時空が歪んでいるがそこはご都合主義だ! by作者
出前してたら偉くすごい斬り合いを行ってるんだが
俺の和食屋(二号店)をひいきにしているお客さんから、どうしても今夜出前をしてほしいと以前から頼まれていた。
その出前を終えて帰宅しようとしてたら、とんでもない殺気を感じ取ったため様子を見に来たのだが……。
……やぶ蛇だったな
明らかに普通じゃない存在が、互いの得物を振りかざして火花を散らしている。
なんというか、恰好も得物も正反対同士の対決だった。
一方は浅黒い肌に、赤い外套を身に纏った双剣使い。
他方は全身を覆うような隙間のない青い装束を身につけて、血よりも朱い槍を携えている。
しかも両方相当できる。
槍使いはもはやほぼ同時といえるほどに連続の突きを放っている。
その突きを双剣で捌いているとはいえ、危うげなく回避し防御する双剣使い。
そして、その二つの存在の斬り合いを見ている俺と遠坂凜。
……パスみたいなのが遠坂凜と赤い奴の間にあるな。なんだあれ?
パスがあり、遠坂凜を守護するように前線で戦闘を行っているところから見て使い魔のような立ち位置に見えるが……。
しかしあれほどの存在を以前から従えているのであれば気付かないはずがない。
となるとあの赤い存在とはここ数日で主従の関係になったと推察されるが……。
まぁ他にも気になることはあるんだが、それはまぁいい……
あの赤い双剣使いには、その気配があまりにも異常だった。
気配そのものが異常というわけではないが、存在していることが異常だ。
全く同じ気配の人間に、俺は覚えがあるのだから。
まぁいい……
今の状況下では余り重要ではない事柄は捨て置く。
今考えなければいけないことはこいつらが何故顕れたのかと言うことだ。
ここ最近の冬木市の異様な雰囲気の変化はこいつらが理由の一端か?
冬木市が異様な雰囲気に包まれているのは、先日の冬の精霊のような少女と出会って確信に変わっている。
もし、あの冬の精霊のような少女の後ろに控えていた圧倒的な存在感が、この二人と同じような存在だったとしたら……。
この異様な連中はどんだけいるんだろうな?
この異様な存在が何体いるのかは不明だが、今は無事に逃げることが先決だ。
興味本位で来てしまったのは本当に失敗だった。
何せ……
得物は水月のみ……
赤い双剣使いと青い槍使い。
同時に襲われることはないだろう。
遠坂凜と知り合いということもあり、あいつの性格から考えて俺を殺すこともないと思われる。
まぁ仮に襲われたとしても、むざむざ殺されるつもりは全くないが……
しかしあの槍兵はそうもいかないだろう。
この状況が普通であるはずがない。
そして遠坂凜がいる以上これは魔術がらみである可能性が高い。
魔術は秘匿されるべき物。
それはつまり……目撃者は口封じのために殺すこともあり得るはず。
あのレベルの敵を相手に水月のみでは死を招く
何とか現場を離脱したいのだが……運悪くちょうど斬り合いが一段落し、二人が互いを互いの殺意で牽制し始めた。
その殺意のやりとりに思わず反応してしまう、俺。
俺が未熟だからだろう。
「誰だ!?」
見つかった!? まぁそうだろうな!?
まっすぐにこちらを射貫いてくるその視線は、狂気に満ちながらも鋭敏な殺意を持っていた。
あれほどの粗野な気配を放ちながらも、その殺意には一切の無駄がない。
先ほどの斬り合いを見ていなくても、それだけであの青い槍兵が一級の戦士であることを物語っている。
マジでやぶ蛇だった!
出前箱を持ったまま俺は即座に撤退開始。
見つかる前に何とか逃げられれば良かったのだが、それも今では叶わない。
故に全力で逃亡を図る!
三十六計逃げるにしかず!
気力と魔力を併用し、脱兎のごとく逃げ出すが、それだけで逃がしてくれるほど相手も甘くはない!
ぴったりと俺についてきている。
気力と魔力の併用で走る俺の速度に追いつくとは!
