月夜に閃く二振りの野太刀   作:刀馬鹿

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2018/5/14 追記
S(人格16人)様 誤字報告ありがとうございました!
修正しました!


咆哮

約束された勝利の剣(エクスカリバー)

 

聖剣より放たれたその光は、夜が昼になるほどの光量が迸っていた。

セイバーの魔力が光へと変換されて究極の斬撃となって、刃夜と小次郎を襲う。

 

(やった――!!)

 

サーヴァントだけでなく、人間である刃夜さえも殺すことになってしまった。

そのことにためらいを覚えたセイバーだったが、それでも彼女は自分自身が振り上げ、振り下ろした剣を止めることはしなかった。

 

 

 

聖杯戦争。

 

「何でも願いが叶う」というのは誰もが一度は欲しいと、あるいは考えることだろう。

欲しいという欲求。

金であったり、地位であったり、名誉であったり……。

もしくは誰かを生き返らせたり、歴史を変えたり……。

願いは人それぞれ、千差万別だろう。

だがそれが当然のように叶わないことだとわかっている。

何でも願いが叶うなど本来はあり得ない。

 

 

 

だが、この聖杯戦争の聖杯は違った。

 

この聖杯戦争の聖杯という物は、万能の願望機と確かに何でも叶う正真正銘の本物だった。

故にサーヴァント達も、自分の叶わなかった望みを叶えるために、人間という自分たちとは格下の存在の下にいることを許しながらも戦争に望む。

当然のようにセイバーには願いがあった。

 

それを叶えるために彼女はこの戦争を勝利へと導かなければならなかった。

 

だから……彼女は敵に対して容赦はしない。

最強の伝説を振りかぶり、相手を消滅させる光の力を振りかぶり、振り下ろした。

 

 

 

それを受けることは、小次郎にも刃夜にも不可能だ。

 

刃夜も考えたことだが、彼が持つ「夜月」のあの壁ならば、セイバーの『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』をも防げた。

 

だが当然と言うべきか、それが反応することはなかった。

 

何故か?

 

確かに夜月の発動条件は特殊だった。

 

それでも主の危機に反応しないのは何故なのか?

 

 

 

 

 

 

答えは簡単だ。

 

 

 

 

 

 

必要がなかったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

仮に必要だったとしても、この条件下では発動はしなかっただろう。

 

 

 

 

 

 

だがそれでも必要がないという理由で、夜月は反応しなかった。

 

 

 

 

 

 

自分が何かをしなくても、自分の主は大丈夫だという事がわかっていたのだ。

 

 

 

 

 

 

それを……この場にいる全員が知ることになる。

 

 

 

 

 

 

(? 何だ?)

 

 

 

 

 

 

刃夜の胸より生まれ出でる炎を見て、セイバーが訝しんだ表情を浮かべる。

 

 

 

 

 

 

(? 紅いに輝く炎?)

 

 

 

 

 

 

刃夜の胸から生じたそれは、最初こそ紅い、紅い……玉だった。

 

紅玉と呼ぶにふさわしいそれより……紅に光り輝く炎があふれ出した。

 

たったそれだけだ……。

 

たったそれだけで……セイバーの宝具は止められた。

 

 

 

 

 

 

(!? 馬鹿な!?)

 

 

 

 

 

 

間違いなく最強の一振り、文字通り城を吹き飛ばせる最強の一撃だった。

 

断言してもいい。

 

 

 

セイバーの宝具『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』は、今回(・・)召喚されたサーヴァントの中では最強の宝具だ。

 

 

 

一撃の威力……火力においては、セイバーの『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』を越える物は存在しなかった。

 

 

 

それを受け止めたその紅銀の炎は……果たしてなんなのか?

 

 

 

当然のようにセイバーの胸中に驚きと同時に、そう言った疑問が生じた。

 

 

 

 

 

 

それはその想いに応えるかのように……徐々に形を成していった。

 

 

 

 

 

 

まず翼が生まれた。

 

 

 

大空を羽ばたく……王者のようなその風格は、正に天翔る翼だった。

 

 

 

次に全てを凪払う、鋭い棘のある尻尾が生える。

 

 

 

触れた物全てを、存在その物を否定するかのように切り刻む、鋭いかぎ爪を生やす足が出来る。

 

 

 

最後に……全てをかみ砕くかのような牙を生やし……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それが出現した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゴアァァァァァァ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

炎が形を成し、そこに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀の太陽が生まれた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀に輝く鱗を纏うそれは、ただそこに……刃夜の前にいるだけで、セイバーの『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』の斬撃を弾いた。

 

 

 

一度ではなく、放ち続けているそれを、平然と弾き続ける。

 

 

 

ただ立っているだけで、それはセイバーの……最強の幻想を圧倒していた。

 

 

 

 

 

 

 

(竜だと!?)

 

 

 

 

 

 

それを見て、セイバーが絶句した。

 

幻想種の頂点に立つ、最強の存在「竜」。

 

未だかつて見たことのないそれを、目の当たりにして驚く。

 

だがそれだけではなかった。

 

竜の因子を持つ彼女には……在る程度ではあるが、それがどれほど凄まじい存在であるか、直感で感じることが出来た。

 

周りの人間達も、「竜」が出現したことで動転していたが、どれほどの凄まじいかと言うことはわからなかった。

 

「竜」がすごいことは知識として知っていた。

 

……それがどれだけすごいかわからない。

 

 

 

 

 

 

だが……すぐにそれを知ることになった。

 

 

 

 

 

 

その竜が首を振りかぶり、自身に纏ったそれを一部へと……口内へと収束していく。

 

 

 

 

 

 

それがまずいとわかり、行動できたのはセイバーのみ。

 

 

 

 

 

 

しかし、まずいとわかったところで彼女にはそれを止める術もなく……

 

 

 

 

 

 

そして……新たな太陽が放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

「ゴォォォォォォォォ!!!!」

 

 

 

 

 

 

竜より放たれた火球。

 

竜の火球(ドラゴン・ブレス)」はセイバーの『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』を易々と貫き通す……。

 

 

 

確かに彼女は昨夜消耗した。

 

 

 

城を吹き飛ばすことの出来るということは、それ相応にエネルギーが必要である。

 

 

 

だが彼女は竜の因子を持つ人間を完全に超越した存在だ。

 

 

 

その剣も、人間が鍛えし物ではない……「究極の幻想(ラスト・ファンタズム)」の名に恥じぬ、究極の剣。

 

 

 

 

 

 

その剣が負けることに……士郎はもとより、凛も、アーチャーも、キャスターも、驚愕していた。

 

 

 

 

 

 

だがそれも無理からぬ事だった。

 

 

 

神より授かりしその剣を易々と吹き飛ばすそれは……確かに最強だった。

 

 

 

セイバーも人間を超越した存在だ。

 

 

 

 

 

 

だが……それでも……

 

 

 

 

 

 

祖の力を持つ「銀火竜」に、勝ることは叶わなかった。

 

 

 

 

 

 

(!? ぐっ!?)

