月夜に閃く二振りの野太刀   作:刀馬鹿

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ヒロイン登場!
誰かは明言しませんが……とりあえずヒロインの一人が登場します!
一応、分からない人向けにも書いたつもりです。
話の都合上、まだ全部を明かしきっていないので分からないところもあるかもしれませんが……読んでみてください!






開店準備中の出会い

「はっ はっ はっ ……ふぅ、さすがにまだ朝は寒いか」

 

日課であるランニングを行いながら、吸い込む空気の冷たさにそう呟いた。

何せまだ春先なのだ。

さすがに早朝の空気はまだ寒いままだ。

この地域……まぁ低いとはいえ山の上でもあるから寒くても不思議ではないのだけど……。

冬の空気よりは当然ましなのだけど……寒いことに変わりはなかった。

 

ガシャーン

 

「ぎゃー。鍋ガァァ」

 

「……あれ?」

 

そろそろ切り上げて朝練へと向かおうかと思っていたその時に……何かあまり朝にそぐわない音を聞いて、私は思わず足を止めた。

その音の元を探してみると少し先の一軒家……元々定食屋だったはずの場所からだった。

 

って……ここって潰れたって言うか、店じまいしたはずじゃ?

 

結構年老いた人がやっていた店で、快活な人が店主だった。

たまに行っていたのでそこそこ親しかったけど……でも腰を痛めて店じまいをしたはず。

だからここに今人がいるのは意外だった……。

 

またお店が出来るのかな?

 

それともただ引っ越してきただけ……いや、それはない。

中がどうなっているのかわからないけど、特に建て建て替えなんかをしていなかった以上、中身はお店としてのままだろう。

となるとまた料理のお店となる可能性は高いだろう。

 

「今度来てみようかな?」

 

いつものランニングで、楽しみを一つ見つけられた事を喜びつつ、私は家へと足を向けた。

 

 

 

「あ~……あぶなかった」

 

俺は上から取ろうとした鍋をうっかりと落としてしまって、盛大な音を響かせたことに顔をしかめた。

鉄製の鍋なので少しへこんだ程度で済んだが……如何せん音がすごかった。

早朝のためか特に喧噪もないこの状況では相当外にも響いたと思われたが……まぁ早朝ということで文句が飛んでくることはなかった。

その事にほっとしつつ……俺は店の清掃を続ける。

 

……疲れてるんだろうなぁ

 

別に清掃自体はそこまで大変な物ではない。

誰が掃除したのかは謎だが……とりあえず店自体はそんなに汚れていなかった。

確かに雷画さんから聞いた通り、そんなに長い期間ほったらかしにしてはいなかったようだ。

まぁだが飯屋として機能する以上清掃は徹底的に行わなければいけないだろう。

と言うわけで、俺は一睡もせずに清掃中だった。

 

昨夜の仕事というか、何というか……とにかく疲れた……

 

ちなみに調理師免許の試験はすでに受験済みで、合格しているらしい。

普通は数日で結果がわかるわけはないのだが……そこら辺は雷画さんがどうにかしてくれたそうだ。

何でも子分が一人そこそこ偉い立場の人間がいるらしくて……。

 

あまり突っ込んではいけない話だし、ありがたいから何も言わないが……

 

ともかくそう言うわけで近々この店で開店することが出来そうだった。

食材を扱ういい店も紹介してもらって、本当に雷画さんには頭が上がらない。

少しでも恩を返したくて開店するまでの間は、雷画さんのお仕事を手伝うことになったのだが……。

 

その仕事がなぁ……

 

……あまり一般人が関わらないようなお仕事だった。

具体的には麻薬組織の取引現場を押さえたりとか……、人さらいをしようとしていた連中の取り締まりとか……、なんというか藤村組って極道というよりも……犯罪取り締まり組織みたいなことだった。

まぁ自分の土地を荒らすくそ野郎共を仲裁しているらしいが。

そして俺はそれのバックアップ要員に任命されたのだが、拳銃が出張ってきたので好都合になったのでこれ幸いにと、悪党共を蹴散らすのを手伝った。

まかり間違っても殺すわけにも行かないので、もっぱら認識阻害で封印している狩竜での打撃か……借りた木刀や徒手空拳でだ。

そしたらなんか「長木刀の鉄砲玉」とかいう……変なあだ名をつけられた。

しかもその制圧の仕方が圧倒的だったというか……面白かったらしく、藤村組の構成員から偉く慕われた。

しかし敵にとっては悪魔というか人外の化け物にしか見えないらしく、もうすげ~恐れられてしまった。

 

まぁ……何もせずに弾丸弾いたら驚くわな

 

銃撃戦になったとき、何発か体に命中してしまったのだ。

別に気壁があるので痛くもかゆくもないのだが……それによって現代戦闘の腕前が鈍っていることは確実となった。

避けたつもりが避けきれずに命中した、もしくは目測なんかを誤ったのだ。

そのため率先して突っ走るというか……勘を取り戻すために突っ込んでいった。

だから異名というかをつけられるのも仕方がないのだが……だからといって好きこのんでつけられたいとは思わない。

 

……ふぅまぁいい

 

とりあえずそんなことは後回しだ。

さっさと掃除を済ませて食材とかを見に行かないとまずい。

それと……

 

