月夜に閃く二振りの野太刀   作:刀馬鹿

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遅くなった言い訳ですが、数年ぶりに39.7度の高熱を出しましてw
インフルエンザではなかったのですがw
少々きつかったですw
皆さんも体調管理には気をつけましょうw




二 御君へ捧ぐ雷

最後の一手

 

それはつまり互いに最後の剣戟と捉えていることに他ならない

 

一撃ではないということが重要だった

 

それはつまり、一手ではあるが一撃ではないということを意味している

 

小次郎は当然のごとく、燕返しを行うのだろう

 

燕返し

 

気力も魔力もなく……ただ純粋な剣技のみで、多重次元屈折現象という……

 

 

 

三つの斬撃を完全に同時に放つ神業

 

 

 

野太刀という、通常よりも遙かに間合いのある刀で行われる三つの斬撃を、避けきるのははっきり言って不可能と言っていい

 

しかも以前と違い、小次郎は黒い泥によって身体能力強化がされている

 

その歪とも言える身体強化を、確実に己の物にしている技量

 

強化された身体から繰り出される燕返しは、果たしてどれほど鋭くなっているのか?

 

強くなる必要はない

 

ただ以前よりも疾くなればそれでいい

 

相手が刃夜であるのならば攻撃力は不要だった

 

気力壁と魔力壁で防御しているとはいえ、それを切り捨てることは、以前の小次郎でも出来たことなのだから

 

刃夜の一手よりも先に、小次郎が己が刃を刃夜に届かせれば、それで終わる

 

だが……それには一つの障害があった

 

 

 

相も変わらず……長い太刀よな……

 

 

 

刃夜が手にする、超野太刀狩竜の存在である

 

小次郎が手にした野太刀よりも遙かに長い間合いをもつ、竜を狩るために生み出された超尺の野太刀

 

小次郎が刃夜を切り捨てるには、狩竜の間合いを踏み込み、自らの間合いに入らなければならない

 

小次郎には魔術や魔法といった、剣技以外の技術はない

 

故に初手は絶対に、刃夜が振るうことになる

 

以前の刃夜の剣ならば、容易ではないとはいえ受け流すことが出来た

 

だが今の刃夜の剣に、ぶれも迷いもなかった

 

小次郎が魔力の身体能力強化を会得したのと同じように、刃夜も剣技を磨いていたのだ

 

そして……それだけではない

 

 

 

「磁波鍍装、蒐窮」

 

 

 

ぼそりと、刃夜が呟いた言葉とともに……先ほどまでほとんど光源のなかったこの空間に、新たな光が生まれる

 

その光は瞬いては消え、瞬いては消える

 

それが幾重にも重なり、新たな光源となっていた

 

空気を震わすのは……刃夜が手にした超野太刀より発せられる、稲光

 

 

 

やはりそれで来るか……

 

 

 

一度朝の斬り合いの時に見せた、電磁の力を用いた音速すらも易々と超える、剣

 

刃夜も小次郎と同じく、強力すぎる力はこの場では不要なのだ

 

ただ、相手よりも先に刀を……刃を……

 

相手に届かせればいい

 

故に最速の剣を、最強の刀でもって行う

 

ただそれだけだった

 

だがただそれだけを行うのも刃夜にとっては、かなりの集中力を必要とした

 

何せ今行おうとしている電磁抜刀は、鞘がない

 

雷月で行う電磁抜刀は、鞘があったためまだ電磁の制御だけでどうにか行えた

 

だが、今電磁抜刀を行おうとしているのは超尺の野太刀、狩竜だ

 

鞘を用いての電磁抜刀は、その長さ故に行えない

 

故に今刃夜が行っているのは、何もない空間に電磁を集中させて架空の鞘を中空に造り上げている

 

その電磁の制御は、今まで行ってきた電磁の力加減との比ではなかった

 

だが今は聖杯が満ちようとしている影響で、大気の魔力(マナ)濃度が上昇している

 

それに呼応して刃夜の首元にある「たてがみの首飾り」が呼応したおかげで、電磁の制御が以前よりもあがっていた

 

今も極限の集中力を持って、刃夜は電磁の力を収束している

 

刃夜の様子を見れば、最大の切り札であることなど、疑いようもなかった

 

しかし……

 

 

 

本当に……それだけか?