 

 

 

 

 

 

その火球がセイバーへと迫る。

 

それは全てを……空間すらも燃やし尽くす、太陽を超えた『銀の太陽(シルバーソル)』。

 

故に彼女は、消滅するのも覚悟で自分の魔力をさらに剣へと注ぎ、それを迎撃する。

 

空間すらも消滅させるそれを喰らっては、当然のように無事では済まない。

 

それどころか死ぬだけでは飽きたらずに、存在その物が消滅してしまうかもしれない。

 

その恐怖が……彼女を駆り立てた。

 

 

 

 

 

 

「……だぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 

 

 

吼えた……。

 

力の限りに吼え、セイバーはありったけの魔力を注ぎ……さらなる光がセイバーのエクスカリバーよりあふれ出した。

 

一瞬で貫いていた火球がそれによって徐々に速度が落ちていき……最終的には互いに相殺された。

 

 

 

その結果だけを見れば、相殺したと言ってもいいだろう。

 

 

 

だが……それで喜んでいられるほど状況は甘くなかった。

 

 

 

 

 

 

(……まずい!!)

 

 

 

 

 

 

肉体を保つのが難しくなるほどに、セイバーは魔力を消費した。

 

昨夜使用した『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』を二発撃てるほどの魔力量まで回復していたそれが、ほとんど空になってしまったのだ。

 

だが敵は……刃夜は違った。

 

セイバーの『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』を消失させたのはあくまでも銀火竜である。

 

「竜」という最強の幻想種を……それすらも超えた存在を召喚したので、少しは消耗していると信じたいセイバーだったが、それも叶わぬ願いだった。

 

刃夜には召喚スキルは存在しないのだ。

 

いや召喚自体は出来る。

 

だがそれはあくまでも刃夜が行うのではないために出来るのであって、刃夜個人でそれを行うことは不可能だった。

 

仮に召喚で刃夜が消耗したとしても、小次郎がいることを忘れることは出来ない。

 

白兵戦最強と謳われる『剣使い(セイバー)』。

 

その名に恥じぬ力を持ち得ていたセイバーを圧倒していた存在だ。

 

 

 

(今来られれば……やられる!?)

 

 

 

その危機を感じ取り、アーチャーが急いで干将莫耶を投影しながら、セイバーを庇うように前に躍り出る。

それだけではなく、士郎と凜も一緒で、必至になってセイバーの元へと走った。

 

 

 

「なんなんだあれは!?」

「見てわからないの!? アレはどう見ても竜でしょ!?」

「そんなことはわかってるさ遠坂! けど……なんで……」

「いいえ、凜……アレは竜ですらも超えています」

 

 

 

駆け寄ってきた士郎と凜が、余りにも突飛な状況について行けずに、疑問を口から吐き出していた。

だがそれを真っ向から否定するセイバー。

それを聞いて、士郎が、凜が……そしてアーチャーも耳をセイバーの言葉へと傾ける。

消えてしまいそうな程消耗しながら、セイバーはその余りにも重々しい言葉を……口にした。

 

 

 

 

 

 

「アレは……神竜クラスです……」

 

 

 

 

 

 

「!? …………嘘でしょう?」

 

 

 

セイバーの言葉に凜が驚きの声を上げる。

 

 

 

 

 

 

陳腐に聞こえるかもしれないがこの世界に置いて、神話の神と言うのは実際に存在していた。

 

半神半人のヘラクレス(バーサーカー)

光の神ルーの息子である半神半人のクー・フーリン(ランサー)

 

がその存在を証明している。

当然「神」という言葉を持っている存在としての格もあり、なによりもそれ相応の力を有している。

 

故にその言葉は相応の重さを持って、セイバー達の意識の上にのしかかる。

 

「神竜」

 

実際には神の力を分け与えられた「祖」の神の使いであるために、厳密には「神」ではないのだが……それ相応の力を持っているのであれば全く関係がなかった。

 

 

 

(……どうする!?)

 

 

 

ある意味で一番知識のある凜が、脳みそをフル回転させて考える。

 

(相手は……まだ埃と風で見えないけど、死んでいるなんて甘い考えは出来ない。ほとんど確実に二人とも無傷のはず!!!!)

 

それに対して凜……つまりはセイバー側……はもはや使い物にならないセイバーと、全力を出すことは叶わないアーチャーのみ。

劣勢だった。

だがそんなに数が集まったところで、そしていくら思考を巡らせても意味はなかった。

 

刃夜も小次郎も無傷であり、さらに言えば何の消耗もしていない。

 

刃夜と小次郎が四人を殺す気であったならば、おそらくこの瞬間に瞬殺出来ただろう。

 

小次郎が前に躍り出るか、それとも刃夜が前衛を務めるのかの違い程度しか変わらず、結果は同じであっただろう。

 

殺す気がないために、そんな心配は無用だったことは事実だった。

 

 

 

だが今の刃夜にとって、そんなことなど……それこそセイバーを生かすこと、キャスターとの同盟……

 

 

 

 

 

 

さらに言えば、この世界に来てからずっと感じていた、あの二人組が何を企んでいるのかという事すらも……

 

 

 

 

 

 

今のこの瞬間……刃夜の頭から綺麗に消失した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ムーーーーーーーーーーナーーーーーーーー!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!」

 

 

 

 

 

 

ガッシッ!

