を記念して掲載
一周年目は完璧に忘れていたのでで、今回はきちんと上げてみました!
空気主人公は健在……
本文だいたい24000字です
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさん!」
例によって例のごとく、ものすごく元気な挨拶をしている大河をのぞくほかの四人は普通に挨拶を行って、衛宮家の夕食は終わりを告げた。
だが今朝と違うのは、若干ではあるが元気がない桜が居ることだった。
「桜、大丈夫か?」
「大丈夫です、先輩」
その桜が心配で何度声をかけたかわからないが、それでも士郎は声をかけずにはいられなかった。
だがどれだけ声をかけても、桜の回答は変わらなかった。
少々危なっかしげでありながらも、士郎とともに夕食をこしらえたのだ。
体調が悪いことで辛そうでありながらも、それでも調理……士郎とともに……すること自体は全く苦でない。
そう言っていたし、実際そのように感じられる程に嬉しそうにしていた。
今朝の思い出せいなのか、士郎はそれを止めようとはしなかった。
だが止めないのと心配をしないというのでは話が違う。
桜の体調が心配ではあった。
だから……
「桜。今日は泊まっていけ」
という言葉を放ったのだった。
.
――――――――――――
「
「何だ藪から棒に?」
「演劇なんかで一幕終わって、次の幕が上がるまでの間のことを言うんだ」
「ふむ。……してそれが?」
「いや、言ってみただけだ」
突然電波を受信した俺が不思議なことを口走って、小次郎が頭にはてなマークを浮かべていたが、俺自身も何故そんな豆知識にもならないようなことを口走ったのかはわからない。
まぁそれでもあえて理由を述べるとするのならば……
「……暇だな」
「あぁ」
『それだけ、
「きいておらぬよ、そんなこと」
「誰に言ってるんだ封絶? というか何を言ってるんだ?」
夜ということも相まってか……客足がぱったりと途絶えていた。
確かに時刻はすでに夕食というには遅い時間となっている。
が、それにしてもこの静けさは異常だった。
『何かを感じているのだろう。鈍っているとはいえ人間も生物であることに代わりはない』
「……確かにな」
封絶の言葉に、俺はうなずかざるを得なかった。
先日より感じている黒い気配が大きくなっている感じがする。
大きくなっていると言っても、元々も小さいことも相まってまだほとんど感じ取れないほどだ。
だがそれでも……恐怖を抱けるものだった……。
またぞろ面倒なことになりそうだな……
先日から感じているこの気配は……実に煌黒邪神の気配と似ていた。
最初こそ気のせいかと思っていたのだが……日に日にそれを感じるようになってしまい、気のせいと思えることが不可能になってしまった。
感じる脅威に関しては雲泥の差ではあるが……対抗手段がなくなってしまっている以上、相手が弱かろうが強かろうが関係なかった。
俺に朧火を召喚できるだけの技量はまだ備わっていない……
これを己の力量だけで使うのは絶対に不可能だった。
威力が高いと言うことはそれだけエネルギーを必要とするといえるのだ。
そしてそれだけのエネルギーをまかなえるだけの力量を、俺はまだ会得していない。
刹那の時間も召喚は無理だろうな……
現在総動員できるだけの魔力では、一瞬でも召喚は出来そうにない。
現在の手持ちの武器だけで、あの邪悪の固まりのような敵を相手にするには無理があるが……それでも逃げるという選択肢は、俺にはなかった。
帰って……俺は己の願いを叶えるんだ……
悪人殺しの恨みを受けること……。
あの子の墓に見舞うこと……。
そして……
あの二人組をぶっ飛ばす!
最近それが一番の理由になっている気がしてならない。
俺の父と爺さんをぶっ飛ばさない限り、俺は俺の怒りを静めるすべを知らなかった。
そしてそう考え始めたら……いてもたっても居られなくなってしまった。
座して待つのは性に合わん!
そう思った瞬間には、俺は調理帽をはぎ取っていた。
「これ以上暇だといいながらないし、暇だと思っているのも非生産的だ。今日は早々に店じまいして探索にのりだそう」
「む? よいのか?」
「良いも悪いもない。客を放り出してならば問題だが、客が居ないのでは話にならん」
小次郎の確認に、俺はそう返した。
だがそれでも明日の仕込みだけは一通り行っておいた。
俺にならって小次郎も、明日の開店の準備を行う。
そして喜ぶべきか、悲しむべきか……早めの店じまいが終わるまでの間、店の扉が開くことはなかった。
明日の準備が終えたと同時に暖簾になっている狩竜をしまい、閉店の看板を掛ける。
それからシャワーで汗を流し、着替えをすませた。
非常に不安ではあるが、狩竜も持って行くか……
不安に思っているのは単に目立つという意味でである。
全長3mあまりのこの得物はあまりにも大きい。
常人では持つことすらも不可能なこの得物は、現代社会の現実世界においては非常に異質な存在だ。
刀という存在すらもすでに異質となってしまっているこの現代日本では、それすらも楽々と超越してしまった存在の超野太刀では、より目立つのは当然である。
普通の生活を送っているのであれば、刀を入れられるような細長い包みを持っていることなど皆無といってもいいだろう。
実際に、この世界でもそんな細長い包みを持っている人間を頻繁に見ることはない。
学園に剣道部があるこの町ではまだ見かけた方だが、新都の方ではあまり見かけなかった。
しかもそれはあくまでも竹刀を入れるための物なので、当然のように反りがない。
狩竜はその長さの都合上、確かに反りを少なめにしているが、皆無ではない。
これほど長さの得物が沿っていてはどうしても目立つ。
極めつけが……
認識阻害の術は今現在かけてないんだよね~
しかも対処能力を上げるために今現在、狩竜には認識阻害の術をかけていない。
その道の熟練者ならば一瞬で出来ることだろうが、俺にはそれが出来ない。
気を込めた筆で紙に呪文を書き上げ、それをさらに気を込めて術をかけなければ俺には認識阻害の術は使えない。
ぶっちゃけ覚えていれば便利な物をいくつか習っただけなのだ。
入門編の業しか使えないのはそういう理由である。
まぁ俺があまりそうした術を好んでいないというのも大きな理由の一つだが……
俺は魔法使いにはなれないタイプなのは間違いない。
勉強は別に嫌いではないが、それでも体を動かしていた方が性に合っているのは間違いなかった。
言ってしまえば前衛、ないし戦士タイプなのだ。
と、くだらないことを考えている内に着替えも終わり、武装の装備も終わった。
スタンダードな装備で行こう……
と思い立ち、夜月に花月、水月にスローイングナイフ、そして狩竜。
特殊武器……属性などが付いていないという意味で……なしの、ある意味で俺がもっとも使用してきた装備である。
っと……
属性無し……と思ったがそれはある意味で違った。
魔力を帯びている封絶を忘れることはしない。
まぁ魔力が付与されているだけで明確っていうかわかりやすい属性はないが……
「む? 今宵はその野太刀を持って行くのか?」
「あぁ……」
目立つという理由であまり率先して装備してこなかった狩竜を今夜は持って行くと言うことで、小次郎にそう声をかけられるが、俺はそれに対してあまり言葉は返さなかった。
煌黒邪神を倒したこいつの力が……なんかの役に立つかもしれない……
特殊な武装を装備しないと先には述べたが、それは本当に属性が付いていないという意味だけである。
夜月には神の空間破砕の力をはじき飛ばす防壁があり、狩竜は煌黒邪神を吸い取ったといっても過言じゃない。
夜月に対してはその防壁の発動条件は明確ではなく、狩竜は刀身が赤黒く変色しただけで特に主だった変化はまだ目の当たりにしていないが、刀身が変化した以上、何かが変化しているのは間違いない。
それが果たして吉と出るか凶と出るかは謎だが……
呪いの武器……F○6における血塗られた盾……になってないことを祈るばかりではあるが……そういった感じがしない。
それにこの夜の黒い感覚は、実に煌黒邪神のあの負の力に酷似しているので、この刀が役に立つときがくる……。
絶対に……
それが喜ばしいことなのか?