「逃がすか!」
速度はほぼ互角。
しかし互角ではダメだ。
こちらの手持ちの得物は水月のみ。
家に入って得物を取り出す時間がなければ俺は死んだも同然だ。
使いたくないが、やむなし!
魔力消費量がすこし多くなってしまうが、それでも死ぬよりはましだ。
魔力の少ないこの世界で使うのは少しリスクが高いが、それでも……
「霞化!」
左腕に魔力を通して、霞の力を使用して完全なる透明化及び気配遮断を行った。
古龍の力を、気配遮断のみに使用したので完全に気配を断てる。
最初から隠密行動を取っていた訳ではないため、気配を完全に遮断するには大量の魔力が必要だ。
俺の少ない貯蔵魔力がガンガン減っているのがわかる。
修行が足りんな……
が、けちって死んだら意味がない。
さすがにこれは予想外だったのだろう。
俺を追ってきていた槍使いが驚愕に目を剥き、急遽足を止めてあたりを見渡していた。
「どこに行った!?」
透明化したことで、見えないところからの攻撃を警戒しているのだろう。
しかしそれはあくまでも囮。
俺の目的は逃げることではないく、戦闘。
そして逃亡の次にすべきことは得物の確保!
『封絶!』
『心得ている! 急げ仕手よ!』
ある程度の距離を離して、俺は封絶へと話しかける。
距離があるため不安だったが、魔力の波動を乗せたために互いの交信が可能となった。
だが、それは相手も感知できると言うことであり。
「!? そっちか!」
距離を離したこと、そして感知されてしまったが故に、霞皮の護りの使用を解除し、魔力の温存に努める。
全力疾走で俺は自身の拠点である和食屋(二号店)へと急ぐ。
それなりの距離を稼いだが、それでも悠長に得物を取り出す暇は与えてくれるほど甘い相手ではない。
本当はいやだが……
恩人である雷画さんより借りている家だ。
手荒なまねはしたくはなかったが……そういうわけにも行かなかった。
やむなく俺は窓を体当たりで突き破って家へと入り、封絶をひっつかんで外へと転がりでる。
その瞬間、まるで稲妻のように走る敵の赤い穂先。
「くらえ!」
「っ!」
シースから取り出す暇もなかったが、今手にしているのは打刀ではなく身幅が十分にある双剣、封龍剣【超絶一門】。
前方に楯のように出して槍の切っ先から身を守る。
!!!!
激しい金属音が鳴り響き、火花が散った。
その敵の力を利用して後方へと吹き飛ぶ。
吹き飛びながら俺は封絶をシースから抜き、シースを投げ捨てる。
「ほぉ?」
俺の対応を見て敵が嬉しそうに粗野に笑った。
槍の刺突に反応できたことに驚きながらも、それを喜んでいるのだろう。
その笑みで確信した。
戦闘狂とは行かないまでも、戦いに喜びを見いだすタイプの戦士であると。
「やるな、坊主。まさか俺の突きを、生身の人間が受け止めるとは思わなかったぞ」
「お褒めにあずかり光栄だ。しかし事情はわからないでもないが、問答無用で殺しに来るとはな……。裏の世界だからしょうがないのかもしれないが、魔術ってのも物騒だな」
多少の事情は知っているというのを伝えるため、俺はあえて魔術という言葉を口にする。
はっきり言って大して意味はないが。
そもそもこんな双剣持っている時点で一般人でないことは間違いないしな
「ほぉ? 剣の心得があるだけでなく、魔術を知ってるのか? 魔術師には見えないがたしかに魔力を感じる。……もしやお前、マスターか?」
「マスター? 店の店主ではあるが……」
またマスターという言葉が出てきた。
先日、雪の精霊のような少女にも同じ事を言われた。
ただの質問かと思ったが、偶然が何度も重なるわけがない。
つまり「マスター」という単語は、この男とこの異様な雰囲気に関係していることになる。
