二日やりすぎ
目が真っ赤
一日ゲームは
やりすぎだよねぇ
適当な短歌
8/28に発売した討鬼伝極を土日ほとんどやってました
睡眠はいつも通りとりましたが、ほかはほとんどそれしかしてない
日曜日は日課の筋トレとジョギングで少し休憩になったけど、ほかはほとんどゲーム
今夜目が真っ赤になっていたことに、鏡を見て気づきましたw
バカのキワミ! アーーーーーー!!!!
早朝。
まだ鳥の鳴き声すらもしないほどに早い朝だった。
よほどの早起きでもない限り、誰もが眠りについている、夜明けと言っていい時間だった。
現にこの屋敷の主である青年も、今は自室で自分にとってもっとも大切な存在と共に眠りについていた。
その屋敷の屋根の上に……人ならざる物が、静かに力の塊として存在していた。
今は姿が見えないが、それでももし現界しているのならば、長い髪をなびかせて直立不動で立っていただろう。
その胸中は、己がマスターのことでほとんど埋まっていた。
……サクラ、よかった
呪われているといって差し支えないほどの強力な魔眼を有したライダーは、屋根の下で安らかに寝息を立てている己のマスターがしばらくは大丈夫そうであることを、つながったパスで確認してほっとしていた。
普段はほとんど感情を表に出さないだけで、ライダーにも当然のように感情があった。
己と同じように怪物へとなりかけている少女の身を、彼女はいつも案じていた。
故に、その障害となるべき存在が現れた場合、ライダーは何をしてでも己のマスターを守るつもりだった。
その結果マスターを……、桜を傷つけることになっても。
故に……敵に容赦する理由はなかった。
私は……
覚悟を新たにしていたそのときだった。
結界としてはお粗末といえる程度の力しか持たないが、代わりに侵入者探知の能力は群を抜いている衛宮家の結界を、全く発動させることなく侵入してきた男がいた。
右手に提げた物は長大な木の棒と、竹刀袋。
背中には何か板状の物を入れた袋を背負っている。
そして左手には……大量のビニール袋を下げていた。
……何をしに来たのでしょうか?
大量のビニール袋の中身は食材が多数入っていた。
その時点で考えるまでもないのだが……。
しかし気になったのは結界が発動していないことだった。
侵入者探知の能力に特化した結界が発動していない。
それはつまり相手が何かしらの力を使っていると言うこと。
だというのに姿を堂々とさらし、さらには戦うつもりがないとでもいうように気配も露骨に放っている。
一応得物を持っているために油断は出来ないが、はっきり言って意味不明だった。
結界が発動しないように何かしらの力を使用しているというのに、堂々としたその姿。
意味不明ながら、警戒するには十分だった。
フッ
屋根の上から姿を現さないままライダーは地面へと降り立った。
そのとき何を感じたのか、その男は……鉄刃夜は足を止めた。
「姿は見えないが……今一瞬だけ戦意を感じたな。いるんだろ? あ~姿は現さなくていいぞ? 魔力減るだろ」
降り立ち、一瞬だけ発露した警戒心を捉えた。
それほどの鋭敏な感覚と腕を持ち、結界を感知させないだけの能力を所持している。
暗殺も容易のはずだ。
しかし目の前の人間はそれをしなかった。
……何故?
「何故って思ってるだろうな? 俺としても結界を発動させないために貴重な魔力を使ってまで何やってんだろうな俺……ってのが正直なところだ」
肩をすくめて、目の前の男が苦笑する。
その笑みに嘘はなく、本当のことを言っているのが感じられた。
しかしそれでも警戒を緩めるわけにはいかず、姿を現さないままライダーはいつでも戦えるように意識を切り替えていた。
それを感じ取れたのか、刃夜は手にした物を持ったまま、両手を挙げた。
「わかっているとは思うが戦いに来た訳じゃない。どっちかというのならば二人の手助けに来たんだよ」
……?
刃夜が言ったことがライダーには理解できなかった。
ライダーに取っては桜が全てと言っても過言ではないため、他の人間がどうなってもいいと思っていた。
だがそれが一般的に好ましくないことはライダーにもわかっている。
それでもライダーは桜を優先する。
そして目の前の男もそうすると言っているのだ。
自分ほどではないにしろ、
それを理解してるのだろう、刃夜は苦笑しつつ言葉を続ける。
「自分自身が……もしくは自分にとって大切な物が大事というのが生物として当たり前のことだろう? 人間ならばなおのことだ。以前の士郎ならば俺は手を貸すことはおそらくしなかっただろう。だが今は違う。あいつは選択した。己にとって大切な
「……」
「わからないか? 生物として当たり前の感情を優先した人間……というよりも自分の事をしっかりと認識している人が、俺は好きなんだよ。むろんそれが他者を傷つけてまで退けるのが大前提になっている場合は論外だが……あいつはそれをさせまいとしている。まぁ計画性がないうえに、あまりにも綱渡りの状態だが……。それでもあいつは劇的な変化をしないまでも、あいつのままで人間になったんだ。だから……救いたくなったのさ? それじゃ不満か?」
刃夜の言っていることを、ライダーは完璧に理解できたわけではない。
マスターである桜の視界越し程度でしか、ライダーは士郎のことを知らない。
だが……その士郎が有る程度普通ではないことはライダーにもわかっていた。
ついさっきまで命を奪われ掛けていた人間を平気で庇う。
己の手足として、道具として扱うサーヴァントのために命を投げ出す。
ある意味で言えば無謀なだけの青年だ。
しかし……刃夜の言葉は何故かライダーの胸にすっと入ってきたのだ。
そして思い出す……
何故桜のことが大事なのか……
そして……自分と同じ末路をたどって欲しくないという思いを……
確かに……今の二人では……
自分が弱いとは決して思っていないライダーだが、自分の正体はすでに晒されている。
宝具を使用し、そして宝具よりも有名な切り札を使用したのだ。
他のマスターがライダーの正体を知るのも時間の問題だろう。
また全力で戦うことの出来ないライダーには、とてもではないが他のサーヴァントを倒すことは困難だ。
外からの助力は願ってもないことである。
信じていいのでしょうか?
「俺にとっては自分の世界に帰ること、そして藤村組の連中全員と……美綴が最優先だ。これが俺の理由だ。どうだ? なかなかに俺自身も俗物だろう?」
「それを信じろと?」
会話をするためにライダーは現界した。
念話が出来ない相手のためにはそうするしかなかった。
姿を現してでも真意を確かめなければいけない状況だった。
「信じる信じないは言葉だけでは難しいだろう? それに関しては今後の俺の行動で判断してくれ。俺が今言えることは、俺の目的が最優先だが、その上で二人の手助けしたいってことさ」
それは圧倒的だった。
何せあのバーサーカーの剣を真っ向から受けてその力に勝っているのだ。
むろん実力だけでバーサーカーを圧倒しているわけではない。
黒いセイバーの足下が真っ黒だった。
枯れ葉で覆われているはずの地面が見えず、ただただ闇が広がり……そしてそれは今もなお広がり続け、バーサーカーの足下から少しずつ、その巨人を浸食していた。
「あれって……なんで!?」
遠坂凜の声が震えていた。
士郎も同じような感想なのだろう。
愕然としているのが感じられた。
それはまさに絶対の力だった。
確かに足場が悪く、徐々に浸食されていくことによって力をそがれているのは間違いない。
だがそれでも、以前冬木の街で戦ったときとは完全に形勢が逆転している。
一方的にバーサーカーがやられていた。
どういうからくりかはわからないが……士郎がマスターの時とは段違いの強さだな
最悪に近い状況だが、事態はどうあれ現実から目をそらすわけにはいかない。
黒き闇にとらわれたところを助けた時になくした力は、いまこうしてあの黒い陰に使役されているようだった。
その証明とでも言うかのように、あのセイバーには意思のような物が感じられず、ただの純粋な戦闘騎兵のようだった。
しかし最大の違いは、セイバーの力が増していることだ。
バーサーカーを圧倒できることからもそれは簡単に伺うことができる。
そしてこちらを見ている臓硯に、広がっていく足下の黒い闇。
「む、招かれざる客が来たか。のんびりとしている……」
「暇をやると思うのか妖怪じじい!」
妖怪じじいが言葉を言い終える前に俺は行動を起こす。
気力と魔力を注いだナイフを全力で妖怪じじい、間桐臓硯へと投げつける。
それは命中するも、しかし手応えはなかった。
『ふむ、またしても邪魔されたか。まぁよい。聖杯を手に入れることは出来なんだが、無力化には成功した、いつでも奪うことが出来るわい。それまで預けておこう。もっとも、その黒い剣士から逃げられればの話だがの。カカカカカ!』
聖杯、だと?
