五等分の護衛 〜1人で5人なんて守れるわけねえだろ〜   作:無限夢幻

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 皆さんお久しぶりです。長い間投稿できず、すみませんでした。忙しい期間をなんとか乗り越え筆者は帰ってきました!

 何人かから『執筆やめるんですか?』みたいな心配のメッセージを頂きましたが、安心してください。筆者の作品を待っていてくださる方がいる限り筆者は失踪しません!

 それでは前置きはこれくらいでどうぞ! 今回は一人称視点も入れてみました!


第十二話 俺に休日がないことなんて知ってたさ

 「申し訳ありません!」

 「………」

 

 暗い部屋の中に二人の男がいた。窓が一切なく、照明も付けられていない。暗く、ジメジメとした居心地の悪そうな部屋だった。つまらなさそうにソファーにもたれ掛かってテレビを見ている背の低い男に向かって謝りながら頭を下げる痩せた男。その目は完全に恐怖に染まり、頭を下げた格好のままガクガクと震えて返事を待っていた。

 

 『おはようございます、今朝のニュースのお時間です』

 

 どうやら時刻は朝のようで、朝の情報番組が始まった。背の低い男は痩せた男に目もくれずテレビを見ている。テレビの青白い光が背の低い男の顔をぼんやりと映し出している。その目は充血して真っ赤に染まっており、唇には噛み切れたような血の跡が残っていた。

 

 『昨夜11時頃〇〇市のコンビニエンスストアにて、事件が発生いたしました』

 

 そう言って事件の詳細を読み上げるアナウンサー。事件現場となったコンビニエンスストアの映像が映り、店員や近所の住民へのへのインタビューが流れる。どうやら犯人は未だ逃走中らしい。

 

 男たちはどちらも何も語らない。いや、正しくは背の低い男が何も語らず、痩せた男は何も()()()()。青ざめた顔をして、体を九十度に折り曲げた状態で銅像のように固まっている。

 

 『続いてのニュースです。昨夜10時頃、✕✕市にあるグランドホテルにて殺人事件が発生いたしました』

 

 ニュースは次に移る。被害者は元国会議員だった老人らしい。現役の頃からいろいろと問題発言や行動をを繰り返し、あらゆる意味で注目の的となっていた人物だ。その人が殺されたホテル付近のの映像が映し出された。

 

 背の低い男はこのニュースを耳にしてピクッと片眉を動かすが、それ以外の反応を示すことは特になかった。

 

 『続いてのニュースですーー』

 

 そしてニュースは次々と移っていくが、背の低い男は何の反応もなく無表情でテレビの画面をまじまじと眺めている。

 

 そして男が何も語らないまま、朝のニュースが終わった。プツリと男に電源を切られてただの分厚い金属板と化すテレビ。

 

 そこでやっと男が口を開く。

 

 「おかしい

 「ひっ! も、申し訳ございません!!」

 

 男がポツリと零した呟きにもうひとりの男が上げかけていた顔を全力で下に振り下ろす。だが男はそんな彼の挙動に意も介さない。

 

 「おかしい、おかしい、おかしい、おかしい!! おかしいよな!? なあぁ!?

 「はいぃぃ!!」

 

 激昂する背の低い男。それに対し頭を下げたままの情けない声を上げる彼の目からは涙がこぼれ落ちていた。

 

 「なぁ、なんでだ?」

 「は、はひ?」

 「なんであいつ等の名前が出てこない? あいつ等ーーあの五つ子の名前がよぉ!」

 「も、申し訳ございません!!」

 

 痩せた男はこれでもかと言うほどに頭を下げ、しまいには土下座をし始める。だがやはり男が彼の方を見ることはない。

 

 「俺は言ったはずだよなぁ? あいつ等を殺してこいって。なのにどうして殺せてない!? なぜあいつ等が死んでいない!? なぁ、堀田(ほった)ぁ!!」

 「そ、それは! じゃ、邪魔が入ったからでありまして! あ、あのガキです。あのガキともう一人の男です!」

 

 堀田と呼ばれた痩せた男は必死の形相で言い訳を始める。たが彼は直ぐに己の言った言葉を後悔することになった。そんな彼の口から飛び出した『あのガキ』という言葉を聞いて男の目が変わったからだ。怒りに満ち溢れた目から殺意に満ち溢れた目に。

 