 

 

 

そんな擬音が聞こえてきそうな程に、刃夜が銀火竜の頭に力強く抱きついていた。

 

それが嬉しいのか、甘えたような声を出して、そのムーナと呼ばれた銀火竜は、自分の頭を刃夜に押しつけるようにして、甘えたように声を漏らしていた。

 

それどころか……舌を出して刃夜を舐めてまでいた。

 

「よしよしよしよし!」

 

そんな竜に対して、刃夜はそれはもう嬉しそうにその銀の鱗の頭を優しく撫でていた。

 

 

 

 

 

 

これが風が止み、視界が晴れたことによって見えた光景だった。

 

 

 

 

 

 

あまりにも異常すぎる状況に……セイバー陣営はおろか、キャスターに、相棒の小次郎まで驚いていた。

 

 

 

その周囲の様子が全くわかっていないのか……話題というか、興味の中心にいるというのに、刃夜とムーナは全く気にせずに会話を続ける。

 

 

 

「おいおいおいおい! まさか本当にお前だったとは!? 元気にしてたか!?」

 

「クォルル!」

 

 

 

完全に人の言葉を……刃夜の言っていることがわかるのか、その銀火竜は嬉しそうに鳴いて頷いていた。

 

もうその場にいる誰もが……言葉も発せない状況に陥った。

 

だがこの中でも、「竜」の存在がどれほど凄まじいかということを、完全に理解していない人物が、刃夜へと驚きながらも近づいた。

 

 

 

「これは……竜とやらか? 初めて見たが凄まじいものだな……」

 

 

 

言わずもがな……東洋の侍だった小次郎である。

 

日本には当時、西洋の竜は伝えられていないので、ほとんど形程度しか小次郎は知らなかった。

 

小次郎は今のまか不思議な現状を引き起こしているマスターのそばへと寄る。

 

それでようやく、周りを完全に置いてけぼりにしている事を自覚した刃夜だが、それでも嬉しそうに竜の頭を撫で続けていた。

 

 

 

「お主に竜を召喚できる能力があったとはな。この竜は……お主にとって何なんだ?」

 

 

 

小次郎はそれこそ話題の種として聞いた程度だが……他の人間達はそれはもう耳を皿のようにして刃夜の言葉を待った。

 

 

 

 

 

 

そして……衝撃の言葉が紡がれる……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の息子だ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それはもう……これ以上ないほどの晴れやかな笑みで、刃夜はそう答えた。

 

その言葉に嬉しそうに鳴く……竜。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あほかぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一瞬の静寂が寺を支配したが……それを直ぐに切り裂いたのは、凜のつっこみだった。

 

 

 

しかしほとんどの人間が同じ事を思っていたのか……小次郎と葛木先生を除く誰もが、怪しい物を見る目を刃夜へと向けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

失礼な奴だな、何でアホと言われねばならんのだ?

 

自慢の息子を紹介したというのに、何故かアホかと言われて腹が立ってしまった。

だがまぁ……いきなり竜が出てきたら驚くのも無理はないのだろう。

 

 

 

 

 

 

※ちなみに刃夜はこの世界においての竜の存在価値がよくわかっていないので、他の連中がそれこそ驚天動地並に驚いていることがわかっていない

 

 

 

 

 

 

飛竜種 リオレウス 名前はムーナである。

モンスターワールドにて、俺の愛刀にして第二の相棒だった打刀「夕月」を砕いた存在、気をも操るリオレウスの巣にあった卵。

それを破壊する気になれなかったので回収し、そのまま孵ってしまったために俺が育てることにしたのだ。

ちなみに砕かれた夕月を玉鋼にして打ち直した物が「狩竜」である。

卵を暖めると言うことはしなかったが、孵ってから成長させたのは間違いなく俺である。

 

 

 

まぁ……こいつを育てたのは俺だけではないがな……

 

 

 

こいつの母親になってくれた子の顔を思い出したが……直ぐに意識から追い出した。

それから何度か俺の命を助けてもらった。

 

 

 

紫炎妃龍、紅炎王龍のコンビに殺されそうになったとき……。

 

 

 

そして破壊神との戦いで……俺は本当に殺され掛けた……。

 

 

 

その時どういったことだかわからないが、ムーナが俺を庇って死にかけていたら発光しだして銀火竜になったのである。

 

 

 

……そう言えば未だに銀色になったのはわかっていないな?

 

 

 

まぁ何となく察しは付くし、こいつが生きているのであれば問題はないだろう。

 

「クォルルル?」

 

俺がそうして思案していると、ムーナがどうしたの? と、俺のことを心配してくれる。

そんな相も変わらず心優しいムーナが嬉しくて、俺はさらに頭を撫でる。

 

「相変わらず優しいなムーナ。どうよ? 古塔の生活は?」

「クォルルル」

「へ? 俺がいないから寂しい? 嬉しいことを言ってくれる!」

 

ガシッ!

 

と再度俺はムーナの頭を抱きしめた。

相変わらずこの子はいい子である。

 

 

 

そうしていると……俺の足下に何か巨大な威圧感が突然生じていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

(……竜を育てただと!? 神竜クラスのアレを!?)

 

ほとんど意味はないと思いつつも、それでも警戒を解くわけにはいかないセイバーは、だるい身体に鞭を打って、必至に剣先を刃夜へと向けていた。

アーチャーも同様で、なんとかこの場を収めようと頭を回転させていたが、妙案は思い浮かばなかった。

 

 

 

それに何より、竜という存在とその親という刃夜の存在に興味が湧いていることを、四人は否定しきれなかった。

 

 

 

そうしていると、再び刃夜から……正確には刃夜の足下……巨大な威圧感が生じた。

稚拙ではあったが……それが凄まじいほどに強大である事が、この場にいる誰もが感じた。

 

 

 

しかし……それらの予想を斜め上の方向で、遙かに上回る存在が顔を出した。

 

 

 

 

 

 

モコモコモコモコ

 

 

 

ボコッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シャギャーーーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな声と供に出てきたのは……抱きかかえるくらいに小さな、黒い棘を持った存在だった。

 

 

 

「……は?」

 

 

 

一体何が出てきたのか理解できない……そんな感情が満載している言葉が、凜の口より吐き出される。

それは当然他のメンバーも同様であり、銀火竜と違って明確な情報を知る者は、この場には一人を除いて存在しなかった。

 

 

 

下顎から天へと聳えるかのような牙に、黒い棘が満載の身体。

四足の四肢にはそれぞれ鋭い爪が生えているが……子供なのかそれは鋭さが甘かった。

黒々とした甲殻をしており、目は緑色をしている……。

 

 

 

「……何あれ?」

「……何だろうな……アレは。ただ、普通でないことだけしかわからん」

 

 

 

赤の主従コンビが揃って疑問を口にするが、当然わかるわけもなかった。

無論セイバー、士郎も同様である。

だが、雰囲気や見た目、そしてその無垢とも言えるその仕草が、幼いと言うことを象徴していたが……だからといって直ぐに近づける訳もなかった。

発している雰囲気は、そばにいる銀火竜に勝るとも劣らないものだったからだ。

 

 

 

トクン!

 

 

 

(……何だあの生物は!?)