捨て台詞に疑問を覚えつつも、そんな場合ではなかった。
広がりつつある黒い闇に、このままではイリヤでとらわれてしまう。
あれを浴びて無事に済むとは思えない。
「だめ! 逃げてバーサーカー! そいつにやられたら戻れない! もう戦わなくていいから! お願い早く!」
悲痛な声を、泣きそうな声を上げるイリヤ。
だがそれももう……無理だろう。
足下にからみつく泥を、狩竜で払うことは可能だ。
だが、その隙をあの黒い剣士が許すとは思えない。
とりあえず……イリヤを!
俺はイリヤの元へと走って、その小柄な体を抱きしめて、黒い闇から遠ざける。
「!? ジンヤ!」
「すまないが、とりあえずイリヤを最優先だ。逃げるぞ!」
俺としてもバーサーカーを死なせるのは痛かった。
狂戦士という割には完全にイリヤの支配下にあるために、イリヤを味方につければそのままバーサーカーもついてくる可能性があったためだ。
だがもうそんなことを言っている場合ではなかった。
何せ黒いセイバーは完全に規格外の強さを誇っている。
それに対抗するのは……そう簡単なことではない。
当然俺があの黒いセイバーに勝てるわけもなくバーサーカーを囮にしてその間に逃げるしかない。
……バーサーカーには悪いが、俺はバーサーカーよりもイリヤを優先する
「離して! バーサーカーが……、だめ! そんなの……バーサーカーでも死んじゃう! だからもう逃げて!」
バーサーカーから遠ざけようとする俺から必死に離脱を試みるが、それを成功させるわけにはいかなかった。
だからイリヤは必死になって叫んだ。
それだけバーサーカーが大事なのだろう。
それを感じたのか……黒い巨人は、巨大な咆吼を上げて前進した。
「■■■■■■■■■■!!!!」
「なに!?」
はっきり言って出鱈目だった。
その巨大な岩の固まりのような剣を縦横無尽に……嵐のように振り回して、バーサーカーは、足下の黒い闇を蹴散らせながら突進していく。
己の体にからみついた黒い闇の触手を無理矢理引きはがし、大量の鮮血が舞う。
己の足ごと黒い闇の触手を切り裂いて、黒い巨人は最後の一撃を繰り出した。
間違いなく、その一刀は最強だった。
命を賭して放った、まさに必殺の剣撃。
だが、目の前の黒い戦闘騎士は、最強の一撃を持って迎え撃った。
「やだ! やめて! バーサーカー!!!!」
剣より放たれた、黒い極光。
それは周囲の全てを否定して、その黒き光の剣撃で、巨人を吹き飛ばしていく。
その爆発の余波がこちらにもやってくる。
何とか暴風に耐えるが……耐えているだけではダメだった。
……くる!!!!
「ガハッ!」
無防備に立っていた士郎の体に、強烈な熱量を含んだ暴風がたたきつけられる。
それをもろに受けて、士郎は倒れて、体をしたたかに打った。
そしてその痛みでようやく少しだけ思考がよみがえっていた。
……なんだ、アレ?
目にした者に対する感想はそれだった。
熱風に晒された目によって視界も定かではない。
更に体の中も熱かった。
衛宮士郎の中に眠ったそれが、今の黒き極光に共鳴していたからなのだが……それに気付けるはずもなく、また体の熱すら感じられないほどに、士郎は動揺していた。
その剣はまさに幻想だった。
数ある宝具の中でも頂点に君臨すると言っても過言ではなく、美しいという言葉では、その剣を汚すと言ってもいいほどだった。
ただひたすらに尊い物。
人々の想念、希望で編み出された伝説の剣。
だというのに……
アレは……一体……
先ほどみた同じ形をした剣は、あまりにも醜かった。
姿形はほとんど変わってはいなかった。
だが、その有りようが……あまりにも醜かったのだ。
その死人のような肌の色も、輝くかのように陽光に煌めいていた金紗の髪さえもが……
醜く、黒く汚れてしまっていた。
そうして、士郎が途方に暮れているとき……
!!!!
先ほどの轟音にて麻痺した鼓膜にすら届き、体全体を震わせる金属音が響いていた。
その音が呼び水のようになり、士郎の五感が何とか再起動を行い始める。
「イリヤをつれて逃げろ! こいつは俺が引きつける」
そしてがなり立てるようなその声。
今は
そちらへと目を向けると、双剣、封龍剣【超絶一門】を交差させて漆黒の剣を受け止めている、刃夜の姿があった。
「じ、刃夜?」
「あんた……何言って」
その言葉が凜にも聞こえたのだろう。
正気の沙汰とは思えない。
何せ相手は地の利があるとはいえ、あのバーサーカーに勝った敵。
それを生身で戦うなど……
「いいからいけ! やっこさんの目当てはこの俺みたいだしな」
手にした双剣に力を込めて、敵からの攻撃を受け止めながら刃夜はそう声を絞り出す。
双剣?
刃夜が持っている得物が双剣であり、刀でないことに違和感を覚えて、士郎は敵の狙いが何故刃夜なのかを悟った。
あの刀か!?
刃夜のそばに落ちている、あまりにも長いその巨大な刀に目をやった。
その刀は先日あの黒い泥を吸収した異常な刀。
敵の足下にある泥もそのときのものと同質に感じられた。
己の力を吸い取る異様な刀の使い手を警戒しているのだろう。
実際、敵は他には目もくれずに、刃夜にのみ意識を集中している。
「~~~~ふぅ~~、づあっ!」
一瞬短く呼気をすると、刃夜は総身の力を込めて敵を押し返し、強引に距離を取らせた。
その間隙をついて、言葉を放った。
「俺も足止めしかできん! 残念だがこいつを倒すことはできない! さっさと逃げろ!」
そしてようやく加速する状況に思考が追いついた。
状況はまさに絶体絶命と言って差し支えない状況だった。
敵はバーサーカーすらも倒した黒い戦闘騎士。
そして辺りを包もうとする、黒い泥。
姿は見えないが、間桐臓硯がいることは大いにあり得る。
この状況で楽観視できる訳がない。
だが……
「だけど、それじゃ刃夜が!」
「だぁほ! そんなことに気を取られている場合か!? 俺は己の身くらい守れるわ! お前は守れるのかこの状況で! 桜ちゃんのことはどうなるんだ!?」
「!?」
「アーチャー! その二人とイリヤを頼む!」
「……」
埒が明かないと思ったのだろう。
刃夜はアーチャーへと頼んだ。
この状況を冷静に見ているのはおそらく、アーチャーのみだろう。
刃夜も今はまさに生死の境目にいるために、周りを気に掛けている余裕がなかった。
くそっ!
この状況下で自分が出来ることなどアリはしないことは、士郎も十分にわかっていた。
ただ、今手の中にいる少女を……守るのは自分だと言うことは理解していた。
「バーサーカー……」
その少女は……イリヤは周りの状況など目に映らず、ただ黒き泥に呑み込まれていく巨人の亡骸を見つめていた。
その表情があまりにも悲痛で……士郎はこの少女を守ると固く誓った。
「すまない! 刃夜」
茫然自失のイリヤを抱いて、士郎は森の出口へと向かって走った。
それが口を開けた虎へと向かったことに……まだ誰も気付いていなかった。
あれほどの破壊の光を放ったにもかかわらず、それに疲労の気配一切感じられなかった。
むしろ、一部の力を解放したことによって、ようやく体が温まったとでもいうかのような速度で……こちらへと迫り、漆黒の剣で斬りかかってくる。
俺は何とか地面へと放り投げた得物を拾いあげて、相手へと警戒させつつ、後退してその剣を防いでいた。
……なんて神経を削られる戦闘だ
相手は最強レベルの剣士だというのに、地の利も最悪だった。
あの黒い泥に触れて無事でいられる保証などありはしない。
多少は耐性は有るだろうが……
何度もいうが、この黒い泥は煌黒邪神のミニチュアだ。
あの神話より蓄積された怨念の固まりを浴びた俺ならば……他の連中よりは問題ないだろう。
しかし、あれを浴びたのは俺が
が、不幸中の幸いと言うべきか……相手は俺の狩竜を警戒して余り派手に攻めてくる様子はない。
いつでも抜くことが出来るというのが功を奏しているのだろう。
更に言えば泥も吸収されることを警戒して俺の周りから一定の距離を保っている。
何とかなるか……?
俺がこの黒い戦闘騎士を引きつければ何とか他の連中を逃がすことが出来るか?
