月夜に閃く二振りの野太刀   作:刀馬鹿

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うん。
美綴無双が続いているなw
まぁそれ以外に出す予定ナインだけどwwww






ウェイター

ある日……

 

 

 

ダダダダダダ!!!!!

 

まな板と包丁が奏でる……小刻みな音。

 

秘技! 分身もどき!

 

※↑高速で動いているだけ

 

 

 

俺の店は……

 

 

 

「サバ味噌煮定食一つ」

「じゃあ俺は唐揚げ定食で」

「はい、サバ一、唐揚げ一ですね。ありがとうございます!」

 

 

 

……俺の店は修羅場と化していた……。

 

 

 

季節はもうじき夏になろうかと言うとき……だんだんと熱くなってきたこの気候の中……ちなみに天気は快晴……何故か謎だが、今日は客の入りが半端なかった。

具体的に言えば……店の外にまで列が出来てしまうほどに……。

 

何故!?

 

客が入ることは純粋に嬉しい。

それは間違いない。

だがいかんせん従業員が俺しかいないのでは、正直辛い物があった。

別に回せないことはないのだが……果てしなく続くようなこの調理&接客&皿洗い&レジでは……一人でこなすのはぶっちゃけきつい。

だが異世界人の俺がいつこの世界から消えるかもわからないので……バイトを雇うわけにも行かなかった。

下手をすればバイトを雇った次の日に突然消えているかもしれないのだ。

いや、それはまだいい。

月末の賃金受け渡し期間の時に俺が消えることになったら……その人は事実上のただ働きとなってしまう。

それだけは避けなければならない。

 

まぁ……多分それはないだろうが

 

俺が考えていることが正しければ俺をこの状況に追いやっているのは……あの二人だ。

ならばそこらは加味しているとは思うのだが……確証がないしそれに甘えるわけにも行かなかった。

 

「すいません水下さい~」

「はい今行きます!」

 

ビュン! 

 

トポポポポ

 

「こっち取り皿もらえますか?」

「はい少々お待ちを!」

 

パパッ

カチャン

 

「お待たせしました! チャーハンセットと、なす味噌炒め定食です!」

 

まぁそんなわけで……修羅場だった。

泣き言を言う暇もなく……ただひたすらに仕事を行う!

 

うぉぉぉぉぉぉ!!!!

 

 

 

「……何この行列?」

 

私は日曜日に出かけたついでに……といってもすこし寄り道になるけど……鉄さんが経営している和食屋でお昼を食べようと足を運んだのだけれど、店の外にまで伸びる行列を見て目を見開いた。

外に並んでいると行っても、長蛇の列が出来ている訳じゃない。

せいぜい数人の行列だ。

だけどこの店の従業員は……

 

……鉄さんだけだのはず

 

そう私が入ろうと思っていたお店……和食屋は従業員が店主である鉄さんだけしかいないはずだ。

それなのにこの人数を捌くというのは……はっきり言って相当きついはずだった。

 

……何でバイト雇わないんだろねぇ?

 

それが不思議だった。

何故か鉄さんはたった一人で自分のお店を切り盛りしていた。

確かにそこまで大きな店ではないけど、一人で捌くのはかなり厳しい……というか何で回せているのか不思議でしょうがない。

ちらっと……中の様子を見てみると……。

 

うわ、すごい人……

 

今まで私が見たことがないほどにお店が混雑していた。

そんな中ただ一人の店員である鉄さんが、それはもう……高速で動き回っていた。

埃をまき散らさないように動きその物は小さい。

そんな体勢で動けば普通は転んでしまうはずなのに……そんな危うさは微塵もなかった。

 

相変わらずすごいなぁ……

 

あんな奇怪とも言える動きで、よく転ばない物だと感心してしまう。

それだけ見ても技量がすごいのは直ぐに理解できる。

 

そしてそんなすごい動きでひたすら仕事をしている……鉄さん

 

必死に走り回るその姿は真剣その物で……その姿を見ていたら放っておけなくなってしまった。

 

しょ~がない。手伝おう

 

普段、朝のお茶なんかで楽しい時間を過ごさせてもらっているから、それくらいの恩返しをしたって罰は当たらないだろう。

私はそう決めると店のドアを開けた。

 

 

 

ガラッ

 

必死になって料理を造り、客をさばいていた俺の耳に、店の引き戸が開けられる音が入ってくる。

まだ空席がないにも関わらず入ってきたその客に、謝罪の言葉を述べようとしたが……その前に先に言葉を紡がれた。

 

「遅くなってすいません!」

 