が、それも今は詮無きこと。現状問題……否、目の前の相手に目を向けなければならない……
封絶を順手で両手に構える。
このレベルの敵を相手に、眼前の事柄以外考える余裕は微塵もない。
最低限動きが阻害されない恰好でいたのは不幸中の幸いだろう。
割烹着に双剣という、見た目はアレだが……な……
先ほどの赤い奴との戦闘、それに今振るわれた槍の速度。
どれをとっても一流、否それ以上の技量。
さらには敵の得物が槍というのが厄介だった。
三倍段が絶対とは言えないが……今の状況だと当てはまるから質が悪い
打刀とほとんど刃渡りが変わらない封絶と、全長六尺以上の槍。
間合いにおいて圧倒的に不利な状況。
間合いが遠のけばそれだけ敵の懐に飛び込まなければいけない。
故に昔から刀で槍を相手にする場合、三倍の段位が必要だという。
実際に三倍以上の技量がなくとも勝つ手段はあるにはあるが、こいつ相手には三倍の実力があっても厳しいだろう。
故に一刀流ではなく、両手で捌くことが可能な封絶を選択したのだが……。
勝てるかな……こいつを相手に。
鍛錬は以前と変わらずしているが、それでもイメージトレーニングだけでは無理がある。
実際に斬り結ぶのは久しぶりで……さらにいうのならば対人戦を行うのは、二年近い空白がある。
だがやらなければ己が死ぬだけのこと。
それを俺は是とするわけにはいかないのだ。
「……ほぉ」
覚悟を決めて、俺は眼前の敵をにらみ据える。
構えるは対の剣、封龍剣【超絶一門】。
一歩も引かぬ、不退転の顕れ。
俺の覚悟がわからないほど、相手もバカではない。
交戦する意思を固めた俺を、むしろ嬉しそうに笑みで顔をゆがめて見つめていた。
「いいねぇ坊主。生身の人間でありながら、英霊たるこの俺に逃げるどころか挑もうとするその胆力。そしてそれが無謀でないとわかる技量。これはなかなか……」
無造作に槍を手にしていた姿から、相手はその槍を構える。
全身から威圧感と殺気をまき散らしながらも、その構えには一部の隙もない。
一挙手一投足、見逃すわけにはいかない。
膨大ながらも、それ以上に鋭い殺気を感じられる。
ここまでくればそれはもはや「気」ではない。
凶器その物。
それだけで人が殺せるほどに鋭敏な、鋭い殺意。
「――楽しめそうじゃネェか!」
空気を、空間すらも否定するかのような一撃。
先ほどの一撃が手抜きをしていたのではないかと思うほどに、その速度には明確な違いがあった。
おそらく俺をそれ相応の相手であると認識した違いだろうが……
速い!
あわせて捌くのがきついほどに敵の技量が凄まじく、俺の感覚が鈍っている。
相乗効果で下手をすればこのまま突かれ、死んでしまいそうになるほど速かった。
が、死んであげる理由もなく、死ぬつもりもない俺は、まさに死ぬ思いでその剣を捌く。
槍の軌道にあわせて剣を滑らせ、横に流すことで槍の軌道を逸らす。
しかしそれで安心できるわけもない。
点の攻撃である槍は、突いても引けばすぐに突くことが出来る。
単純故にその速さ、そして攻撃の数において剣を超える。
凄まじいほどの速度で連続で繰り出される突きを双剣で何とか捌く。
しかし槍の利点はそれだけではない。
「そぉら!」
突きの連続から一転し、今度はその長さを利用して槍を振り回し、俺を襲う。
長尺のため、敵の膂力と合わさり、振り回された威力は例え刃の部分でなくとも凶悪な一撃となる。
刃とは反対部分にある石突きで叩かれれば、骨など簡単におれる。
それどころか下手をすれば、そのままめり込んで内蔵にまでおよんで致命傷だ。
「っ!!!!」
短く呼気をして、俺は敵の攻撃に合わせて封絶を振るい、敵の猛攻をひたすらに捌いた。
速すぎる。
そう言っていいほどに敵の攻撃は、あまりに速く、鋭く、重かった。
半端ない!