それは浅はかな考えだった。
黒い泥が目の前にいたのだ。
本体がいないはずがないなどと……考えた俺がバカだったのだ。
!? この気配は!?
後方より突如出現した、呪いの固まりのような気配。
それが以前に公園にて見たあの黒い陰であることは直ぐにわかった。
その黒い陰が……士郎達の目の前に現れたことも。
だが……今の俺にはどうしようもない。
眼前の戦闘機械のような黒い戦闘騎士を前にして、士郎達に手助けをする余裕など、有るはずもない。
「……」
最初からそれが狙いか!
どうやら意識をこの黒い戦闘騎士に集中させすぎたらしい。
なまじ最強レベルの戦闘能力を有しているから、警戒しすぎてしまった。
どうす―――!?
打つ手がなく、このままでは桜ちゃんとの約束が守れない。
そう危機感を抱いた俺の第六感に、捉えた気配が有った。
それを感じ取った瞬間に俺は動いていた。
『封絶!』
『承知!』
念のため、封絶を宙へととどめて、魔壁を展開。
そして振り向きつつ、狩竜の鞘を投げ捨てる。
その背に迫る、漆黒の刃。
陽光すら反射しない漆黒の剣は、一瞬だけ封絶の魔壁に阻まれるが、それを易々と切り裂いて、俺の背へと迫っていた。
だが……
!!!!
その刃を阻む者が、俺の背後に降り立った。
長い長い髪をなびかせて、それと同じように長い鉄鎖の杭で、敵の剣を受け止めてくれた。
それを背後で感じながら……俺は陽光に照らされた、血のような刀身を持つ狩竜を……
「させるかぁぁぁぁ!!!!」
全力で黒い陰へと投擲していた。
解放していないが、それでもあの黒い陰に反応している狩竜ならば、何かしらの効果は有るはずだ。
それは狙い違わず黒い陰へと迫っていた。
あちらとしても予想外だったのだろう。
泥に沈むように避けようとしていたが、全ては避け切れていなかった。
かすめて狩竜が突き刺さっていた。
だが黒い陰はトカゲのしっぽ切りのように、突き刺さった黒い陰の部分を捨てて消えていった。
半ば液体のような物なのか、一部とは突き刺さった狩竜はそれほど勢いを失わずに、先にある木に深々と突き刺さった。
そして、泥の沼に逃げる際に飛び散った黒い陰の一部が……士郎の左ほほへとかかっていた。
っ!?
それがかかった瞬間、士郎は先日とは比べものにならないほどの灼熱の中へと来ていた。
否、もはや何も感じ取れていなかった。
先日初めて邂逅したときとは量は少ない。
だが、飛沫として飛び散ったのは何も頬だけではなかった。
咄嗟にイリヤを体を使って庇った士郎の全身にいくつもかかり、降り注いでいた。
―――ぁ?
自分という認識すらも吹き飛びそうな状況であり、感覚だった。
憎悪という魔力を浴びたのだ。
むしろ自分という感覚を少しでも残っている士郎の方が異常だった。
自分という自我を保てたのか?
ほとんどが飛びかけているその脳で何とか自分の腕の中にいる存在を抱きしめた。
……よかった
腕の感触が有ることでようやく少し感覚が戻ってきた。
必死になって目を動かして、士郎は辺りを見渡した。
凜を庇っていたアーチャーが弱っているのが見られた。
しかしそれだけだった。
凜に傷ついた様子は見られず、刃夜も相当憔悴しているのが見られたが、五体満足だった。
だが、その視線の先に見た物を見て……疑問に思った。
……あれ? なんでここに?
長い髪をした妖艶なサーヴァント。
桜の守護者であるはずの彼女が何故ここにいるのか?
そう不思議に思いながら……士郎は意識を手放した。
!?
その光景は
夢を見るかのようにして、その景色を見た桜は黒い陰が貫かれ、そしてその飛沫が士郎へとかかり、焼けただれたかのように変質してしまった物を見て、夢から覚めるように現実に引き戻された。
「……ぁ……っぅ」
士郎の体が相当重度の火傷のようになってしまったのを見て、桜は吐き気を催した。
半ば強引に視覚を元に戻した影響もあるだろう。
そのせいで視覚はかなり曖昧な状態で、まともに物を見ることが出来ないほどだった。
だがそれ以上に吐き気があった。
朦朧とした頭とぼやけた視界で必死になって脱衣所へと向かった。
「ぅ……っ……」
呆然としながら先ほどの悪夢のような現実を思い起こす。
視覚を共有していたため実際に自分で見たわけではない。
しかしどんなに否定しても実際に起こりえたことだった。
命に別状はない。
確かに重度の火傷ではあるが、それでも命に別状はない。
しかしそれがどれほどの痛みを伴ったもので有るかなど考えるまでもない。
だというのに……
その痛みを追った士郎を思う気持ちの悪寒とは裏腹に……妙な高揚感が有ったことも、桜はしっかりと理解していた。
これでもう……士郎が
外に出なければ家にいる。
自分が独り占め出来る……と。
だが、それとは別に怪我を負ったという事実は変わらない。
一瞬しか見ていないが、それでも重傷を負ったのだ。
それが
そのおぞましいとも取れる感情が自分よりわき出したことが、恐ろしく、醜くて……
更に
どれぐらいそうしていたのか……。
桜は胃の中の物を全てはき出して、肩で息をしていた。
荒々しく呼吸を繰り返し、苦しげにうめいていた。
だが……桜は気付いていなかった……。
目の前の鏡に映った自分の表情。
その苦しげに歪んだ顔の中に……確かに恍惚とした笑みが浮かんでいることに。
暗い
暗い
暗い
そんな中にいた。
何も見えない。
何も聞こえない。
目も耳も正常だというのに。
周り全てを覆う何かが……その全てを塞いでいた。
全ての悪意をつぎ込んだかのような、そんな中に……
何故か
これは?
突然のことでわからなかった。
あまりにも濃密な憎悪に頭が混乱していた。
だが、何故か……その闇が怖いと思わない自分がいた。
なんでさ?
そう思おう自分がわからずに、士郎は意識を更に深く沈めようとした。
そのときに……
「死ぬ気かお前は!?」
スパーン!!!