 

 

 

小次郎は考える

 

刃夜が電磁を用いた剣を振るってくるのは、当然予想できていた

 

刃夜であれば、直接電磁の力を用いることの出来る碧い刀以外にも、電磁を纏わせることが出来るのは不可能ではないだろうと思っていた

 

その予想は違えることなく、電磁の力を狩竜に注いでいた

 

だが、本当にそれだけなのか?

 

あまりにも激しく電磁の稲光を放つ超野太刀に目を奪われるが……しかし小次郎はしかと見ていた

 

 

 

右腰に差した、あの刀……

 

 

 

刃夜は右腰に、左手で抜けるように碧い刀、雷月を携えていた

 

それはつまり、電磁抜刀が超野太刀だけでなく、腰に差した打刀雷月でも使用が可能かもしれないと言うこと

 

音速を超える剣戟を連続で繰り出されれば、さすがの小次郎もそう簡単には、受け流すことも、避けることも出来ない

 

だが……

 

 

 

間合いは……あの野太刀に比べれば圧倒的に短い……

 

 

 

異世界の怪物の素材を用いて鍛造された、電磁を操ることの出来る打刀、雷月

 

拵えも刀身も普通ではない打刀ではあるが、刃渡りは打刀と同じ長さ

 

ただ振るうだけでは……左手で柄の端を持って切りかかってきても、小次郎は雷月の間合いの外である

 

身体能力でどうにか間合いの長さをカバーすることが出来るだろうが、仮に連続で斬りかかってくるのであれば

 

 

 

あの野太刀を振るった後では、そう素早い動きは出来まい……

 

 

 

超尺の野太刀である狩竜を振るうというのは、それだけ凄まじい力を必要とする

 

ましてや普段のように普通に振るうのと違い、狩竜で電磁抜刀を行った後だ

 

その力を押さえ込むには、それ相応に力が必要だ

 

故にまともに動くことも出来ないだろう

 

だが……それでは右腰に碧い刀を差す理由とは?

 

届かないはずの剣を切り札とするはずがない

 

 

 

ならば……腰の刀を囮にした一撃目が本命か?

 

 

 

電磁によって加速された威力は、凄まじい威力を誇るだろう

 

それこそ受け流そうとする小次郎の野太刀ごと叩き斬ることが可能なほどに

 

これがはったりなのか……?

 

もしくは他に何か手があるのか……?

 

わからないが……小次郎にはそれは最早どうでもいいことだった

 

 

 

何を恐れる必要がある……

 

 

 

もっとも望んだ行いが、今この瞬間にあるのだ

 

それを避けて通ることなど……それこそ死んでもする訳がない

 

当然小次郎にも恐怖はある

 

黒い陰に飲み込まれていく中で心の底を解き放たれて、思ったこと

 

それは、この殺し合いが行えなくなってしまうことだけだった

 

すでに死している身

 

聖杯が誠であれば生き返ることも可能である

 

だが、小次郎は二度目の生などに、興味はなかった

 

ただ、刃夜との……生涯一度も斬り結ぶことなく果てたその先で出会うことの出来た、真に斬り合いたい相手と斬り結ぶこと

 

それだけが小次郎にとって、今この場にいる理由なのだ

 

 

 

結末などどうでもよい ただ私は其処に至る過程を楽しみたいのだ……

 

 

 

元々死している身

 

ならば死すらも恐れる理由にはならない

 

刃夜に斬られようと、刃夜を斬り捨てようと、その果てにあるのは、死でしかない

 

ならば、心から渇望するほどに望んだ相手との斬り合いを、この行為を

 

心の底から楽しむだけだった

 

 

 

そして小次郎が覚悟を決めた……

 

 

 

刃夜の間合いに踏み込み……自身の絶対の一を放つと

 

秘剣、燕返し

 

だが身体能力が強化された小次郎が行う燕返しは……果たしてどれほどの剣の冴えを見せるのか……?

