惑を掛けて平然としているクズ
天敵 祖父、親父
属性 混沌、
ステータス
筋力 B
耐久 C+
敏捷 B+
魔力 B+++
幸運 C
宝具 EX+++
スキル
単独行動EX
生きているので単独行動もくそもない。ある意味でバグのスキル。生きているが故にマスターからの魔力供給の必要性は皆無。また宝具も普通に使用可能だが、本人の力量に大きく依存する
故郷の料理A
モンスターワールドにて作り上げた一つのジャンル和食。和食のみ味が最強の領域に達している。また他の洋風、中華もかなりのレベルの物を作ることが可能。しかし元々の腕がいいのであまりこのスキルは効果がない
温泉探知A
匂いさえ出ていれば、どこに温泉があるのか直ぐにわかる。武装があれば、掘ることも可能。が、この世界で発掘する機会はない
刀鍛造A
普通の鍛造と違い気を注ぎながらの鍛造のため、普通の刀よりもより強力な刀の鍛造が可能。が、この世界で鍛造する機会はない
農作業A
米、大豆などの農作業を行うとすばらしい実力を発揮、スキルの恩恵でほぼ確実に豊作になる。がこの世界で農作業を行う機会はない
鎧鍛造A
新たな鎧を作り上げたことに寄る恩恵。が、この世界で鎧鍛造の機会はない
外道B-
己の願いのために数々の女性を棄てた男。理由を知らない人間が聞けば嫌われること間違いなし
陣地作成D
運があるのかないのか……行く先々で己の生活拠点を得る能力。当然拠点を手に入れるだけで特に効果はない
宝具
夜月
ランク 測定不能
種別 対人宝具
最大補足 不明
刃夜の祖父が、刃夜が誕生したのと同時に造り上げた一振りの打刀。ただの打刀だが、守護者としてのアーチャーの力を持ってしても完全なる投影は不可能。上っ面は投影できるが、それはただの打刀であって夜月では絶対になり得ない。究極の防御壁を展開可能だが、持ち主であり主である刃夜の意志で発動することは不可能で、何かしらの発動条件があるが以前として不明のままである。つまり刃夜にとっては超頑丈な打刀でしかない。だが、一番の武器であり相棒である。
雷月
ランクC
種別 対人宝具
レンジ 1~30
モンスターワールドの雷狼の素材を用いて作られた打刀。そのモンスターの性質と、碧玉に気を注ぎ込むことで電磁を用いた高速の斬撃「電磁抜刀」が可能。それの応用で鞘や他の得物を飛ばすことも出来る。モンスターの素材を用いているため普通のよりは強いが、それほど頑健というわけではない《気も注がずにエクスカリバーなどと打ち合えば普通に破壊される》。だが目に見えぬほどの速度で繰り出される剣速は脅威の一言。現在の刃夜の最速の剣撃。他の武器に電磁を纏わせることも可能。
蒼月
ランクC++
種別 対人宝具
モンスターワールドの
封龍剣【超絶一門】
ランクB+++
種別 対龍宝具
モンスターワールドで手に入れた武器。不思議な鉱石で作られている。
龍刀【朧火】
ランク測定不能
種別 対魔獣、魔龍、神獣、神龍宝具
レンジ 不明
最大補足 不明
モンスターワールドの
登場予定なしw
炎王の護り
ランクC
種別 対人宝具
紅炎王龍テオテスカトルの力の結晶炎属性を完全無効。また炎熱、呪い、腐敗から身を守る。マグマでスイミングも可能。炎を膂力に変える力を持つ。その力は意志と力量に比例する。この世界での
魔紅獅刀【炎王】
ランクA
種別 大軍宝具
炎王の護りを使用して夜月に顕現した得物。炎を自在に操る能力と、炎王の力を具現化した剣。本来であれば炎という暴力で衝撃と炎熱で対象を破壊する能力を有しているが……刃夜の今の力量では一振り、しかも出力も一割程度までしか発揮できない。
.
.
少女はただ、願った……
純粋に……
切実に……
助けて欲しい……
と……
本来であればそれは叶わないはずだった……
少女は、心が摩耗し疲弊し、壊れてしまうほどの艱難辛苦の日々を歩む運命《Fate》だった……
それを……
一人の青年が切り裂いた……
一振りの超野太刀を持って……
.
「おにいさん……だれ?」
意志の全く籠もらない瞳を向けてくる……全裸の少女が、そう俺に問いかけてくる
いつも以上に意味のわからない状態にも驚きだがそれ以上に……これほどの小さな子供がまったく意志の感じられない瞳をするのが、俺には許せなかった
俺はその子に上着を掛けつつ、返事を返す
「いや、俺は呼ばれたから来ただけなんだが……君は?」
いつものように……そうそれこそいつものように流されていた状況で、少女の声が聞こえた
助けてと……
それに呼応した結果が……これだった
「私? 私は……」
色彩の籠もらない目を向けて、少女は自分の名前を口にした
当然だが……知らない名前だった
.