そう問われれば当然「否」と答えざるを得ないだろう。
狩竜にいったいどんな変化が訪れたのかはわからない。
だがあれほどの憎念を吸収した狩竜が普通でないことだけは確かだった……。
だがそれでも、この力が必要であるのならば……。
それが誰かを傷つける結果になったとても……。
俺はその時、その場所で……
この禍々しくもすさまじい、愛刀を振るうだろう……
己が世界に帰るために……
「……刃夜」
『……仕手よ』
俺の変化を感じ取ってか小次郎と封絶、二人から気遣うような言葉をかけられる。
だがそれを受け取るわけにはいかない。
俺は、俺の目的のために進んでいるだけなのだから。
だからとまるわけにはいかない。
ためらうわけにはいかない。
一つ息を吐いて雑念と、沈んでしまった気持ちをさらに奥底へと沈めた。
浮き上がらせることも、捨てることもかなわぬ物だから……
そして、扉のそばに立てかけてある、狩竜へと手を伸ばし、それをつかんだ……。
「よし、行こう」
そして俺たちは暗い……黒い夜の中、疾走した。
.
――――――――――――
場所は戻って衛宮邸。
士郎が夕食後に放った爆弾発言は……。
「……ぇ」
「いきなりですね、シロウ」
「ちょ、なに言い出すのよ衛宮君!?」
「何をいきなりいいやがるんですかこの子はぁぁぁぁ!?」
と、一瞬にして団欒を団乱へと変えた。
※言うまでもないが「団乱」という単語はない
「どういうことよ衛宮君!? 桜にいきなり泊まっていけなんて……」
凜が語気を強めるのも無理はなかった。
表向きは自宅の改装のために衛宮家へと泊まっていることになっているが、実際は聖杯戦争の協力のためである。
魔術とは秘匿が原則なので、当然のように大きな戦闘などは夜ないし深夜といった、人目に付かない宵闇に紛れたその時間が主な戦闘となる。
先日までならば聖杯戦争に
だがもしも桜が泊まることになれば、当然夜に外へと繰り出していることに気づかれてしまう可能性が出来てしまう。
夜といっても深夜といって差し支えない時間故に、桜が寝ている可能性は十分に高いが、それでもリスクが生まれてしまうことは間違いなかった。
それは士郎にも重々承知のことだった。
だがそれでも……
……桜が心配だ
今日の放課後。
桜の教室で聞いた桜から見た自分の話。
気恥ずかしい話だったが、それはほんの些細なことでしかない。
ただその話を聞いて改めて気づいたのだ。
自分が桜のことをほとんど知らないことに。
そして思い出したのだ。
慎二との確執を……。
……結局誰がマスターだかわからなかった
先日、新都の屋上にてセイバーが倒したライダーのサーヴァント。
刃夜からの情報によって、ライダーのマスターが自分たちと同じ学園の生徒である可能性、そして弓道部の人間がマスターであるという可能性は極めて高かった。
刃夜が嘘を吐いているのかもしれないと、士郎も凜も考えたが刃夜自身にメリットが全くなかったので、その考えは二人とも捨てていた。
確かに刃夜が聖杯を求めているのは事実だが、そんなすぐにわかってしまうような嘘を吐くとも考えられなかったからだ。
そして弓道部で、士郎がよく知る人物。
その言い方からして考えられるのは……
……慎二……なのか?
間桐慎二。
間桐桜の兄だった。
これに関しては凜が否定していたが、士郎はそれでも少しでも可能性があるのならば疑ってかかるべきだと思ったのだ。
慎二のことを信じたい気持ちはもちろんあった。
だがそれでも……桜のことを考えたら、いてもたっても居られなかったのだ。
普段の行動から鑑みても、慎二が自宅で桜のことをまともに扱っているとは考えにくいと考えたのだ。
そしてそれは事実であり、士郎は知らないが、慎二は桜に当たり前のように暴力を振るっていた。
慎二のことをのぞいたとしても、聖杯戦争という殺し合いの真っ直中にあるこの冬木市では、事実上安全な場所はないと言ってもいいかもしれないが、それでも有事の際に即座に行動することが可能というのは大きな利点ともいえる。
それを考えてのその言葉だったが……それだけでないことを、もっと考えるべきだった。
刃夜の言葉で、
深く考えるべきだった……
士郎の「桜を宿泊させる」宣言は、当然のように教師である大河に相当の口撃と攻撃を被ったが……それでも士郎は頑として譲ろうとしなかった。
その頑固さと言ったら……大河さえも反撃できないほどに強固な意志であり……
「あなた、そんなに強引な性格だった?」
と凜に言わせるほどだった。
「まぁ確かにね~。桜ちゃん朝から体調悪そうだったし、それに今もあまり元気に見えないしね~。しかももう夜だし。最近物騒だし……」
夕ご飯後なので日はもう暮れているのは当然のことである。
そして今の冬木市は聖杯戦争の真っ直中である。
それを大河も感じ取っているのだろう。
最初こそ突然のことで大河も咆吼していたが、しかし一度爆発すると冷静になるのもまた大河であった。
まさしく獣である……
「まぁ衛宮君がそういうのなら……反対はしないけど。私も居候の身だし……」
それはさておき、凜としても桜の体調不良が心配だったのか、やむを得ないとは考えていたようだった。
凜としても、動きにくくなることがわかりきっていた。
士郎もそれがわかっていたが、とっさに言ってしまったこともあり、凜が怒濤の勢いで反対してくると思っていた。
だがそれがなくてある意味で肩すかしを食らってしまった。
それは、凜と桜の関係が主な原因なのだが……それを士郎が知るわけもなかった。
「
そしてセイバーも特に反対はしなかった。
彼女としてはそれが障害……直接的に邪魔をしたり、邪魔になったりする……にならないのであれば、別段問題はなかったのだ。
確かに彼女は聖杯を欲しているのは事実だったが、それでも情がないわけではない。
彼女も桜のことは嫌いではないので反対する理由もなかった。
人間、一番奥深い感情というのは、気づきにくい……
それが善し悪しにかかわらず……
本能的に気づかないようにしているのか……
それとも本人が知らぬうちに閉ざしてしまった物であるかはわからない……
自分を守るためなのか……
それとも何か理由があるのか……
そしてその例に漏れず、士郎も自分の奥底の気持ちには気づいていなかった……
否、気づきかけていたのかもしれない……
それはいいことなのかもしれない……
だがそれでも……
遅すぎた……
士郎はそれに気づくのに……あまりにも時間をかけすぎてしまった……
そういってもよかった……
「藤村先生。ちょっと相談があるんですけど……」
「ん? どったのどったの?」
食後の居間にてせんべいをばりばりとかじりながら……というか、まだ喰うのか大河よ……大河は相談といって話しかけてきた桜の方へと顔を向ける。
が、それでもすぐに話し始めない桜にぴんときたのか、先に答えを言った。
「あ、そっか~。着替えの問題があったわね。普段着は私のでよければあげるよ。それとも一度家に帰ってとってくる?」
「いえ……うちには出来れば帰りたくないです。兄さんに見つかったら、その……」
戻ってこれなくなる。
そう言葉を発する前に大河が言葉をかぶせた。
「それなら大丈夫。さっき桜ちゃんのおうちに電話しておいたから。おじいさまにちゃんと許可とってあるわよ。先生の家なら安心だ。ご指導よろしくお願いしますっていわれたわよ~」
教師としての責務をきちんと行っているところは実に大河らしいといえるだろう。
毎朝遅刻したり、朝のHRに遅刻しまくったりと……普段の言動で忘れがちだが、大河は立派な教師だった。
そしてその言葉を聞いて、未だ気分が悪いのか沈んだ顔をしていた桜の顔に驚きが走り……
「そ、そうなんですか!? ならわたし、ほんとにここに泊まっていいんですね!」
と、小躍りするほど嬉しそうに笑みを浮かべていた。
その笑みにかき消されてしまったが、そのまえに浮かべていた暗い表情の意味に気づいた人物が……果たしてこの場にいたのだろうか?