 「ガキ? ガキだと? あの時の? 俺の狙撃の邪魔をした?」

 「そ、そうです! あの時ガキです!」

 

 堀田は何かを思いついたようで一筋の光を見出したような顔で捲し立てる。

 

 「金で雇った奴らも全員あのガキと男にやられまして、おまけに車まで破壊された始末です」

 「ガキか……。なぁ堀田、何者だそのガキ」

 「も、申し訳ありません! 調べてみましたが出てきた情報があまりに少なくーー」

 「どうでも良い!! 知ってること全部話せ!」

 「は、はいぃぃ!!」

 

 震えを通り越して完全に隠す様子もなく男にビビリまくる堀田。慌てたように手に持っていたファイルから目的の用紙を探し出して男に渡す。その時に何枚か別の紙が散らばってしまったのだが、それにかまっていられほど堀田に余裕はなかった。

 

 「……警備会社の『守り人』に所属している。名前は零。名字は不定。年は十七。…………これだけか? それに名字不定ってなんだ?」

 「そ、それが…今名乗っている名字は『夢宮』のようなんですが、『夢宮 零』の過去の経歴を調べても一切何も出てこなかったんです。ふ、不審に思って『守り人』に関して詳しく調べると『夢宮 零』だけではなく『神埼 零』や『城之内 零』などの『零』と付く名前の人物が多く存在しまして」

 「あ? んだそれは?」

 

 堀田の話によると零という名前の人間が『守り人』には数十人規模で所属しているという話になる。一人や二人ならまだ現実味があるが、数十人なんて数になるとそれはもはや奇跡と言うまでしかない。

 

 「で、ですがその『零』が付く名前の人物なんですが全員の特徴が一致してまして……、恐らく全て偽名なのでしょう。場合によって名前を使い分けているということになります……」

 「それで名字不定か……。チッ! 結局なんも分かってねえじゃねえかよ!!」

 「す、すみません!!」

 

 男は苛ついた様子でソファーの横にあったサイドテーブルを蹴っ飛ばした。上に乗っていたビールの空き缶は壁に激突して少し残った中身をぶちまけて、アルコールの匂いが辺りを漂う。

 

 「……気づいてなかった」

 「え?」

 「気づいてなかったんだよ、あいつは。狙撃されそうになってたことにな」

 

 堀田は急に冷静になって語りだす男の情緒不安定さに恐怖を覚えつつも、聞き零して相手を不快にさせないようにするためにしっかりと耳を傾ける。

 

 「なのによぉ〜〜どうして俺が引き金を引く直前に気づくんだ? どうして俺がいる方向が分かったんだ!? どうして銃弾を躱すんだ!!?? それに躱す時ーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうして俺の方を見て笑ったんだ?

 

 なあ? と尋ねるように血走った目を向けられた堀田は何も言えず、また何も出来ずに固まる。

 

 「あいつは俺をバカにしたんだ。滑稽だと笑ったんだ。この怒りが! 悔しさが! 憎しみが! お前に分かるか、なぁ堀田ぁあ!?」

 「………」

 

 堀田からの返事がない。男がちらりと後ろを振り返ると泡を吹いたまま堀田が気絶していた。恐らく男の殺気に耐えられなかったのだろう。

 

 だが男はやはり堀田に構うことなくソファーにドサリともたれ掛かり、上を向いて目を見開きニヤリと笑った。

 

 「待ってろ、必ず殺してやる。お前も、あいつ等も

 

 男が口から零したその殺意の塊は、気絶したはずの堀田がビクリと震えるほどに冷たいものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 【〇〇SIDE】

 

 今日はとってもいい天気だ。おかげで朝からとても晴れやかな気分だったよ。現在は朝の9時。日曜日だからみんなゆっくり寝ている時間帯だろうか? まぁ零は間違いなく寝ているだろうけどね。

 

 マンションの前に乗ってきたバイクを止めて、マンションの中に入る。左手に持った袋をぐるぐると振り回しながら階段を一段とばしで駆け上がり、三階まで達するとある部屋の前でインターホンを押す。

 

 ………返事がない。ただの屍のようだ。

 

 もう一度インターホンを押す。

 

 ……部屋の中で何かが動く気配がする。ただの屍では無かったようだ。

 

 もう一度インターホンを押す。

 

 『……眠い。帰れ』

 

 返事が返ってきた。しゃべる屍のようだ。

 

 「オッケー、入るね」

 

 ボクは鍵がかかっていない扉を開けると靴を脱いでズカズカと奥に入り込んだ。中は……暗いなぁ。カーテンも閉まってるし。とりあえず電気つけよっと。⋯⋯ってうわ! なにしてんの!?