地形の確認だな

 

優先順位の高い、やらねばならないこと。

まず自分がどの場所にいてどのような地形があるのかを確認しないといけない。

この辺を散歩しつつ、とりあえず地形確認を行うとしよう。

 

となると……

 

「さっさと終わらせてしまおう!」

 

再度気合いを入れ直して、俺は力の限り掃除を行った。

 

 

 

ふむ……なるほど。大体こんな感じか……

 

手元にある地図を見ながら、俺は登った山の頂上にある木に登り、俺がいる冬木市の全景を眺めていた。

掃除を終えた俺は、自分がいた山の頂上部へと登って地形確認を行っていた。

 

冬木市。

西日本の日本海に面している街だ。

中央にある未遠川を境界線として、東側が再開発中の都市街「新都」、西側で今俺がいるほうの古くからの町並みの住宅地が「深山町」となっている。

新都はそれこそ近代都市として発展しているようで、結構な活気があった。

また高く聳える高層ビルもいくつかある。

中央の冬木大橋は、片側二車線で歩道と車道は別の弾に備えられて完全に別の所にある。

その橋を渡り、こちら側の深山町はというと……その名の通り……山の斜面にあり、そして山がいくつか存在している。

住宅も結構な数があり、そこそこの人工がありそうだった。

商店街もあり、普通に生活する分には困らないようだ。

山の中腹部に、学園の姿があった。

穂群原(ほむらばら)学園という学園で、大河が勤めている学園だ。

山の中腹にあるので上り下りが大変そう……つまりは通学がなかなかハードであろうと思われる学園。

他にも山を切り開いた町であるためか、伐採されずに残っている木々が森や林を形成している箇所もある。

 

ちなみに俺が経営することになるお店兼住居は、藤村組と学園の中間当たりにある。

 

そして一つの山の頂点に……柳桐寺(りゅうどうじ)という寺が、鎮座している。

 

そしてその寺……

 

龍脈の上にあるか……

 

寺は龍脈……大地の力の巡りとでも言うべき根源的な力……その上に建築されていた。

寺なんかは神聖な場所であるためにそう言う場所に建てられているのはある意味で当然なのだが……龍脈の桁が違うというか……この地域の龍脈は相当な規模を誇っているようだった。

正面口である山門へと続く長い石段があるのが特徴といえる。

アレを毎日上り下りしたら相当体が鍛えられるだろう。

 

新都、深山町ともにまだ大体の一を把握しただけなので、新都の方の店や商店街にどのような種類の店舗が入っているのかを後々調べなければならないだろう。

 

が、とりあえず大体の地形は把握したな

 

住宅地もあるのであまり戦闘なんかは行いたくはないが……それでも最悪の事態を想定しておくのに超したことはない。

といってもこの世界に本来俺はいないので、当然俺を知っている人間なんかいるわけもない。

当然誰かに怨まれているということもあり得ないので、戦闘事に発展する事はないだろう。

まだ開店準備中の店兼住居に置いてきた狩竜の認識阻害の封印が解かれないことを祈るばかりだ。

 

『何もないとは思えんがな』

 

その俺の心の声に……反応する意志。

封龍剣【超絶一門】だ。

この世界を見てみたいということで、俺は布のシースに入れたまま俺は背中に装備していた。

こちらにも簡易の認識阻害の呪術を使用しているが……それでも注視されたらばれるので、取っ手を含めた全ての部分を布で覆っている。

 

『まぁ俺も何事もなく終わるとは思っていないが……狩竜は如何せん大きすぎる。あれはこの住宅がひしめくこの現代の日本ではあまりにも不向きな得物だ』

 

実際狩竜を振り回すのは容易ではない。

別に周囲に障害物があってもそれ事ぶった切ればいいのだが……しかしそれで電柱や家の壁や外壁を壊してしまっては問題が生じる。

電柱が折れれば当然電気の供給が危なくなるし、壁や外壁を斬ったら家主に迷惑がかかる。

ある程度の広さがなければそう言う意味で振るうのも辛いだろう。

出来れば封印したままでいたい。

 

『確かにその通りだが……。ここには何か不思議な気配がある』

『気配……?』

『気づいていないわけではなかろう? あの家を』

 

封龍剣【超絶一門】が、どの家のことを言っているのかは、俺は直ぐにわかった。

俺がいる、深山町の丘の頂上……俺が今いる頂上よりも少し低いところにある、西洋建築の館。

それだけ言えばただの西洋風の家でしかないのだが……その家には何か呪術というか……何かしらの結界が張られているのが見えた。

一般人にはわからないだろうが、少なくとも俺には使えず、またどれほどすごいのかもわからないほどの高度な結界が張られていた。

明確に言えば「結界」と言うわけではないかもしれないが……外敵の侵入を阻むという意味では一緒なはずだった。

 

何があるのかわからんし、誰が住んでいるのも謎だが……一筋縄ではいかないだろうな

 

『戦闘することが前提なのだな?』

『アレはどう見たって侵入者妨害用の術式だ。となると中に何か見られたくない物が入っていると言うことだ。別に侵入するつもりはないが、術を使って……しかも高度と思われる術を使用しての結界だ。何か事が起こっても不思議はない』