「そうだよ。で着替えの話だけど、私のでいいよね? 下着はどうする?」
「え、えっと……その、先生のだと、きついと思います……」
「むっ。そっか~、桜ちゃん胸おっきいもんね~。…………………………その肉をワケロ」
突然大河が奇妙な発音になると同時に、桜の背後へと回り込もうとするが、それを事前に察知した桜が緊急回避を行った。
喜ぶ桜を見て、大河も喜んでいるのかもしれない。
「きゃーーーー! せ、先生! 何するんですか!?」
「あっっはっは。冗談よ冗談。けど困ったわね。さすがに桜ちゃんのサイズはもってないなぁ。桜ちゃんはつけて寝る派?」
……おい
「え、えっと……はぃ」
「だよね~。おっきい人はそういう人多いらしいしね~。けど苦しくないの? と疑問をぶつけてみる」
………………おい
「…………く、苦しいですけど、そういうときは……ごにょごにょ」
さすがに
それを聞いて大河はにんまりと愉快そうに笑った。
「なるほどね~。若いっていいなー! それじゃあ、明日の朝までに若い衆にそろえさせておくね。それじゃ~桜ちゃん、お風呂にいってらっさい」
それで心配事が一通り片付いたのか、桜は顔を赤く染めながらしずしずと風呂へと向かうために居間を去った。
そして遅ればせながら言うのならば、この場には大河と桜のほかにも士郎とセイバーがおり……士郎はものすごく気まずそうに黙っていた。
何でそういう話を目の前でするんだってんだ馬鹿藤ねえ!
聞き耳を立てまいと必死に自制してはいたのだが、それをあざ笑うかのよう……というよりもおもしろがって……大河は士郎にも聞こえる位の声量で話していた。
というよりも、同室でこたつを囲んでいる格好なのだから、普通に会話していればそれが耳にはいるのも当然という物だった。
ちなみにセイバーは大して興味なさそうに食後のお茶をすすりながら、どら焼きを小さな口でほおばっていた。
凜は日課の宝石へと魔力の蓄積を行うために席を立っている。
話し相手がいない士郎は必然として、二人の会話が気になってしまう状況になってしまった。
席を立てばいいという発想は浮かんでこないようである。
俺だって男だぞ!? そんな話をされたら意識しちまうだろう! 桜とどう接すれば――
「あれ~? 士郎、顔が赤いぞ~? なになに? やっぱり桜ちゃんのことが気になる?」
長年の勘と言うべきなのか、悶々として……本人はそうではないと断固として言うだろうが……いる士郎をめざとく見つけてはからかっていた。
ここで反応しなければいい物を、士郎は……
「っ! ふ、ふん! 何言ってんのさ。内緒話だから俺には聞こえなかったんだから気になりようがない」
普通、聞こえないから気になると思うのだが……士郎も少し冷静ではなくなっているためか、若干言葉が意味不明になっている。
そこにとどめを刺すタイガー……、もとい大河。
「あれ? そうなんだ。ならいいこと教えてあげる。桜ちゃん、85のEカップなんだって~。すごいよね~。大きいとは思ってたけどまさかEとは。実に去年から13cmも大きくなってるんだって~」
ゴブッ!
あまりにもドストレートな攻撃に、士郎は思わずむせてしまった。
だがタイガーの猛攻はこれで終わらなかった……。
「士郎も気づいてた? 胸が大きくなってたってことぐらいはわかってたでしょ? 最近、桜の体が柔らかそうだな~、とか、抱きしめたいな~とか」
「なっ、なっ――」
同姓だからこそ許される……許される?……、セクハラ発言の連続&大暴露。
当然のようにこの言葉と驚異的な事実に、士郎が顔を真っ赤にする。
そして
ドタドタドタドタ!
「藤村先生!」
スパーン!
「先輩に聞かれたくないから内緒話したのに、どうしてそういうことするんですかーーーーー!!!!」
風呂に言ったはずの桜が戻ってきて、襖をそれはもう勢いよく開け放ち、顔を真っ赤にしながらそう叫ぶと、それだけでは飽きたらずになんと大河へと躍りかかった。
というよりもよく聞こえたな……。
「え? えぇっ!? きゃーーーーーーー!?」
「……何いってんだよー」
ぼそりと自分が先ほど続けようとした言葉をいう士郎。
さすがに天誅と見たのか、士郎もセイバーも桜を止めようとはしなかった。
ちなみに必死になって口を押さえようとしているだけなのだが……口どころか鼻も押さえてしまっているので、下手をすれば呼吸困難に陥る可能性があった。
が、それでも止めない士郎とセイバー。
ちなみにこれっぽっちも関係ない話だが、この場に凜がいないのは運がよかったといえる。
自身のことをこれっぽっちも恥ずかしいなどと思っていない彼女だが、スレンダーすぎる己の体のことをすこし気にしていたりする。
もしもこの場にいたら、桜と大河がどたばたやっている横で、己の胸を見下ろす凜の姿が見えたかもしれないが……それはこの場には全く持って関係のない話である。
閑話休題
「は~、は~。あ~びっくりした。桜ちゃん、結構武闘派なのね。まさかいきなり呼吸を止めにくるとは……」
「知りません! 藤村先生は少し反省してください!!!!」
顔を真っ赤にして、桜がそう吼えるとぷいっと大河から離れる桜。
するとうっかりと、士郎と目が合ってしまい……。
「~~!?」
「バ、バスタオルは風呂場にあるぞ?」
さすがに話題にすることはしなかった士郎は、あからさまに別の話をして、桜をこの場から脱出させようとする。
といっても、自分自身もまともに桜の顔を見れないという理由も多分にあったりするのだが……まぁそこはご愛敬だろう。
「は、はいっ! それじゃお先に失礼します!」
桜は士郎以上に士郎の顔を見れないのか、普段の物静かな雰囲気からは考えられないような速度で部屋から出ようとする。
だがあまりにも急ぎすぎたためか……
「!? 桜そっ――」
ガンッ!
とまでは響かないまでも、そんな擬音が聞こえてきそうな勢いで、桜は壁に激突してしまった。
鼻をぶつけたのかひどく痛そうに顔をゆがめていた。
実際そこそこの勢いでぶつかったので痛いのは道理という物である。
「あ、ぅ…………鼻を、ぶつけちゃいましたぁ」
「だ、大丈夫か?」
これを無視するわけにも行かないので、士郎はそう声を掛けるが、桜はそれにうなずいて答えた。
「は、はい……。だいじょぶです。お風呂にいってきますね……」
ふらふらと、若干危なっかしげな足取りで廊下へと出て行く。
それを見届けて、士郎はいろんな意味でほっとしていた。
……いまはちょっと桜と顔を合わせづらい
先ほどの大河の暴言で士郎と桜は少々ダメージを受けたといっていいだろう。
その大河へと士郎は恨めしい目線を向けるのだが……。
「ふふふ……」
「なんだ、その言いたげな表情は、不良教師め」
「桜ちゃんも大変だな~って思ってさ~。士郎がいつもより意地っ張りなもんだから、桜ちゃんも余計にはずかしかったんじゃないのかな~?」
この状況下においてもなお、からかうところ……といっても全部が全部からかっているわけではないだろうが……はさすがは大河。
「なっ!? 赤くなってなんてない! 桜は家族みたいな存在で、ご飯も一緒に作ってくれて食卓を囲んできた後輩じゃんか!? そ、そういう後輩に照れてたら先輩失格だろう!?」
そこで意地にならなければいいものの……そこで意地になって反論してしまうのはやはり士郎も「坊やだからさ」なのだろう。
しかしこの台詞に、どれだけの意味が内包されているのか、本人自身が気づいていなかった。
それに気づいた大河は、にやけていた顔を一瞬驚きに変えて、再度言葉を放った。
「ふ~ん。なら士郎は失格したくないんだ?」
「当たり前だろう。慎二の妹を預かっているんだからちゃんと監督しないとダメだろう」
「あ、そっち? 気づいてないくせに余計なことには気を回してるんだね~。こりゃ桜ちゃんも大変だ……」
そんなことを言いながら深々と溜息を吐く。
それにむっとする士郎だったが、立ち上がった大河を見て不思議そうに首をかしげる。
むっとするよりもその言葉の意味を考えた方がいいと思うのだが……。
「どこ行くんだ藤ねえ?」
「脱衣所よ。桜ちゃんの着替え用意しないと。士郎は余っている部屋で布団の用意してあげなさい。きちんと新しいシーツ使うのよ~」
言いたい放題、やりたい放題のことを行って、大河は居間から出て行った。
……どういう意味さ?
