全力で書きましたが、まぁもしかしたら改稿するかも
後番外編の話数の場所を変更しました
新規投稿するたびに挿入するのが面倒になったのでw
申し訳ない
中身は変わってないのであしからずw
楽しんでいただければ何より
静けさを取り戻したその場所には……ただ一人、小さな少女が立っていた。
その眼で見ていた存在の姿はもうどこにもなく……、ただその場には何の感情も写さない、無表情の少女が一人立っていただけだった。
「……セラ、リズ」
「こちらに……お嬢様」
「――ん」
その少女の呟きのような声に反応し、二人の女性が姿を現した。
どちらもこの世の女性とは思えないほど……美しい女性だった。
同じタイプの白い衣服を着用している。
片方は巨大なハルバードを手にしており、もう片方は……特殊で貴重な衣を手にしていた。
「準備は出来てるわね?」
「はい、お嬢様。ですが……」
それ以上の問答は許さないと態度で示して……少女は何も応えなかった。
その態度に、臣下であり、姉でもあるその女性は、何かを言おうとしたのだが……口惜しそうに顔を歪めて、その態度に従った。
信じてない訳じゃないけど……それでも、ワタシは無理して欲しくないから……
自分を助けに来てくれた姿を思い出す。
助けるために命を差し出したのに、年上だからと……大事な友人を死なせたくないと言ってくれた。
辛くないようにと、必死になって走ってくれた。
あまりにも強大な獣を背にして逃げるということは……どれほど恐ろしいことなのだろう?
そして命を助けるために……命をすり減らしてあの邪悪な得物を振るった姿を思い出す。
言葉に嘘はないのだろう。
黒い陰をどうにか出来るという言葉は。
だが……その言葉に絶対の自信がないことは、自分でもよくわかっているようだった。
それでも他人のために……自分にとって大切な人のために、力の限りを尽くす。
そんな人を死なせたくないから……
少女は「どうにかしてやる」と言われながらも……己の役割を受け入れる。
どうにか出来るって信じてる。けどそれでも、もしもって事があるから……だから、ごめんね、ジンヤ
少女は、胸の内で謝った。
それでも自分も同じだと……
大切な人のために、この命を使うのだと……
そう決意を新たにした。
二人はただ……静かに見つめ合っていた。
暗く、深く……そして黒い空間の中で。
二人の姿は、異様の一言に尽きた。
それはそうだろう。
この現代社会において、野太刀を手にしている人間が普通であるはずがない。
だが、二人は互いのことを普通であるとは思っていない。
無論自分自身のことも、きちんと普通とはかけ離れていることを理解していた。
二人は相棒だった。
接した時間は短くとも、その短さを覆すだけの濃密な斬り合いを結び、良好な関係を築き、互いに互いのことを理解していた。
いや……理解していたつもりだった。
だが今の二人の関係は相棒ではない。
相棒だった時と変化してしまった外見が、それを決定づけている……そんな気が刃夜はしていた。
相手へと向ける視線には、友好さなど欠片もなく……ただ鋭く研ぎ澄ました殺意を乗せて、相手をにらみつけていた。
片方は数多の刀剣を身につけ携え、右手に超尺の長さの刀身をもつ野太刀を手にしていた。
帯で固定された腰には左に夜月、右に雷月、後ろに水月。
そして背中にシースにしまわれた対の剣、封龍剣【超絶一門】。
刃夜の身体の外見的変化はほとんどない。
変化しているのはただ一点、刃夜が手にした超尺の長さをもつ野太刀だった。
以前は暗い血の色をしていた刀身が、明滅するように淡く発光していた。
それだけでも刃夜の姿は異様に怪しく、そして妖しかった。
対して他方の一人は……外見のほとんどが、刃夜が知っている姿ではなかった。
まさに野太刀と言うように、綺麗な鈍色をしていた刀身は黒く染まり、まるで光すらも吸い込むほどに漆黒の刀身と化していた。
その刀身と同じように長大な野太刀を帯びた、耽美な青年だった小次郎は、その全てが黒く染まっていた。
青紫の袴と陣羽織も黒く染まり、男としては綺麗にのばされていた絹のような長髪すらも、黒く染まっている。
肌は青白く、血が通っていないかのように、冷たい印象を受ける。
その姿を見ても、刃夜は眉一つ動かさず、ただ静かに……小次郎をにらみつけていた。
対して小次郎も同じ、刃夜の超野太刀、狩竜の刀身が明滅していても、動揺しているそぶりはない。
……これは