元気よくそう言い放ちながら、店の奥……居住区へと向かっていくのは美綴だった。

 

「はい?」

 

何を言っているのかわからない俺は、一瞬……本当に刹那の時間呆けてしまった。

その隙に美綴は奥へと進み……どこからかエプロンを取り出して、伝票を手に取った。

 

「すいません、お待たせしました! ご注文は?」

「え……えっと、焼き魚定食」

「俺はレバ野菜炒めで」

 

突然やってきた美女に面食らいながらも、注文を聞かれて応える客人たち。

それに機器と笑顔を振りまきながら、美綴りはこう言った。

 

「はい、かしこまりました! 注文入ります! 焼き魚とレバ野菜一つずつ」

 

注文を取ってきて、嬉々としながら俺に注文を伝えてくる美綴に、俺はぼそりと小さな声で話しかける。

 

「……おい美綴。どういうつもりだ?」

「手伝いますよ。この数を一人で捌くのはきついでしょ?」

「しかし……」

「対応が悪いと評判が落ちますよ?」

 

ぐっ……痛いところを

 

確かに、味が良かろうが悪かろうが、接客態度が悪ければ評判が落ちてしまう。

そうすると集客効果が減ってしまう。

俺としても最強レベルで料理がうまくても、店員が偉そうだったり、店主がいかにも「食わせてやってる」みたいな態度の店には二度と行かないだろう。

そうならないように注意しているが……今の状況はそれが出来ていないだろう。

 

「別にいいですって。いつもお茶をごちそうになっているお礼です」

「……すまん」

 

どうやら意地でもやるつもりらしい。

それに困っているのも事実だったので、俺は仕方なく承諾した。

己の未熟さに歯がみする思いだったが……そんなことをしている場合でもないので、俺は一心不乱に鉄鍋を振るった。

 

 

 

「つ……疲れた」

 

私はピークが過ぎ、店にお客さんが誰もいなくなった瞬間に崩れ落ちた。

あれからも結構な数のお客さんが足を運んで、数え切れないほどの注文を捌いていた。

これをいつも一人で行っている鉄さんには頭が下がる思いだった。

 

「お疲れ様」 

 

そんな私を苦笑しながら、鉄さんがお茶を差し出してくれる。

その顔にはほとんど疲労がなく、また汗一つかいていなかった。

 

「助かった。正直言ってだいぶかつかつだったからな。ありがとう」

 

でも笑顔でそう言われると、毒気が抜けてしまうのだけれど……。

なんか色々と負けた気がして悔しかった。

けどそれ以上に、鉄さんの力になれて言うれしかった。

 

「いえいえ。普段お世話になってますし」

「といっても普段お茶をごちそうにしているだけだが」

「それでも嬉しいですよ」

「ま、とりあえず一旦休憩にしよう。飯も食ってないしな」

 

普段は休憩というのはしないのだけれど、疲れた私を気遣ってか鉄さんが暖簾をしまう。

そして厨房に引っ込んで包丁を手に取った。

鉄さんだって疲れているはずなのに……そんな気配は微塵も見せなかった。

 

「ほいお待ち。和定食」

 

コト、と、小さく音を立ててカウンターに置かれたその料理。

それを見てお昼を食べていなかったことを思い出して……

 

クゥ~

 

とお腹が鳴ってしまった。

それに気づいて顔が真っ赤になるのがわかった。

 

「済まない。本当に助かったよ」

 

それに気づいていないはずないのに、鉄さんは快活に笑いながらさらに鍋を振るっていた。

自分の分を作っているのだろう。

それを私と同じ机に置いて、イスに座った。

 

「頂きます」

「頂きます……」

 

二人で食物に感謝しつつ、手を合わせてから料理を食べる。

相変わらずおいしかった。

 

「しかし本当に助かった。回せなくもなかっただろうが、美綴の言うとおり評判は落ちていたかもしれない」

「別にいいですって。いつものお礼ですよ」

「だがさすがにバイト代なしというのはまずいだろう。二時間だから……二千円でいいか?」

「いや、だからいいですって」

「しかし……」

 

確かにウェイターとして働いたのは事実なんだけど……それでバイト代をもらうのはなんか違う気がした。

それに二時間二千円って……ここらではバイト代としてはかなり高額に入る。

家に帰るために独力で店を開いて頑張っている鉄さんにそんな額を払わせたくなかった。

 

「本当にいいですよ。こうしてお昼だってごちそうになっているんですし」

「だがこれほどのことをしてもらって何もしないというのはだな……」

 