大河の言葉に首をかしげる士郎だったが、考えたところでわかるわけもなかった。
この程度でわかる問題ならば……とっくに士郎は普通になっていただろう。
わからないからこそ、士郎は士郎だといえるのだ。
寝具の準備が終えてないのは確かにまずいと思った士郎も、大河と同じように席を立った。
「すまんセイバー。ちょっと準備してくるからここにいてくれ」
「はい」
もきゅもきゅと、二つ目のどら焼きをほおばりながらセイバーがそう答えた。
そのかわいさに少し笑みを浮かべながら、士郎は余っている部屋へと向かった。
「よいしょ」
布団を敷き、新しく出したシーツを布団にかぶせた。
またそれだけではなく、備品などのチェックも行った。
和室であるが故に鍵が掛けられないことが少々問題かと思った士郎だったが。
……俺が土蔵で寝ればいいか
がらくたいじりや、鍛錬の後、土蔵で寝てしまうことが多々ある士郎は、そっちの方が桜が安心できるだろうという理由からそれを選択することにした。
真冬ともなると少々寒い季節なのであまり歓迎すべきことではなかったが、自分のことよりも桜を優先することにしたのだ。
そして一通りの準備を終えて、布団を見下ろしたとたん……
……今夜桜がこれに寝るんだよな
という、思わなければよかったことを思い浮かべ……
『士郎も気づいてた?』
先ほどの大河の言葉を思い出してしまった。
余計な邪念と本人は思っていたが……思春期の男が同じ年頃の女の子のことを思っても全く問題ない。
むしろ正常といえるだろう。
そう……正常なのだ……
それを思ったのだ……
……そんなこと、今更言われなくても
成長期になってから、より女らしくなっていく桜を間近で見ていた士郎は、それを喜ぶと同時に、決して意識しないように自らに言い聞かせていたのだ。
桜がこの家にきた理由が理由だったから、そう見るわけにはいかないと、本人はそう思っているのだ。
……もう一年半前か。別に気にしなくてもいいのにな
士郎が部活をやめることになったことと、桜がこの家に来るようになったのは一応つながっていた。
バイト先で肩を痛めてしまい、火傷の跡が出来てしまったのだ。
弓道には射礼というものがあり、それをする際はきちんとした和服を着込み、それを半分はだけさせて弓を射るのだが……このときに火傷跡が見えて見苦しいと、慎二が言い出したのだ。
それを言われた士郎もその通りだと素直に思い、バイトも忙しかったので弓道部を辞めたのだ。
士郎はそのことを別に気にしなかったのだが、桜が「怪我が治るまで手伝いをしたい」といいだしたのが、今の関係の始まりだった。
当時はまだ幼さが残っていたが、とにかく一生懸命な子だった。
家の前でずっと士郎の帰りを待ち、顔を合わしたら会わせたでずっと黙り込んでしまい、手伝いをしたいという言葉を伝えるのに一時間以上の時間がかかってしまったほどである。
「あの引っ込み思案な桜が今は弓道部の期待の星か。変わるもんだなぁ」
桜が明るくなったことは、当時の桜を知っていれば驚くほどのレベルだった。
現実逃避をしているのは明白なのだが……それに気づいていないのが士郎らしい。
初めての出会いは慎二の家に遊びに行ったときだった。
桜は無口であり、髪の毛で顔を隠す癖があった。
それは今も残っているが、今の桜と当時の桜には雲泥の差がある。
元気がなかったのだ。
暗い目と表情をして、ぼんやりとしている。
それが先ほどまで大河を討伐しようとしていた少女と、同一人物とは思わないだろう。
『桜の体が柔らかそうだな~、とか、抱きしめたいな~とか』
……実際よくわからないよな
つい最近まではただの後輩としか思っていなかった士郎。
それが崩れたのはつい最近だと本人は自覚していた。
そして……
『お前は大河と、桜ちゃんをも否定していることになるんだぞ?』
刃夜から言われたその言葉に言い返せなかったことが、士郎にとってはすごく衝撃的なことだった。
それがあったからこそ気づいたのか……?
もしくは身近すぎたのか……?
考えてもわかるわけもない。
「……今まで問題なくやってきたのに、どうして」
桜が泊まることで少しおかしくなっている。
士郎はそう思っていた。
それは間違いないが、仮に以前の……聖杯戦争が始まる前に桜が泊まる機会があったら果たしてこうなっていたのだろうか?
非日常的な状況でようやく気づいた、日常の大切さ。
もしも非日常が訪れなかったのならば、気づかなかった可能性は高い。
人は、得てして安定を望む存在だから……
相手が
きっと気づかない……
気づけない……
良くも悪くも、変化は人を狂わせる……
良い方向にも……
そして……
当然のように、悪い方向にも……
「あれ?」
一通り準備を終えて居間へと戻ってきた士郎は、そんな声を上げていた。
そして居間を見渡し、それでも見つからなかったのか台所ものぞいたのだが、お目当ての人物は見あたらなかった。
桜が居ない?
「セイバー。桜は?」
「こちらにはまだきていませんが……。まだ入浴しているのではないでしょうか?」
「入浴って……もう一時間以上経ってるんだぞ?」
セイバーが急須より入れたお茶をすすりながらまだ入浴中だという。
それに反論する士郎だったが……だからといって女性の風呂場に突撃できる訳がない。
そんなことをすれば即座にほかの女性陣……セイバー、凜、大河……にフルぼっこにされてしまう。
セイバーは何もしないかもしれない……女性と言うよりも彼女は「騎士」なので、裸を見られても特に動じない……が、敵に回したが最後だ。
……女の子だから風呂が長いのかな?
放課後の教室にて気づいた、自分の知らない桜。
食事を作りに来ても入浴をしたことがないため、風呂にどれだけ入るのか、士郎は当然のように知らなかった。
きっと男の自分とは違って、洗うところが
そう思考した瞬間に、士郎はまたもやもやと妄想しかけた。
あぁもう! 変な想像はしない!!!!
ドカッと、テーブルに陣取り、熱めのお茶を飲み干して心を落ち着かせる。
のどを一瞬、思わず悲鳴を上げてしまいそうな熱が通り過ぎていたが、それでどうにか妄想を振り払って、士郎は一息を吐いた。
そんな士郎に掛けられる、セイバーからの言葉……。
「シロウ。桜は目が悪いのでしょうか?」
と。
その言葉に士郎は思わず首をかしげてしまった。
「桜は目がいいはずだぞ。確か両目を会わせたら1.5はあったはずだ」
「そうなのですか? しかしそれにしては入り口と壁を間違えていましたが……。私見ですが、先ほど壁に衝突したのは目測を誤った感じでした。桜は今朝から疲れているみたいでしたし、疲労しているのではないでしょうか?」
……言われてみれば確かにそうだな
先ほどの衝突が緊張と恥ずかしさからではなく、純粋に疲れていたのだとしたら?
確かにいくら恥ずかしかったとはいえ、一年以上もこの家のこの居間で食事をしているのだ。
どこが出入り口なのかぐらいはもう熟知しているだろう。
では何故先ほどぶつかってしまったのか?