『あぁ。この地はどうやら普通の土地ではないらしい。あの龍脈の大きさがそれを物語っている』

 

……確かにな

 

俺は封龍剣【超絶一門】の意見に同意した。

あの龍脈は相当の規模だ。

この世界……裏がどうなっているのかは知らないが、裏の規模によっては……何かが起こるかもしれない。

 

……平穏に暮らしたいのだがな

 

それも儚い願いと言うことだろうか。

それはまだわからないが……とりあえず覚悟だけはしておくことにした。

 

『今日はこれくらいにして一旦帰ろう』

『む、もうか? もう少し探索はしなくて良いのか?』

『したいのは山々だが……とりあえず地盤を固めよう。家と店の掃除は終わったが、後は生活用品の買い出しだな』

 

俺は封龍剣【超絶一門】にそう言うと、木から一息に飛び降りた。

そして日用品……歯ブラシ、タオルなど……の買い出しへと向かう。

幸いと言うべきなのか、型が古くはあったがテレビもあったので、そう言った電化製品は買う必要性がなかった。

さらに言えば生活用品の布団なんかもあった。

 

グゥ~

 

俺の腹から実に気の抜けた音が鳴った。

俗に言う腹の虫という奴だ。

 

『うん、腹も減ったし、飯を食べに行こう』

『……私もいるのだが?』

『全体を覆っているから大丈夫だろう。ちょっとした認識阻害も掛けているからそうそうばれはしない』

 

封龍剣【超絶一門】の不安を俺は否定した。

認識阻害を掛けているのでよほどのことがない限りはばれない。

しかも俺が背負っている黒い布で包まれた板状の物体が、よもや巨大な双剣だと思う者はいないはずだ。

昼間の人通りがある商店街で、堂々と歩いているので職質を掛けられることもないだろう。

見た目は俺はまだ若者に分類されるし。

数日働いた藤村組の雷画さんより、好意で結構なお金を頂いたので、豪勢は出来ないが普通に食事をすることは出来る。

 

……マジでどうやってご恩を返すか

 

働いて稼いで恩返しするしかないのだが、戸籍、調理師免許、住居……それだけで一生掛けても返せないような恩を受けてしまっている。

 

……考え出したらきりがないか

 

とりあえず死ぬ気で頑張るしかないので、一旦考えるのをやめる(現実逃避)。

そして生活用品も買わないといけないので、とりあえず下見もかねて商店街「マウント深山」へと向かった。

 

 

 

「だぁ~~~~~。とりあえず終了~」

 

私はとりあえず本日の仕事を一通り終えて自分に割り当てられた机に突っ伏した。

やはり新学期というのは……というか新年度の新学期である四月は本当に忙しい。

入学式に始業式、発育測定、保護者会といった大変な行事が多数並ぶ。

それに伴って新しくなったクラスメイトや、授業なども考えないといけない。

生徒だけでなく、教師にとってもクラス替えというのは結構大変なのだ。

とりあえず最初の課題として、自分が受け持つクラスの子達を覚えないといけない。

私はクラス名簿を手に取り開いた。

 

えっと、よく知っている子は……間桐(まとう)君、柳桐(りゅうどう)君、それに……士郎(しろう)

 

衛宮士郎(えみやしろう)

私の家、藤村組の親分である私のおじいちゃんと親しかった、切嗣(きりつぐ)さんが十年前に起きた、冬木市の大火災で唯一生き残った子を引き取った。

その大火災の唯一の生き残りが士郎だったのだ。

私とも親しくしてくれた切嗣さん。

五年前に他界したときに、私は切嗣さんに誓ったのだ……。

士郎が立派な男の子に育つまで親代わりになるって。

 

そっかぁ……切嗣さんが死んでからもう五年も経つんだぁ……

 

養父だった切嗣さんが死んでも士郎は泣かなかった。

悲しかったら泣いてもいいのに。

そんなどこか頑なに見える士郎を見守ってきた。

そんな士郎もついに高校二年生になった。

何年も見守ってきたけど……体つきは随分と立派になっていた。

毎日鍛錬も行っているみたいだし。

 

だけどね~。もうちょっと他の事にも目を向けてもいいと思うんだけど……

 

何というか……士郎はどこか危うく見えて仕方がなかった。

別に素行が悪かったり、不良というわけじゃない。

どちらかと言えば優等生……学業はそこまで優秀というわけではないけど……の部類に入るだろう。

そういった書類上のではない、内面がどこか危なっかしいのだ。

でも具体的にはどこが危ないかは……私にもよくわからない。

 

まぁ……あんな災害の被害者じゃ無理もないの……かな……

 

でもそれにしたってもう少し周り……もっと具体的に言えば桜ちゃんの事をもっと気に掛けるというか……のことにも気づいてもいいと思うのだけれど。

 

士郎にはまだ速いのかな?