と小気味いい音と共に、そんな声が響いていた。
「っ!?」
そうして士郎は意識を取り戻す。
しかし視界は安定せずにぼやけていた。
何故か猛烈な虚脱感に襲われており、士郎は声を上げることも出来ず、ただ視線を巡らせることしかできなかった。
一部が倒壊していたが屋根があり、空を見ることが出来なかった。
更に言えば地面の固さがないことに気付いて、ようやく士郎は自分がベッドに寝かされていることに気がついた。
そのベッドのそばにいるのは刃夜と凜。
そして少し先にイリヤが椅子に腰掛けており心配そうに見つめていた。
アーチャーの姿は見えないが、霊体化して辺りを哨戒している。
良かった……。無事だった……
イリヤが心配そうにしながらも、無事でいてくれたことが嬉しかった。
そう思い、士郎は何とか微笑んだ。
「人の心配をしている場合か」
「良かった……。相変わらず無茶をするんだから」
そんな士郎を見て、治療を行っていた刃夜と凜は溜め息をついた。
気力を送ることで自然回復力を向上させる刃夜と、
呆れながらも、安心したように顔をゆるませているところを見ると、どうやらまずい状況に至っていることはないようだと、士郎は判断した。
「く……黒……」
「まだしゃべるな。もう少し待っていろ」
声を上げようと必死になって口を動かしたが、それでもまともに士郎の口は動かなかった。
また士郎自身気付いていなかったが、頬が焼けただれたようになってしまったのだ。
まともに話すことは出来ないのは当然だった。
その士郎を問答無用で黙らせて、刃夜は治療を続けた。
……かなりの重度の火傷……のような状態になってしまったな
それが間近で士郎の傷を見た俺の感想だった。
何とか治療を終えたがかなりの重傷といって良かった。
しかもその重度の火傷のような物を起こしたのがあの黒い陰の飛沫だ。
いい影響が有るとは思えない。
更に言えば士郎を守りきることが出来なかった。
言い訳は出来る。
だがそれは所詮いいわけであり、結果として士郎は深い傷を負ってしまった。
あれだけ大口叩いておいて結果がこれか……我ながらなんとまぁ
とりあえず治療を終えたが……気分はそう明るい物ではなかった。
士郎を無事に桜ちゃんの元へとかえしてあげないこともそうだが……目下最大の問題はあの黒い戦闘騎士だった。
黒い陰と何かしら関係があるのは間違いなさそうだった。
あの黒い陰が引いたと同時にいなくなるには不自然だからだ。
ほぼ完全にセイバーそのものだったな
完全にといっているが、それはあくまでも体躯と戦闘方法だ。
他は完全に別物だった。
前はあそこまで出力が強大ではなかった。
あの黒い陰から魔力を常時もらっているのか……ともかく
かといってアレが生来のセイバーだとは思えない。
他にも何か要因が有るのだろうが……
黒いセイバー……ね……
冷静に黒い戦闘騎士のセイバーのことを考察していたが、それはほとんど意味がなかった
というよりも俺の意識は別に行っていたのだ。
意思を感じられない戦闘機械のような戦闘は、
あの黒い陰はサーヴァントを喰らっていると見せかけて、中に蓄えて自分の手駒にしたのだ。
ならば……理性も戦闘能力も、全てを喰らった存在がどうなっているかなど……
考えるまでもない……よ、な……
……ふぅ
そこで俺は考えるのを一旦停止した。
士郎に対する状況確認と今後の方針に関しては遠坂凜に丸投げする。
士郎の気力治療によって疲れていたのも事実だった。
一度撤退した以上、黒い陰も臓硯もいないだろうが、人に触れさせてもまずい物なので、全ての得物を持って俺は廃屋の外へと出た。
そして周囲の気配を探ってみると、二つの気配が有ったので、まず俺は一番話をしたい人物へと話しかけた。
「ライダー。いるんだろう?」
「なんでしょうか?」
俺の呼びかけに素直に出てきてくれる。
魔力消費が有る以上、余り時間を掛けるわけにはいかないだろう。
とりあえず端的にまず言うべきことを言った。
「すまない。先ほどは助かった」
狩竜を壁へと立てかけて、俺は素直に頭を下げた。
先ほどの黒い戦闘騎士との戦いで気を取られていた俺は、危うく士郎達を死なせるところだった。
まぁアーチャーがいた以上、本当に最悪な事態にはならなかっただろうが、それでも今の状況よりも悪化していただろう。
……俺がもっと狩竜を扱えれば
正しくは狩竜に宿した煌黒邪神の力をだが……。
しかし邪神とはいえそういった神の力を、今の俺が扱えるわけもない。
使えるには使えるが、状況は限られるだろう。
ともかく手持ちの選択肢だけは違えないように気をつけるべきだ。
「……構いません。それが最善だと思ったからそうしたまでです」
相も変わらず感情の読み取れない声と仕草だが、嘘を言っていることはなさそうだった。
とりあえず、もっとも言わなきゃいけないことを伝えたので、次に聞くべき事を訪ねる。
「では次だ。何故ここにいるんだ?」
先ほどの礼とは別の意味で、もっとも聞かなければいけないことだった。
あれほど弱っている、そして力を使うわけにも行かない桜ちゃんのそばから離れて何故ここにいるのか?
しかしそれも答えはないようであるものだった。
士郎が心配というのと……信用されてないって事だな
おおむねこの二つに集約されるだろう。
そらそうだ。
正直言って俺は簡単に士郎を殺すことができるのだ。
いくら今朝方の話と、担保として紅玉をおいてきたとはいえそれだけ信じられたら人間苦労はしない。
頑張るかぁ……
自分自身わかっていないことが多い以上、他の人間の支援は不可欠だ。
最初に知り得たとおり、ただ単純に最後の一人まで戦い抜いて勝てばいいという状況だったならば話は簡単だったが、それももう過去の話だ。
ならばどう考えても普通に思えない人間の自分が、他の人間に信頼されるように頑張るしかなかった。
そう考えていたのが表に出ていたのか、俺の問いかけにライダーは特に反応をかえすことはなく霊体へと戻っていた。
おそらく士郎の護衛についたのだろう。
「……ふぅ」
短く吐息をする。
それには大した意味はなかった。
だがそれでも隠しきれない様々な感情が込められた物だった。
このとき、俺はそれには気付かずに……いや、気付かないようにして、ただこの木々の中に、立っていた。
「そうか、とりあえず無事だったんだな……」
「無事って……あんた自分の体のことわかってないでしょ?」
刃夜が投擲した狩竜によって貫かれた余波で、黒い陰はまるで水風船が割れるかのようにして、黒い飛沫を辺りへとまき散らした。
いくつか飛沫を体に浴びた士郎は、重傷といっていい負傷だった。
だがそれでも、他の人間が全員無事であるということが、士郎にとっては一番重要なことであった。
それが嘘偽りなく、心の底から思っていることを感じ取って、凜は内心で溜息をついてしまう。
本当に……こいつ……
士郎に呆れる気持ちと、悔しいと思ってしまう自分にも凜は溜め息をついてしまう。
慎二に言った言葉。
自分にすらも向けていたその言葉を、凜はただ噛みしめるしかなかった。
まぁ、そうは言っても、こいつになりたいとは思わないけどね……
今も己の体よりも人を心配するその行動。
自分の体のことをきちんと認識していないからかも知れないが、それでもここまで人を心配するという行動は少しおかしかった。
ただそれを言ったところでどうしようもないと思い、凜は溜め息をついて話を進めた。
「とりあえず……としか言えないところが悔しいけど、今すぐ襲われるって事はなくなったわ」
目を背けていたことを、凜は口にする。
そのとたんに場の空気は少し重くなった。
何せ最強のサーヴァントだったバーサーカーを、地の利があったとはいえほとんど奇策無しで一騎打ちにて打倒した存在である、黒い戦闘騎士が存在するのだ。
黒い戦闘騎士は間違いなく最強だ。
自分たちにもサーヴァントがいるとはいえ、戦闘力という意味ではかなりの劣勢であるはずだ。
しかも臓硯がいるというおまけ付きだ。
それでも……
相手にセイバーがいることが士郎には辛かった。
むろんセイバーの体躯をしているだけの戦闘騎士でしかないが、それでもその姿形はうり二つだったのだ。
あの姿におとしめてしまった自分を思うと、はらわたが煮えくり返る思いだった。
だがそれでも士郎は止まらなかった。
止まれなかった。
桜を守ると……誓ったのだから。
それでも……
……イリヤ
今、サーヴァントという言葉だけでは片付けられない存在だった、バーサーカーを失ったイリヤの横顔を、士郎は盗み見見た。
目を伏せて、複雑な表情を浮かべているのをみて、放っておくことは士郎には出来なかった。
昨夜、自分を助けてくれたこの少女を放っておくことなど、士郎にはできなかった。
少し話題を変えよう
皆進んで口を開こうとしなかった。
故に士郎は自ら話題を振ることにした。
そのとき……頬が痛んだが、そんなことに構っていられなかった。
「……イリヤはこれからどうする? 行くところは有るのか?」
「? セラもリーゼも呼べば出てくるし、城に戻ればいいけど……どうしてそんなこと聞くの? シロウ」
「いや、危ないと思ってさ。良ければ俺の家に来ないか? その方が便利だと思うし」
士郎が話題転換に振ったのはこれからのことだった。
確かに相手は脅威だがそれでも止まるわけにはいかないのだ。
かといってこの少女を放って置くことも出来ないため、士郎はそう提案した。
しかし……
「……いいけど、いかない。シロウの家にはあの女がいるもの」
イリヤの回答はこれだった。
……いいけど、行かない?
言っている意味がよくわからなかった。
どう返答していいかわからず、士郎は視線を凜へと向けて聞いてみたが……。
あ、こっちに振るなって言ってる……
凜が渋面を作っているの見て士郎はそう判断した。
いいけど、行かない。
いいという理由と行かないという理由。
それを聞くか聞くまいか悩んでいると……
「ならどうする? 俺の家にでも来るか? 物置のように狭いがな」
ちょうどいいタイミングで、まるで見計らっていたかのように刃夜が廃屋へと入ってきた。
否、実際に狙っていたのだろう。
あまりにも絶妙なタイミングだった。
「お断りするわ。私は自分の居場所は自分で決められるし、他のマスターに世話になるつもりもないもの。私の工房はお城だもの。バーサーカーがいなくたって、私は一人でやってくんだから」
「あら?」
そのとき、凜が邪悪な笑みを浮かべた。
悪戯を思いついた実に、邪な笑みといえた。
何か企み事を考えたと士郎が警戒し、止めようとするが……間に合わなかった。
「聞いた衛宮君? ひどいわね、一度は殺そうとした衛宮君に助けてもらいながら、恩知らずなことに自分のお城に帰っちゃうんですって? 狭い家はいやなんだ~?」
……優しいけどひどいヤツだな
今の一言に対する刃夜の感想だった。
士郎はそこまで深読みできていないのか、驚きに目を見開いていた。
そして驚き、慌てているのは、当然言われたイリヤも一緒だった。
「な、何をいうのよリン! 私そんなこといってな……」
「言ってるでしょう? 衛宮君がわざわざ誘ってくれているのに、自分の城に戻るっていうのはそう言う事よ。それとも頼りないからかしら?」
頼りにならないって何さ? ……そうかもだけど
凜に頼りにならないと言われて、一瞬むっとする士郎だったが、その評価が間違ってないことは自分でもよくわかっていた。
実際に今の士郎は頼りないといえる。
何せ強化程度の魔術しか使えず、サーヴァントのセイバーも今ではほとんど力を発揮できないのは、先ほどの黒い戦闘騎士を見ればわかりきっている。
体躯がイリヤよりも大きいが、イリヤには士郎とは比べものにならないほどの
「それは、そうだけど……でもわたしが城に戻るのは、シロウと一緒にいちゃいけないからで……」
? 一緒にいちゃいけない?