しのげているのが奇跡だといっていい。
ブランクがある分、不利だというのに。
だが、それでも捌き続けるしかない。
しかし、敵はもっと厄介だった。
死にたくはないし、死ぬわけにもいかないからな!
「っらぁ!」
槍を振り回した勢いを乗せた蹴りが、槍とともに俺に放たれる。
空気を裂く音が聞き取れるほどの速度で放たれたその蹴りは、両手で封絶を重ねて持ち、全力で防がねばならないほど、衝撃があった。
「ぐっ!」
骨が軋み、悲鳴を上げているのがわかる。
封絶を楯にして防ぎ、しかも受け止めきらずに距離を離すことに敵の力を利用したにもかかわらずだ。
槍だけが武器だけだと思えない。
敵の体術も含めて相手は全身が凶器であり、まさに殺意……殺すという行為の塊であることがわかる。
それを証明するように、敵は笑っていた。
嬉しそうに。
「本当に驚きだな、坊主。双剣とはいえ俺の攻撃を全て捌くか。人間とはとても思えないな」
「あんたほどの技量を持った人間に褒められるのは悪い気はしないな。しかし俺はれっきとした人間だぜ?」
「最速のサーヴァントたるこの俺の攻撃をここまで受けておいてよくいう」
サーヴァント?
またぞろ意味のわからない単語が出てきた。
単語自体の意味はわかるが、それが今のこの状況にどうして当てはまるのか激しく謎である。
が、先ほど同様それは今この場において意味はない。
生き残ることにのみ集中しなければ、この場を切り抜けることは出来ない。
だが、それも不可能ではなくなったかな?
隙を見せない程度に、俺は体中の力を強めたり弱めたりして、感覚の確認を行う。
体の感覚、熱の入り方。
それに剣を振るう感触。
そして想像ではない。
今眼前に、間違いなく最高の相手がいるのだ。
これに応えずして……何が剣士か?
「……ほぉ?」
俺の変化を見抜いたのか、先ほどと同じ声で言葉だというのに、それに込められた想いはまるで違った。
先ほどまでは楽しみたいという感情が込められていた。
それは俺を侮らないまでも、対等ではないと思っていた証。
だが、今口から発せられた言葉は違った。
相手も察したのだ。
俺が対等の相手に成り得たことに。
「お待たせしました、と言っておこうか? 対人戦闘は久しぶりでな。感覚を取り戻すのにいささか手間取った」
「なるほど。はったりではないらしい。先ほどまでとは覇気が違うな」
ニヤリと、凶悪に敵が笑う。
それにつられるようにして、俺も笑みを浮かべていた。
互いに嬉しかったのだ。
真っ向から斬り結ぶことが出来る相手が、眼前にいることに。
感覚が戻ったといってもまだ完全ではないが、それでも今の斬り結びでだいぶ感覚が戻った。
これならば、敵の攻撃を捌きつつ反撃をねらえるかも知れない。
「ふぅ~~~」
呼吸を整えて俺は一度体と心の高ぶりをはき出した。
そして、短い時間静かに息を止めて……準備は完成する。
封絶を構えて、俺は体に無駄なく力を込める。
そして待ちかまえるように、静かに待つ。
封絶の刃渡りと、敵の槍の長さ……いわゆる間合いの違い。
間合いの長さが違い、俺は圧倒的に不利。
敵の懐に飛び込むには、敵の猛攻を躱さなければいけない。
どうあがいても先を取るのはあちらなのだ。
あちらから攻めてくることはあれど、俺から攻めることはない……
とは言い切れない!
「参るぞ! 封絶!!!!」
『承知!』
わずかに込めていた力を一瞬にして凝縮し、足へと導き爆発させる。
突貫。
そう言っていいほどに俺は一直線になって敵へと迫る。
敵の迎撃を想定して曲線を描けばそれだけ無駄につながる。
ならば敵の攻撃を捌きながら近づくのが……
危険だがもっとも相手へと迫ることが出来る!
気力と魔力。
双方の力と今までの俺の体術全てを駆使して、俺は俺の間合いへと入り込むため……
敵の間合いへと正面から突撃する!