 

 ボクの目の前には寝室に戻ろうとする途中で倒れた様子の零がいた。

 

 まさかインターホンで答えた後に戻ろうとしてそのまま気絶? ほんとに? そんなに眠たいの?

 

 「お、お〜い。生きてる〜?」

 

 思わず零に声をかける。本当に喋る屍だったらどうしよ……。ボクホラー系無理なんだよね〜。

 

 「……ぁ? なんでいるんだ?」

 「いや、君のことだからどうせぶっ倒れてるだろうな〜って思って」

 

 確か零は昨日深夜を過ぎた辺りに『守り人』の本部に戻ってきて、そこから襲われたことに関する報告書を書いて……、そのあと社長に稽古をつけ(イジメ)られて………。そりゃ倒れるね。

 

 「ほら、いろいろと食べるもの買ってきたから。食べなよ」

 「ああ、悪い。…よっと」

 

 零がゆっくり体を起こしてソファーに座る。ボクがソファーの前にある机の上にコンビニの袋を置くと、礼を言いながらガサゴソとあさる。

 

 「サンドイッチに、パン。んで………抹茶ソーダ?」

 「味が気になるだろ? 実は僕も気になるんだ〜」

 「……お前が飲めよ」

 

 あれ? 試飲して感想言ってもらおうと思って買ったのバレてる? そんなに睨まないでよ〜。

 

 零に有無を言わさず押し付けられた抹茶ーソーダ。味は……きっと悪くないはずだ。製品化されるくらいだし。うん、多分。メイビー

 

 「よっとーーーってうわぁ!?」

 「あ!? お前何してんだ!」

 

 蓋を開けた瞬間中身が爆発したかのように噴き出し、辺りに飛び散った。普段は感情の起伏が緩やかな零が珍しくボクに向かって怒鳴る。

 

 なんでだろ〜? ああ、そう言えば階段駆け上がった時、袋を振り回してたっけ? ハハッ、いや〜失敗したな〜。いや〜わざとじゃないんですよ。本当に。

 

 「………」

 

 いや、ほんとわざとじゃないんから! 違うから! 別にこうなることを目論んでたわけじゃないから! だからその果物ナイフをこっちに向けるのはやめてくれない?

 

 

 だめ? あはは、だめなんだ〜。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから一時間かけて部屋の掃除をさせられた。なんなら来たときよりもピカピカになったんじゃないかってほどに磨き上げた。

 

そしてボクの頭には地を揺るがすような衝撃によって内出血が起こって膨れ上がった頭皮ーーー要するにたんこぶができていた。

 

 くっそ〜、ちょっと困らせてやろうって思っただけじゃん。可愛いイタズラじゃん。笑って許してほしいんだけどな〜。

 

 「それで、何しに来たんだ? ただ食べ物を持ってきただけじゃないんだろ?」

 

 どうやら別の目的があったことはバレてるっぽい。零がサンドイッチを頬張りながら尋ねてきた。

 

 「君は今日が何の日か知っているかい?」

 「俺の久しぶりの休暇の日」

 

 うん、知ってる。この後零の代わりにボクが中野家に行くことになってるから。

 

 「そうじゃなくて、今日何があるか知ってるかい?」

 「何がって………ああ、花火大会か」

 

 思い出したように零が呟く。まさか忘れていたのかな? 

 

 「そうそう。ひょっとして忘れてたのかい? 美雪ちゃんがすごく楽しみにしてたんだけど……」

 

 昨日美雪ちゃんのお見舞いに行ったら輝くような笑顔で、明日零が花火大会に連れて行ってくれるんだと話していた。これで忘れていたら……死刑だね。天使の笑顔を潰す者は許すまじ。

 

 「ああ、知ってるさ。ちゃんと浴衣レンタルの予約もしてある」

 

良かった。どうやらちゃんと覚えていたようだ。

 

「それで、花火大会がなんなんだ?」

「ああ、実はーー」

 

ボクが口を開こうとした瞬間、タイミング悪く零の家のインターホンが鳴った。ボクがインターホンの画面を覗き込むと、そこにはボクもよく知っている人物が映っていた。

 

