月夜に閃く二振りの野太刀   作:刀馬鹿

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43 狂

「素に銀と鉄。」

 

「礎に石と契約の大公。」

 

「祖には我が大師シュバインオーグ――」

 

 

 

薄暗い、閉じられたその空間は、石壁に囲まれていた。

 

 

 

「降り立つ風には壁を。」

 

 

 

「四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 

 

 

閉じられた地下の空間で、その少女は呪文を紡ぐ……。

 

 

 

「閉じよ。」

 

「閉じよ。」

 

「閉じよ。」

 

「閉じよ。」

 

「閉じよ。」

 

 

 

血のような赤い紋様の魔法陣の中心に赤い、朱い、紅い……服を着た少女が、いた。

 

 

 

「繰り返すつどに五度。」

 

 

 

閉じられた空間に、どこからか吹いてくる風が、軽くウェーブしている黒髪をなびかせている……。

 

 

 

「ただ、満たされる刻を破却する。」

 

 

 

その表情は真剣その物であり……床の紋様が光り輝いて、少女と部屋を照らしていく……。

 

 

 

 

 

 

紅い紅い……光で……

 

 

 

 

 

 

「――――告げる!!!! 」

 

 

 

 

 

 

吼えたと思えるほどの気迫が込められた……その言葉。

 

 

 

「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。」

 

 

 

それは……誓いの言葉?

 

 

 

「聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。」

 

 

 

それとも……死の宣告?

 

 

 

「誓いを此処に。」

 

 

 

応える者はいない……

 

 

 

「我は常世総ての善と成る者、」

 

 

 

ただそれは明確な意志を持って紡がれていく……

 

 

 

「我は常世総ての悪を敷く者。」

 

 

 

戦いの儀式へと赴き、|逝く(・・)ための言の葉……

 

 

 

「汝三大の言霊を纏う七天、」

 

 

 

それを行うは常人にあらず……

 

 

 

「抑止の輪より来たれ、」

 

 

 

根源というものを目指す探求者にして渇望者……

 

 

 

「天秤の守り手よ―――!」

 

 

 

それを主として、付き従うは……

 

 

 

 

 

 

!!!!!!

 

 

 

 

 

 

「な、何!?」

 

轟音と供に、地響きが薄暗い空間を揺らす。

明らかに地震とは違う振動だった。

振動は直上から感じられたために、確かめるために少女は走った。

薄暗い空間から唯一外へと繋がる階段を駆け上がる。

まさに跳ぶかのようにして駆け上がっていく。

僅かな隙間から見える、引き締まった脚部を見れば、鍛えていることは一目瞭然だった。

 

「な、あかない!?」

 

眼前のドア……居間へと通ずるはずのそのドアノブへと手を伸ばし回すが、ドアが開く気配がない。

普段では無いはずの何かが、ドアを塞いでいるようだった。

 

「ええい!」

 

何に焦っているのかわからない。

だがその少女は間違いなく焦っていた……。

 

間違いなく完璧な儀式だった。

 

「こんっの!」

 

だが結果は眼前に現れず、結果の代わりとでもいうように、直上より轟音が鳴り響いた……

 

これで平常心でいるというほうが無理な話だろう。

 

「一体」

 

その轟音の正体が一体何なのか?

 

「全体……」

 

それを確かめるために急いでいるのか?

 

それが決定的なものになるとも知らずに?

 

 

 

 

 

 

【それが狂っているとも知らずに?】

 

 

 

 

 

 

「なんだってのよ!!!!!」

 

 

 

ドアより数歩離れて足、膝、腰……全ての回転エネルギーを乗せた蹴りが、眼前のドアをぶち抜かんと放たれた。

いや実際ぶち抜くために放ったのだろう。

そしてそれは見事に……居間へと続くドアを吹き飛ばした……。

 

 

 

「なっ……!?」

 

 

 

眼前の光景……。

 

それを見て絶句する少女。

 

少女が見た光景は……悲惨だった……。

 

 

 

「……何これ?」

 

 

 

天井に二階の床に二階の天井。

それどころか屋根さえもぶち抜かれて、深夜の星空を見ることができた。

 

それだけではなく、骨董品(アンティーク)といっても差し支えない……だがそれを感じさせない手入れと掃除の行き届いた……芸術と思しき家具が吹き飛び、散乱している。

 

壁さえも一部が倒壊している。

 

先刻まで確かに健在だった自身の家の自慢の居間には……一人の不法者がいるだけだった。

 