相棒だった頃の、毎朝の斬り合いを刃夜は脳裏に浮かべ、直ぐに記憶の奥底へとしまった。
毎朝互いを知るため訓練と称していた斬り合いは、今この場面においてはなんの参考にもならないことを理解したからだ。
よく言えばお遊戯、悪く言えばただの……馴れ合いでしかなかったのだ。
朝の斬り合いは。
……やばいな
黒い陰に呑まれたことによって強化されるという事実。
それはセイバーとバーサーカーによって証明されている。
故に黒い陰に呑み込まれた小次郎も敵の手駒として、こうして立ちはだかるであろうことは、誰もが予想していた。
それは当然刃夜も予想していた。
そして何よりも……小次郎とこうして敵として相まみえることを、刃夜は心の底から渇望していた。
「……ずいぶんと変わり果てた姿になったな? まぁ変わったと言っても色合いが変わったぐらいしか、見た目には変化はないわけだが」
油断なく相手を見据えながらも、互いにまだやり合うつもりはなかった。
セイバーと違い、丸ごと呑み込まれた小次郎には自我があろう事は、刃夜も容易に予測が出来た。
そしてギルガメッシュの登場によってそれは事実となった。
ギルガメッシュのことを刃夜が知っているはずもないが、意思を持って刃夜達と相対していることが、意思を持ったまま黒い陰の僕となることが出来ると予想できた。
今朝も行くのだろう刃夜? あの林に。また斬り結ぼうぞ
歪とも言えた、斬り結びの時間。
相手を否定し殺すはずの剣戟にて、互いを知り合うことを目的とした朝の時間。
愛おしく思いながらも、その記憶も刃夜は奥底へとしまう。
その気持ちは今から相対する上では不要な物。
例え暖かく、大切な記憶であったとしても、それを表に出すことは出来ない。
だが、それでも……まるで別れを惜しむかのように、刃夜は口を開いていた。
そんな気持ちが、小次郎にも……変わり果ててしまった小次郎にもあるのだろうか?
鋭く向けていた視線を一度無防備にも外し、目を閉じて静かに微笑んだ。
何故かその微笑みだけは……変わり果てたはずの小次郎も以前と同じように、柔らかく穏やかだった。
「そうさな、確かに見た目だけの変化はそんなものだろうな。無論それだけでないことは解っておろう?」
「……そうだな」
同じように苦笑しながら、刃夜は小次郎の言わんとしていることは十分に理解できた。
身に纏う雰囲気があまりにも違ったからだ。
あふれ出る魔力が、それを雄弁に語っていた。
そして何よりも……あふれ出ている殺気が、比べものにならないほどに鋭敏だった。
互いに相手を殺すことを全身から放っているというのに、笑みを浮かべて談笑し合う姿は……ある意味で滑稽とも言え、歪んでいた。
「黒くなってからどうしてたんだ?」
「姿が変わろうとも、やることは変わらぬよ。いや……やることが減った分、することはより単純な物になったな」
「ほぉ?」
やることが減ったというのは、刃夜との料理店の経営に他ならない。
その時間がなくなった……つまり、24時間全ての時間を剣に振るうことに専念していたという事だった。
霊体故に栄養の摂取である食事も、休息のための睡眠も必要としない。
だから、小次郎はひたすらに生前と同じように……剣を振るっていた。
黒い魔力によって強化された感覚を養うため……というのが理由の一つではあっただろう。
だが最大の理由は間違いなく、今……この瞬間のためだった。
小次郎の言葉が合図だったかのように……二人は笑みを消して再度互いをにらみつける。
先ほどまで曖昧だった殺気が、鋭く、重く……研ぎ澄まされていく。
笑みは完全に消え去り……その視線に友好的な感情はもうなかった。
あるのはただ……相手に死という事実を突きつけて殺すという……
相手の命を否定する、欲求のみ。
こうして二人は対峙する。
目にした相手を殺す事のみを考えて。
目にした相手を否定することだけを……考えて。
「封絶」
『む? なんだ?』
身につけた魔剣、封龍剣【超絶一門】に呼びかける刃夜。
呼びかけながら、刃夜は狩竜を上へと投げた。
狩竜をいったん宙に投げるという、今の状況ではあり得ないことを、刃夜は平気でやってのけた。
本当に、ただ相手を殺すことだけを考えているのであれば、この絶対的な隙を見逃す訳がない。
しかし小次郎は何もせず、刃夜の準備が終えるのを待った。
二人が望んでいるのはただ相手を殺すことだけではない。
本当の意味での……殺し合いを求めているのだ。