「今すぐここから逃げてくれ! あいつが来る前に!」
とある洋館の入り口に悲痛な声が木霊する。
左目が完全に潰れてしまっており、顔色もなく、死相を完全に浮かべたその人間に対して……上着を掛けた少女を庇いながら、青年が言葉を返した。
「事情説明をしてくれ。意味がわからないのはいつものことだが……それでも今回のはなかなかに切実そうだ」
いつもと違って最初から怒濤の展開であることを青年は明確に感じ取っていた。
それもそうだろう。
呼び出された場所があまりにも異質な空間だった。
常人ならば吐いていたかもしれない。
それを見て青年も、今回はせっぱ詰まった状況であると瞬時に理解した。
「……信用していいのか?」
突然の出現。
あり得なくもない状況かもしれないが、それでもその男にとって、青年はあり得ない存在だった。
だが……彼にはそれでも縋るしかなかった。
自分の救いたい……青年が庇っている、少女のために。
「少なくとも訳もわからないまま子供を殺すほど、とち狂っちゃいない」
嘘偽りのない言葉。
それだけはない感情が込められていることを感じた男は……その青年に事情だけでも説明することにした。
「……わかった。俺の名前は間桐雁夜だ。君は?」
「俺か? 俺の名前は……」
「おい……征服王……」
見渡す限りの荒野。
青年と巨漢の男が居並び……その背後には数百を超える兵士が群れをなしていた。
「何だ?」
青年の言葉に、巨漢の男が声を返す。
その響きには愉快そうな感情があった。
「どうして俺まで結界の中にいるんだ?」
「何、貴様に我が軍団を見せたくてな。これが我の魂の力。
己の自慢の兵士達を青年へと見せつける。
背後の兵士達の個人の力は青年よりは劣る。
だが……それでも数という暴力は単純故に恐ろしいことを、青年は十分に理解していた。
「数による攻撃……。単純故に最強の力だな。恐れ入った」
「そこで相談なのだが? 余の軍勢に入らんか?」
「……これほどの力を見せて貰い、さらには、かの征服王から勧誘の言葉を賜って至極光栄だが……遠慮しておこう。俺には……やらねばならないことがある」
自身の願い、自分がなしえなければならないこと。
そのために……青年は今まで戦ってきたのだから。
「ふぅむ……待遇は弾むぞ?」
「というかあの怪物を前にしてそんな馬鹿なこと言っている場合じゃないだろう? 行こうぜ? 怪物退治に!!!!」
眼前の巨大なたこのような真っ黒い生物へと自慢の得物を向けつつ……青年は吼えた。
「それをよこせ、雑種」
「何?」
出会い頭に偉そうな事を行ってくる金色の鎧を纏った男の言動に、青年が眉をひそめる。
が、相手はそれに構わず話を続けた。
「この世の全ては我が宝物。しかれば貴様の持つその剣も当然私のものだと言うことだ」
「傲慢だな。だが残念ながらこれはお前の物じゃないぞ?」
「……何?」
世界全てが自分の物。
それが完全に嘘ではないと言い切れないのがこの男の恐ろしいところ。
だがそれも……青年には絶対に当てはまらなかった。
「何せ俺は……異世界の住人でこの世界の存在じゃない。故にこの剣とかも全てお前の物ではない」
「ランサーとセイバーの決闘を妨害するというのならば……容赦はしないぞ、衛宮切嗣」
刀を抜刀し、その剣先を相手へ……真白色のコートを着込んだ、長い銀髪の女性へと向けながら、青年は少し先の黒いコートの男へと声を上げる。
「……お前はいったい何なんだ?」
黒いコートの男……衛宮切嗣は、鋭く目を青年へと向けつつ、質問をした。
だが、青年としてもそれを明確に答えられる訳じゃなかった。
「サーヴァントとかいう存在らしいぞ? なんかよく知らんが正直どうでもいい。聖杯とやらの万能の願望機にも興味もなければ欲しいとも思わない」
「ならば何故僕の邪魔をする?」
「邪魔をするさ。自身の妻を戦場に立たせて自身は暗殺に走るような輩相手には。俺も同業者みたいな物だがな。それでも自分に取って大切な者を矢面に立たせるのは感心しない」
「ふ……イレギュラーなサーヴァントも粋なことをする物」
小さな体躯だが、その総身から発せられる気迫を感じ取れれば、その存在がただちいさいだけではないことが直ぐにわかる。
銀の甲冑を着込んだ少女が……握っている見えない何かを、相手へと向ける。
「あぁ……これで我らの決闘に対する憂いはなくなった! では……死合おうぞセイバー! 我が主の名にかけて……私は全力でお前を止めてみせる!」
赤き槍を持つその男の顔には、言葉以上に晴れやかな表情が浮かんでいる。
それを見て、相対する人間も……セイバーも、朗らかに笑みを浮かべた。
「……いいだろうランサー。この剣の名にかけて……貴方と全力の決闘をしよう!」
見えない剣と漆黒の剣が、交差している。
そのたびに澄んだ剣戟の音が……辺りの空気を震わせていた。
力任せに振るっては……感情にまかせたまま振るっては絶対に出せない……本当に綺麗で澄んだ音だった……。
全身を真っ黒なプレートアーマーで包んだ男が、その剣技を遺憾なく振るい、本能任せではない確かな技量の剣を振るう。
そこに……その剣に、狂気は微塵もなかった……
それを感じ取って、その少女は心を震わせる。
斬り合いをしている二人以外にはわからない……二人だけの時間が行われている。
それぞれのマスターは、ただそれを見つめることしかできなかった。
至高とも言える剣戟を……皆が黙って見つめていた……。
.