「はーい、直ぐに開けますねー」

 

ボクは通話ボタンを押すと、相手が口を開くより先に解除ボタンを押してドアを開ける。相手は少し怪訝そうな顔をしたものの、軽く頭を下げて画面から消えた。

 

「誰だったんだ?」

「まあ来たらわかるよ」

 

零はボクの曖昧な答えに文句を言うことはなく、食べ終わったサンドイッチのゴミをサッと片付けた。

 

そして数十秒後にインターホンが鳴る。今度は部屋の前からだ。ボクは玄関の方まで歩いていき、ドアを開けて外の人物を迎え入れる。

 

「どうぞー」

「ありがとうございます」

 

目の前にいるのはボクが調査書を書くために一週間ほどかけて色々と調べた相手。 糸目でおっとりとした顔つきの見る人を安心させるような雰囲気を持つ男。中野先生の秘書の江端さんだ。

 

「ああ、江端さんでしたか。おはようございます」

「おはようございます、夢宮様。こんな朝からお訪ねして申し訳ありません。それで⋯⋯こちらの方は?」

 

江端さんがボクの方をチラリと見ながら零に尋ねている。おっと、そう言えば()()()()()()初めてだったね。人との交流でいちばん大切なのは第一印象! ここは自己紹介をバシッと決めないと!

 

 ボクはコホンと咳払いしてその場くるりとターンを決めて、ピタリと元の位置で止まると同時に指を天に突き刺すポーズを決める。

 

 「ボクの名前はーー」

 「こいつは柳井です。俺が休む時に代役として中野家に行かせるんでよろしくおねがいします」

 

 んぬぁぁああ! すごいナチュラルに人の邪魔しやがった! 言わせてよ! 天衣無縫の無一文って言わせてよ! あのセリフ一回言って見たかったんだよ!

 

 ボクが一人で悶ているのを、零と江端さんは揃って不思議そうな目で見てくる。いやいや、零君。君は気づいててやっただろ? 今もすごいしてやったりみたいな顔してるじゃん。

 

 「そ、そうでしたか。柳井様、どうぞよろしくおねがいします」

 

 江端さんは少し動揺しながらもボクの方に頭を下げてくれた。いい人だ! 江端さんはいい人だ!

 

 零が江端さんをソファーに座るように促し、ボクと零は並んで向かいのソファーに腰掛ける。

 

 「それで江端さんは何のようなんです?」

 「ああ、そうでした。本日は零様に報告がありまして」

 「報告?」

 

 零が首を捻る。そりゃそうだろう。伝えたいことがあるなら『守り人』の本社に連絡を取ったら良いわけだし、わざわざ零の家に来てまでして話す必要が分からないからだ。

 

 「はい、一つは報酬のことです。約束通り()()()()()()()()()()として病院の方で頂き、残りの三割は指定の口座に振り込ませていただきました」

 

 零は高校生でありながら守り人の社員として働いている。マンションに一人で住んでいるくらいだからお金に余裕があるのでは? と普通なら疑問に思うだろう。そうでない理由は美雪ちゃんだ。

 

 美雪ちゃんは現在、ある病気を患っている。その疾病の名は『夢幻病』。症状はとてもシンプルで「ある一定期間眠り続ける」のみだ。だが、症状はシンプルな一方でとても深刻だ。

 

 なにが深刻かって? 分からないのなら教えてあげよう!

 

 Q、ある一定期間とはどれくらいなのか?

 A、不定。確認されている症例は最短で16時間、最長で3年。ちなみに最長の三年の方はそのまま亡くなった。

 

 Q、症状が出る前兆は?

 A、全くなし。前兆もなく急に眠り始めるので、疾患者のほとんどが病院への入院を余儀なくされている。

 

 Q、原因は?