「お前に……この殺し合いを見届けて欲しい」
『……随意に。我が仕手よ』
宙に投げて自由になった両手で、背中に縛り付けているシースを取り、シースから封龍剣【超絶一門】を抜き、地面へと突き立てた。
自分たちの斬り合いを……見届けさせるために。
膝をつき、封龍剣【超絶一門】を地面に突き立てている間……刃夜は無防備に背中を晒したままだった。
そのわずかな時間で、刃夜は覚悟を決めた。
敵を殺すことを……ではない。
殺すことは、小次郎が黒い陰に呑み込まれたときから、意思を固めていた。
決めたと言うよりも……受け入れたといった方がいいのかも知れない。
相棒だった相手を殺すという行為を……渇望し、欲望した己自身に対して……
以前は主従の関係だった。
魔術による聖杯戦争に参加し、二人は令呪という縛があった。
だが今は一切の言い訳もなく、ただ相手を殺すことだけを考える状況になった。
小次郎という……おそらく二度と現れることはないであろう、好敵手と。
それを刃夜は心の底から……魂が叫び出すほどに、嬉しく思った。
立ち上がり、宙より落ちてきた狩竜を右手で受け止めて……刃夜は振り向く。
己が殺したいと……心の底から望んだ相手。
相手を殺したいほど憎いと思ったわけではなく……
ただ相手を殺すことを……ただ相手と本当に殺し合いをすることだけを求めて……
相手より自分が勝っているということを、知りたいわけではない。
そんな下らない自己の欲求ではない。
あえて言うのであれば……二人にとって相手を殺すことが、相手に対しての最後の絆だった。
絆であり、刀を用いた斬り合い。
ただ、それだけを求めて。
一丈ほどの距離を隔てて、刃夜は足を止めた。
そしてじっと……手にした狩竜を見つめた。
二人の戦意を……殺意を感じ取っているのか、狩竜がより大きく脈動し、さらに明滅していた……
そんな狩竜を見て……刃夜は驚くべき事に、刀身の平地を思いっきり拳でぶん殴っていた。
「……」
さしもの小次郎も、自らの愛刀を殴るとは完全に予想外だったのか、思わずといったように瞠目しており、殺意も霧散していた。
その殺意が霧散したことに反応したのか、それとも殴られたことで動揺しているのか……狩竜の明滅が治まっていくようだった。
その狩竜に対して……内側に宿る意思に対して……
刃夜は怒鳴った。
「少し静かにしていろ! 煌黒邪神ごときが!」
隙だらけになるのも構わずに、刃夜は大声で怒鳴った。
一瞬呆けたようにしていた狩竜の蠢きが止まるが……すぐに怒りを露わにするように更に発光しようとしたのだが……
それに覆い被せるようにして、刃夜が更に怒鳴る。
「お前の相手はこいつの先にいる邪神もどきだ! そいつは間違いなくお前の獲物だ! だが、今この目の前にいるこいつは俺の獲物だ! 邪魔する者は何であろうと許しはしない!」
それはもはや怒号と言っていいほどだった。
そしてその声とともにはき出された言葉と思いは、どこまでも純粋だった。
その思いがあまりにも純粋だったからか……狩竜はやがて治まり、以前ほどとは言わないまでも、ほとんど脈動と発光をしなくなった。
そんなやりとり? を見て、小次郎は思わず腹を抱えて笑ってしまった。
「あっはっはっは!」
その笑いには邪気は何もなく……本当に可笑しくて笑っているようだった。
そしてその声には喜びも含まれていた。
おもしろくて、嬉しくて……小次郎は笑っていたのだ。
俺の獲物……か……
相対した時の雰囲気からわかりきっていたことだが、それでも小次郎は嬉しく思えた。
刃夜が間違いなく……自らと同じ気持ちで、この場にいることに。
小次郎が笑ったのがおもしろかったのか……刃夜も小さく笑っていた。
しばし二人は、ただただ……笑っていた。
だがそれも長くは続かず……二人は微笑みを消して、一度目を閉じた。
そして二人は互いにゆっくりと構えた。
否、構えたと言うには少し語弊がある。
構えたのは刃夜だけだからだ。
しかしそれは得物を構える、構えないの違いだけで、二人は殺し合いを行うために心構えを……覚悟を決めた。
そして二人は……
!!!!!!
互いに向かって距離を詰める。
剣先は当然のように刃夜の狩竜が先に小次郎へと迫った。
間合いの上では狩竜が圧倒的に上なのだ。
先に小次郎に刃が届くのは当たり前……そのはずだった。
だが、刃夜の予想よりも速い速度で小次郎が迫り、狩竜の刃が小次郎へ届く前に、小次郎が刃夜を間合いに納めた。
!?