 

鈍るなんてことはありえないと、刃夜は微塵も疑っていなかった

 

身体が強引に強化されたのすらも完璧に制御した心技で、小次郎はただ、唯一無二の剣を振るうのみだ

 

 

 

果たして……うまくいくか……

 

 

 

電磁の力を制御しながら、刃夜は心の中で呟いた

 

間桐臓硯の虫を警戒し、ただの一度しか行わなかった、小次郎を殺すための剣技

 

それがうまくいくのかどうか

 

だが……

 

 

 

今俺が出来る剣技(・・)はこれしかない……

 

 

 

刃夜は小次郎との勝負にこだわった

 

それは小次郎と斬り合いを行うのは……死合を行うのは己であると、自らが欲求したからだ

 

だから、刃夜はたとえ他に何があろうとも……小次郎との斬り合いだけは絶対に行っただろう

 

それこそ、邪魔をする存在がいた場合、下手をすれば切り捨てていたかもしれないほどに

 

 

 

それほど望んだ相手だ……

 

 

 

斬り合いを行いたいと願った相手は目の前にいた

 

それも、己と全く同じ欲求を、携えて

 

だから……刃夜はその剣を、技を振るうことに疑いはあれど、迷いを持つことはない

 

そして迷っていては、技は成功せず

 

 

 

何より、眼前の最高にして最強の好敵手に対して失礼だ……

 

 

 

周りに満ちる魔力を用いて……刃夜は手にした狩竜を、左肩に持って行き体ごとねじり、右薙ぎの型を、取った

 

両腕と左肩で固定した狩竜に電磁を注いで……磁力を高めていく

 

徐々に巨大になっていくその雷を前に

 

小次郎はその雷を恐れずに、前へと進んだ

 

 

 

「っふ!」

 

 

 

鋭い呼気とともに、小次郎が刃夜へと駆ける

 

刃夜は呼吸を止め、目も見開いて、ひたすらに小次郎の挙動を追いかける

 

二人は行動を起こした

 

刃夜が切り込んでこないのは当然といえた

 

間合いにおいて圧倒的に勝っている刃夜が、自ら危険を冒して近づく必要性はない

 

そして時間を掛ければそれだけ電磁の力を高めることが出来る

 

対して小次郎も、刃夜の電磁の力の制御を終えるのを待つ道理はない

 

自ら刃夜の間合いに入らなければならないという危険はあるが、それでも前に進まねば始まらない

 

故に進むのを恐れる理由は……

 

 

 

一つもあるわけがない!

 

 

 

そして以前よりも遙かに速く、小次郎が疾り……

 

刃夜の間合いに足を踏み入れる

 

その瞬間

 

電磁が一際大きく、瞬いた

 

それはこの場の闇すらも引き裂くように

 

大きく、力強く瞬き

 

 

 

閃いた……

 

 

 

 

 

 

「電磁抜刀……穿(ウガチ)!」

 

 

 

 

 

 

まるで限界まで引き絞られていた弓が、まさに解き放たれたかのように

 

その閃きは文字通り、軌跡上の全てを斬り捨てんと、刹那の速度で空を裂く

 

超野太刀の閃きは、その重さと間合いの長さが相まり

 

文字通り間合いの内にいる者、全てを斬る

 

またその閃きも、電磁によって加速されたものであり……見切ることも避けることも不可能と言っていい

 

だが……

 

 

 

 

 

 

!!!!

 

 

 

 

 

 

凄まじい金属同士がこすれる音が響いた

 

そしてその音に導かれるようにして……火花がいくつも瞬いた

 

その光景が目に飛び込んできた時……刃夜はこれでもかと言うほどに目を見開いた

 

 

 

狩竜の電磁抜刀を……流しただと!?

 

 

 

そう、小次郎は狩竜の間合いに踏み込み、閃きが迫った時その軌跡上に、自らの漆黒の野太刀を滑り込ませた

 

小次郎から見て……右斜め上から振るわれる狩竜の軌跡の上に

 

そっと

 

添えるかのように

 

そしてそれと同時に自らは深く、深く踏み込んで自らの体勢を低くして

 

狩竜の一撃を流していた

 

軌跡上に自らの野太刀をのせて、僅かに角度をつける

 

そして低く踏み込み、体を反転させるという回転の力も加えて、狩竜の一撃を流した

 

本当に僅かなだけ、入りの角度を変えたにすぎない

 

だがそれでも、たったそれだけで……刃夜の「電磁抜刀 穿」は流されてしまった

 

小次郎が身体能力を強化されていた事もあったが、それよりも重要な要素があった

 

黒い泥の魔力で強化された「野太刀」が、一番重要なものだった

 

以前の……刃夜に召喚された小次郎であっても、狩竜の「穿」を流す技量はあっただろう

 

だが、小次郎に技量があっても……小次郎が持った野太刀が耐えられない

 