 

 

 

しかし、そんな中でも何故かセイバーは胸がときめいていたりした。

 

 

 

実はセイバー……かわいい物が好きという、意外な一面があったりする。

特に獅子のぬいぐるみなんかはストライクである。

もらった場合は大層喜んだりする。

 

その性格故か、少し先にいる存在が果てしない存在であると理解しても、その愛くるしい見た目が、セイバーの心をかきむしっていたりする。

が、皆その愛くるしい存在に目を奪われていて……ちなみに当然のように他の連中は愛くるしいなんぞ思っていない……気づいていなかったりする。

 

 

 

「……これってアカムトルム?」

 

 

 

「シャギャー」

 

 

 

そんな中、やはりと言うべきなのか……刃夜だけは当然のようにその存在がなんなのかわかっていた。

 

 

 

 

 

 

アカムトルム。

モンスターワールドにおける獄炎の破壊神である。

その爪は全てを破り、その尾は全ての物を壊す。

そしてなにより空間さえも破砕する、究極の砲撃空間破砕砲を放てる。

紛う事なき「神」であり、刃夜を死の淵まで追い込んだ相手である。

 

 

 

 

 

 

本来は、小さな山と言えるほどの巨体を誇っている……はずなのだが、何故か抱きかかえるサイズになって登場した。

 

 

 

 

 

 

「クォルルル」

「ハァ? 火山で一人で生活してたから保護したぁ? おま……育てられるのか?」

「クォ!」

「自信満々だが……その自信はどこから出てくるんだ?」

 

 

 

ちなみに、刃夜がムーナと会話できるのは親子愛のためであったりする。

そのため当然と言うべきか……他の連中にはどうして会話が成立しているのか謎だったりする。

 

 

 

【まぁよいではないか……】

 

 

 

そんな思念が、この場にいる全員に届き……再び刃夜の足下が膨らみ、再度何かが出てきた。

 

 

 

ボコッ

 

 

 

【お主の息子がこういっているのだ。それを信じるのも親の役目という物だろう?】

 

 

 

そんな思念と供に……白い怪物が地面から盛り上がり出現した。

 

アカムトルムとほとんど同じサイズで、色は正反対の真っ白な色だった。

アカムトルムとは違い、ほとんど棘のない体格。

だが、アカムとは違い背びれのようなものが背中にある。

ちなみに小さいためによく見えないが、体表には恐ろしく切れ味のいい小さな棘がある。

 

 

 

そして何よりも特徴的なのは、その下あごにある……

 

 

 

 

 

 

「シャベル?」

 

 

 

 

 

 

ぼそりと……思ったことをそのまま凜が口にした。

それは皆が思っていたことだったのか、一斉にその白い生物のその下あご……シャベルのようなそこへと視線が集まる。

 

 

 

(シャベル……ですね)

(シャベルだな)

(シャベルだな)

(シャベルね)

 

 

 

セイバー、士郎、アーチャー、キャスターの順である。

ちなみにアカムとほとんど同じ感じのする白い方に対しては……セイバーのアンテナは反応していなかった。

 

 

 

それはともかく……。

そしてその視線をいっぺんに浴びたその存在の……雰囲気が一変する。

その瞬間……

 

 

 

場の空間が、崩れかける……。

 

 

 

 

 

 

【いい度胸だな……】

 

 

 

 

 

 

ただ一言……それだけしか言っていないにもかかわらず、それだけでこの場の空間が軋み、歪んだ。

場ではなく、空間が軋むほどの圧力を……その白い物体は放出していた。

 

 

 

(――くっ!?)

 

 

 

それを受けて……凜は感覚が麻痺した。

余りにも恐ろしすぎて……人間が感じる恐怖の限界をも超えた強烈な気迫を浴びせられてたのだ。

それも無理はない。

 

 

 

身体が震えているのに……それどころか腰を抜かしているのにも気づかなかった。

 

 

 

普段の凜ならば絶対にあり得ないことだが、無理からぬ事だろう。

むしろ失神もしないで意識を保っていたことは賞賛に値するだろう。

当然それはこの場にいる全員に言えた。

 

 

 

そして例によって例のごとく……

 

 

 

 

 

 

「ヤマツカミもそうだったが……」

 

 

 

 

 

 

刃夜は例外だった。

 

 

 

 

 

 

「お前らは身体的特徴をけなすとすごい怒るな?」

 

【……いい気分はしないだろう】

 

「まぁそれは確かに。というか……何でそんなミニマムサイズになってるんだウカムルバス?」

 

 

 

 

(((((普通に会話してる!?)))))

 

 

 

 

突然乱入してきた白き存在との会話を行っている刃夜。

葛木と小次郎以外が驚愕していたが……当然のように刃夜はスルーした。

 

 

 

 

 

 

ウカムルバス。

モンスターワールドにて破壊神アカムトルムの対となる存在であり、同じ神であり崩壊神と呼ばれている。

アカムトルムと違い棘はないので余り攻撃的なイメージはない。

その身体の頑健さも相まって「守」という感じがする。

空間さえも凍らせ崩壊させる、絶対零度の氷の光線を吐く。

 

 

 

 

 

 

破壊神を倒した刃夜の実力を試し、その力と素材を渡して消えたはずだったのだが……。

 

 

 

「と、いうか何故お前も小さいんだ?」

【前に言っただろう? アカムと私は表裏一体。アカムが小さくなるのならば私も小さくならざるを得ない】

「あ~なるほど。で? ……なんでお前もいるんだ?」

【アカムの教育をしているだけだ。何故か私もムーナに拉致されてな。アカムが一人では寂しいだろうと】

「一人? ムーナがそばにいるんじゃないのか?」

【我らは三界の神とは違う存在だ。古塔に入ることは出来ない。故に古塔付近にムーナがアカムを隠していてな】

「……まさに捨て犬を勝手に拾ってきた子供の行動だな」

 

 

 

(((((捨て犬!? アレが!?)))))

 

 

 

再度驚愕の言葉。

余りにも価値観というか……とらえ方が違いすぎて半ば引き始めていたりする。

幼いとはいえ曲がりなりにも「神」を捕まえての言葉としては……あまりにもアレだったりする。

 

 

 

が、文字通り「神殺し」を行ってきた刃夜であり、「神をも食らう」力を体内に宿しているために、そこらの感覚が少しおかしくなっていたりした。

 

 

 

周囲を完全に置いてけぼりにしつつ、刃夜がムーナを半眼で見据える。

 

「三界の神に許可とってないんだろ? 大丈夫なのか?」

【クォォ……】

 

自分でもあまり褒められたことをしていると思っていないのか、ムーナがそれで悲しそうに頭を下げるが……その頭を刃夜が優しく撫でる。

 

「まぁ一人なのは寂しいからな。きちんと育てるんだぞ?」

「クォルルル!」

 

捨て犬を無断で拾ってきて、親が仕方なく許可を出したという……普通に微笑ましい光景が目の前で繰り広げられている。

 

 

 

微笑ましいと言うには、子供と捨て犬が余りにも異質だったりするが……。

 