 A、不明。治療法も不明の難病と言われている。

 

 と、まあこんな感じの病気だ。零は美雪ちゃんの治療費のために働いているわけだ。

 

 「二つ目の報告ですが、今日の花火大会のことです」

 「花火大会が何か?」

 

 零はボクの方にチラリと目をやりながら尋ねる。きっとボクも花火大会について何か言おうとしていたのを思い出したのだろう。

 

 「実は今日はお嬢様方も花火大会に行かれるご予定でしてーー」

 「折角の休みのとこ申し訳ないけど零に護衛を手伝って欲しいってわけ。そうでしょ? 江端さん」

 

 僕ボク江端さんの話に割り込んで話すと、江端さんが驚いた顔で僕の方を見る。ちなみに江端さんは驚いた顔でも目は糸目のままだ。

 「は、はい。その通りですが……。なぜご存知なので?」

 「いや〜、実はボクも同じこと言おうと思ってたんですよ〜」

 「ほう、なるほどなるほど。つまりお前がこうやって親切に飯を持ってきてくれたのも俺を働かせるためか。なるほどね」

 

 ハハハ、ナンノコトデショウ? ……いや、視線が痛いよ。そんなに睨まないでよ。………いやいやナイフはダメだって! そんな危ないものはすぐにしまいなさい!

 

 零の恨みの籠もった視線にブスブスと刺されながらも知らんぷりをしていたら、零の手がそっと机の上に置いてあった果物ナイフに手を伸ばしたのをボクは見逃さなかった。

 

 「それでいかかでしょう? もちろん夢宮様は妹様と一緒にお祭りに行かれることは存じておりますが、何分(なにぶん)すごい人混みですので……」

 「良からぬことを企む人も多くいるだろうしね。流石にボクだけじゃ何かあった時に対処出来ないよ。まぁ、後藤さんとナミ姉さんも手伝ってくれるんだけどね?」

 「後藤さんにナミ姉まで? 過剰戦力じゃないか?」

 

 零の疑問ももっともだ。【魔弾の狙撃手】のコードネームを持つ後藤さんに、【美魔女】と呼ばれるナミ姉さん。ーーそして【黄昏(たそがれ)】の異名を持つボク。『守り人』では実力のあるものにしかコードネームを持つことは許されていない。つまり『守り人』の実力のある人間が三人も着任されているのだ。そこらへんのチンピラなんぞまるで相手にならない。

 

 「それが『教授』の方に動きがあってね〜。何か仕掛けてくるかもって警戒してるんだよ」

 「『教授』か………。分かった、少し考えさせてくれ」

 「ああ、もちろん。それと社長からは『任務よりは美雪ちゃんを優先しろ。だがお前自身より任務を優先しろ』って伝言があるけど」

 

 零の顔に困惑の色が浮かぶ。社長の言いたいことが分かっていないようだ。安心して、僕も分からない。

 

 「後藤さんは『要するに美雪ちゃんとお祭りを楽しみながら任務に当たれって意味だろうね』って言ってたけど」

 「なんで分かるんだよ後藤さん⋯⋯⋯」

 

 零に同感だね。社長と後藤さんは『守り人』ができる前からの古い付き合いだって聞いたけど、そのせいかな?

 

 「分かった。ただし、俺は美雪と一緒に行動するからあくまでそっちは補助ってことで。それで良いですか? 江端さん」

 「もちろんでございます。ご協力ありがとうございます」

 

 江端さんが零に頭を下げる。

 

 「『いや、良いですよ。俺は俺の仕事をするだけなんで』とか言うんでしょ?」

 「なんで俺のセリフ取るんだよ」

 

 はっ、さっきの仕返しだよ。決め台詞を取られた恨みを思い知れ!

 

 ところが零はボクの意に反して、セリフを取られたことを気にする様子を微塵も見せなかった。

 

 「ま、そういう訳です。気を使わなくても良いですよ」

 

 零にそう言われて、江端さんは再び感謝をしめすように頭を下げた。

 

 「それでは、私はこれで。…ああ、そう言えば柳井様はこれからお嬢様方のところへ行かれるのですか?」

 「うん、そのつもりだけど」

 「それでしたらお送り致しますので、一緒に車に乗って向かいましょう」

 

 なんだって! やばい、江端さん良い人だ! 大事なことだからもう一度言う。江端さんは良い人だ!