 

色恋沙汰に関しては、私もそんなに経験があるわけではないのでよくわからない。

けどあそこまで……それこそ通い妻のように毎日食事を作りに、あるいは一緒に作って食卓を供にしている異性の事を、もっと気にしてもいいと思う。

 

まぁ異性と言ったら私も入っちゃうけど……

 

私、藤村大河、士郎、そして士郎の後輩の桜ちゃんとの三人で、朝ご飯と夕食を食べるのが、衛宮家の定番だった。

 

「藤村先生」

「あ、はい」

 

クラス名簿を見て物思いにふけってしまっていた。

私は呼ばれて慌ててその私を呼んだ人へと顔を向けた。

 

「授業のことで話があるのですが、よろしいですか?」

「はい、葛木先生」

 

私に話しかけてきていたのは、社会科教師で生徒会顧問の葛木宗一郎(くずきそういちろう)先生だった。

とても寡黙な人だけど、悪い人じゃないっていうのは私には何となくわかるし、授業もしっかりとこなすので私にとっては好感の持てる人だった。

またよく相談事にも乗ってくれる。

私は葛木先生と今後の授業方針を話し合い、そしてその後やっと弓道場へと向かった。

 

「やっほ~。美綴ちゃん。今日はどんな感じかね?」

「あ、遅いですよ藤村先生。今日は今年の方針とかを決めるって言ったの先生ですよ?」

 

弓道場へと入って、私が真っ先に声を掛けたのは、正規練習前の準備運動を行っている姉御のような美人の女の子だった。

名前を美綴綾子(みつづりあやこ)

弓道部の一年……いやもう二年生だった……二年生の中でも結構な腕前を持っている。

なんでも結構な数の武道を経験済みで一番得意なのは薙刀だという。

唯一弓に関しては全くの素人だったために、入学当時進んで弓道部に入部した初心者だったんだけど……今では部長候補の一人で文武両道の美人さんだ。

面倒見なんかもすごくよくて部活ないだけでなく、運動部全般で信頼を勝ち取っている。

 

「いやぁ~、ごめんね。授業方針でちょっと話し合ってたからさ。新入生とか見学に来た?」

「入学したばかりだからか、見学にくるやつはいないですね」

 

ふ~む。今年はどれくらい入るのかなぁ?

 

美綴ちゃんが結構な美人さんなので、入ってくる生徒は多いと思っていたのだけれど。

 

……まぁでも桜ちゃんを引っ張ってくればいいかな?

 

そこで私は少し引っ込み思案と言えなくもない、士朗の家の通い妻とも言える、間桐桜(まとうさくら)ちゃんのことを思い浮かべた。

士郎の事を好いているのは直ぐにわかるのに……あの子は全く気づいた様子もない。

そこらをどうにかしないといけないとは思いつつも結構難しかったり。

 

とりあえず何か部活動した方が桜ちゃんにもいいだろうし。今度提案してみよう

 

具体的には今晩辺りに……。

私はそんなことを考えながら道着へと着替えるのだった。

 

 

 

「……ここがマウント深山か」

 

山の頂上より普通に歩いて数分後無事到着。

そこそこ活気があるようで、買い物客……主に主婦……でにぎわっていた。

どうやら食事関係が主なようで、娯楽施設はないようだ。

他にも花屋や、骨董品などがあるようだ。

また、ちょうど下校時刻だからか、学生もちらほらと見受けられる。

確かに学園からそう遠くない場所にあるので、帰り道に買い食いをして帰るのが普通なのだろう。

 

時刻は……三時か

 

腹が減ったのでここに来たのだが……中途半端な時間に来てしまった。

だが腹も減っていることは事実なので、俺はとりあえず中華料理屋に入り、ラーメンを食することにした。

店の名前は「泰山」。

どうやらなかなか本格的な中華料理屋なようだ。

そこにてひとまずラーメンを食す。

半年ぶりに食ったラーメンはなかなかうまい物であった。

そして小腹を満たした俺は、色々と食材屋を見て回る。

嬉しいことに、精肉屋、魚屋、八百屋と……スーパーなどと違い、専門店とも言える店が多数合ったのは嬉しい誤算だった。

ある程度は食材を見分けて、いい食材ばかり厳選して買ってやった。

その際店主達が苦笑しつつもニヤリと、「やるな坊主」みたいな笑みをしていたので、俺もニヤリと返した。

 

そのやりとりで、店の店主達に魂を感じた俺は、後日食材仕入れの関係の話をさせてもらおうと心の中で思ったのだった。

その後己の開店前の店へと帰宅。

食材関係を店の巨大冷蔵庫にぶち込み、店の開店準備を進める。

そしてこれも幸いなのか……はたまた雷画さんが気を遣ってくれたのかはわからないが……食器類や机にイス、といったものも特に問題がある物はなかった。

のでやることがなく手持ちぶさたになってしまう。

 

そうだ……。暖簾でも作るか……

 

暖簾は以前の店主が記念品として持ち帰ったのか、はたまた棄てたのかどうかは謎だが、暖簾はなかった。

ので俺は早速布を取り出し、暖簾にちょうどいいサイズに切る。

色は黒。

次に文字を型抜きする。

紙に筆で店の名前を書いて、それを元に白い生地の物体に下書きを行いそれに沿ってハサミで切断。

そしてその文字を下地である黒い布に縫いつけていく。

文字と下地に空洞が出来ないように、糊なんかで下地と文字の布を貼り付けておくのも忘れない。

そしてそれをしばらく放置する。

糊が乾いたら完成だった。

 

「……ま、こんなもんか?」

 

『よいのではないか?』

 