 

 

【まぁそういうわけで、私とアカムは今古塔付近でのんびり暮らしている】

「クォォ!」

「へ~。まぁ頑張ってな、ムーナ」

「クォ!」

「へ? こいつに名前をつけろって?」

 

 

 

アグアグ、と刃夜のズボンを甘噛みしているミニマムサイズのアカムトルムを指さしながら、刃夜がムーナへと言葉を向ける。

その言葉に、ムーナははっきりと頷いた。

 

 

 

もはや……まぁ今更かもしれないが……誰一人として、ついてこれない展開となっていた。

 

 

 

 

 

 

そして……今度こそ誰もが(読者も)驚愕する言葉を口にする……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラヴォスだな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時……「時の引き金」が動いた……

 

 

 

 

 

 

♪~~~

 

 

 

 

 

 

※クロノ・トリガー(BGM)を流してご覧下さい

 

 

 

 

 

 

By作者

 

 

 

 

 

 

「シャギャ?」

 

自分のことだと思っていないのか、刃夜のズボンに甘噛みをしていたアカムがきょとんとしながら、顔を上げる。

そのアカムトルムに苦笑しつつ、刃夜はそのアカムトルムを抱き上げた。

 

 

 

「ラヴォス。お前の名前はラヴォスだ」

 

「シャギャ!」

 

 

 

気に入ったのか……刃夜の首元に頭を押しつけるようにして甘えていた。

首にある前アカムトルムの力を宿した「力の爪」があるために、安心しているのかもしれない。

 

 

【ラヴォスか……良い名だな】

「そうだろ? なんか見た目と登場の仕方でふと頭に浮かんでな。ほとんど直感というか……まぁそんな感じのネーミングだがな」

【本人も気に入っているのだ。特に問題はあるまい】

「クォ!」

 

ムーナもウカムも、刃夜のネーミングを褒める。

どこか「孫の名付け親」

 

 

 

(祖父・「刃夜」 息子・「ムーナ」 孫・アカムトルム改め「ラヴォス」 叔父・「ウカムルバス」)

 

 

 

みたいな……ほのぼのとした家族のドラマが繰り広げられていた。

 

 

 

 

 

 

当然と言うべきか、それを引き裂いたのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な・め・て・ん・の・かぁ・ぁ・ぁ・ぁ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凜だった。

 

もはやツッコミ役が定着してしまったような感じになってしまった。

 

 

 

「失礼な奴だな、遠坂凜。俺のネーミングセンスに文句があるのか?」

 

「ネーミングその物とかそう言ったことの前に……他にも色々と突っ込むところがたくさんあるわよ!!?? 何なの? あんた本当に一体なんなの!?」

 

「何なのと言われてもだな……。ただ俺は俺としかいえないし、こいつは俺の息子だと言うしかないのだが?」

 

「……もう……なんかもう……ぶっ飛ばしたい。無性にあいつをぶっ飛ばしたいわ」

 

「お、落ち着け凜! 変な方向に行っているぞ!?」

 

 

 

感情の整理が出来なくて半ば発狂しかけている主を戒めるアーチャー。

それを行うことで何とかアーチャーも感情を保っている感じだった。

 

 

 

 

 

 

そうしていると……時間が訪れる。

 

 

 

 

 

 

「クォルルルル」

 

 

 

残念そうにムーナが鳴いた。

それに伴って、ラヴォスも悲しそうになき刃夜から降りたそうに、刃夜の腕の中で暴れる。

 

「? どうしたんだ?」

 

それを訝しみつつも、刃夜はラヴォスをおろし、ムーナへと視線を投じた。

しかしそれに対しても、ムーナは悲しそうに視線を落としただけだった。

 

【時間が来たのだ】

「時間?」

【あぁ。我らがこの世界にいられる時間だ。私が何とか時間を延ばしていたのだが……これが精一杯だ】

「あ~……言われてみれば確かにそうだな」

「クォルルル」

「? 世界の修正力がうるさい? よくわからんが……帰るのか」

 

神竜に双璧の神、完全なる神を三体も内包してはこの世界は持たない。

異質な存在である別世界の存在を……世界は拒むのは必定である。

それが巨大であれば強大であるほどに、それも大きくなっていくのだ。

 

【我らが交わす言葉は余りあるまい。死ぬなよ、刃夜よ】

「あぁ。そうそう煌黒邪神に上回る存在がいるとは思えないよ」

 

まるで旧来の友のように、ウカムと言葉を交わす。

刃夜はしゃがみ込んで、ラヴォスの頭を優しく撫でた。

 

「……元気に育てよ?」

「シャギャー」

 

まるで頷くようにラヴォスはそう鳴いた。

それに苦笑しながら……刃夜はムーナへと向き直った。

 

 

 

そのムーナの身体が薄れ始めていく。

 

 

 

ムーナの頭を寂しそうに撫でて、再度ムーナを抱きしめた。

 

 

 

「僅かな時間とはいえ……お前に出会えて嬉しかったぞ……」

「クォルルル」

 

 

 

互いに本当に喜び、そして本当に哀しんでいた。

今の刃夜は間違いなく隙だらけだっただろう。

 

 

 

だが……何故か邪魔をする気には、誰もならなかった。

 

 

 

「三界の神に虐められたら言うんだぞ? ……何か出来るとは思えないが、それでも文句を言いに行ってやる。直ぐに吹き飛ばされそうだがな」

「クォォォォ」

 

 

 

だんだんと薄れていくムーナの頭を、ぎゅっと力強く抱きしめた後に……身体を離し、目を見つめる刃夜。

 

 

 

 

 

 

「じゃあなムーナ。また……な……」

 

 

 

 

 

 

「またな」

 

それがどれほどの時間が経った後かは、言った本人も全くわかっていないだろう。

 

異世界の存在。

 

異世界の家族。

 

異世界への移動という物が出来ない刃夜から行くことは不可能だ。

 

ムーナも気軽にいける物ではなかった。

 

今回もかなり無理をして来ているのだ。

 

 

 

だが……刃夜もムーナもこれが最後だとは微塵たりとも思っていなかった……。

 

 

 

 

 

 

「捨てるように、帰ることを選択した俺が言える事ではないが……お前は生きている限り俺の自慢の息子だ。それだけは忘れないでくれ」

 

 

 

 

 

 

「クォ!」

 

 

 

その言葉に、ムーナは力強く頷いた。

 

それを見て……刃夜は自然と笑みを浮かべる。

 

そしてその存在が消える間際に……。

 

 

 

 

 

 

「またな……」

 

 

 

 

 

 

それに頷くように、笑みを浮かべながら……三つの異常な存在がこの世界より消失した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