 

 

「!?」

 

 

 

一瞬部屋の様相に気を取られた自分を戒めて、少女はその廃墟ともいえる空間の中央……というよりもそれが原因でこのような有様になったのだが……へと目を向ける……。

 

 

 

そこにいたのは……

 

 

 

「……全く」

 

 

 

「!?」

 

 

 

悪態を吐きながら、その存在はフードに付着してしまった埃を鬱陶しそうに払っている。

 

フードを被っているが、服装とその華奢とも言える体格から、女性であるということは容易にわかった。

 

 

 

「なんて乱暴な召喚なのかしら……」

 

 

 

そして月光が差し込み、月明かりの下で……埃を払っていたフードが降りて、素顔を露わにして……

 

少女……凜は思わず呆気にとられた。

 

 

 

まるで絵画から飛び出してきたかのような、そんな美女がいたのだから。

 

 

 

だが呆気にとられてばかりもいられず、凜は頭を振って意識を切り替えて……その相手を睨んだ。

 

その威圧的な視線を受けても平然としながら……その月明かりの女は深い深い溜め息を吐いていた。

 

 

 

 

 

「とんでもないマスターに引き当てられてしまったものね」

 

 

 

 

 

 

「貴方が……私のサーヴァントって事で良いのかしら?」

 

「そうみたいね。というよりもこの状況ではそう考えるのが自然でしょうに」

 

「!? 貴方の真名は?」

 

「私はメディア。クラスは……なんですって?」

 

 

 

先ほどまでの余裕が嘘のように、自らのクラス名を明かそうとしたメディアと名乗った女は、驚きに眼を剥いていた。

 

凜はその様子に疑問符を浮かべながらも、ただ相手の言葉を待って……同じように驚愕しした。

 

 

「私が……アーチャーですって。何でこんな事に?」

「アーチャー……って嘘でしょ? だって貴方……魔女と言われたあのメディアじゃないの?」

 

 

 

 

 

 

【狂え】

 

 

 

 

 

 

全てが狂っていく。

 

 

 

 

 

 

「応えよう。私は貴方のサーヴァント、ランサー。最果ての槍を以て、貴方の力となる者です」

 

眼前に召喚されたその存在に、スーツに身を包んだ男装の麗人は驚きを隠せなかった。

 

「貴方が……アーサー王だと言うのですか?」

 

だが、それ以上に驚きにそのあり得ない結果が吹き飛び……

そしてその召喚された人物の人格に、心打たれていた。

召喚に応じてくれた存在は、優しげに微笑んで、男装の麗人……バゼットへと挨拶を述べた。

 

「えぇ。よろしくお願いします。マスター」

 

 

 

 

 

 

【狂って】

 

 

 

 

 

 

全てが変わっていく。

 

 

 

 

 

 

「おっと。今回はライダーでの現界と来たか? って何だこの辛気くさい場所は?」

 

召喚された男は、周囲が薄暗い空間である事に顔をしかめて、次に目の前の状況……全裸の少女に、何故か自らを恐れながらも興奮気味に見てくる、実に気にくわない感じのガキを、うさんくさそうに見つめた。

 

「おい! お前の主人は僕だ!」

「あぁ? お前が? マスター? ……冗談だろ?」

 

召喚された男は自らが手にした槍をくるくると回転させながら、ガキを……間桐慎二を見てさらに顔を歪めた。

冗談というのは気にくわないというのが一つと、魔術回路を感じ取れなかったためだった。

だが……

 

「冗談じゃない! これを見てもそんなことが言えるのか!?」

 

差し出された書物を見て……その正体を知って、召喚された男は実に辟易しながら溜め息を吐いていた。

 

「なるほどね。確かにお前がマスターみてーだな。まぁ何だ? よろしくな」

「僕が主人だぞ! で、お前はどこの誰様なんだ?」

 

やれやれ……こりゃまたつまらなさそうな事になりそうだなぁ……

 

周囲に目を向けて……その奥底に潜む醜悪な気配と、目の前の全裸の女の子を見ながら、ライダーは深々と、心の中で溜め息を吐いていた。

 

 

 

 

 

 

【何故なのか?】

 

 

 

 

 

 

何の因果かはわからない。

 

 

 

 

 

 

「サーヴァント……アサシン。召喚に従い応じ参上した。どのような汚れ仕事であろうとも……請け負おう」

「……ほう? まさか私に令呪が宿るとはな。聖杯がどのような結末を望んでいるのかはわからないが……。まぁいいだろう。ではアサシンよ。真名を何という?」

「俺の名は――」

「……なんだと?」

 