そばに置いておいた封龍剣【超絶一門】が賛同の意を示してくれる。

俺はそれに礼を言いつつ、完成した暖簾を広げた。

もちろん、店の名前は……

 

『和食屋』

 

だった。

モンスターワールドでも俺が経営していた店の名前だ。

俺がこの世界でも飲食店をやると決まった時点で、この名前以外考えられなかった。

 

定食屋だけど……まぁいいか

 

しかしそこで気づく事実が一つあった。

 

「……暖簾を掛ける棒がねぇ」

 

てっきりあると思っていた暖簾を通すための棒が存在しなかった。

結構想定外の出来事だった。

が、すでに外は夜。

そこまで遅い時間ではないが、おそらく商店街はすでに閉まっているだろう。

また閉まっていなくても暖簾に使えるような棒が商店街に売っているかどうかも謎だった。

新都まで行けばあるだろうが……今から出かけるのも正直面倒だった。

 

「……明日でいいや」

 

と、俺は暖簾に関してはとりあえず放置することにした。

そして晩飯の時間になったので、俺は軽く食べられる料理を作るのだった。

それを食し、久しぶりに気兼ねなく就寝……藤村組では人が多いこともあってあまり熟睡できなかったのだ……する。

久しぶりに布団に入ったので、その感触を楽しんでいたのだが……疲れたのか俺は直ぐに眠りについた。

 

 

 

次の日。

まだ日も昇りきってない早朝に俺は目を覚ました。

そして一通り修練を行い終えた俺は、朝飯を作ろうとした。

がその前に……。

 

暖簾作ったし掛けてみるか

 

昨夜作り終えた暖簾を、せっかくなので掛けてみることにしたのだ。

だがそこで問題が起こった……というか問題を忘れていた。

 

……暖簾の棒がないんだった

 

暖簾の棒がないことを思い出した。

今日買いに行こうと思っていたのだが……それをすっかり失念していた。

だがこうして掛けようと表に出てきたにもかかわらず、このまま何もせずに終わるのはなんか納得が出来なかった。

 

う~ん。どうするかぁ~。棒……棒……。………………あ

 

そこで俺はふと、棒であって棒でない存在のことを思い出した。

そしてそれを取りに行く。

認識阻害の呪符を貼り付けた湾曲した長い木の棒。

 

全長3mあまりの、超野太刀「狩竜」である。

 

こいつでいいかな~?

 

とあり得ないほど馬鹿げた事を考えてみる。

そして皮肉にも試しにつけてみたら……反り具合がちょうどいいというか……なんか俺的にぴったりだったのでそのまま採用しようと思ってしまったのだった。

 

まぁ暖簾棒盗もうとする奴もいないだろうし……

 

「あれ? こんな早い時間からお店やってるんですか?」

「ん?」

 

狩竜に掛けられた「和食屋」という暖簾を見つめている俺に、声が掛けられた。

訓練後なので少し時間は経っているがまだ六時位だ。

しかも休日の早朝である。

声からして若い女の子だった。

 

こんな朝早くに一体誰が……

 

俺は声がした方へと振り返った。

 

快活そうに見える、短めに着られた髪の毛。

特に変にいじっている様子……髪の毛を染める、ピアス等……は見受けられなかった。

 

というか……随分と綺麗な子だな

 

年齢がいくつかはわからないが……大学生と言うことはないだろう。

どこか……成長し切れていない感じがする。

あまりじろじろ見るのも何だったので、俺は直ぐに相手の分析をやめた。

 

「何かご用でしょうか?」

「え、いやご用って言うか……こんな早い時間にお店を開くんですか?」

 

あぁなるほど。暖簾掛けてたらそら勘違いするわな

 

暖簾がかかっていればその店は営業中、逆に言えばのれんが掛かっていなければ営業してない、といえる。

確かに俺は作った暖簾がどんな感じになるのかを確かめるために、暖簾を掛けたのだが……それを見ていなければ確かに俺が開店のために暖簾を掛けたと勘違いしても仕方がないだろう。

 

「申し訳ありません。まだ開店準備が整っていないのですよ。昨夜暖簾を作ったのでその具合を確認していただけでして……」

「そうなんですか。残念です。ここ、私のランニングコースなんで前のお店が閉まっちゃったことも知ってて。新しいお店が入ると思ったら嬉しかったので」

「ランニング? 何か……部活でも?」

 

一瞬言い淀んだのは、聞いていいのかと言うことと、この女性が学生かどうか測りかねたからだった。

さすがに俺も女性に年齢を聞くのはまずい程度の認識はある。

 

「はい。弓道部に所属してて。その体力作りです」

 

こんな朝早くに感心だな。しかも休日だというのに

 

俺はこんな朝早くからランニングをしているこの少女のことを素直に感心した。

しかもどうやらその身のこなしから弓道だけじゃなく……他にも武道を嗜んでいるようだった。

意識的にしたのか……それとも無意識なのか謎だが、間合いの取り方がすごく自然だった。

 

この間合いは……長巻……いやどちらかというと……薙刀……か?