その言葉は、マスターとしてとは別の意味で有ることは、この場にいる全員がわかった。
だが、それを聞くのははばかられた。
何せ今のイリヤの表情は、バーサーカーがいなくなってしまったと再確認したときと、同じくらいに、とまどっていたからだ。
……放置するわけにもいかんか
内心で溜め息をついて、刃夜は仕方なく助け船を出した。
このまま凜に任すことも考えないでもなかったが、ニヤニヤと表情をゆがめているところを見ると、ろくな事になりそうにないと、判断したからだった。
「イリヤにもいろいろと事情はあるのだろう。だがそれでも今のこの状況下では集団でいた方が対策もしやすい。それにあの妖怪じじいがいるとなると一人では対処しきれない可能性もあるぞ? 何をいやがっているのかはわからないが、どうしてもまずいということでなければ一緒に来てくれないか? 頼む」
臓硯が言っていた、聖杯を手に入れられなかったという言葉。
それがどうしても刃夜の頭の中に引っかかっていた。
聖杯がどのような形で現れるのか刃夜は把握していなかったので、それらの詳細な話も知っておきたいという理由もあった。
「……ジンヤがそういうなら」
まだ完全には納得しきっていない、というよりも自分としても迷っているのだろう。
だがそれでも刃夜の言うこともわかっているために、イリヤは仕方なくおれた。
そうしてこの場で更に話を詰めて、この場にいる全員が黒い戦闘騎士と間桐臓硯を妥当するために、共同戦線を張ることになった。
「時間もないし、敵にあんな化け物が回ったとなると、回りくどいことをしている場合じゃないわね。事は深刻みたいだし、別々だと各個撃破されるおそれがあるわ。だから……本当にしゃくだけど、昨日のことは水に流してあげる」
今後の方針を決めた時の凜からの言葉だった。
これに異を唱えるほど、みんな状況に余裕がないことはわかっていたので誰も文句を言う物はいなかった。
そして約1名、文句を言うどころか大喜びをした人間もいた。
「ありがとう遠坂! 恩に着る! お前がいてくれるっていうのならこれ以上の救いはない!」
そのときの士郎の喜びようはまさに子供だった。
実際本当に嬉しいのだろう。
何よりも女性がもう一人いるというのは、士郎にとって大助かりだった。
男の自分ではわからない事も、凜ならばわかってくれるので、桜を助けてくれると思ったからだ。
「すまんねぇ~、頼りにならなくて」
「わたしもいくんだけど、シロウ?」
そのはしゃぎっぷりを片方はニヤニヤと笑いながら、もう片方はふてくされながらそう士郎にかえしていた。
むろん刃夜はわかっていっているのだが……それでも士郎はあわててしまうのだった。
その士郎のはしゃぎ方とあわて方を見て、みんな少しだけ表情が明るくなったのだった。
そうして打倒黒い戦闘騎士&間桐臓硯のために結成された一行は、とりあえず士郎の家へと行くことになった。
というよりも正直な話、それしかなかった。
……宅地面積的な意味で。
「俺の店はせいぜい俺ともう二人くらいしか入れないしなぁ……」
「私の家は多少は人数が入れるけど……余り人に工房を見せたくはないわね」
イリヤの城は利便性的な意味で無理……街まで遠い……があった。
また今は遠坂邸で一人でいるセイバーも行くこととなった。
桜と二人きりにならないように注意する必要性があるが、遠坂邸に一人で置いておくわけにも行かないからだ。
凜がアーチャーとイリヤをつれて先に戻り、ライダーは桜の護衛のために直ぐに戻ることになった。
「イリヤにはまず私の家に来てもらうわ。出来れば見つけたくないって言うのが本音だけど、そうも言ってられない状況だから、こっちも切り札を用意するわ。大師父の置きみやげが想像通りの物だとすると、今の私じゃどうにも出来ない」
「リンが手を貸して欲しいって言うから助けてあげるね。だからシロウは先に行ってて」
未だ見た目通りのことしか想像できない士郎には、イリヤが凜を助ける姿というのが想像できなかったが、自分では力になれないことは重々承知しているので、素直にうなずいた。
残されたのは士郎とで刃夜あり、二人は行きと同じように連れ立って帰った。
「すまない刃夜」
「いや、別にいいんだが……」
まだ完全に復帰したわけではない士郎に肩を貸しながらのために、だいぶ時間がかかってしまいそうだったので、刃夜は器用にも士郎を負ぶさり、イリヤを抱きかかえて士郎の家へと向かった。
「大丈夫か?」
「……大丈夫だ。だけど少しだけ待ってくれ」
衛宮邸の少し手前にて、俺と士郎はこうして立ち止まって、士郎の容態の回復に努めていた。
というのも、どうやら桜ちゃんに余り心配を掛けたくないみたいだ。
故に何とか元通りに動けるぐらいになってから戻りたいらしい。
といっても、顔の焼けただれのような痕がある上に、ライダーから聞いていると思うがなぁ……
ライダーが先行して衛宮邸に戻ったのだから、桜ちゃんが聞いていないとは思えない。
しかしそれでも元通りの状態になるように努力したいというのが士郎の思いなのだろう。
つまり、無自覚なように見えてきちんと自覚……というよりも認識できていると言うことなのだろう。
このあまりにも危うい、日常を……
「待たせたな刃夜。帰ろう」
「……あぁ」
何とか呼吸を整えて、ある程度は回復したようだったので、俺と士郎は普通に歩き出した。
並んで歩いても特に問題はなさそうだったので、俺も少しはほっとした。
それ以上に桜ちゃんを心配させたくないという理由もあるのだろうが……それでもどうしても思ってしまうのは仕方がないだろう。
何せ、今の状況はあまりにも危ういからだ。
敵はどれだけの戦力を備えている?