……帰ったか

 

息子が帰り……その存在が完全に消えて、俺の胸に悲しみが渦巻いたが、俺はそれを封じ込めた。

 

会えただけでもラッキーだったんだし……哀しむべきではないな

 

ひょんな事で息子に……ムーナに出会えたのだ。

哀しむよりも喜ぶべきだろう。

 

それに今は……やることが残っているしな……

 

俺を気遣って静かに佇んで俺を庇ってくれていた小次郎に心の中で礼を言いつつ、俺は未だに警戒している四人へと向き直る。

 

「さてどうする? 俺の都合で少し待ってもらっていたが……まだ続けるか?」

「……くっ!!」

 

遠坂凜が口惜しそうに言葉の端を歪ませる。

主を庇うように、アーチャーが遠坂凜の前へと躍り出る。

その後方では、自分のサーヴァントを庇うようにして前に出て、士郎が身構えていた。

 

戦いにもならないことはわかっているだろうに……こいつは全く……

 

危うさを感じてはいたが……本当にある意味で壊れているみたいだ。

そんな士郎に溜め息を吐きつつ、俺は狩竜を上へと放り投げ、その間に背中にくくりつけた狩竜の鞘を組み立てて、そのまま落ちてきた狩竜を納刀した。

 

「……どういうつもりだ?」

「別に? どう考えても勝敗はついただろ?」

 

まぁムーナが来なかったら消し飛んでいただろうが……

 

それでも結果的に、俺と小次郎は無傷。

それに対して相手側は片方が完全に戦闘不可能。

俺たち二人が本気を出して襲いかかれば……まぁそう時間がかからずに勝てるだろう。

 

殺すのが目的ではないが……

 

そもそもにして、殺すつもりなら士郎、遠坂凜、アーチャーがこの寺へと入って来た時点で殺していた。

アーチャーがいたためにそう簡単には殺せなかっただろうが、それでも士郎か凜、どちらかは殺せたのだから……。

 

「勝者として敗者に命令をする。キャスターと葛木先生に手を出すな」

「なんだって!?」

 

俺のその言葉に、予想通りの人物が……士郎が食って掛かってくる。

そんな士郎に嘆息しつつ、俺は言葉を続けた。

 

「キャスターが町の人間に魂食いを行っているのは事実だろう。だがそれがどうした? 俺が感じた感じだと、ほとんど対象者に負担を掛けていない。無論それをしなければならない理由があったんだろうが……キャスターには聖杯とは違った願いがある」

「聖杯とは違った願い?」

「あなた……何を言って……」

 

話の話題にされてキャスターがそれを止めようとするが……その前に俺は決定的な一言を発した。

 

 

 

 

 

 

「葛木先生と一緒に暮らしたいだけなんだよ、こいつは……」

 

 

 

 

 

 

「は?」

「へ?」

「……何?」

「何だと?」

「ほぉ?」

 

余りにも予想外な願いを聞いて四人が一斉に固まり、小次郎は興味深そうに呟き……直ぐにその視線をキャスターへと向ける。

そこには……

 

 

 

口をわなわなと震えさせてる……キャスターがいた。

それだけではなく、若干除いている頬も紅くなっていることがわかった。

月が出ているとはいえ、夜にそれを認識できたのだ。

よほど真っ赤になっていることだろう。

 

 

 

その動揺が、俺の推論が正しかったことを教えてくれる。

 

 

 

「ほぉ? 顔は見えぬが……何とも初な女よ」

 

 

 

小次郎がある意味で空気を読まずにそんなことを言っていたが……あえて無視した。

 

 

 

俺が葛木先生を殺すかのような言葉を仄めかしたとき、キャスターから発せられた殺意は、感情が剥き出しだった。

余り感情制御に長けているように見えないが、それでもあれだけ純粋な敵意と憎悪を向けられたら……イヤでもわかった。

 

 

 

下衆な言い方になるかもしれないが……簡単な話だ……。

 

 

 

 

 

 

キャスターはただ「一人の女」として、葛木先生と一緒にいたいだけなのだ……。

 

 

 

 

 

 

故に誰にも気づかれないようにひっそりと、微々たる量を町の人間から生命力を集めていた。

余りにもおおっぴらに集めると他のサーヴァントに気づかれてしまうから。

もしも……たとえば強力な門番などが山門にいたならばその必要性もなかったのかもしれないが、たらればの話には何の意味もない。

 

「一人の女としての幸せを教授したいと思っているだけだ。そのためには魔力が必要だからこそ、町の人間から生命力を集めているんだ」

「だ、だからって……そんなことが許されるのか!? 何の関係もない……罪もない人が苦しんでいるんだぞ!?」

「頭固いな士郎。別にいいだろう? 本当に微々たる量なのだから、吸い取られた本人も少し疲れた程度にしか思っていないはずだ」

 

実際そんな感じだった。

吸い取った人間を直接見ないと何とも言えないが……それでもそう的外れではないはずだ。

 

「それでも、キャスターが行っているのは事実だろう!」

 

ここまで言ってもわからない小僧に……さすがに耐えかねて、俺は士郎を半ば睨みつけつつ、言葉を放った。

 

「……これがだめというか小僧? 人間は……まぁキャスターはサーヴァントだが……人間が生きていく上で他の生物から命をすわねば生きていけぬ存在だぞ? それはお前も同じだろう? お前が言っているのは「人間だからだめ」という……半ば感情論に近いぞ?」

「!? だ、だけど……」

「それ以上ごねるというのならば仕方がない……」

 

俺は脅しをかねて狩竜を宙へと放り投げた。

そして空いた右腕を……夜月の柄へと伸ばす。

 

 

 

「ここで消すのも……やぶさかではないか?」

 

 

 

そこそこの殺意を出しつつ……俺は士郎へと睨みつける。

俺の意図がすでにわかっている小次郎は、クツクツと愉快そうに笑っていた。

 

『人が悪いな刃夜? あまり青年をいぢめる物ではないぞ?』

『うるせぇ。俺も青年だよ』

 

くだらない思念を小次郎とおこなう。

俺の言葉と、俺の殺気……。

どちらがより聞いたのかは謎だが、士郎が怯む。

その士郎に……俺はさらに畳み掛けた。

 

「お前には大切な人がいないのか士郎?」

「……いるさ」

「だったら……どうして想像を働かせない? 強引かもしれないが……お前は大河と、桜ちゃんをも否定していることになるんだぞ?」

「!?」

 

激しく強引な話だ。

人から吸い上げた生命力を食い物に例えるならば……誰もが俺たちはキャスターと同じと言うことになる。

まぁ当たり前の話だ。

食物というのは元々生きていた物なのだから。

それらの命を食して生きている俺たちは……どんなに足掻いても、他の生物を殺して生きている罪深い存在なのだ。

 