一足飛びにて刃夜を間合いに納めた小次郎が、以前とは比較にならぬほどの速度で、野太刀を振るう。
右薙ぎに振るった狩竜の下をくぐるようにして小次郎が迫り、その漆黒へと変化した野太刀を振るう。
っ!?
驚愕しつつも、刃夜は直ぐに対処した。
魔力形成によって足場を左肩に展開し、それに体当たりすることで無理矢理に体を剣の軌跡から逃がす。
その勢いのままに距離を離すが、刃夜は大きく体勢を崩してしまう。
体勢を崩した刃夜に、再度以前では考えられない勢いで小次郎が迫る。
!? ふっ!
再度驚愕するが、それだけで刃夜は終わらない。
体勢を崩しながら、刃夜は魔力の足場形成を再度展開して瞬時に体勢を立て直し、再度右手のみで狩竜を振るった。
それだけに飽きたらず、左腰に装備している雷月を抜刀。
帯に固定されているため鍔となっている爪を押さず半ば強引に、鯉口を斬った。
左手で刀を抜いたこと、そして以前よりも魔力の形成を利用した戦闘方法、何より自身同様、以前よりも動きが速くなり、さらには魔力形成が素早くなっていることに、小次郎も気付いた。
柄頭で雷月を持ち、突き刺すように小次郎へと突きつける。
柄の端を持ち、さらに腕をいっぱいに伸ばしても、小次郎の野太刀の方が間合いは上だった。
だが突き刺すために突き出された刀を避けていては、迫り来る狩竜に斬られてしまう。
そのため小次郎は接近していた体勢を、強化された脚力で強引に踏みとどまる。
雷月の間合いの一歩手前でとどまるが、狩竜の間合いには入っている。
今度は逆に小次郎が漆黒の野太刀を、強引に狩竜の軌跡へと滑り込ませた。
!!!!
凄まじい金属がぶつかり合う音が響き、洞窟に木霊する。
凄まじい技量を持った小次郎でさえも、無理矢理な体勢の立て直しのため、
再度間合いが離れて二人は対峙した。
驚愕を互いに呑み込み、その事実を冷静に二人は分析する。
……技量を上げながら、強化された身体能力すらも完璧に把握して斬り込んできた?
以前とは全く違う力強い踏み込みとその速さに、刃夜は驚いていた。
戦闘能力が底上げされることはわかりきっていた。
漆黒の戦闘騎士、漆黒の狂戦士。
黒く染まったことで、黒い陰からの供給魔力を受けて戦闘能力があがる。
魔力消費量を気にしなくていいのだから、全力で戦い続けられるということ。
だがそれは、元々魔力による戦闘方法を身につけて洗練していればこその強化。
小次郎は元来、魔力を使用した戦闘方法を身につけていない。
身につけていない物を、いきなり使用できるわけもない。
故に小次郎は、黒い陰の泥によって強化された身体能力のみで、間合いを詰め、その野太刀を力の限り振るったのだ。
以前にはなかった力が加わり、その野太刀はより力強く鋭い、まさに鉄すらも容易に切り裂くことが可能であると、容易に想像できるほどだった。
圧倒的とも言える新たに身に着けた力を、ただただ一人の男を斬るために……修練を重ねていたことは想像するまでもなかった。
ゾクリと、刃夜の体が小さく震えた。
肌が泡立ち、産毛が逆立つほどだった。
自らと同じ感情を、もっとも信頼し、もっとも恋いこがれた相手が同じ気持ちだったことに……刃夜は狂喜した。
そして相手が以前よりも強くなっていることに喜びを感じているのは、刃夜だけではなかった。
よもや……刃夜も腕を上げておろうとはな。それも……ただ強くなっただけではない
先ほど刃夜が使用した、足場形成を利用しての急激な体勢の立て直し。
あれは以前の刃夜では使用していない方法だった。
また剣も振るった際も、全くぶれていなかった。
狩竜はその超尺な刀身のため、振るうどころか持つのさえも難しい。
それを可能としているのは日々の鍛錬と気力と魔力の運用。
だがそれでも長さ故に重い。
その野太刀を振るうのは容易ではないため、ぶれてしまうこともあった。
だが、今の刃夜にはそれがない。
それは何故なのか?
考えるまでもない……か……
小次郎は密かに笑みをこぼす。
己にとってこれ以上ないほど斬り合いを望んだ相手が、完全な状態でこうして己の前に現れたのだ。
それも、己と同じ欲求を抱いて。
これを笑わずして……喜ばずして、何を喜ぶというのか?