小次郎が持つ刃渡り五尺の野太刀は、十分に業物といっていい刀だった

 

だが、それだけだ

 

あまりにも強大すぎる力には折れるか曲がるか

 

超野太刀狩竜の一撃を受け流すことも十分に脅威だが、さすがに狩竜の超尺の重さと長さを持つ野太刀の電磁抜刀の一撃を流すことは不可能といって良かった

 

故に、武器破壊を狙った刃夜の狙いは、決して間違ってはいない

 

 

 

受け流すことが可能となったのは、黒き泥によって強化された恩恵だった

 

 

 

しかも恐ろしいことに、小次郎は深く踏み込み身を低くすることで、次の一歩の爆発力を四肢に蓄えた

 

更に……その力を解放しつつ、さらに間合いに

 

己の間合いに踏み込みつつ

 

 

 

構えた……

 

 

 

実によどみない攻防といえた

 

受け流したと同時に

 

小次郎は自らの絶対の一を放つために必要な行程を終える

 

体の回転は、狩竜を流すためであると同時に……

 

唯一、構える必要のある燕返しを行うためものだった

 

 

 

その構えを……終えた……

 

 

 

対して刃夜は、最大の技を放ち終えたばかり

 

すなわち、両手は振り切った野太刀を止めている真っ最中だ

 

とてもこのまま回避も防御も行える体勢ではない

 

かといって仮にその勢いを殺さずにそのまま一回転していたとしても、その前に小次郎の燕返しで

 

刃夜は体を断ち切られる……

 

また、右の腰に携えている碧き刀に手を伸ばす余裕は

 

どこにもなかった

 

 

 

やはりはったりであったか!

 

 

 

狩竜による電磁抜刀は、どうしても絶対的な力が必要だ

 

放つにも、止めるにも

 

故に振り終えてから別の刀に手を伸ばして放つのは不可能だと判断した

 

狩竜による電磁抜刀の武器破壊

 

これが刃夜の狙いであったと、小次郎は考えた

 

構えを終え、技を放つその刹那

 

小次郎の目に飛び込んできたのは

 

 

 

驚きに目を見開いている刃夜が

 

 

 

 

 

 

凶喜に口元を歪ませた……笑みだった……

 

 

 

 

 

 

その笑みを見る一瞬前に……小次郎の背に悪寒が走り抜けた

 

その悪寒に逆らうことなく、小次郎は無理矢理に……それこそ倒れ込むようにして体を強引に後ろに引いた

 

その眼前を……紙一重で通り抜けていく閃光があった

 

閃きではなく……一点を穿つように

 

それは宙を駆けていた

 

身体能力が強化された小次郎だからこそ、構えを無理矢理解いて、躱すことが出来た

 

そして、その強化された視力に写った物をみて……小次郎は驚愕した

 

 

 

ふれもせずに……刀を、飛ばしただと!?

 

 

 

右腰に携え、鞘に納められていた碧き打刀、雷月が小次郎へ打ち出されたのだ

 

電磁によって加速された雷月は、音速すらも軽く超えるほどの速度で射出された

 

 

 

電磁抜刀 (カシリ)

 

 

 

音速で打ち出された雷月は、柄頭で小次郎を打ち砕かんと、放たれた

 

これが刃夜が帯で刀を固定した理由

 

手を触れずに電磁の反発のみで刀を打ち出すために、強固に鞘を固定する必要があった

 

だから、刃夜は普段は使わない帯で腰に刀を固定したのだ

 

この電磁抜刀が行えるように

 

だがそれすらも小次郎は驚異的な反射神経と、第六感、そして強化された身体能力で強引に避けていた

 

しかしそれによって、完全に体勢を崩してしまう

 

次の一撃を放つためには……数手の時間が必要だった

 

 

 

だが……

 

 

 

すでに次の一手を終えている男が、眼前にいた

 

 

 

 

 

 

「磁波鍍装、蒐窮」

 

 

 

 

 

 

稲光がよりいくつも瞬き、さらなる一撃を放つために……力を溜めている

 

 

 

 

 

 

お前が三つの斬撃を「同時」に放つのあれば……

 

 

 

 

 

 

左肩から右に薙ぐように振るわれた野太刀、狩竜を止めて、両手首の動きだけで、刃を逆さに返していた

 

それによって刃夜が手に持つ狩竜の刃が、小次郎へと向いた

 

「穿」を放った後に、力強く力を溜めていたのは、これが理由だった

 

電磁による反発と加速を用いて

 

超野太刀狩竜による電磁抜刀を返すために

 

 

 

 

 

 

俺は、「三連撃」にて、貴様を斬る!