それが俺の一番心配なところだった。
黒い戦闘騎士が出てきたとなると、あの黒い泥に吸収されてしまったサーヴァントは敵になる可能性が極めて高い。
バーサーカーも遺体となって吸収されていたが、それでも黒いセイバーという特殊な個体がいる以上、悪い方へと考えられてしまう。
最近ランサーを見かけないのは、もしかしたら潜伏してるのではなく、すでに黒い泥に吸収されてしまったからかも知れない。
最悪残っているのはアーチャーとライダーのみってことか……
キャスターもいるが、魔力切れがほとんどでどうしようもない。
最悪、町中の人間から魔力を吸収するという手段も考慮しなければいけなくなるかも知れない。
それで命が助かるなら安いもんだろう……
事はそれぐらいに深刻だった。
何せ戦力の大半を敵は所有しているのだ。
とてもではないが、正攻法だけで戦って勝てる戦力比ではなくなった。
奇策も弄しなければまずいだろう。
奇策っていうか、作戦とか考えるのそこまで得意じゃないんだがなぁ……
しかも自分の常識とは違う、非常識な魔術がらみの作戦だ。
果たしてどうやって俺はこの状況でどうやればうまく立ち回れるだろうか。
本当に、前途多難だな
そうは思うが、心の高揚は隠しきれていないという自覚が俺にはあった。
いや、実際にはほとんど外には漏れていなかっただろう。
少なくとも士郎は気付いていないようだった。
心躍る戦闘は確かに今までもあった。
だがそれでも……不殺の戒めやこのきな臭い聖杯戦争を無事に終わらせるために、相手を殺す事はしないようにしてきた。
故に、俺が本当の意味で本気を出したことは今のところなかった。
いや……言い訳はやめよう……
本気を出していないのは本当だった。
だがその動機は、不殺の戒めがもっとも絡んでいた。
しかしそれを気にしなくてもいいかもしれない。
思わず不敵に笑いそうになってしまう自分の表情を制御した。
だがそれでも高揚だけは抑えきれなかった。
何せ、心からやりたいと思える事が、出来たのだから。
「ただいまー」
門をくぐり玄関の引き戸を開ける士郎。
するとそこには待っていたのか、桜の姿があった。
「ぁ……お帰りなさい。先輩」
見た目にもかなり変わってしまっている士郎の姿を見ても、桜はほとんど驚いていなかった。
それはそうだ。
何せライダーの視覚を共有して怪我をしている現場を、ほとんど生に近い感覚で見ていたのだから。
だがそれを知らない士郎は……
「待っててくれた……ってどうしたんだ元気ないぞ? 出迎えは嬉しいけど、そんな顔じゃ喜べないぞ?」
「……」
それでも今まで通りでいたいと思うからか、士郎は普段通りの様子で話を進める。
靴を脱いで廊下へとあがった。
その様子を桜ちゃんはただじっと見つめていた。
今は少し休みたい……
話をしなければいけないと思いつつも、それでも士郎はまだ体が本調子とは言えないものだから、休息を優先しようとした。
だがしかし、直ぐに刃夜の他にも同居人が再び増えることを思い出した。
さすがにそれを話さないわけにはいかない……というよりもそれを言わずに鉢合わせたときの被害を想像できたのだろう。
士郎は桜へと向き直って口を開く。
「と、そうだ桜。これからのことで相談……というか報告なんだけど」
「……何も言ってくれないんですか」
ぼそりと、桜はそんな言葉を口にした。
視線の先は当然のように……頬へと向けられている。
その表情は、とても沈んでいた。
それはそうだろう。
何せ大けがをしたにも関わらず、士郎はそれを言おうとしないのだから。
「何もって、なにをさ?」
その気持ちに気付いていないのか、士郎はそれでも普段通りに振る舞おうとする。
二人は玄関でじっと、しばらくの間見つめ合った。
「あぁこれか? ちょっと怪我をした。でも大丈夫だ。問題なく動くし何ともない」
さすがの士郎も何を言われているのか理解はしているらしい。
言われている真意に気付かないところがダメかも知れないが。
おっかなびっくり頬に少しだけ触れて、無事と言うことを証明していた。
「いや、桜? 本当に大丈夫だぞ。ただのかすり傷でしかないんだからさ。直ぐに治るし、桜が気にするような事じゃな――」
「そんな訳ないじゃないですか! こんなに焼けただれてしまっているのに、どうしてそんなこと言うんですか!? 私には話しても無駄だって言うんですか!?」
とても珍しく桜が本当に怒っていた。
ここまで明らかに大けがをしているにもかかわらず、それを説明すらもしようとしないのだから。
その桜の怒りで、ようやく士郎は自分の馬鹿さ加減に気付いていた。
一人でこの屋敷で士郎の帰りを待ち続けていた桜の気持ちを、全く考えていなかったことに。
「……ごめん」
「ぁ……先輩を責めてる訳じゃないんです。だけど、あまりにも無茶をする先輩が心配で……。先輩自身が自分のことを大切にしないと……その……」
「あぁ……そうだな、反省した」
桜が本気で怒るという、非常に珍しいことを目にして、ようやく士郎も反省した。
士郎自身もまだ変わっている最中なのだ。
一人の青年として……。
「反省した……ですか?」
「あぁ、桜にかっこわるいところを見せたくなくて強がったけど、良くなかった。桜が怒るのも当然だ」
「かっこわるいなんて……そんなことはないです!」
先ほどとは打って変わって士郎を養護する桜だったが、それでも士郎のその思いに代わりはなかった。
桜を相手に見栄を張ってしまったことは事実だったからだ。
「ごめんな、桜。俺、なんの役にも立てなかった」
先ほどの戦闘。
あのとき士郎に出来たことはイリヤをただ守ることだけだった。
むろんそれも相当意味があるのだが、しかし仇敵が目の前にいたにもかかわらず、己が何一つ臓硯に対して出来なかったことが悔しかったのだ。
「そ、そんなことないです! 先輩は立派でした!」
「いや、それがそうでもないんだ。ただイリヤを庇っただけでそれ以外はただ逃げてることしかできなくて……」
「それでも生きて帰ってきてくれました。約束をちゃんと守ってくれて嬉しいです。かっこいい先輩に私、惚れ直しちゃいました」
!?
先ほどの態度から一変して、満面の笑みでそう士郎へとんでもないことを口にした。
当然、互いに好き合っており、その好きな女性からそんなことを言われたら士郎は顔を真っ赤にするしかなかった。
そしてこの場合どうかえせばいいのかわからず……。
「こ……こういう場合ってどう返答すればいいんだ?」
「今まで空気扱いしてたくせに聞くか普通? 自分で考えろ、たわけ」
後方に控えていた刃夜へと質問していた。
しかしすげなく刃夜はそうかえす。
さらに……
「さぁ? 私の意見としては玄関先でいちゃいちゃされると迷惑だからしないで欲しいんだけど?」
いつのまにやら来ていたのか、凜もその場にいてその問答を目にしていた。
「「え?」」
士郎はまさか凜までいると思っているとは思っていなかったのだろう。
桜は純粋に凜がいることに驚き二人して声を上げて、同時に下がり……。
「と、遠坂!? もう来たのか!?」
「なんで、遠坂先輩が!?」
同じようなリアクションをして同じような言葉を発していた。
その様子にそろって二人は呆れてしまっていた。
「もう来たのか? じゃないわよ。桜に話をしているようには見えないし……それなのに二人で仲良く痴話げんかして……。今どういう状況かわかっているわよね?」
「怪我をさせてしまった負い目が有るために俺は余り強くは言えないが……まぁいちゃつくのは二人きりの時にやってくれ」
凜はそれなりに重そうなボストンバックを床へと置きながら、刃夜は大げさに肩をすくめながら半ば本気で辟易しているようだった。
更にその後ろには、どこか緊張した様子の見れるイリヤと、気まずそうに表情をゆがめているセイバーがいた。
しかし桜も直ぐに再起動を果たし、顔を緊張で引き締めて凜を睨んだ。
「と、遠坂先輩。昨夜の続きをしに来たのなら私は構いません。先輩が私のそばにいてくれるなら、私は全力で遠坂先輩と戦います」
昨夜と違い刃夜がいるから……ではなく、一個の存在として桜は凜に対してそう言った。
それだけの覚悟が有るのは事実なのだろうが……それでもまだ緊張した様子だった。
本人としても必死なのだろう。
しかしそれは当然無意味なことである。
というよりも本当に昨夜の続きとして、桜を殺しに来たのならボストンバッグなどもってこない。
「やっぱり、その話もしてないのね。いい桜、とりあえずあなたの処理は保留よ。最優先時効は間桐臓硯を倒すことだわ。だからあなたが決着をつけるって言うのならその後になるわ。ま、臓硯さえ倒せば戦う理由もなくなるからそんな必要ないでしょうけど」
「……え?」
言っていることは理解できているのだろうが、それでも驚きで頭が追いついていないのだろう。
きょとんと、桜は間の抜けた顔をする。
「衛宮君とここにいる鉄刃夜と協力して臓硯を退治するわ。そうなると同じところにいた方が何かと都合がいいでしょ? あなたとしても戦力が増えるのはいい事じゃないの?」
昨夜とは比べものにならないほどの戦力比だった。
魔術師として優秀であり格闘術もそれなりにこなす凜、接近戦もすることが可能なオールラウンダーのアーチャー。