二人は崩れていた体制を立て直して、再度構える。
再開の合図もなく、二人はただ相手を殺したりうる一手を考える。
相手がどう動き、己がどう動くのか?
そしてどう捌き、いかような手段を持って、相手を斬り……殺すのか?
初めて斬り合った時の、馴れ合いとも言える訓練とは違う。
それを証明するのが……刃夜と小次郎、二人の表情だった。
「……」
「……」
二人はただ歪んだ笑みを浮かべて、ぎらぎらと血走っているかのような目を、相手へ向けている。
そしてそれ以上に鋭く、美しく
さけど人を斬るために生み出された刃物を……
刀を……
互いに向ける
この薄暗い洞窟の中にあってもなお……
その刃には光が映し出されていた
血のような色をした超尺の刃
光さえも呑み込みそうな漆黒の刃
光が反射するはずもない色をしているはずなのに
それは二人が生み出した幻の光なのかも知れない
その幻の光を反射し、己自身を……
殺すべき……斬るべき相手を、照らしている
その光を……殺意を道標にしているかのように……
二人はまた互いに近づき……
その刀を振るった……
人の間にいるから人間……
セイバーに向けて刃夜はそう言った
だがその言葉を刃夜は自ら否定する
元相棒を否定して……相棒と己の間
人と人との間……
己自身と相棒の間を……
刃夜は相手を殺すことによって否定する
拒絶する
ただ相手を殺すことを……否定することを抱いて
いや、それは結果でしかないのかも知れない
二人の胸中にあるのは否定でも、殺意でもない……
ただ……己がもっとも惹かれて、求めた相手と
ただ純粋な剣技……
刀を用いた斬り合いを求めているだけなのだ
今まで生きてきた己の行い全てを賭けて……
相手の行いを否定するために……
「――っふ!!!!」
「づぁっ!」
片方は漆黒の刃を鋭く力強く斬り込ませ
片方は赤い刃を豪胆に、されど確かな技術を用いて振るう
その刃が打ち合い、赤い火花が二人を照らす
「ふっ!」
「づあぁぁぁ!!!!」
一瞬にして散る赤い花が、二人の頬を焦がす
しかしそんなものは目に入らぬとでも言うように……否、仮に入っていたとしても二人は気にせず剣を振るっただろう
幾重にも、幾十にも重なり、火の花が散る……
二人が今まで重ねてきた、斬り合いの……刀を振るった数の分だけ、散っていくかのようだった……
!!!!
散っていく花と、金属が打ち合う、硬質な音……
花も響きも置き去りにして……
二人はひたすらに手にした刃物を振るい続けた……
「ぉぉぉぉぉ!!!!」
「ぁぁぁぁぁ!!!!」
今二人の頭の中に……心の中に、あるのは一体何なのだろうか……?
突然の出会いと別れか……?
過ぎ去った日々の想い出か……?
斬り合った仕合か……?
何がよぎり……何が過ぎ去っていくのか……
去来する想い……
それは二人にしかわからない……
ただ……
!!!!
言えることはただ一つ……
「はぁぁぁあ!」
「だぁぁぁっぁ!」
何があろうと……
何が起ころうと……
今の二人は止まらない……
止められない……
止まるはずがない……
互いを、殺すまでは……
!!!!
一際大きな音が響き……二人は距離を離した……
そして互いに……大きく息を吐き捨てた……
ゆっくりと……静かに……
呼吸することすらも無駄であると、二人はしばし呼吸すらしていなかった……
生命活動すらも、今の二人にとっては余計なことだった……
なのに……
「驚いたことに……拮抗しているな……」
会話をするのは何故なのだろう……?
「ふむ。私はそうは思わんがな」
今のこの場に、言葉は無用であるはずなのに……
「あれ? もしかして手を抜いているのか?」
それでも二人は言葉を紡いだ……
「そんなわけがない。驚いたという意味に対して、私はそうは思わんといったまでよ」
まるで別れを……
「だろうな。そんな事をお前が望むとも思えないしな」
惜しむかのように……
「さすがは元、私の相棒だ……。私のことをよくわかってくれている」
「ぬかせ。それはお前も同じだろうが……」
斬り合いを始めてから初めて、二人は屈託なく……
それこそ心の底から笑った……
いっそ朗らかにと言って良かっただろう……
先ほどまでの形相がまるで嘘であるかのようだった……
だが……それは直ぐに終わった……
「埒が明かないな……」
「互いに斬り結び……ただひたすらに己よりも相手が消耗するまで斬り合うのも一興……ではあるのだが……」
そして二人は同じ行動を決意する……
「「最後の一手と行こうか」」
互いの全身全霊の一刀にて……
命を奪うと……