「これを防ぐか小僧!? ならば今度こそ……全身全霊を持って貴様を倒そう!!!!」
凄まじい力を有する物を振り上げながら、遙か先の敵が吼える。
薄暗い地下の空間という場所ですらも、そいつが着込んだ黄金の鎧は燦然と輝いていた。
そして右手に持った奇怪な剣が、その輝きすらも飲み込む膨大な魔力というその暴力が、赫く輝いていた……
それを見て……俺は腹を据えた。
右手の野太刀へと俺は手を添えて握り直し……吼えた。
「……全力を持ってあいつを倒すぞ!!!! 相棒よ!!!!」
.
「セイバー……聖杯を破壊しろ」
静かに衛宮切嗣より紡がれる……言葉。
まだ逡巡もあったのだろう。
その声には重い感情が込められている。
だがそれでもそれを口にし……それを眼前の少女は受け入れた。
言葉ではなく……剣を掲げることで……。
「いいのか?」
「……はい」
確認のために、青年が言葉を投げかける。
仮の主君同様に、セイバーにも重い感情があった。
だけど……それだけじゃないとわかったのだ。
「今際の際で望んだんじゃなかったのか? それでもか?」
「礼を言おう開拓者。だが……私にはもう、聖杯は必要ない」
後ろへと振り向きながら、セイバーが青年へと笑いかける。
その顔には……悲しげでありながらも、吹っ切った感じのする……朗らかな微笑が浮かんでいた。
それを眼前のそれへと向けて……気を引き締めて、彼女は吼えた。
高らかに……清らかに……そして何よりも尊い……手に執る真名を謳う。
その剣の真名は……
.
「
.
それが……聖杯戦争の終焉を告げる……最後の言葉だった……
.
――――――――――――
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Fate Zero
超野太刀を持つ
.
At least one year later writing
はいネタ満載な後書きでした~www
いやぁ書いてて楽しかったわw
最初はただ、「生きている人間なのにステータスが見える」というネタから始まった
そう……本当に最初はそれだけだったんだよね~
それがいつからか、本当にサーヴァントとして行かせようという話になって……
五次にいかせようとしたが、ほとんどパクリみたいな話になってしまうので断念
しかしここでアイディア提供者が
「五次がだめなら四次に行けばいいじゃない」
という、マリーでアントワネットな逆転の発想にて考え出されたお話
まぁ
それはおいおい登場次第出していきますね~w
ちなみに予告だから、それこそ予告なく変更《本編を執筆するかどうかも含むwww》するかもしれませんのでご容赦願います~
ではここから本編の事に少し触れましょう
一応言っておきますが
暗殺者の語源となった~
みたいな事が書いてありましたが、あれはあくまでも「原作においては」という前書きがつきます。
「原作=Fate stay Night」に置いてはアサシンの語源が暗殺教団となっているだけで、現実世界に置いてはその限りではないことをご注意願います。
次回は……ついに刃夜&小次郎タッグの恐ろしさを皆様にお見せできそうだ!
ようやく刃夜にスポットライトが当たります!
剣VS野太刀、双剣VS双剣
だぜ!!!!
お楽しみに~
あ、忘れてた
前書きの正解はですね?ww
後書きはルビなんかの文字数も含めて全部で6358でした~www
バカじゃないの?
バカじゃないのwww
ハーメルンにて追記
この後書きはにじファン時代から内容には一切手入れしてません!
誤字脱字程度だから内容はマジで変わってないです
故に……
書くかどうかも謎www