そしてサーヴァントと普通に戦うことの出来る人外の刃夜。
ライダーとへっぽこ魔術使いの士郎しかいなかった戦力が一変していた。
それだけならば喜べたが……
「けどそれだけじゃ不安だから衛宮君を鍛えるわ。こいつにもやってもらわないと困るしね。だからしばらく衛宮君を借りるわ。問題ないわよね二人とも?」
これには二人とも反論するしかなかった。
「ちょっとまて遠さ――」
「だ、ダメです!!!! そんなのダメです! ね……遠坂先輩になんでそんな権利が有るんですか!?」
普段の物静かな雰囲気からは考えられないほどの声量で、桜はそう声を上げた。
そのためそれよりも小さな声で話していた士郎の声はかき消されてしまった。
「あら? 権利さえ有ればいいの? ならそうね、命を何度も助けてあげてるってでどうかしら?」
士郎すらも知らないことだが、ランサーに殺された時の蘇生。
聖杯戦争が始まって直ぐに学園にて殺人未遂。
確かに一度蘇生したことを考えればその程度の権利があっても不思議ではないだろう。
例えそれが、士郎の命を助けたのに別の理由があったとしても……
まぁそれは誰にも明かすことなく、凜の胸の中にしまわれる事になるのだが。
「その借りを返すまではこき使わせてもらうわよ?」
他にも士郎としては魔術を師事したり、戦闘などでも大いに助けてもらっている手前、余り反論することが出来なかった。
そして驚きつつも、特に反論しようとしない士郎を見て……
「ほ、本当なんですか?」
桜が不安げな目で士郎を見るのは仕方のないことだろう。
「あぁ、何度も助けてもらってるし、余り大きく反論できない。それに、味方は多い方がいい。後で話すけど、敵はすごく強大な力を手にしてしまっているんだ。サーヴァント相手でも勝てるかどうか……。そんな状況だから刃夜以外にも協力が必要になったんだ」
確かにそれが大きな理由だったが、しかし士郎としては桜と凜が一緒にいた方がいいと思っていた。
十年前に別れてしまった……別れさせられてしまった
それは彼にとってもう叶わぬ願いなのだから。
それが叶うのならば、士郎としてはそれを叶えてあげたかった。
しかしそれを桜が望んでいるのかは……桜にしかわからないことだった。
「……わかりました。先輩がそういうなら……」
「OK。それじゃあ決まりね。前と同じ部屋をつかわせてもらうわ。まだ一日しか立ってないからそんなに手を加えてないでしょ? イリヤはどうする?」
「どこでもいいわ。でもその女の近くはいやよ」
「あ~俺は夜いくところあるから気にしなくていい。荷物だけは置かせてもらうが」
一応桜の了承を得たことでこれからこの家でどうするかが有る程度決められた。
凜とセイバーは同じ部屋で寝泊まりをすることになった。
セイバーはほとんど力を失いつつも、多少なりとも魔力を備えているため、桜が暴走した時に襲う可能性があるからだ。
「……セイバー」
「……シロウ。残念ですが、あなたと話す事は有りません」
桜を救いに行った昨日の昼から一度もあってなかった、自分自身のサーヴァント。
しかし昨日まであった信頼はそのほとんどがなくなってしまっていた。
自己を捨ててまで他者を救おうとした士郎の信念。
それにひかれ、過去の自分に重ねたからこそセイバーは士郎の剣となると誓っていた。
だが士郎は昨夜、己の願いのために他者を危険にさらすという選択を行ってしまった。
故に、セイバーはほとんど無表情のまま士郎へと挨拶を告げた。
だがその瞳にはどこか、迷いのようなものがあった。
それに気落ちしつつも、士郎はイリヤを桜に紹介する。
「桜、この子がイリヤ。バーサーカーはやられちゃったけどイリヤは助けられた。これからうちで暮らすことになるから仲良くしてな」
「……よろしく。マキリの娘らしいけど軽蔑はしないわ。シロウとジンヤの知り合いみたいだし、特別に人間として接するわ」
「……なら私も同じようにします」
……?
あまりにも非友好的な態度で交わされた挨拶に士郎は疑問を抱いた。
だがそれを訪ねるのは当然はばかられ、そのままイリヤは凜の後についていった。
その背中を、桜がどこか冷たい目で見つめていた。
「疲れてるだろ? 台所の食材使って適当に料理作るから休んでろ。あぁ、俺は作ったら適当に食べて出かけるから。後は頼んだぞ家主さん」
刃夜はそれだけを告げて、勝手知ったる他人の家という言葉がぴったりな感じで、堂々と台所へと向かい、適当に料理をつくってそのまま夜の闇に消えていった。
そして各々が一段落した後に、居間にて一同が介した食事が行われたのだが。
……き、気まずい
少し前までのメンバーにイリヤが加わっただけだというのに、とても静かな夕食が終わった。
特に士郎とセイバー、桜とイリヤ。
この間での緊張感がとてつもなくあり、とても余分な動きも出来ず、軽口の一つもたたけないという食事だった。
「それじゃ私はもう寝るわ。明日の朝に今後のことは説明するから早く休みなさい。というか、あの男はどこに行ったのよ? あいつにも仕事してもらわないといけないのに」
「わたしも寝るわ。森にいた人は疲れているんだから早く寝た方がいいわ」
唯一の不在者で有る刃夜に文句を言いながら凜は別室へと引き上げていた。
イリヤの言い分は桜のことを揶揄している。
何故ここまで二人の中が悪いのか士郎にはわからなかった。
だが関係を悪化させるわけにはいかないのでフォローに徹する。
「桜と初対面のはずなのになんであんなに突っかかるんだ? アインツベルンとマキリの間柄でか?」
遠坂とアインツベルン、そしてマキリ。
この地にて聖杯戦争を始めた御三家の後継者達が一同に集うこの家は、ある意味で異質な空間だろう。
しかし士郎にとってはそんなことはどうでもいいことだった。
「ごめんな桜。イリヤは本当はすごいいいやつなんだ。だから直ぐに仲良くなれると思う。だから嫌わないでやって……って桜?」
話しかけてもいっこうに返事をしない桜へと目を向ける。
すると、うつらうつらと頭を揺らした桜の姿があり、そのまま後方へと倒れそうになった。
「!? 桜!?」
咄嗟に肩を抱いて士郎は桜を抱きしめる。
するとそれでようやく桜から反応があった。
「アレ? どうしたんですか先輩? 怖い顔をしてますけど……」
己が倒れかけた事に桜は気付いていなかった。
それに内心で驚きつつも、自分が倒れかけた事に気付かれまいとしようとする士郎だったが……
「ぁ……ごめんなさい。少し疲れちゃったから眠っちゃったみたいです」
「そんなこと気にするな。桜もずっと待っててくれたから疲れただろう? 遠坂もああいっていたし今日はもう寝よう」
「そ、そうですね! お言葉に甘えてもう寝ちゃいます。今晩ぐっすり寝れば明日にはきっと元気になってます!」
空元気に見えるその笑顔だったが、嘘には見えなかったので士郎はあえてそのまま見送った。
足取りもしっかりしていたこともあったが、それ以上に桜が普段通りに振る舞おうとしているのだから、こちらもそれを信じることにしたのだ。
「あの……でもさっきのことは遠坂先輩には黙っていてください」
だがそれでも本人は不安なのだろう。
自分がいままで通りでないこと、そして昨夜自分が殺されそうになったこと。
だが今の関係をどうにかして改善したいと、士郎は思ったのだ。
……先輩……か
確かに養子に出されてしまった以上、姉と呼ぶことはもう出来ないのかも知れない。
だがそれでも二人は血のつながった姉妹なのだ。
お互いがぎくしゃくしているのをどうにかする方法はないか?
そう考えながら士郎も同じように席を立ち、自室へと向かったのだが……
……寝付けない
自室にて布団へ入った士郎だったが、寝ることが出来ず寝返りを打ってばかりだった。
ここのところ連続で急激な状況の変化は、士郎の処理能力を遙かに超えていた。
敵になったり味方になったりと実にめまぐるしく状況は変化しているのだ。
何より決定的なのは桜との関係。
昨日は考える余力がなかったために直ぐに眠りについたが、本日は多少なりとも余力があったので、つい考え事をしてしまう。
だが考えて事態が好転するわけもない。
……散歩でもするか
散歩といってもさすがに夜の街に出かけるほど、士郎もバカではなかった。
家の庭にでて外の空気を吸うことにしたのだ。
他の人間を起こさないように気をつけながら士郎は外へと出た。
寒い……な……
冬の夜の気候は士郎の体を存分に冷やす。
そして何よりも、その雰囲気がもの悲しかった。
まるで死んだかのように静かに眠りについた町。
それが直接知らないとはいえ、あの黒い陰に怯えた人々の恐怖であることは、士郎にも何となくわかった。
くそ……何とかしないと……
黒い陰の打倒と間桐臓硯の排除。
そして聖杯を勝ち取っての桜の救出。
はっきり言って無理難題に近いものだ。
だがそれでも士郎はどうにかそれを成し遂げなければいけない。
傷ついた……その体で。
「っ……」
夜気によって冷やされたことで、体の傷が熱を持ち士郎の痛覚を刺激する。
それによって再度自分が怪我を負ったことを再確認した。
……何も出来なかった
森に黒い陰に遭遇した時、士郎は無力だった。
当然士郎だけではなく凜もイリヤも無力だったが、自分が何も出来なかったことを嘆いている士郎にそんな事実は関係なかった。
ザッ……
!?