 

明確なところは聞いてみないとわからないが、そこそこの長さを有する得物を使うような間合いの取り方だった。

少なくとも剣道ではない。

けっこう出来るようだった。

まぁそれでも俺が負けることはないだろうが……おそらくは一般人だろう。

 

大した物だ……その若さで

 

部活と言うからにはおそらく高校生だろう。

高校何年生かは謎だが、相当修練したのは直ぐにわかった。

そしてこんな朝早くにランニングをしているこの女性を好ましく思ったのだ。

 

「……この後予定は?」

「? ないですけど」

「ならちょうどいい。入ってください」

 

俺は有無を言わさずにそう言うと、暖簾が掛かったままの狩竜を手に持ち、店内へと入っていく。

出会ったばかりの男に、店に入れと言われて警戒されると心配したが、俺にそんな思惑はないと理解してくれのか、はたまた危機意識がないだけか……おそらくは前者……少女は俺に続いて店内へと足を踏み入れる。

そんな少女にカウンターの席を進め、俺は厨房へと入る。

 

「申し遅れました。俺の名前は鉄刃夜、もうそろそろで十九の若造です」

「こ、これはご丁寧に。私は美綴綾子。この近くの穂群原学園に通ってます。というか私よりも二つ年上ですから敬語はいいですよ」

 

互いに軽く自己紹介を済ませる。

俺はそれを行いながら手を洗い、食材を取り出した。

 

「あの、まだ開店してないって……」

「まぁまだ開店前なんだが、若者の意見を聞きたくてね。試食でもしてもらおうかと思ってな」

「若者って……。もしかして……この店の主人なんですか?」

「あぁ」

 

俺は美綴さんに返答しつつ、俺はネギを細切れにする。

包丁は雷画さんの伝手でいいのを扱っている刃物屋を紹介してもらい、満足のいく包丁を手に入れていた。

中華だしの汁を温めて、その中に刻んだネギと戻しておいたワカメを投入する。

それと平行して、トマトと卵をフライパンで炒める。

そして最後に、少なめにご飯を茶碗によそう。

 

所要時間は十分くらいだ。

出し汁はすでに自分の朝食のために作ってあった。

ごはんも同様だ。

 

「ヘイお待ち」

 

そう言ってカウンターに俺は今作った物を並べる。

少なめのご飯と、卵とトマトの炒め物、そしてネギとワカメの中華スープだ。

まだ早朝だと言うことと、あまり女の子に朝からがっつりした物を食べさせるのもアレだと思ったので、俺はさっぱりした……低カロリーな……朝食を作った。

そしてそれを出された少女美綴さんは……。

 

「えっと……これって?」

 

戸惑っていた。

まぁ何も言わずに飯を出したのでそれも当然だろうが。

 

「開店前なのは事実なんだが、感想を聞きたくって」

「……いいんですか?」

「構わないさ。遠慮無く食ってくれ。それに朝早くから修練を行っている感心な若者に対するご褒美だ。早起きは三文の得ってね」

「……そう言いつつ、お得意様にしようとしてません?」

「……ばれたか」

 

あっさりと俺の目的の一つを見抜かれた俺は苦笑した。

実際、穂群原学園に通っているというのならば、口コミで評判が広がると嬉しい。

近くに学園があるというのならばそれをターゲットにしないのはバカのすることだ。

雷画さんに借りが大量にあるので、少しでも返したい。

 

まぁこの感心な若者に対するご褒美というのも嘘じゃないのだが

 

「それじゃ遠慮無く。頂きます」

 

手を合わせ、美綴さんが食事を開始した。

俺はそれを横目で眺めつつ、水をコップに注ぎカウンターに置いた。

 

「あ……おいしい」

「お? そうか? それはよかった」

 

どうやら予想以上においしかったのか、美綴さんは思わずといったように感想を漏らしていた。

そしてそう言った思わず口から出た言葉というのは往々にして嘘がない。

腕に自信はあったが、どうやらこの美綴さんの口にもあったようだった。

そのまま箸が進むままに、綺麗に平らげてくれた。

 

「ごちそうさまでした」

「はい、お粗末さん」

 

あまり時間も掛けずに、美綴さんは食事を終えた。

俺はその気持ちのいい食べっぷりに苦笑しつつ、暖かいお茶を注いだ湯飲みを置く。

 

「どうだった?」

「いやぁ、すごくおいしかったですよ! これならまた来させて欲しいですね」

「ならよかった」

 

嬉しそうに笑みを浮かべながら話すこの姉御肌の少女に、俺はさらに好感を覚えた。

美綴さんも満足だったのか、嬉しそうに話してくれた。

 

「また来ますね」

「あぁ、近いうちに開店するから是非来てくれ」

 

少しばかり話をして、美綴さんは帰宅すると言ったので表まで見送った。

よほどお気に召してくれたのか、終始ご機嫌だった。

 

「今度は出来たら友達なんかも連れてきてくれ。美綴さん」

「さ、さん……?」

「? 何かまずかったか?」

「え、イヤ……。あまりさん付けで呼ばれたことないので違和感が……。出来たらやめて欲しいかなって……。年上なんですから」

「そうか? なら……美綴、でいいのか?」

「……う。はい。そう呼んでもらえると」

 

照れくさいのか、若干頬を赤らめつつ美綴さ……美綴がそう言った。

 

「なら俺のことも好きに読んでくれ。呼び捨てでも構わない」

「年上の人にそれはさすがに……。鉄さんと、呼ばせてもらいます」

「分かった」

 