真名を聞いて、神父服に身を包んだ男……言峰綺礼は

 

 

 

心の底から嗤った。

 

 

 

「く……くくくくく……はははははは!?」

 

堪えきれずに漏れ出る声は、愉悦に充ち満ちており、綺礼の感情を如実に表していた。

呼び出された男はただ何をするでもなく、ただただ指示を待っていると言うように……膝立ちのまま、何の反応も示さなかった。

 

「面白い! あの男の養子がよもや暗殺者のなれの果てになろうとは!? これほど愉快な結末があるだろうか!?」

 

堪えることもできず、綺礼は神の像がある礼拝所で、大声を出して嗤ってしまった。

これほど歓喜に満ちたのはいつぶりだろうか?

だがまだ終わりではない。

むしろこれは始まりにすぎないのだ。

これから待ち望んでいるであろう、歓喜と狂喜の坩堝を思い……言峰綺礼は大いに嗤った。

 

 

 

 

 

 

【何があったのか?】

 

 

 

 

 

 

何かの陰謀なのかもわからない。

 

 

 

 

 

「お話は終わり?」

 

深夜。

月明かりのみが坂道を照らす状況下であっても……まるで妖しく光っているかのような、長く美しい銀髪を風になびかせる雪の精霊の様な少女がいた。

 

 

 

そしてその先に……背後より伸びているまるで太い何かに支えられて宙に浮いているにもかかわらず、美しい薄紫の髪より伸びたいくつもの蛇を従えた……

 

 

 

怪物がその雪の精霊を守護するように……眼下にいる矮小な贄たちを……

 

 

 

見下ろしていた。

 

 

 

「ならもういいよね? やっちゃえ……ゴルゴーン」

 

 

 

「はい」

 

 

 

 

指示を出されたその怪物は、宙に浮いたまま背より伸びた蛇の体で進んで少女の前へと躍り出て……その怪物の力を発揮した。

 

 

 

 

 

 

【何のためなのか?】

 

 

 

 

 

 

愉悦? 快楽?

 

 

 

 

 

 

「問おう……貴方が私のマスターか?」

 

土蔵の出入り口に、あまりにも長身で痩せ形の男が立って、少年を見下ろしている。

あまりにも背の高いその体と……その体ですらも小さいと思えるほどの強烈な気配と力強さが自然と発せられていて、少年は思わず目を背けようとしてしまう。

だが、その本能的な行動が間違っていると、自らを律して少年はまっすぐと、見下ろしてくる巨躯の男の瞳を見つめ返す。

その少年の芯のある態度に好感を抱いたのか、巨躯の男は小さく微笑み……名乗りを上げた。

 

「我が名はセイバー。今宵より貴方の剣となって、貴方を導こう」

 

 

 

 

 

 

【それでも出会う……】

 

 

 

 

 

 

彼らは……。

 

 

 

 

 

 

「サーヴァント……佐々木小次郎」

 

 

 

「……は?」

 

敵に追われて窮地に陥った俺の足下に突如として魔法陣が出現し、その魔法陣が召喚したと思われる侍の男が口にした名前を聞いて、俺は思わず間抜けな声を上げていた。

 

「……偽名か?」

「ふむ……偽名か……。偽名と言えば偽名と言えなくもないのだろうが……此度の戦にはこの名と……そしてキャスターというクラスで現界している」

「……魔法使い(キャスター)だあぁ? その出で立ちでかぁ?」

 

どう見ても侍にしか見えないこの男の言葉に、俺は違和感しか覚えなかった。

それはどうやら本人も同じようであり……自らが口にした言葉に首を傾げていた。

 

「確かにそうよな。私も不思議なのだが……どうやら魔法の様な物を使えるからという理由でこうなった様だ」

「魔法の様な物?」

 

なんだか意味不明な事を宣っているが……そもそもにして……

 

 

 

クラスって何だ?