 

 

 

 

 

 

「電磁抜刀、穿(ウガチ)が返し……」

 

 

 

 

 

 

三回ほぼ同時に行われる電磁による収束と反発

 

それは想像を絶するほどの集中力を要したが、それでも刃夜は成し遂げていた

 

 

 

 

 

 

己に渦巻く黒い欲望を……果たすために……

 

 

 

 

 

 

小次郎の読みが外れていたわけではない

 

「穿」で小次郎の野太刀ごと断ち切れるのであれば、それはそれで問題なかった

 

だが、漆黒に染まった野太刀が、何の変化もないとは、刃夜は考えなかった

 

黒い戦闘騎士(セイバー・オルタ)の聖剣が変化していたのを目の当たりにして、何かしらの恩恵があると考えたのだ

 

故に、雷月を囮であると思いこませ、更に武器破壊が狙いであると思わせた

 

だが、その全てが囮でも、罠でもなく

 

必殺の攻撃だった

 

ただ、その必殺の攻撃が、三回連続で行うと言うだけで

 

これが刃夜が、小次郎を斬るために

 

 

 

殺すために編み出した

 

 

 

電磁抜刀だった……。

 

 

 

 

 

 

どうする!?

 

 

 

 

 

 

今まさに放たれようとしている刃夜の返す刀

 

二度の攻撃を避けることが出来た小次郎は、必死になって考えた

 

だがどうあがいても、もがいても

 

完全に手詰まりだった

 

唯一出来たのは、躱した後で、視線を巡らせることだけだった

 

刃夜が放った電磁の投射抜刀が放たれた瞬間と、次の一手である、返す刀

 

そのときふと……僅かに巡らせた視線の先

 

小次郎は実に妙な物を見てしまった

 

 

 

怒っているような……

 

諦めているような……

 

驚いているような……

 

恥じているような……

 

恐れているような……

 

憎んでいるような……

 

 

 

喜んでいるような……

 

 

 

悲しんでいるような……

 

 

 

そんな物を……

 

 

 

 

 

 

全く……お主という奴は……

 

 

 

 

 

 

それを見た瞬間……小次郎はただ静かに頬をゆるめた

 

以前のように……ただ静かに

 

だがそのゆるめた頬も

 

美しくたなびいていた長い髪も

 

何もかもが変わっていた

 

だが、互いを思う気持ちだけは変わらないと言うように

 

ただその微笑みだけは……以前と同じような笑みだった

 

 

 

そして二人を終わらせる閃きが……

 

 

 

疾った……

 

 

 

 

 

 

「電磁返刀 逆雷(サカヅチ)!」

 

 

 

 

 

 

それは決して技とは言えるような剣ではなかった

 

狩竜の長さと重さ、そして切れ味

 

それを気力と魔力によって強引に強化した

 

手首だけで刃を返したままの型で、電磁による力でまさに打ち出すように放たれた

 

力業だった

 

だがその力業の剣は、雷光となって

 

 

 

軌跡にある全てを引き裂いた……

 

 

 

 

 

 

全力で戦うと言うこと

 

刃夜は現時点において小次郎を上回ることは出来ていない

 

故に斬り合いを続けていては絶対に負ける

 

だがそれでも負けるわけにはいかなかった

 

約束があるから誓いがあるから

 

それだけではない

 

ただ負けたくなかったのだ

 

小次郎に

 

理由としてはそれだけだった

 

だから唯一一点のみ、小次郎に勝っている気力と魔力を用いた一撃での斬り合いを行った

 

言ってしまえば卑怯といえた

 

だがそれでも小次郎はそれに乗った

 

何故か?

 

小次郎もわかっていたからだ

 

斬り合いを続けていれば刃夜を殺せると

 

だがそれでも互いに相棒となった間柄として、小次郎は超えたくなったのだ

 

生涯誰とも切り結ぶことなく死を迎えた男

 

互いに二度と会うことの出来ない好敵手と斬り合いをすることのみを望んで

 

この場で立ち合った

 

殺し合いを行ったのだ……

 

それを欲深いとは決していえないだろう

 

 

 

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