そう思った瞬間に士郎はいてもたってもいられなくなり、席を立った。
一時間はやっぱり長い!
一時間程度では女性の長風呂では短い部類に入る……と思われる(by作者)……が、それでも全く音がしないのは確かにおかしかった。
別段耳を立てているわけではないので、音が聞こえないのは当たり前かもしれないが、何故か胸騒ぎに近いものを感じた士郎は、風呂場へと急行した。
このとき性別としては女性であるセイバーを連れて行くという行動をしていれば……
士郎はあんな目には遭わなかっただろう……。
今朝から体調悪そうだったのに、風呂に普通に入れるわけがない!
と思い、士郎は焦るのだが……
「桜?」
脱衣所の扉越しに声を掛けるくらいの理性は残っていた。
というよりも先日の凜の事件で失敗したばかりなので、いくら何でも早々簡単には同じ失敗はしないだろう。
仮に凜の失敗がなかったとしても、さすがに脱衣所に突入するほど愚か者ではないだろうが。
あくまでも
「桜? いるか?」
こんこんと、最初は普通のノックだった者が、だんだんと荒々しいものへと変貌していく。
だが、それでも桜から返事は返ってこない。
それどころか人の気配も感じられないほどに、脱衣所のドアからは音がしなかった。
!!! 俺の馬鹿!
何故今朝から体調の悪そうだった桜を風呂に入れたのか?
女の子だから風呂に入らないのはいやなのかもしれないが、壁にぶつかってしまうほどに疲労していたのならば、それに気づいて寝かせるべきだった。
そう思うのだが、それはすでに過ぎてしまったことだ。
だから士郎はいったん思考を打ち切って、凜かセイバーを呼ぼうとした。
「あ、あれ? 先輩? どうしたんですか……? あわてて」
!? 居たのか!?
先ほどまで帰ってこなかった、桜の声がドア越しの士郎へと掛けられる。
安堵よりも、驚きの方が強かった士郎は、一瞬飛び上がりそうになってしまうが、それをどうにか押さえた。
しかしその驚愕のせいなのか……それとも脳裏で桜の風呂上がり姿を想像してしまったからなのか……士郎は桜の声が弱々しく、とぎれそうにか細かったことに気がつかなかった。
「さ、桜!? いや、時間がかかっているみたいだから大丈夫かなと思って!?」
「じ……かん? おかしいな……。私、そんなに長く入ってました?」
「?」
その声はうつろといっていいほどに、ぼんやりとしていた。
それだけではなく、とぎれとぎれに返ってきてもいる。
そこでようやく気づく士郎。
「ひょっとして、寝てたのか?」
「……みたいです」
「ばっか。脅かすなよ……」
冬の風呂で寝るというのもあまりいいことではないが、それでも最悪の事態に発展していなかったことがわかって、士郎はずるずると廊下に膝をついてしまった。
先ほどまでの焦りは完全に消え去り、安堵していた。
果たしてその安堵が……友人の後輩という人間に向ける
全く……桜め……
ここまで心配している自分に気づかず、士郎は嫌味の一つでも言ってやろうかと思ったが、男である自分が脱衣所の外にいては桜も着替えるに着替えられないだろうと思い、腰を上げる。
そしてその安堵を抱いたまま、士郎は居間へと戻ろうとしたのだが……
ゴトッ!
「!?」
突如として響いた、重たい物が倒れた音。
だがその音には一切硬質的な音が含まれていなかった。
まるで何か柔らかい……肉質的な……ものが倒れたとでも言うような生々しい音だった。
「!?」
安堵が再び吹き飛び、士郎は居間へと戻ろうとしていた体制を急転換させて、再度脱衣所の扉の前に張り付いた。
「桜っ!」
声をかけるが返事はない。
先ほどと同じように人の気配すらも感じられなくなってしまった。
確かにそこに居るはずなのに、あまりにも桜の存在は弱々しかった……
一瞬躊躇するも、しかし緊急事態と判断した士郎は……
「っ……入るぞ桜!」
脱衣所の扉を開けた。
そしてそこには予想通り……ぐったりと横たわっている桜の姿があった。
うつぶせになってしまって倒れている桜を、士郎は優しく抱き起こした。
「桜! しっかりしろ桜!」
初めてまともにふれた……ふれてしまった……桜という女性の体。
指に触れたその感触は、思わず驚いてしまうほど柔らかで、そしてそれ以上に熱かった。
風呂上がりということを差し引いても異様に熱い。
それを感じながらも、士郎はそれどころではなかった。
「……ぁ……ん……」
意識がないらしい桜の苦しげな吐息。
それはあまりにも……扇情的で甘やかだった……。
肌に張り付いた何かをはがしとるように、その手は胸の中心をつかもうともがいていた。
「あっ……はぁ……ぅ……」
「!?!?!!?!?!?」
もはや艶めかしいと称してもいいほどに、桜は艶めいていた。
目の毒という生半可な物ではない。
シャツ一枚という、薄切れにも満たないようなその薄布は、水と汗にぬれてしまってとても危険な状況になってしまっている。
さらに濡れそぼった髪の毛や、その上気した頬、そして苦しげなその呼吸は、士郎の心を大いに揺さぶり、かきむしった。
それこそ、この場で桜を襲ってしまいたいと思うほどに……
このままではまずい……
そうは思うが、その意志に反して士郎の指は全く動こうとせず、それどころか目線はその豊かな胸に釘付けだった。
先ほどの大河の衝撃的告白も相まって、より意識してしまっているのだろう。
そこに救世主……もしくは悪魔……が舞い降りる。
「ちょっと衛宮君? さっきから何を騒いで……」
魔力充填の終わった凜だ。
先ほどから声を上げたり、桜が倒れたり、荒々しくドアを開けたことで、凜が居る客間にも音が聞こえていたのだ。
なのでとりあえず凜は様子を見に来たのだが……脱衣所の状況を見た瞬間、一瞬だけ停止してしまった。
「あ、と、遠坂……」
「……あ、あんた」
遠坂がきてくれて助かった! そういうつもりだった士郎は、凜のその顔が、驚愕から憤怒の形相へと化してしまったのを見て、そんな安堵は一瞬で消え去る。
「――何してんのよ!!!!」
容赦一切無しの脳天かかと落とし。
以前にも説明したが、凜は八極拳を習っているので、普通の男よりもよほど戦闘力がある。
スレンダーと言うことで平均値よりは軽いが、成人に近い体格をしている女性の体重というのは当然のようにそれ相応にある。
それをすべて乗せた一撃というのは相当の威力を有している。
さらにはしなやかと表していいその肉体から繰り出されたそのかかと落としは……破壊力抜群であり、士郎の意識を一瞬で刈り取った。
足を大きく振り上げたことで凜のパンツが見えたのかどうかは、士郎が目が覚めた時に、かかと落としを喰らわされた前後の記憶が吹き飛んでいたので、永遠の謎となってしまった。
ちなみに桜が倒れたのはのぼせたからだと、看病した
ついでに言えばいくら不可抗力とはいえ、風呂上がり直後の女性が居る脱衣所に侵入したことで、それはもうえらい怒られた士郎だった。
確かに一刻を争う自体だったかもしれないが、それでもデリカシーがないと、女性陣3人から非難囂々だった。
※獣とはいえタイガーは一応メスである
女性の中に一人だけ男……アーチャーは実体化していないので省く……が居るというのも、なかなかに大変なことなのだろう。
さんざん居間にてしかられた士郎は罰として、当分の間土蔵で寝ることを言い渡された。
最初からそのつもりだった士郎としては別段そのことに文句は言わなかった。
もしもこの場に桜がいたのならば、変わっていたのかもしれないが、そんな仮定は瑣末ごとだろう。
俺のわがままだもんな……
聖杯戦争という、殺し合いの渦中にある冬木市。
普通の人間よりは能力のある士郎、普通の人間を圧倒できる凜、普通の人間では対峙することすら不可能な存在である
その四人がいる衛宮家ならば、冬木市の中では比較的安全かもしれない。
だが逆に……そんな存在が居るからこそより危険な状況になりうる可能性も孕んでいる……
そうなる可能性があると言うことは、士郎もわかっていた。
だがそれでも、士郎は自分のわがままを押し通したのだ。
友人の後輩という
……俺は
土蔵にて、なおしたばかりのストーブに火を入れて、士郎は布団に横になる。
厳冬……とまでは言わないまでも、山間にある衛宮家は土蔵ともなるとずいぶんと冷え込む。
言葉を選ばすに厳しいことを言うのなら……ぶっちゃけこんなところで冬に寝るのは正気の沙汰じゃない。