ま~かなり強引だがな……

 

だがそれでもこれで押すことにする。

しかし士郎も、大河と桜ちゃんを出されては何もいえなかったらしい。

何か考えるような仕草をしている。

 

 

 

それと同時に……そんな自分に愕然としているようだった……

 

 

 

それを確認して、俺は夜月から手を離した。

 

「冗談だ。まぁ落ち着け。これは俺の勘だがな? この聖杯戦争には何か裏の意図があると見ているんだ」

「……裏の意図ですって?」

「キャスターは気づいていたが……遠坂凜、お前は気づいていないのか?」

 

あえて挑発するような言葉を選んで俺は遠坂凜へと話しかける。

すると案の定……カチンと来たのか、遠坂凜の表情が歪んだ。

 

「……それぐらい気づいていたわよ。何となくだけどね」

「お前はどうだ士郎?」

「……」

 

ふむ、気づいているみたいで……

 

ならば話は早い。

俺の真意を伝えるとしよう。

 

 

 

「俺は何かが起こると考えている。それこそ……町の人から微少な魔力を吸い上げるなんてのが軽く見えるほど、重く暗い何かが……」

 

 

 

半分皮肉を込めて言葉を紡いだ。

その俺の言葉に、遠坂凜が何かを言おうとするが、その前に畳み掛けるようにして言葉をかぶせる。

 

 

 

「その何かが起こったときに、戦力不足、力不足、手札不足……まぁ言い方はいろいろだが、ともかく『手も足も出ない状況』にはしたくないんだよ俺は。そのためにキャスターを生かす、無論お前達もだ」

 

 

 

その言葉に士郎とセイバーはともかく、遠坂凜とアーチャーはあまり驚いていなかった。

昨夜も見逃したのでうすうすは俺がどういう意図で行動をしているのか気づいているのかもしれない。

 

「まぁそういうわけだ。だからもうキャスターには手を出すな。これは俺からの願いでもあり……」

「命令だって言うんでしょ?」

「ほぉ? よくわかったな」

「わかるわよ。昨夜と同じ状況じゃない。まぁこの状況に至るまでにあり得ないことがいくつもあったけどね」

 

そんなにすごかったのか?

 

確かに神が三つも同時に出てきたような物だから、驚くのも無理はないのかもしれない。

聞こえてはいたがそれでもどう返せばいいのかわからないので、俺は話を進めた。

 

「まぁそう言うわけだから、状況が変わるまで少し様子を見よう。俺からの提案だ」

「命令なんでしょ?」

「つっかかるなよ遠坂凜。まぁ確かにお前達から見たらそうかもしれないが、そう思っていることも事実だぞ?」

「そう思っていること()事実……ね……。いいわ。実際命を救われているのは事実だし、乗るわその提案」

「凜! 正気ですか!?」

「正気って……失礼な言い方ねセイバー? これは色んな意味で断れないでしょ? 私も、少し聖杯戦争に関して調べ直すわ……。こいつの言いぐさじゃないけど……何かありそうだし」

「ですが、それでは聖杯は!? それに……人から力を吸い上げるキャスターを放っておくなど、出来るわけがない!」

 

やれやれ……主が石頭なら僕も石頭か……

 

セイバーの頭の固さと融通の気かなさに辟易する。

どうやって説得した物か考えるのだが……妙案が浮かばない。

 

「ふむ……ならばこういうのはどうだセイバー?」

 

そう考えていると、俺の前に歩み出ながら、小次郎がそんな言葉をセイバーへと投げかける。

 

「もしもキャスターがその本来の目的を逸脱した行為を行った場合、責任を持って私と刃夜がキャスターを討とう。これでどうだ?」

「……」

 

……妙案と言えなくもない……かな?

 

共闘相手が暴走したらそいつを俺たちだけ(・・)で倒す。

普通ならば信じないような提案ではあるが……小次郎と剣を交わしたからか、セイバーは渋い顔をしつつも、小さく頷いた。

 

「いいでしょう……。約束は守ってもらうぞ……アサシン」

 

本気を出したキャスターの始末がどれほど大変か何となくわかっているのだろう。

セイバーは渋々と頷いた。

それから少し話し合い、士郎たちは帰還する。

セイバーは宝具を使用した反動か、かなり辛そうだった。

 

しかしそれならば霊体になればいいだけだと思うのだが……

 

霊体になればどれだけ楽になるかはわからないが、現界にも魔力を消費しているはずだから、楽にはなるはずだが……それでもならないというのであれば、理由は一つ。

どうやら霊体になれないようだ。

 

まぁどうでもいいが……

 

「全く……本当に巫山戯た存在だったわね。貴方」

 

そうして士郎達を見送っていると、後ろから声を掛けられた。

願いを暴露されたのが腹立たしいのか、その言葉には少しばかりの憎しみが込められていたが俺はそれを黙殺する。

 

「まぁとりあえずこんな感じでいいだろう? 俺たちも今夜はこれで失礼しよう」

「!? 待ちなさい!」

「?」

 

とりあえず目的は達したので帰ろうとしたらキャスターに呼び止められた。

俺と小次郎は、すこし不思議に思いながら後ろへと振り向いた。

 

「……本当にたす…………」

 

しかし言葉を言い切る前に、少し不安そうに言葉を切った。

言い切らなかったとはいえその言葉とその態度で、俺は何が言いたいのかがわかった。

 

あぁ、なるほどね……

 

「安心しろキャスター。状況がどのように移行するかは謎だが……少なくとも完全に状況を把握するまでは俺はお前を守ろう。だが……期待させすぎないために言っておくが……」

「……えぇ、わかってるわ」

「……ならいい」

 

状況が変わり……互いに互いを殺さねばならない状況に陥ったとき、俺たちは互いを殺すだろう。

なかなか矛盾した感じのある契約だが……それでいいだろう。

そして今度こそ去ろうとするのだが……その前に再度声を掛けられる。

 

「貴方……料理人だったわよね?」

「? そうだが?」

「……なら、今度料理を教えてくれないかしら?」

「……はい?」

 

 

 

 

……余りにも意外なその申し出に、一瞬思考が停止した。

 

 

 

「料理って……お前、どういう事だ?」

「……料理したいからそう言っているだけよ。悪いかしら?」

 

どこか強がるようにして言ってくる。

そしてふいと視線を外したその先に……葛木先生がいた。

 

あぁ……そう言う事ね……

 

その意図に気づき、俺は葛木先生へと声を掛けた。

 

「飯……まずいんですか?」

「いや、私は別にあれでいいと思っているだがな……」

「そ、宗一郎様! それでは私の気が済まないのです!」

 

……関係自体は良好なんだな?