何かお礼を使用としてくれる鉄さんと、それを頑なに断る私。

このままだとずっと平行線で終わりそうだった。

 

……そうだなぁ

 

そこで私は一つ思いついた。

 

「なら、今度買い物に付き合って下さいよ」

「買い物?」

「そ、買い物です。別に何か買って欲しいとそういうのじゃなくて、純粋に買い物に付き合って下さい。お礼はそれでいいですよ」

 

深い意味も、他意もなかった。

だって、ただ本当にそれだけだったから。

意識なんてしないないし、何も感じてなんていなかった。

 

鉄さんがすごいことはよく理解していたけど……

 

けど何も知らなかったから、もっと知ってみたいと思った。

ただそれだけだ。

買い物に誘ったのはそんな理由。

 

「そんなのでいいのか?」

 

すごく不思議そうにしている鉄さんの顔はとても面白い物で……。

どうやら本当に予想外だったみたいだ。

これを見られただけでも、誘った甲斐があったかもしれない。

 

「そんなのでいいんですよ。今度の休日で大丈夫ですか?」

「あぁ。構わない」

「なら、約束ですよ」

 

まだ若干渋っていたけど、私がいいという条件を呑んでくれる。

こうして、鉄さんと後日買い物に行くことになったのだった。

 

 

 

約束の時間には……まだ早いか

 

日が経って、本日土曜日。

約束していた美綴との買い物の日となった。

店を手伝ってくれたお礼が買い物に付き合うだけ、というのは俺としては若干安すぎる気がしないでもないのだが……。

 

本人がいいといっているのだからいい……のか?

 

はっきり言ってよくわからないが……年頃の女の子の心情など俺には理解できるわけもない。

それでよく妹にも怒られたものだった。

 

元気……だろうな

 

これは他の家族と違って断言できた。

快活な奴で、根暗とかそう言った言葉とは無縁の女の子だ。

ある意味で元気というか、そう言った言葉と縁がないと言う意味では美綴と似ているかもしれない。

 

まぁ美綴はあんまり女の子という感じはしないが……

 

別段バカにした訳じゃないが……あまり女の子という気がしないとは思っていた。

ボーイッシュと言うべきか……とりあえず付き合いやすいので俺としてはありがたかった。

 

さて……どうした物か……

 

新都の駅前が待ち合わせ場所だったので、俺はとりあえず近くの茶店でコーヒーをカップで購入して、待ち合わせ場所の駅前のベンチに腰掛ける。

春には遅く、夏にはまだ早い……そんな微妙とも言える季節。

穏やかな午前だった。

駅前と言うだけ合って人通りが多く、また休日だからか、カップルや家族連れをよく見かけた。

ふと、遠くを見れば、母親に甘えている子供がいて、すごく穏やかな気持になった。

 

……平和だ

 

実に全く……これ以上ないほどに平和だった。

これでもしも何の憂いもなければのんびりと読書でもしていたかもしれない。

 

何やってんだろうなぁ……俺

 

モンスターワールドでは毎日が忙しくて……そして目新しいことばかりでとてもじゃないが自分の状況を顧みている場合じゃなかった。

この世界でだって、仕事中は忙しいから何も考えなくて済むが……今みたいに暇な時間はどうしても考えてしまう。

 

モンスターワールドでは休日も色々と忙しかったからな

 

というか、あまり明確な休日という物はなかった気がする。

時間があったら大体鉄を打っていた。

そしてふと、最近鉄を打っていないことを思い出した。

道具はあるが鍛造場所がなく、また材料もない、あげくに免許はあってもこの世界の免許ではないので出来るわけもないのだが……しかし全く頭に思い浮かんでいないことが俺としては意外だった。

 

……そう考えるとこの世界でも忙しいと感じているのか? 俺は?

 

鉄を打つことを考える暇がないほどに忙しかったのか……はたまたそれ以外のことを考えていたからか……明確な理由はわからない。

だが正直どうでもいいことだろう。

 

その程度で落ちるほど未熟じゃないしな

 

と考えて一口コーヒーをすすった。

暖かいその飲み物を嚥下して、空を見上げる。

 

「いい天気だ」

「そうですね。絶好の行楽日和だ」

 

そんな俺に掛けられる声。

気配ですでに近づいていたことはわかっていたので、俺は慌てずにそちらへと向き直った。

 

「お待たせしました」

 

そこには快活に笑いながらそう言ってくる美少女、美綴がいた。

普段と同じ格好の、ピンクのパーカーに紺色のGパン。

そして笑みを浮かべている美綴。

 