が、しかし士郎の体が頑丈なのか、もしくは寒さに気づかないほど馬鹿なのか、もっと言えば自分の体が異常を来しても……例えるなら風邪……気づかないだけなのか……。
※注 ひどいことを言っているのにはかわらない……
そんな寒い土蔵で士郎は横になるのだが、寒いとは本人は思っていなかった。
というよりも、先ほどの状況と見てしまった光景があまりにも衝撃的で、そんなことを考えている……感じる……余裕はなかったのだ。
……本当に変わってたんだな
変わっていたと、そう考えるが、士郎が桜にまともにふれたのはこれが初めてだった。
ふれた、というよりも腕に抱いたのが初めてなのだ。
士郎にとって桜というのはどうしても年下の子であり、イメージが始めてであったときのものが強い。
だがそのイメージとは裏腹に……体つきは少女から女へと変化していたのだ。
毎日見ていたからこそ……変化に気づきにくかったのだろう。
……寝れないな
すでに時刻は零時を回っている。
大河はひとしきり士郎を絞めた後に帰宅した。
セイバー、そして凜も眠りについている。
アーチャーはほとんど姿を現していない。
セイバーが斬った傷がまだ癒えていないのか、それとも監視に徹しているのか……アーチャーはそのほとんどを霊体として存在していた。
士郎はあずかり知らぬことではあるが、一応衛宮家の屋根の上から監視と警護をしていた。
いつ終わるんだろう……
聖杯戦争。
七人のマスターと七人のサーヴァントによる殺し合い。
それに巻き込まれる形で、士郎は聖杯戦争へと参加した。
そして知った……十年前の災害の原因。
第四次聖杯戦争の終焉の爪痕。
そのとき見た地獄を……
そのとき味わった絶望を……
そしてそのときもらった……命を……
それを使って……士郎はこの聖杯戦争を早期終結させて、二度と同じようなことが起きないようにするつもりだった。
だがすでに数日が経過したが、聖杯戦争は遅々として進んでいない。
未だ一組しか脱落していない。
日数だけが経ち、終わりの兆しは遙か先だった。
それに不安を感じたからこそ、士郎は桜を家に泊めた……と、本人は思っていた。
カチャッ
「?」
寝っ転がった士郎の耳に、そんな音が届いていた。
場所はすぐそばの土蔵の扉。
夜風をしのぐために閉めていた土蔵が、わずかに開かれてそこから顔のぞかせたのは、桜だった。
「……先輩?」
小さく……もしも仮に士郎が寝ていたとしても起きないように……けれども聞き取れる程度の声量でささやかれたその言葉は、士郎の理性を破壊するには十分だった。
先ほどの状況と光景を思い出した……それだけではなく、大河のお下がりとはいえ、制服姿ではない桜の姿を見るのは初めてで、士郎は一瞬息をのんだ。
「……先輩、起きてますか?」
「……あ……あぁ。起きてる。どうしたんだ? こんな夜更けに」
必死に理性を動員し、士郎は努めて平静を装って桜に言葉を返す。
のぼせただけなのだから特に問題はないだろうが、それでも倒れたのだからすぐに部屋に戻すのが最適といえた。
だが士郎はそれをしなかった。
「眠れなくなったのか? 目がさえてるんなら、話し相手になるぞ」
「……はい、それじゃおじゃましちゃいます」
暗がりでも、ストーブの火と、月明かりのおかげで、桜が確かな足取りで士郎のそばへと腰掛ける。
それを見て、士郎も特に心配がないと判断した。
「このストーブちゃんと動いてますね。直せたんですね」
「あ、あぁ。さじ投げそうになったけどな」
二人が今当たっているストーブは、以前に士郎が拾って直したストーブだった。
拾ってきた当初はあまりにもおんぼろだったのだが、直る見込みがあったために、士郎が最後まで投げずに修復してしまったものだった。
「そうですね。でも、結局直しちゃいましたね」
「まぁ……俺も往生際が悪いんだよ」
「そうですよ。先輩って結構頑固なんですよ? 気づいてました?」
「……頑固か? 俺」
そういわれて自身を振り返ってみる士郎だが、それで自覚できれば苦労はしない。
というよりも、隣の桜のことが気になってそれどころではなかったのだ。
先ほど意識が蒙昧としていたからか、桜は脱衣所のことを一切口にしようとはしなかった。
だからだろう……最初は固まってしまいそうだった士郎も、だんだんと普段通りにはなせるようになった。
そしてそうやって注意していたからか、普段と違うところにも気づいていた。
……すごく安心してる?
すごく穏やかだった。
普段から桜は何事にも頑張ろうとしていることを、士郎は知っていた。
だがそれが今はなかった。
これが本当の桜なのかもしれない……士郎はそんなことを思った。
そんな穏やかな桜を見たからかもしれない。
士郎も自然と落ち着けていた。
それから二人はいろんなことを話した。
放課後の続きであるかのように。
互いの子供の頃のことを、話した……。
そんな中、士郎の恥ずかしい過去が桜の興味を引いた。
「町中を走り回っていたんですか?」
「うん。パトロールと思ってたんだけど……。正義の味方って言うか、弱きを助け強きをくじくって言うのに憧れてた」
それは少し昔の話。
正義の味方を目指している……とはさすがに恥ずかしくていえなかった士郎だが、それでもその気持ちに嘘はなかった。
切嗣に拾われてから、自身もそうありたいと思った士郎はパトロールといって、町中を走り回っていたのだ。
とは言っても所詮は子供というべきなのか、戦場は主に公園であり、相手はそのほとんどが少し年上の同級生だった。
つまり……
「いぢめられっこを護っていたんですね」
「恥ずかしいからあまりほめないでくれ……」
「どうしてですか? 私がもしも子供の頃に会ってたら子分にしてもらってました。私、引っ込み思案だから、引っ張っていってくれるような人がいないとダメだと思うんです」
女の子相手に子分と言われて少し考えた士郎だったが、すぐに打ち消した。
当時の士郎は結構無鉄砲というか、計画性がないというのかともかく後先を考えていないので、仮に桜と出会っていたら毎日のように特訓と称して、道場に連れ込んだり、河原を走っていた可能性は高い。
それは子分そのもので、それによって鍛えられてしまった桜はたくましく……食欲といたずら心の化身のタイガーや、赤い皮をかぶった悪魔みたいに……なっていた可能性はある。
それを想像して身震いする士郎だった。
よかった……桜がおしとやかなで本当によかった……
「その……先輩。聞きにくいことを聞いてもいいですか?」
「? 何をだ?」
くだらない自分の妄想を振り払って安堵していた士郎に、先ほどまでとは打って変わって不安そうな桜の言葉が士郎の耳に入る。
「藤村先生から聞いたんですけど……先輩がこの家に引き取られた養子だって話……」
養子。
それは確かに人によってデリケートな問題を含んでしまうために、非常に聞きにくい話かもしれないが……士郎には関係がなかった。
それは、士郎にとっては誇りであると言っても良かったからだ。
別段士郎は本当の両親と折り合いが悪かったわけでもない。
ただ……あのとき一度死んだ身であると思っていた士郎にとっては、
「あれ? 言ってなかったか? 藤ねえの言うとおりで、俺は
あっけらかんと返されて固まる桜。
固まってしまった桜に気づきながらも、その質問の意図も、意味もわからない士郎はただ首を傾げるしかない。
「その通りだし隠し事じゃないから別に気にしてないんだけど……それがどうしたんだ?」
「気にして……ない? い、嫌じゃなかったんですか? だって今まで全く知らなかった人と一緒に暮らすんですよ?」
養子。
今まで全く面識のなかった人間と一緒に暮らすと言うこと。
これがどれほどのストレスを与えるのか想像もつかない。
だが、士郎は違った。
あの極限状態から救ってくれた、切嗣のことを……士郎は心の底から尊敬していた。
「藤ねえの入れ知恵かな? 確かにはじめの内はそう見えたかもしれない。だけど、別に辛くはなかったし、嫌でもなかったよ」
命の恩人。
言葉にしてしまえばそれだけのことなのかもしれない。
だが、それがどれほど重い物なのか……
命を救ってくれて……そして道筋まで残していった、養父だったのだ。
「じゃあ……楽しかったんですか?」
だが、楽しかったのかと問われたら、士郎としても考えざるを得なかった。
冬木の大災害によって両親が他界してしまったことは当然のように悲しかった。