「いいねぇ! その剛気! これこそ全力の戦いってものだ!!!!」
愉快に敵が笑う。
そしてその感情をぶつけるようにして、俺に無数の突きを放ってくる。
俺はそれを無駄なく捌く。
捌く。
捌く。
冷や汗をかきながらも、俺は敵の攻撃を捌き、紙一重で避けながら敵へと迫り……自身の間合いへと潜り込む。
ここで初めて……俺は防ぐのではなく攻撃を行うことができる。
「づぁっ!」
敵の突きを外へと流した姿勢から刺突に移行し、敵へと剣を振るう。
無論双剣の利点を生かしての連続攻撃。
懐に入ったのだ。
これで決めるつもりでかからなければ意味はない!
「はっ!」
「ふっ!」
しかしそこは敵の技量が凄まじい。
確かに普通の槍ではない上に相手の技量が相当のレベルなのだ。
懐に入った程度で勝てるとは思えないし、気力と魔力で振るった封絶でも敵の槍を断てないのはわかりきっていた。
槍の柄で俺の剣を受けて流し、避けてはそのたびにお返しとばかりに攻撃を見舞ってくる。
槍を振り回しての打撃。
振り回しながらも一瞬にしてそれを止めて、俺の間合いで槍を持ち替えては鋭い刺突。
更に敵の蹴りも相まってかなりの手数だった。
が、俺も攻撃では負けるつもりはない。
「おぉぉぉ!」
「おらぁぁ!」
今度はこちらがお返しとばかりに、俺も相手の蹴りに合わせて渾身の右蹴りを放つ。
互いの足が交差し、先ほどまでの金属音とは違い、乾いた音が宵闇に木霊する。
しかしここでとまる訳にはいかない。
敵とぶつかり合った蹴りを軸にして、軸足を跳ね上げて二連続の蹴りを見舞い、敵の顎を狙う。
「ほぉ!?」
それをやすやすと避ける敵に更にそのままの勢いを乗せて、俺は左の封絶で斬りつける。
敵はその封絶を体毎後ろに倒れ込むようにして避けて……
「やるな!」
避けながら、手にした槍を掌だけで振り回し、石突きで俺の顔を狙う。
双剣の強みというべきか……右手で持った封絶で俺はそれをしのぐ。
しかしその一撃は想像以上に重かった。
不安定な体勢で掌の力だけでこの威力!?
宙に浮いているとはいえ、ガードした俺を回転させるほどの力があった。
倒れ込むように後ろに傾くその姿勢で、これだけの力を槍に乗せる。
確かに切っ先よりも接する面積が多い故に、力も込めやすいだろう。
だが、これだけの力を掌だけでやるとは想像を絶した。
それだけにとどまらず、敵はそのまま槍を回転させて、切っ先を俺へと向けてくる。
まずっ!?
「そりゃ!!!!」
呼気とともに、敵の槍が宙で回転している俺に迫る。
不安定な体勢のため、双剣で受け止める事が出来ない。
普通はこれで詰みだ。
このまま切り刻まれて終わりだが……
足場形成!
すぐさま気力にて足場を形成して、俺は全力で逃げに徹した。
と、見せかけて敵の間合いから逃げた瞬間魔力で足場を形成し、再び宙で敵へと突貫する。
「ぉぉぉぉ!!!!」
「なにっ!?」
さすがに避けて空中で体勢を立て直し、直ぐに突貫してくるとは思わなかったのだろう。
初めて敵に純粋な驚愕と、わずかな焦りが生まれる。
それを見逃さず、俺は手にした双刃にて敵に斬りかかる!
「横閃 双!」
腕を前で交差させて渾身の力で敵を斬りつける。
が、敵は一瞬で焦りを引っ込めて邪悪に笑った。
その笑みに悪寒を覚えたがすでに遅い。
敵は後ろに倒していた体を倒しきって、俺の剣戟を避ける。
そして先に地面へと接したその腕を軸に……渾身の回し蹴りを俺に放つ!