俺はそれを承諾し、そのまま別れた。

 

……これで少しでも広まるといいが

 

が、肝心の店がまだ開店していないのでは間抜けにもほどがある。

俺は急いで準備を行うのだが……。

 

 

 

「たのも~~~~~!!!!!」

 

 

 

美綴が帰ってからひたすら料理の研究をしていて時刻はすでに夕方を超えて夜の七時。

必死になって食事を造っていると突然店の引き戸が開けられた。

それも激しく荒々しく。

その言動で俺は直ぐに……いや気配ですでにわかっていたけども……開いた相手を認識した。

 

「……何のようでしょう? 藤村大河さん」

 

鍋の前で火の様子を見ながら俺は顔も向けずに話す。

それを見て大河がぶ~ぶ~と文句を言ってくる。

 

「扱いがぞんざいだ~! やり直し! やり直しを要求する!!!!」

「何をやってんだ藤ねえ」

 

その藤村大河に続き、一人の青年が店へと足を踏み入れつつ、藤村大河を叱っている。

俺よりも少し低めの身長。

だが体はそこそこに引き締まっているのがTシャツ越しでもわかった。

そしてそれ以上に……何か雰囲気に違和感があった。

だがそれが何かは……わからない。

 

中に何か、とんでもない物を眠らせているような……俺の龍刀【朧火】のような……そんな感じがした。

 

……何だ?

 

だが見ただけではわからない

俺の修行不足もあるだろうが、それ以上にこの男と一体化している感じだ……。

 

「藤村先生。あの、ここって勝手に入ってもいいんですか?」

 

そしてその次に入ってきたのは……少女だった。

肩当たりまでかかっている癖のないストレートな髪。

向かって右側……つまり左側の髪をリボンでまとめている。

おしとやかと言うか……穏やかな雰囲気の少女。

何というか、女性らしい体格をしている。

ようするに出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる。

 

そんな女の子なのだが……俺は何か強烈な違和感を感じていた。

 

この少女に、得体の知れない何かがあると……、俺の本能が告げていた。

 

……なんだ?

 

だがその違和感の出所というか……何に違和感を感じているのかがわからなかった。

無理矢理な上に失礼な例えだが、まるで強烈な腐敗物に蓋をして、その周りにその匂いを隠すために大量に芳香剤を置いている……本当に失礼極まりないが……ような、そんな感じだった。

 

あるはずの物をないとするために……何かをしている……そんな感じだった。

 

「大丈夫よ桜ちゃん。ここ元々お店で、おじいちゃんと知り合った人が近々開店するからその下見もかねてるの」

「そうなんですか?」

「そ~なの。だから気にしなくていいの!」

「確かに気にしてはいないが……事前に連絡くらいはして欲しかったな」

 

天真爛漫というか……もう子供のようにはしゃぐ大河に俺は呆れながら鍋の火を止めた。

そしてとりあえず三人を四人がすわれる机に促した。

 

「いつごろ開店できそうなの?」

「それよりもまず連れてきたお二人の事を紹介して欲しいのだが……。まぁいい。先に言おうか。俺の名前は鉄刃夜だ。そろそろ十九になる。雷画さんの恩恵で、ここで店を構えることになった」

「雷画じいさんの?」

 

まぁ大河が連れてきたんなら、雷画さんと知り合いでも不思議はないな

 

少年の反応で雷画さんと縁がある事がわかる。

 

「そう、雷画じいさんの。出来たら名前を教えてくれないか?」

「あ、すいません。俺の名前は衛宮士郎です。藤ねえとは……まぁ小さい頃からの付き合いです」

「そう、私の弟分。それでこっちのかわいい女の子が士郎の後輩の間桐桜ちゃん」

「は、初めまして」

 

大河に紹介されて緊張しつつも、俺に頭を下げながら挨拶をしてくる間桐桜さん。

衛宮士郎君も同時に頭を下げた。

 

「ところで藤ねえ。今日は一体どういうつもりなんだ? いきなり夕方突然電話してきたと思ったら、晩ご飯作らなくていいなんて」

「いやぁ~。桜ちゃんには申し訳ないと思ったんだけどね。士郎と料理が出来なくなるから。でもそれでも士郎のことを鉄さんに紹介したかったのよ」

「ふ、藤村先生! 私……別に残念だなんて思ってません!」

「何が残念なんだ? 料理なんて面倒なだけだろう? 俺は好きだからいいけど」

 

あ~そう言う関係ね

 

今のやりとりで何となくこの三人のことを把握した。

大河の弟分である衛宮士郎のことを、間桐桜という少女は好いていてそれに衛宮士郎は気づいていない。

そんな間桐桜を、大河は応援しているというわけだ。

 

料理を作るとか言っているが……まぁいい

 

そこまで重要なことではない。

とりあえずこの三人の立ち位置さえわかれば他はある程度どうでも良かった。

 

「ひょっとしなくても、この人に飯をたかりに来たのか?」

「違うよ~。私はね、士郎にもっともっと料理の腕を上げて欲しいから、こうして身近な場所で、しかも大して年も離れていないのに、お店を開こうとしている人の元に案内したんじゃない! お姉ちゃんの愛に感謝するべきだぞ」