そして火事によってすべてを失ってしまった。
辛くもなければ楽しくもない。
ただ……その傷をいやすための日々だったのだと、士郎はそう思った。
その後はただひたすらに走り続けた日々だった……
魔術を習って自分の養父に……正義の味方を目指して……
それが精一杯で……ほかのことを考えている余裕なんぞありはしなかったのだ。
「楽しかったかって言われたらわからないけど……ただ俺はオヤジみたいに
なりたかった……
そう答えた士郎の胸中に、どれほどの想いがよぎったのかはわからない……
だがそのときそう言った、そのときの士郎の表情は……わずかながらも苦渋に満ちていたのだ……
「それって……藤村先生が言っていたような正義の味方になるためにですか?」
しかしそれに気づいたのか気づかないのか……桜はうつむきがちにそうつぶやいていた。
その表情と声が、そう答えてほしいと言っている気がして……士郎は自然とこう、口にしていた……。
「うん……。おかしいか?」
正義の味方になりたいと思ったことに嘘はなかった。
だからこそ、今のこの場でそう言葉を返したことに嘘はなかった。
その言葉を聞いて、桜は……
「そんなことないです。すごく、かっこいいです」
落ち着いた、静かな言葉。
いつもなら恥ずかしくて目を合わさずに言うであろうその言葉は、すごくまっすぐな物で……
思わずありがとうと……言いたくなってしまうほどに、士郎の心に届いていた。
その後、少しだけ暗い表情をして……桜はこういった……
「先輩……。もし、私が悪いことしたら、どうしますか?」
質問の意図がわからないと、士郎の表情が語っていた。
だがそういった桜の表情はとても綺麗で……士郎も真剣になって考えて……
こう言った……
「あぁ。桜が悪いことをしたら怒るぞ。他のヤツよりも何倍も怒るさ」
他のヤツよりも……
それは、親しいという意味だからだけではなく……
その人が特別であるという証だった……
それがその人間が望んでいなかった特別だったとしても……
その特別な存在だと言うことが……嬉しかったのだ……
.
「――よかった。なら……いいです」
.
ひどく安心したかのように、桜はそう言ってうなずいていた……
その穏やかさが、最後に見た切嗣の穏やかさと同じに見えた気がして……
それだけではなく……今朝思い出した、土蔵での出来事の笑みにも似ていた……
それに気づいた士郎の先手を打つように……桜が腰を上げた……
「それじゃ、部屋に戻りますね、先輩。お休みなさい」
そう言って、土蔵から去っていったのだ……。
それを引き留めようとしたが、それを桜が望んでいないことがわかった士郎は、素直にお休みと声を掛けて、桜が土蔵から出て行くのを見守った。
桜と二人きりで話したこの時間が……
士郎はとても楽しかった。
そして士郎の心の奥底にも、変化が生じていた。
今まで決して見ようとしていなかった……女の子を……
一人の女性として、見てしまったのだ……
それが……どれほどの激変だったのか……
本人は、気づいていなかった……
――――――――――――
「幕の内弁当とは?」
「なんだまた雑学か? 刃夜よ?」
「幕間の内に観客が食べるものなので、幕の内弁当と言われるんだ」
※諸説あり
「ほぉ? してそれが?」
「幕間だったからそれにちなんだことを言っただけだ。他意はない」
『なんと無意味な……』
早めに閉店して、冬木中を駆けめぐったのだが……収穫なし!
あまりにもすかしを喰らった感じで……非常に遺憾であった。
が、憤ったところでどうにもならない。
深々と溜息を吐く。
「……月が綺麗だな」
「……そうよな」
冬木の山間にて、小次郎とともに光り輝く月を眺めてそんなことをつぶやいた。
実にむなしい時間と言っていい。
ものすごく行き込んでおきながら、まったく収穫がないのだから。
はぁ……なんかもう面倒になってきた……
いろいろと……もうなんかいろいろと。
しかしだからといって状況が好転するわけもないので、俺は溜息を再度吐くとそれで暗い感情を全部出し切って、気分転換を図ることにした。
「やむを得ん。弁当でも食おう」
「む? 何か包みを持っているとは思ったが、弁当だったのか?」
「なんか作りたくなってな。枯れた木々の合間から見える月を見ながら弁当というのも乙な物だろう?」
にやりと笑いながら、俺は即興で作った余り物弁当の包みを開く。
余り物といっても客に出す物なので、調理自体に手抜きは一切していない。
十二分に味はいいはずである。
それを証明するかのように、小次郎は表面上はいつも通りだったが、それでも実に嬉しそうに箸を運んでくれた。
というよりも弁当持参という時点で自らやる気がないということを言っている気がしたが……もう終わってしまったのでどうでもいいだろう。
「茶もあるぞ」
「かたじけない。月夜と刃夜の料理を肴に一献交わしたかったが……」
「あ~それは考えてなかったな。確かにこの月夜を眺めながらの酒ってのもよかったかもな」
※お酒は二十歳になってから by作者
魔法瓶から注いだ、熱い緑茶を口に含みそれを嚥下する。
のどが一瞬焼けるこの感触というのは、何ともいえない安堵感を生み出す。
寒さは魔力にて風翔龍の力を用いて緩和しているのでそこまで寒くはない。
「この唐揚げもらってもよいか?」
「いいぞ~。俺は里芋のあんかけ焼きもらうぞ?」
「卵焼きはもうないのか?」
「お前あれだけ食ってただろ! 俺、一切れしか食ってないぞ。大根おろしも余さず食いやがって。あんかけに入れる分がほっとんどなくなってんじゃねぇか」
「わかってないな……刃夜よ?」
「……何が?」
もぐもぐと、大量に食いやがった卵焼きを噛みながら、そんなことを言ってくる。
俺はそれに半ば呆れつつ、小次郎の言葉を待った。
すると噛んでいた卵焼きを飲み込んで……何故か異様に決顔になった。
そしてフッと、顔をほころばせる。
「……食べられるというのは大変ありがたいことなんだぞ?」
「……いやそんなあたりまえ――」
「知識と経験が違――」
「お前も俺をあまりなめるなよ? 俺は丸一週間、雑草しか食わなかったことがあるぞ?」
厳冬の地、じじいの修行にて……。
基本は曇りで、寒すぎて毎日雪が降ってたり、吹雪いたり。
必死になって雪かき分けて食えそうな植物を探した。
当然それだけではなく定期的に敵が……じじいとオヤジ……襲ってくる。
あっちはスナイパーライフルまで用いてくるのにこっちの得物は夜月と夕月のみ。
極めつけが……
人間相手に
他にも装備なしの徒手空拳で砂漠横断、水を吸収する特殊なスポンジ装備して真冬の服装で真冬に太平洋海水浴……ちなみに行き先は沖ノ鳥島……等々、盛りだくさん。
……思い出すのやめよ
一瞬はき出しそうになったのを俺は飲み込んだ。
そんな俺を見て、小次郎が苦笑していた。
「お主も苦労したのだな……」
「うん……」
『なんとまぁ……』
小次郎と封絶の哀れみの言葉が俺へと掛けられて、小次郎が俺の方を優しくたたいてくれた。俺はそれに心の中で礼を言って、小次郎と自分のコップに茶を注いだ。
熱々の緑茶で口の中の味の余韻と、暗い思い出を流し、俺たちは深く息を吐いた。
奇妙な物だ……
直前にしていた話を完全に忘れて……俺はそんなくだらないことを思考する。
異世界でこうして、遙か昔に死に消えたはずの存在とこうして弁当を食い、茶を飲んでいるという経験は当然だが初めてだ。
というよりも普通ではあり得ない経験と言っていい。
幽霊ないし、亡霊だしなぁ……
佐々木小次郎という、いたのかも定かではない侍の名を名乗るこの男。
超絶的な剣技で現在全敗完敗中。
幽霊だから強いというわけではなく、こいつ自身の力で俺は圧倒されている。
それも気力も魔力も無しに……。
圧倒的に上にいる人間だってのはわかってる……。
だが……。
霊体化できるくせして飯は食うわ、女の子はナンパするわ……本当になんなんだか……
卵焼きを残らず平らげた俺の隣の男はすごく満足そうに茶をすすっている。
本当に実に……
奇妙な関係だな……
そう考えた俺の背後に……何か普通ではない物の視線と気配を感じた。
その瞬間に俺は動いていた。
「ふっ!」
手近にあった使われた菜箸を気と魔力を込めて投擲していた。
棒手裏剣という技法である。
それは狙い違わず俺が感じ取った何かへと……突き刺さっていた。
「ギィ!?」
ギィ?