 

そうして……何故か俺は料理を教えることになってしまったりした……。

 

 

 

 

 

 

こうして、とりあえず俺の聖杯戦争は一旦幕を閉じる。

幕を閉じると言っても……本当に幕間でしかない。

 

 

 

セイバー

 

アーチャー

 

ランサー

 

ライダー

 

キャスター

 

バーサーカー

 

アサシン

 

 

 

これらの手札をいかにして生かしておくかという難題を、何とか乗り越えた……気がしないでもない。

ともかく俺は状況が一段落して一息吐く猶予を与えられたのだ。

 

「とりあえず……帰ったら寝るか?」

「……そうだな。朝になったらまたお相手願おうか?」

「それはこちらとしても願ったり叶ったりだ。と言うかお前、セイバーに真名解放させる状況にするなよ? 本気で焦ったぞ?」

 

 

 

こうしてぎゃーぎゃーと言い合いながら、俺と小次郎は今度こそ、帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

こうして聖杯戦争の序章は幕を閉じる……。

 

そしてついに始まるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

この物語の終焉が……

 

 

 

 

 

 

 

 

 




鋼殻の護り
ランクC
種別 対人宝具
風翔龍クシャルダオラの力の結晶。風属性の攻撃を完全無効。また炎熱から身を守る。台風だろうが暴風だろうが、何も感じない。普通に動ける。逆に風を起こすことも可能。龍刀【朧火】同様、武器に顕現できるが、魔力(マナ)が少なく、刃夜の未熟な腕では顕現はほぼ不可能。この世界では炎熱から身を守り、風属性無効。ただし刃夜が貯蓄した魔力を全て解放し、何か武器に注げば武器の顕現は可能。


火竜の紅玉
ランクA
種別 召喚宝具
文字通り召喚するための宝具。刃夜の魂の相棒にして息子である神竜、銀火竜ムーナを召喚可能。しかし刃夜の腕が未熟であるため、ほとんどムーナ自身の手によって召喚されている。そのため回数に制限があり、また身に纏ったほとんどの魔力を異世界移動に使うため、最大にして最強の魔力火球「銀の太陽(シルバーソル)紅火(プロミネンス)」は使用不可能。ただし、元々が格の高い神竜なので普通のブレスでも超常の威力を発揮する。宝具単体としては、気を注いで炎熱を操れるが、同じ効果を持つ蒼火竜の紅玉の方が威力は高い。が、気を用いることに特化している刃夜にとってはこちらの方が扱いやすい。しかしサイズの関係もあり、武器に装着するのは難しく、また刃夜にとっては大事な物に分類されるので戦闘に用いるつもりはない。またこれがなくても召喚は出来るが、その場合は魂でつながっている刃夜の傍に召喚される。紅玉があることで、ムーナがわざわざ出入り口を探さなくて済むので楽になり、魔力消費量も少なくて済む。




刀「次回作どこ(何の作品)にするかぁ?」
TT「そうねぇ……どこにするかぁ……」

今でも覚えている。
大学の帰り道。
京成線の青砥駅にて、特急を待っている時に会話したのだ。
卒業が差し迫った2011の冬だっただろう。
もしくは2012の1、2月だったかもしれない。
とりあえず冬だ。



刀「俺、ムーナ召喚したいんだよね~」
TT「神様レベルにまで強くなるんだろ? それだしたらまずくね?」
刀「そうだねぇ……」



とりあえずすぐに結論は出ずに、以前から考えていたのだが……この日は違った。






TT「竜だせる作品となると……ステイナイトじゃないか?」






刀「……確かにそうだな」














『月夜に閃く二振りの野太刀』誕生の瞬間である。














「技編で、野太刀って事はサーヴァントはアサシンしかねぇだろう!」
刀「俺は絶対にイリヤは救うぞ!?」
「住居というか生活はどうするか!? 日本だから家とか勝手に建築するわけにはいかないし」
「そうねぇ……料理屋開いたらいいんじゃないか?」
「雷画に頼むしかねぇ!」



他諸々……






まぁ正直ほとんどアイディアは編集者HMとアイディア提供者TTに頼んだんだけどね~



駄目な子だからw 私w






いやぁ……

本当にこのシーンが書きたくて頑張ってきたのだよ!

本当にねぇ……R?MHの第二部「変化」すらも書き終えていなかった状況で次回作の話考えていたんだからお笑いぐさだw

ぶっちゃけいおう!

このシーンが書きたいがために今まで頑張ってきたのだ!

お待たせしました諸君! ←地面に突き刺した剣の上でポーズ取りながら

え? 誰も待ってない?
まぁそれもそうかwww
この展開が予想できた人は……まぁ少なからずいるでしょうねw
でもそれでもラヴォスに関しては誰もが予想外だったはずだ!

まぁ作者も予想外だったけどねwww

ちなみに例によって例のごとくこのネタはアイディア提供者様からのプレゼントだぜ!?



ラヴォスがわからない人はスクウェアエニックスから出ている「クロノトリガー」(RPG)を参照してくれ!



まぁ名作だから知っている人多いでしょうが。
RPG嫌いな作者も結構はまったなぁ……。
レベル引き継いで初めから始めるをやりまくっての無双が楽しかったwww



ま、それはともかく……






え~一応言っておきますが……まぁ宝具の解説でも書いたけど念のため






ムーナを自由に召喚できる訳じゃないからね?






何せ神竜だからね
自由に召喚できちゃうともう……冬木の空を飛び回りながら高笑い(ムーナと夜の散歩が嬉しくて)している刃夜しか想像出来ん!!!!
それに世界の修正力とかいろいろあるからね~
まぁ自由ではないとはいえまだ召喚する予定だからたのしみにしててねw

と……言いたいところなのだが……



済まない

当分無理



何故かって?



ストック皆無だから!

マジデ!

今回に関しては本当にストックないから!

せいぜい1000行かないくらいしかない

まぁ日常編みたいなのを書く予定だが……それでもきつい!

それに他の作品も書きたいし……



申し訳ないが……今月は多分もう上げられないと思う



それをご了承下さい





次から本格的に誰のルート行くかわかりますよ~

いや次の次か?

まぁともかく次から新章開始です~







ハーメルンにて追記
……最後に書いてからもう半年近く経ってるんだね……
やべぇ本格的に執筆するかぁ……一応二話くらいはできてるんだけど……かたっぽは個人的傑作なんだが……



何故かあげる気にならない?



何故?



と怠惰な作者はそんな感じで逃亡するwww
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