「いやぁ、早いですね鉄さん。これでも約束の時間より早く来たんですけど」

「恩人を待たせるわけにはいくまい」

 

立ち上がりながらそう言うと、俺は残っていたコーヒーを一気に煽る。

そして空になったそれを少し離れたくずかごへと放り捨てると、美綴へと向き直った。

 

「そんじゃ、いきますか」

「はい。お付き合いありがとうございます」

 

そうして二人で並んで歩き、買い物をした。

美綴の言うとおり、本当に大したことのない買い物だった。

というよりも明確に買う物を決めていないのでウィンドウショッピングと言った方が正しいかもしれない。

これと言って明確な買い物はせず、店を冷やかす。

具体的にはCDショップや携帯電話のショップだ。

美綴におすすめのCDを聞いて、それを視聴したり……

 

「あれ? これも知らないんですか? 結構有名なアーティストですよ?」

「あ~うん。あまりテレビ見ないからなぁ……」

 

こんなコトを言われて正直少し困った。

異世界人である俺がこの世界の有名なアーティストなんて知るはずもないからだ。

まぁそう言うわけでテレビをほとんど見ない……実際大して見ないが……という理由で押し切った。

 

「携帯電話は持ってるんですか?」

「あ~持ってるけどそう言えば更新してなかったな。となると今は持ってないかな?」

 

これも異世界人以下略。

 

途中で茶店により軽く昼食を取って休憩した。

 

「いや~私思うんですよ。どうしたら衛宮が弓道部に戻ってくるのか」

「難しいな。あいつ結構頑固っぽい所ありそうに思えたが?」

「そうなんですよね~。それにあいつ人助けを性分としてて」

「人助け?」

「えぇ。あいつのあだ名に「偽校務員」、「弓道部の掃除機」なんてあだ名が付くくらいですよ」

 

美綴の話だと、士郎はそれこそバカみたいに人からの頼み事を引き受けるらしい。

美綴から見た感じ、「断れない」ではなく「断らない」らしい。

またその内容が主に壊れたがらくたの修繕などで……「彼ほどスパナが似合う人間はいない」とか……。

人助け自体はいいことだが……俺はそれが少し気にかかった。

 

「頼み事を断らないってのは、悪いコトじゃないんですけど、もう少し……何というかですね」

「まぁ言いたいことは大体わかる」

 

美綴の言うとおりだ。

今の話だけでは何とも言えないが、衛宮士郎というのには「個」がなかった。

人のために献身的に尽くすというのはいいかもしれないが……それにしても。

 

まぁいい

 

どんなことがあるかは謎だが、よほどの事が起こらない限りそれを気に掛ける必要性はないだろう。

平和な世界(・・・・・)平和な日常(・・・・・)ならば、それは別に致命的なことにはなり得ない。

 

「そんなに士郎のことを話すなんて、美綴の好きな男は士郎か?」

「なっ!? ち、違いますよ!」

 

熱心に語る美綴をいぢめたりもする。

その初な反応に俺は苦笑したり、それに頬を赤らめながら美綴がふてくされる。

そうして昼食時は過ぎていく……。

会計は当然俺持ちだ。

 

「あ、割り勘で……」

「こういうときは年上がおごるって相場が決まってるんだよ」

 

渋る美綴を無理矢理納得させて、俺は会計を済ませた。

次にゲームセンターに行ったりして、パンチ力を測ったりした。

ここで困ったことが一つ。

 

……本気で殴ったら確実に壊れるよな~

 

気功術を使わずとも壊れそうな気がする……。

使えば確実におじゃんだし、魔力も使えば木っ端微塵になりそうだ。

のでだいぶ抑えたのだが、結局最高得点を記録してしまった。

 

「おぉ、さすが!」

「……あはは」

 

驚く美綴に苦笑しつつ、俺は美綴と変わる。

当然俺の記憶に届くわけもないのだが、それでも女の子としてはすごい高得点……というか俺の次って事実上の一位では?……をたたき出した。

 

「おぉ。私も棄てたもんじゃないですね!」

「いや、純粋にすごいと思うぞ」

 

ガッツポーズをしながら俺に笑顔を向けてくる美綴に、俺は苦笑しながら答えた。

ゲーム全般が得意という美綴の言に嘘はないらしく、様々なゲームをしてその腕を遺憾なく発揮してくれた。

大体上位に入るのだからその腕前は凄まじいものだろう。

ちなみに俺も何とか食い下がったが、全敗してしまった。

こういった類のゲームは余りしてこなかったからだ。

まだ将棋の方が得意だ。

が、それは逆に美綴が苦手らしい。

 