 

 

 

 

 

 

 

「違うわマスター。その力をこう回しなさい」

「こうって言ったって……そんな簡単にできれば苦労しないわよ!」

「あら残念。それなりに見所あると思っていたけどこの程度もできないのね? 残念だわ」

「!? 良いわよ! やってやろうじゃない!」

「その意気よ」

 

 

 

 

 

 

「おい坊主。どうやら俺の本来のマスターと親しいようだが、どうだ? 俺と共闘する気はないか?」

「あぁ? どういう事だ?」

「いやなに。偽臣の書とやらでマスター気分のこのガキが心底気にくわなくてな? それにあの嬢ちゃんが不憫でならなくてな。このくそガキすら生かそうとするお前さんとなら仲良くやれそうな気がするんだが、どうだ?」

「いかにする? 刃夜よ?」

「あーーーーー。やっぱりなんかあるみたいだな。OK。乗ろうその話」

 

 

 

 

 

 

【そして王が動き出す】

 

 

 

 

 

 

この世界の道化を見定めるために。

 

 

 

 

 

 

「ついに来たか……このときが……」

 

周囲を取り巻く空気が変わった事に、その存在は気付いていた。

故に……今から始まるであろう出来事に対して、あの存在がどう出るのかが楽しみで仕方がなかった。

屋根より見下ろす小僧は、小僧であって小僧でないことを、その存在は十分に理解していた。

だがそれでも根本が小僧であることは変わりなく、未熟故にどのように自らに向かってくるのか楽しみでならなかった。

 

我を斬り裂いた小僧だからな……さぁどうする?

 

 

 

「出番だ、者ども」

 

 

 

その存在の号令に……王の背後に黄金に輝く穴が出現する。

穴より出現したのは伝説の武具。

それらの伝説の武具は、まるで王の言葉に歓喜しているかのように……凄まじいまでの魔力を自ら発していた。

 

「我の命に従い、あの小僧を叩け。貴様らの力を持って、あの小僧がどこまで凌ぐか……測ってやろうではないか!」

 

王が心から自らたちに命令を下した。

そのことに歓喜し、さらに武具達が魔力を迸らせて……敵へと飛翔する。

 

 

 

化かした道を行く……行こうとしている

 

 

 

 

 

 

男を測るために

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Fate Stay Night月夜に閃く二振りの野太刀 IFルート

 

 

 

 

 

 

 

月夜を引き裂く王の剣と月夜を繫ぐ超野太刀

 

 

 

 

 

 

執筆しません by 刀馬鹿

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王の大号令

ランクE~A++

種別 対人宝具

レンジ -

 

王が道を化かす男の事を見定めるために、己の全てを費やすと決定し、その力の全てでどこまでやれるのかを測るために、王の財宝に収まる武具達に「我を楽しませるために力を振るえ!」と命じた。

その命令によって今までただただ道具としてしか見られていなかった伝説の武具の原型が、主の思いに答えるために、自らの力を解放する。

言うなれば自らが破損しない程度に「壊れた幻想」を使用している様な物である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、とある日にいつものTT氏の家での泊まりがけの飲み会で話題になったネタでした~

どうしてこうなったのかはマジで覚えてませんが、とりあえずだいぶ前から五次聖杯にギルが紛れ込むという話は決まっていたのです
それがどうしてか……FGOのネタも混ぜてサーヴァントのクラスと召喚者を変えて見るという話で……上記のような結果に。

小次郎    アサシン   → キャスター  燕返しが魔法ってことで
メディア   キャスター  → アーチャー  なんかぽんぽん魔術砲撃ってるから
クーフーリン ランサー   → ライダー   戦車所持してるから
エミヤ    アーチャー  → アサシン   守護者として狂ったが故
ゴルゴーン  ライダー   → バーサーカー 怪物ってことで
アルトリア  セイバー   → ランサー   FGOの乳上。まだ未召喚(涙)
ヘラクレス  バーサーカー → セイバー   士郎を導く的な感じで


後は↑以外にも一つだけ決まっているネタ↓があります。



刃夜がどのように行動しようとも、それが刃夜自身を裏切り、自らの期待を激しく損なうような物でなければ、王様は助力してくれます
具体的には臓硯はウルクの聖杯でピチュンされることになる



最初は青兄貴にどうにかしてもらう話になってたのですが、
HM氏「いやさすがに青兄貴を便利キャラにしすぎじゃね?」
という編集者様の編集によってアボンしました。
が、まぁそこは我らが王様がいるので、そっちにどうにかしてもらおうとw

え? 結局変わってない?

……宅飲みの超適当な酒のテンションで考えたんだから細かいことにはつっこむな!

とくにIFルートのセイバーの口調とかな!?  strange Fakeはwikiとかで見ただけだから口調まではわからん!



まぁともかく



せっかくネタが出たから出すだけ出すことにした


ただそれだけで~す


誹謗中傷は受け付けません!



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