何というか、形容しがたい声を上げてそれが息絶える。
俺はそれに素早く近寄って……嫌な物を見たことによって顔を盛大にしかめることになった。
……なんだこの奇っ怪な生物?
実に奇妙な形状をしている、虫のような存在がべったりと葉の枯れた木で貼り付けになっていた。
芋虫のようだが、月光に照らされたその体は実に人間の肉体らしい質感をしている。
先から少ししたところでより太くなっており、一番先には口なのか鋭そうな牙が並んでいた。
そして最後の方は何というかしっぽなのか……ひょろっとした紐みたいな物が会った。
率直に言うのならば……
……男性器?
※18禁版である原作PCゲームを元に制作します……気分が悪くなってしまった方ごめんなさい
by 作者
もうそれとしか表現がしようがないほどに、それは
楽しい食事が終えた後に、下の物としか思えないほど生々しい物を見て、気分が台無しだった。
しかしこれが悲しいことに……
本日の唯一の収穫か……
明らかに自然に生まれた生物ではない。
別段俺は生物博士ではないし、詳しいわけでもない。
だがそれでもいろいろと歪な感じがしたし、それに何より気の放ち方がおかしい。
それらを鑑みれば確実に普通の生物ではない。
言うなれば使い魔だろう。
この予想は、半分正解であり、半分外れだったことに俺は後に知ることになるのだが……それはまた別の話。
運がいいのか悪いのか、じっくりと観察する……いや正直したくなかったが……ことは出来なかった。
一瞬にしてそれが消えたのだ。
証拠隠滅のために何かをしたと言うことだろう。
物的証拠がなくなったのはおしい……いや惜しくないか?……が、まぁ亡くなった物はしょうがない。
しかし気になるところが一つ。
……あの牙……血のにおいがした……
夜風に吹き飛ばされそうだったが、あの虫からの嫌なにおいと混じって……赤い液体の鉄のにおいがしたのだ。
サイズだけで見ればそんなことは不可能だろうが、自然な存在でない以上、人肉を食い千切ることは出来るかもしれない。
そしてあのサイズと使い魔という観点から考えて……
数があるかもな……
もしもこの虫みたいな存在の使い魔が人を殺せるだけの力があって、そして数が大量いたとしたら……
巡回を増やした方がいいかもな……
再び少し……本当に少しだったが、動き出した聖杯戦争。
しかしどこかきな臭い感じがしてきた。
血のにおいがしたと言うことは人を襲った可能性があるということ。
性格から考えて士郎と遠坂凜、イリヤは除外。
キャスターもあんな下品ともいえる使い魔を使役するとは思えないし、そんな余力もないだろう。
ライダーのマスターが間桐慎二だとすれば、そんな力量があるとは思えない。
最後に残ったランサーのマスターが使った可能性が一番高いが……あのランサーが一般人を襲うといった卑劣ともいえる行為を許すとは思えない。
ならば……第三者の可能性が高い。
……やれやれ、面倒ごとになったなぁ
「実に奇っ怪な虫であったな?」
小次郎も食後の穏やかな時間の後に見るのは嫌だったのか、顔をしかめている。
それに激しく同意しつつ、俺は使用不可能になってしまった菜箸を紫炎の炎で灰も残らず焼却した。
「ほぉ、そんなことも出来るのか?」
「まだ不慣れだがな」
刀にまとわせたり、ちょっとした爆発を起こすことは出来るが、こういった小手先というか……神経使うような使い方がまだ未熟だ。
ある程度は出来るが……残念ながら戦闘時に使えるほど瞬時に使用できる力量には達していない。
もっと魔法的、呪術的な腕前も上昇すれば、戦闘中に霞をまとっての透明化や、風、炎、水などの能力の使用も可能だろうが……魔法とか魔術的なことは苦手である。
練習の場もないしな……
いつも小次郎と勝負をしているあの林の中の幽霊武家屋敷でしようものなら……辺り一帯火事になりかねない。
かといって、あまり人目に付くような場所ですることは出来ない。
……今後の課題だな
自分の不器用さに苦笑しつつ、俺は一つ大きく息を吐いた。
「夜の夜食も終了だ。疲れたし嫌な物も見たしもう帰るか」
「うむ、そうだな」
二人して苦笑しながら、俺たちは弁当の後片付けをして帰路についた。
NGシーン
「これ以上暇だといいながらないし、暇だと思っているのも非生産的だ。行こう。夜の冬木へ……。俺たちは探索の必要がある」
『……よいのか?』
「言いも悪いもない。ただ俺には……料理人をやっている意味があった。みんな同じだ。食っている」
『食べようとしている』
「だが……何故こうも
『なまじ味覚があるから、些細な味の違いが気にくわない』
「それが評価となり、料理を区別し……」
『客が来なくなる』
刃夜とだってわかり合えた! お前らとだって!!!!
↑乱れ斬ってる、アサ次郎の声が……
『ただ、気づいていないだけなんだ』
「だから示さなければならない……」
「料理はこんなにも……簡単だということを……!!!!」
BGMはあえて「FINAL MISSI○N ~ ○UANTUM BURST」でwww!!!!
NGシーン自分で執筆しながら笑っちゃったよwww
お風呂上がりの女の子と土蔵で二人っきりで会話!?
てめぇ……・
これで○わないとか聖人君子か!?
ったっく……これだからリア充は……
いつか妖精になって世界を呪ってやる……・wwww
約一年ぶりの更新ですね
なのに話は全く進まない
いや本当に申し訳ありません
一応有る程度のストックは出来ましたが……・やっぱり書いてみると結構問題点って言うかどうすればいいのか考えない問題が結構出てきてそのたびにつまずくという……・
見切り発車? まぁその通りなんだが……
ともかく桜ルートを終わらせるのは結構骨がおれます
まぁ作者が堕落してゲームしてるってのが一番の理由かも知れませんが……
GODEATER2とかね……
が、頑張ります
あ、最後に
二周年続きました(続いたっていうか不明だけど……)
未だ半分も来ていないという状況ですが、暇なときにでも読んでいただければ幸いです
何とか終わらせたいなぁ……
「刀馬鹿先生の次回作にご期待ください!」
みたいな打ち切りじゃなく・・・・・