「くらえっ!」
音さえも置き去りにして放たれた凶悪なその打撃を、なんとか前腕で俺は受ける。
しかし無理な体勢で受けたために、完全に受け止められず、そのまま吹き飛ばされる。
遙か彼方へと吹き飛ばされるが、何とか木の幹に足を乗せて着地する。
不意を突いたつもりだったんだがな!
気力と魔力の足場形成による回避と攻撃。
間違いなく驚きの表情をしていたので、不意を突けたのは間違いないはずなのだが……それだけでは相手に届かなかったようだ。
やはりブランクが長いのは痛かった。
「お? 見事に対応しているな」
己の未熟さを実感して反省していると、吹っ飛ばされた俺を追いかけて槍使いが現れる。
しかしどうしたことか、先ほどまでの殺意が綺麗に霧散している。
まるで戦闘を終えたかのような状態だった。
「……どういうつもりだ?」
「残念ながら俺のマスターは臆病者でね。これ以上戦闘に時間がかかるようなら目撃者が増える可能性があるから帰ってこいと指示が来てな。残念ながら勝負はお預けだ。魔術を知っているのならば口封じの必要もないだろうとさ」
指示? いつ連絡を取ったんだ?
俺が吹き飛ばされてからほとんど時間は経過していないはずだ。
だが、それも相手が得物を消したことで答えを得る。
魔術がらみだな
この世界における裏のさらに奥深く、暗い魔術の世界。
呪術の類はそこまで得意ではないが、確かにそう言った技術が存在している。
ならばわずかな時間で念話をするのも可能だろう。
『というよりも仕手よ。私といつも念話しているだろうに』
『……そうでした』
戦闘が終えたことを理解したのだろう、今まで黙っていた封絶のつっこみに思わず苦笑してしまう。
自分の馬鹿さ加減にほとほと呆れてしまった。
「おい、坊主」
そうして俺が封絶と頭の中でやりとりをしていると、背を向けて槍兵から声を掛けられる。
もう戦闘が終えたことを理解しながらも、俺は油断なく相手を視界に納める。
「なんだ?」
「お前がマスターになるのかどうかはわからないが……一応お前さんはこの聖杯戦争の一端をかいま見たことになる」
……聖杯戦争?
「お前さんがマスターになろうとなるまいと……」
ゾクリ!
嬉しそうに……まるで遊び相手が見つかったというように、朗らかに浮かべていた笑みが一転した。
いや、笑みは浮かべたままだった。
だがさきほどまで霧散していた殺意が再度俺へと向けられたのだ。
もう一度、それこそいまこの場で再び剣を結んでもおかしくないほどの、重圧だった。
「お前と真に死会える機会が巡ってくることを、楽しみにしている」
そう言い残して、敵は忽然と姿を消す。
速度が優れているわけではない。
本当に姿を消したのだ。
それも俺が行う霞化とは違う。
気配といいこの夜の気配といい……
何が起きているのやら……?
しばらく奇襲を身構えて周囲を警戒していたが、構えを解いて俺は息を吐き出した。
青い槍兵の性格からいって、わざわざ一度幕を引いた物を不意打ちなど行うことはないだろうが、それでも癖みたいな物だった。
『何が起きているのだろうな? この街に』
『全くだ』
どうやら、俺が望んでいた状況の変化というのはすでに起きていたらしい。
その変化の内容を俺が知らないだけで。
そうなると是が非でも情報を得て、その状況というのを見極めたいのだが……。
遠坂凜が素直に教えてくれるかね?
間違いなく当事者である遠坂凜あたりに話を聞くのが一番簡単であり、近道だろうがあの猫かぶり娘が素直に教えてくれるとは思えない。
どうすれば情報を得られるのかと画策しながら、俺は帰路についたのだった。
ゲイボルグでデッドエンド考えたんだけど……マスターでもない相手に切り札使うのはさすがにおかしいと思い自重しました。
まぁ使われたら確実に死ぬしねw
あ、でもそれもおもしろいかも
別の戦闘かいてみてもいいかもしれない
デッドエンドはいくつか頭にありますが……どうすっかなぁ