 

 

久しぶりに……何も考えずに頭を空っぽにして楽しめた……

 

きっとそれはすごく幸せなことで……

 

お返しのつもりが俺の方がよほど楽しんでいた気がする……

 

俺を怨む人間がいないから……それを考えることもなく……

 

ひどく平和な時間が過ぎていく……

 

 

 

「それじゃ、記念に一枚で今日は終わりですかね?」

「いいんじゃないか?」

 

鉄さんの返答に、私は笑みを浮かべて答えた。

時刻はすでに夕方。

日がすでに沈みきろうとしているそんな時間帯。

私と鉄さんは最後に散歩をして、大橋そばの公園に来ていた。

待ち合わせをして、買い物をして食事をして……今日はすごく楽しい一日だった。

鉄さんのことを知ることが出来たから、よりそう思えたのかもしれない。

 

「それにしても本当に俗世に疎いんですね。なんか別の世界の人間みたい」

「……そう思うか?」

 

私の突拍子もない言葉に、鉄さんは今にも吹き出しそうにしていた。

確かに言っていることがあまりにも変なことだったので、呆れてしまったのかもしれない。

 

「冗談ですって。本気にしないで下さいよ」

「……冗談だったらどれだけ良かったか」

 

? 何か言った?

 

何かぼそりと呟いた気がしたけど、夕焼け空を見ている鉄さんの顔を見ることは出来なくて……何を言ったのか知ることは出来なかった。

 

「それじゃ取りますよ~。はいポ~ズ!」

 

パシャ

 

間抜けな音と供にシャッターが切られ、私の携帯に画像が表示される。

鉄さんと出歩いた記念……携帯で写真を撮ったのだ。

 

 

 

この時は何も意識していなかった……

 

 

 

「これでこの間の手伝いはチャラですね~」

「本当にこんなので良かったのか?」

「問題ないですよ。むしろこれでも安すぎるくらいです」

 

 

 

ただ……自分が親しい人と仲良くなりたかった……

 

 

 

「それじゃ今日はお開きにしますか」

「そうだな」

「それじゃ、また明日。早朝にお邪魔しますね」

「おうよ。お待ちしているぞ」

 

鉄さんはまだ用事があるらしいので、この公園で別れる。

けど直ぐにまた明日会うから。

そう遠くない……短い時間の別れでしかない。

私は満ち足りた気持ちで自宅へと足を向ける。

 

「……見てたわよ綾子」

「……遠坂?」

 

そんな上機嫌な私に、声が掛けられる。

そこにいたのは、私のライバルの遠坂凜だった。

 

「ありゃ。見られてたのに気づかないなんて私も落ちたね」

「別に。ずっと監視してたわけじゃないわ。たまたま見かけたからこうして声を掛けただけよ」

 

そう言いながら、遠坂は新都の方へと向かっていく鉄さんの方へと油断なく目を向けていた。

まるで敵でも見るような……そんな鋭い目で。

 

「しかし趣味が悪いね遠坂も。声かけてくれても良かったのに」

「……あなたがあの男の事をどう思っているのか知らないけど、あれはやめておいた方がいいわよ」

「……あれって、鉄さんのこと?」

「あの男……どこか違う気がするの。別に賭けに負けるかもしれないって思ってるからじゃなくて純粋に友達として忠告しているのであって……」

「賭け……って!?」

 

遠坂が何を言っているのか理解した瞬間に……私は爆発した。

 

な、賭って……

 

遠坂との賭け……それは「どちらが先に彼氏を作るか?」という賭で……遠坂は鉄さんと私の関係がそれになりつつあると言っているのだ。

誓って言うけど、私にそんな気はなかった。

ただただ尊敬する人と買い物がしたかった……その人のことをもっと知りたかったというそれだけの知的好奇心の探求だったのだ……。

 

 

 

けど、この一言で……変わってしまった……

 

 

 

 

 

 

意識してしまった……

 

 

 

 

 

 

え……えぇ……!? わ、私……

 

 

 

遠坂が何か言っているけどまるで頭に入ってこない。

ただ自分の感情が、自分の思いは何なのかを考えるので精一杯で……。

 

 

 

そんな休日の、買い物での出来事だった。

 

 

 

 




はい買い物終了!
美綴無双はまだまだ続くぜ? 


「……ついてこれるか?」


という感じw
後二話くらいででしょうかね~
作者と編集者、アイディア提供者三人組の自己満足にもう少しおつきあい願いますw
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