そんな士郎の背後に突然足音がした。
しかしわざわざ足音を立てたことで、後ろにいる人物が誰なのかは士郎にも直ぐにわかった。
「ライダー」
黒い装束に長い長い髪のサーヴァントは相も変わらず無口だった。
そして無言のままに見下ろしてくることで、そのときようやく気付いたことが士郎にはあった。
そう言えば背が高いよな……ライダーって
男として決して身長が高い方ではない士郎が見上げる身長だった。
今までライダーを目にしたのはいずれも緊急時や、戦闘時であるためにそんなことに気をさく余裕がなかったために、今更ながらに気付いたことだった。
俺もどうかしてるな……
そんなくだらない事実に気付いて士郎は思わず笑ってしまった。
突然笑い出したことがかんに障ったのだろう。
ライダーの無表情に少しだけ不機嫌な感情が漏れ出ていた。
「……何がおかしいのですか士郎? こちらはまだ何もしていないのですが?」
「あ、あぁすまないライダー。俺より背が高いって事に今更気付いてさ。そんな間抜けな自分に笑ったんだ」
「……そうですか。先ほど傷を気にしているように見受けられたのですが、心配はいらないみたいですね」
……怒ってる?
その声は明らかに怒っていることがわかるものであったために、士郎もライダーが怒っていることがわかった。
しかし今の問答で何故怒るのかわからない士郎は首をひねるしかなかった。
ちなみに怒った理由は彼女の体型の理想にある。
自分の理想とは正反対のボンキュボンで背が高くスレンダーなことに、ライダーはコンプレックスを抱いているのだが……当然士郎はそれを知るはずもなかった。
「っと、そうだライダー。刃夜と一緒に助けてくれてありがとうな」
「構いません。あなたの護衛を桜から命じられていましたから。それに刃夜を助けるのは合理的に考えてのことです」
「そう……か。でもそうなると桜の魔力は……」
「えぇ。多少なりとも減ったことになります。幸い刃夜のおかげでそこまで消費しませんでしたが、それでも使ったことに代わりは有りません」
その言葉はひどく淡々とした者だった。
サーヴァントとして己の責務を果たしていると、士郎にはそう感じられた。
故に士郎はどうしても聞かなければいけないことがあった。
「ライダー。ライダーは桜の令呪がなくなったら、桜を殺すのか?」
令呪。
この絶対命令権の令呪があることで、人間よりも高次の存在であるサーヴァントはマスターに隷属している。
しかしそれがなくなると隷属する理由もなくなり、サーヴァントに殺されるマスターもいる。
今のライダーの淡々とした態度が、そんな不安を士郎へと抱かせるのだが……。
「私は彼女の生存を望んでいます。それに令呪はすでに失われている」
「……え?」
それはいろんな意味で衝撃的な告白だった。
「なら、ライダーはなんで!?」
「令呪の縛りは関係有りません。私はサクラがマスターである限り、私の意思でサクラを守ります。私は彼女のことが好きですから」
「そう……なのか?」
余り友好的な関係に見えない桜とライダーのために、士郎は驚きを隠せなかった。
それをライダー自身も理解しているのだろう。
「驚くのも仕方がないことでしょう。私はサクラとまともに話したことが有りません。ですが士郎、サーヴァントは自分と近しい者に喚ばれるのです。元々私もサクラも饒舌ではありませんので、会話がないのは仕方のないことなのかも知れません。ですが私たちは互いのことをよく理解しているつもりです」
その声には確かに感情らしいものが含まれていた。
魔眼を封じるために目を隠している彼女の表情は読み取りづらいために、酷薄なイメージを抱いてしまうかも知れないが、ライダーは決して冷たい存在ではなかった。
「そっか……。それなら心強い。ライダーが桜の味方でいてくれて嬉しいよ」
「そうですか。ではこちらからも問いましょう。士郎。あなたはサクラがどのような苦痛に耐えてきたのかわかりますか?」
突然の質問に士郎は面を食らいそうになったが、質問の内容がそれをさせないでいた。
どういった内容かは士郎にも容易に想像できた。
言峰の助言と、桜自身がどのような責め苦を受けてきたのかを告白し、泣いていた。
さらには間桐臓硯を多少なりとも知ってしまったので、想像に難くない。
しかし……
「解らない……。解るなんてことを言っちゃいけない……そう思う」
魔術使いとはいえ魔道を多少なりとも使える士郎にも、その程度の事は解った。
何よりも士郎にとってはそれを過去のものとするべく動いているのだ。
桜を幸せにするために。
だが、早く気付いてあげられなかったことは悔やんでいた。
その悔しさが声ににじみ出てしまっていた。
「……なるほど、あなたは未熟で不器用ですが、信用に足る人物では有るのですね。だからこそサクラに取ってあなたは救いになったのでしょう」
その悔しさを感じ取ったのか、ライダーからはっきりと感じるほどに暖かな感情が漏れ出ていた。
そう言う意味でこの場で話したことは決して無駄ではなかったのだろう。
だが……問いただすべき事が、まだライダーにはあった。
「士郎。あなたはサクラを幸せにするといった。だけどサクラにとって、この二年間こそが、幸せでした」
士郎の家に監視という名目で始まった、家事手伝いの日々。
それによってただ諦めるだけだった桜に感情というものが戻っていった。
ただただ延々と繰り返される魔道の修練という名の陵辱と責め苦。
壊れかけていた心をなおした士郎との生活。
それは異常な生活を送っていた桜にとって紛れもない幸福だった。
近しい者が召喚されるというサーヴァント。
つまりこの言葉は桜の言葉に他ならず……
それがわかった士郎は、ただ黙って聞くことしかできない……
「……あなたはサクラの味方ですか、士郎? 例え……何があったとしても」
これに応える義務が士郎にはある。
正義の味方を目指して歩いてきた十年。
しかしそれを捨ててまで……戦いを止める存在から自ら戦い、聖杯を勝ち取ると決めた士郎。
間桐桜の味方になると……。
ならば迷いなくライダーの問いに肯定しなくてはいけない。
だが……
例え……何があったとしても
その言葉の意味をわずかながらも理解してしまい、士郎は応えることが出来なかった。
「……別に今この場で応える必要は有りません。まだ多少なりとも時間はあるでしょう。そのときまでに決めておくことです」
言うべき事を言い、問いかけるべき問いをしたライダーは、宵闇に溶けるようにして姿を消した。
それをただ黙って見送って、士郎はどうすることも出来ずに空を見上げる。
くそっ……
未だ正体の掴めない黒い陰。
間桐臓硯の暗躍。
そして……切り捨てたはずの自分の理想と正義の味方。
ない交ぜになってしまってもう士郎にはどうしていいか解らない。
だが現実は待ってくれない。
今こうしている間も桜の魔力は失われていき、正気でいられる時間は減っていく。
責任は取りなさい。犠牲者は一人っていう形でね
昨夜決別したときの凜の言葉。
その状況が目の前に迫ったとき、果たして士郎はそのとき……
どのような選択を、するのだろうか?
NGシーン
テイク1
「足止めはするが、別にアレを倒してしまってもかまわないだろ?」
泥に呑まれてあっさり敗北!
タイガー道場行き!
虎師匠 「自信を持つのは良いけどうぬぼれたらだめだぞー!」
弟子一号「そうだぞ~! ジンヤのうぬぼれさんめ!」
幽体刃夜「おっしゃるとおりで」
テイク2
「足止めはするが、別にアレを倒してしまってもかまわないだろ?」
ご都合主義で狩竜が完全解放!
黒い影を丸ごと食らいつくす!
聖杯戦争終了!
それにともない帰る道がたたれました!
「あれ? 俺どう帰ればいいの?」
永住エンド!
後は……うん、面倒だからもういいやw
刃夜の言葉は少し意識して書きました
まぁ、だからなにって話なんだけどねw
近況?報告
TOKIO城島リーダー
私大好きなんですよねぇ
ケチケチシゲ子のコーナー好きだったなぁ
とっさの親父ギャグとかよくできるよね
そう言う意味で尊敬する
だが、今日は本当にすごいことをやり遂げてマジで尊敬しました
101kmマラソンお疲れ様でした!
43歳にしてよくぞまぁ、やり遂げてくれました!
長い長い道のりになりそうですが、人生およびこの小説もシゲ子を見習って完走させたいです!
説明ばっかでいやになってきたんだけどね!w
桜ルートもういやw
説明ばっかで退屈です!
はやく戦闘シーンが書きたいです!
でもそう言いながら映画は見に行く予定なんですがね!
桜ルートがまさかの映画化!?
初めて知った瞬間若干吹きかけたw
でも見に行くw
sorrowがどんな感じでアレンジされるかな~
それだけを見に行く感じになりそうですがw
後は桜の中の人ですね~
下屋則子様大好きなんですよ
あの声と山田先生のキャラがマッチしてマジでドツボでした……
いつになるかはわかりませんが、有給とってでも見に行こうw