「ふ、藤村先生。言っていることはその通りかもしれないですけど、その……たかっているのは間違ってないと思いますよ?」

「全くだな。まぁ……雷画さんの孫娘の大河が来たなら無下には断らないが。感想も聞きたいしな」

 

すでに自分の分の食事兼、メニュー研究を行っていたので料理自体は豊富にあった。

それをでかい皿に盛り、それぞれを机の上に持って行く。

和洋中に別れた三つの大皿と、それを取り分けるための小皿、そしてご飯を茶碗に盛る。

 

「きたきた~! さすが鉄さん! もう料理作ってたんだ!」

「別に大河が来るのを予想していた訳じゃないのだが……。メニュー研究のために作っていただけだ。まぁ遠慮無く食ってくれ」

 

そう言いつつ、俺はコップに水を注ぎそれぞれの前に置いた。

そんな俺に礼を言いつつ、衛宮士郎と間桐桜が食事を始める。

……ちなみに、とっくに大河は箸をつけて飯をかっ込んでいた。

 

いただきますときちんと言っていたのは評価しておこう……

 

「!? う、うまい」

「……おいしい」

 

合格点……かな?

 

それぞれが料理を口に入れると、ぽろっとそんなことを口にしていた。

二人とも味わう以上に、どこか真剣な面持ちで料理を口に運んでいる。

どうやら二人とも料理にはそこそこ腕に自信があったようだった。

 

「どう士郎? おいしいでしょ?」

「あぁ……悔しいが完敗だ」

 

口惜しそうに、衛宮士郎が口にしている。

実際本当に悔しいのか、本当に悔しそうにしていた。

 

「せ、先輩。私は先輩の料理……大好きですよ」

 

おいおい……これで気づかないのかよ

 

驚くべき鈍感っぷりに俺は驚きを隠せなかった。

だがそれでもうまくやっているようなので、部外者の俺が口を挟むことでもないだろう。

 

「どう? おいしいでしょ~」

「あぁ……うまい」

「本当においしいです」

「っていうか何でお前が偉そうなんだ? 大河」

 

俺は何故か偉そうにしている大河に呆れつつ、自分の分も飯をよそった。

そしてまぁ初対面と言うこともあり、若干ぎくしゃくしつつも、穏やかに食事を続ける。

それによって俺たちは知り合いになり、まぁ……そこそこ親しくなった。

 

衛宮士郎のことは呼び捨てで士郎と呼び、士郎は俺のことは刃夜と呼ぶ。

間桐桜ちゃんは、間桐さんと呼ぶことにした。

さすがにあそこまで露骨に好意を向けている……恋心を抱いている女の子の名前を呼ぶ気にはなれなかったのだが……。

 

「あの……鉄さん」

「ん?」

「できたらその……名字で呼ぶのはやめてくれませんか?」

 

あれま

 

帰り際にこういわれてしまった。

俺としては呼ばない方が良かったと思ったのだが……どうやら本人はイヤだったらしい。

本人がイヤだというのならば、無理に呼ぶこともない。

 

なので俺は……

 

「ならば俺も大河と一緒で桜ちゃん、でいいかな?」

「はい」

 

笑顔で桜ちゃんがそう返事をする。

そうして三人は帰って行った。

何でか一人でなくなった食事を終え、俺はとりあえず店を閉めることにした。

 

まぁ元々開店していなかったが……

 

大河に振り回されてしまった。

まぁそのおかげで宣伝してくれそうな人間も増えたのでよしとしておく。

 

さて……とりあえずもう少し作業を続けるか

 

まだ時間が早いので、俺はこのままメニューをどうするかを考えることにした。

 

 

 

どうすれば俺は己の世界に帰ることが出来るのか……それはわからないままだが、ともかく拠点が手に入ったのは嬉しい誤算だろう。

 

とにかく……何とか見つけなければならないだろう……。

 

俺が真に帰りたい家への……帰り道を……。

 

 

 




はいとりあえず終了!
今回は舞台となる「冬木市」というものがどんな地形なのか、どんな施設なんかがあるのかを解説する回となりました。
一応、原作を知らない方にもわかるように書いたのですが……いかがでした?
わかりにくいとか、もしくは足りない物があったりとかありましたらご一報いただけると嬉しいです。
作者自身、そして友人達もステイナイトはもう数年前の作品でして……(誰だってそうだろうけど。大好きだが)ぶっちゃけ細かいところは覚えていないんですよ。
具体的には桜が弓道部に入部した時期とか……どうして弓道部に入部したのとか……。
だからもうね……

忘れてるし、この話って刃夜の物語だから別にいいや!

と思ってて、多分桜の弓道部入部うんぬんかんぬんは多分描写しません。
そこらへんは突っ込まないでくれると嬉しいです!

あ、でも、明確な理由とかご存じの方は教えて下さると嬉しいです!

設定など感想などに書き込んでくれると非情に助かります!

ステイナイトは人気の作品なので、モンハンのようなミスは許されないと思いますので……

とにかく! こんな話となりました!
次は「あかいあくま」「うっかり娘」のあの方が登場です!

こうご期待!


ハーメルンにて追記
久しぶりにPS2起動してプレイしたぜ!?
結構忘れているもんですね~
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