 

 こうしてボクは江端さんの運転する高そうな車に乗って初の中野家に向かったのだった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 零は二人が部屋から出ていくと、ソファーから立ち上がって出かける準備を始めた。と言っても、自分の身だしなみなど歯牙にも掛けない零は準備を数分で終わらせて家を出る。

 

 服装は白のカットソーの上に黒のカーディガンを羽織り、ベージュのチノパンを履くというシンプルなものだが、零にとてもよく似合っている。零は外に出ると、駐車場に停めてある自分の黒のバイクに乗って走り出した。向かう先は病院だ。

 

 病院への道はそれほど混雑しておらず、渋滞に巻き込まれることなく病院へたどり着くことが出来た。バイクを駐車場に止めて病院のロビーへ向かうと、そこには待ちきれなくなったのか美雪がマルオのそばに立って待っていた。服装は白のワンピースで、白い髪とのマッチが絶妙だった。零のことを探しているのか辺りをキョロキョロと伺っている。そしてその目が零を捉えた瞬間、その愛くるしい顔にはち切れんばかりの笑顔が浮かぶ。

 

 「お兄ちゃん!」

 

 マルオのそばを離れ、零の元へ全力で駆けてきてそのまま飛び付く。零は驚きながらも美雪を受け止めて抱っこする。美雪の身長は130センチくらいとなので簡単に抱えることが出来た。

 

 「おっと。元気にしてたか?」

 「うん! もー来るの遅いよー」

 

 美雪がほっぺたをプクーっと膨らませて抗議をする。どうやら相当楽しみに待っていたようだ。その事が分かり、自然と零の顔にも笑みが浮かぶ。悪い悪いと零が美雪をなだめているとマルオが近くに寄ってきた。

 

 「やあ、零君。話は江端から聞いてくれたかい?」

 「はい。もちろん引き受けさせてもらいますよ」

 

 お祭りを楽しみながらだけど、と零は心のなかで付け加える。

 

 「そうかい。それは良かった。さあ、美雪ちゃん。しっかり楽しんでおいで。零君も何かあったらすぐに連れて返ってくるんだ」

 「うん! マルオ先生もありがとね!」

 「もちろんです」

 

 美雪はマルオに元気よく手を振りながら零の手を引っ張るようにして病院を出る。

 

 「さて、お祭りまで時間があるけど美雪はどうしたい?」

 

 零が時計を見ながら美雪に尋ねると、美雪はニコニコと笑いながら言った。

 

 「私行かないと行けないとこがあるの!」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 場所は移って上杉家。間取りの狭い小さな家に、三人の人間がいた。一人は上杉風太郎。座布団の上にあぐらをかいて座っている。そしてその肩に体重を預けるようにして立っているのが風太郎の妹の上杉らいはだ。

 

 そしてその向かいに少し居心地が悪そうに正座で座っているのが中野五月だ。彼女と風太郎の間に置かれているのは茶色い封筒。中には風太郎の給料が入っている。風太郎は突き返そうとしたが、五月に止められ、このお金をどう使おうか迷っているところだった。

 

 「なあらいは、どこか行きたいところはないか?」

 「え? う、うーん。行きたい場所はあるんだけど……」

 

 どこか困った表情をするらいはを見て風太郎は疑問を覚える。普段のらいはならこういう時は迷うことなく自分の願いを口にするだろうと思ったからだ。

 

 「どうした? なにかあるのか?」

 「う、うん。えーっとね……」

 

 らいはが躊躇うように腕を目の前でモジモジとさせる。ちょうどその時、家の外からバイクのエンジン音が聞こえてきた。風太郎はその音の大きさに心の中で舌打ちをつきながら、らいはの言葉を待つ。

 

 「実はーー」

 「らいはちゃん!!」

 「邪魔するぞ」

 

 らいはが口を開きかけた瞬間に玄関のドアがばっと開かれ、見覚えのない白髪の少女と零が入ってくる。

 

 「夢宮くん!? なんでここに?」

 「あ、美雪ちゃんだ! 良かった。ナイスタイミングだね! お兄ちゃん、私ゲームセンターに行きたい! 美雪ちゃんも一緒に行こうよ!」

 「うん! 行く行く!」

 

 五月が零を見て驚きの声を上げ、らいはが美雪が来たタイミングの良さに喜びながら風太郎の方を見て、美雪はキャッキャッと喜んでらいはの周りをぐるぐると跳ね回っている。

 

 「だれか全部説明してくれ……」

 

 風太郎は二人の飛び入り参戦に非常に混乱していたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数分かけて、零が美雪は自分の妹であり、美雪とらいははよく電話をしていた仲なのだと風太郎に説明した。それからさらに数分かけて風太郎が事情を理解し、さらに数分後に全員でゲームセンターに向かった。

 

 ちなみに五月は帰ろうとしたのだが、美雪とらいはに揃ってお願いされて付いてくることになったのだった。

 

 

 




 【五等分の護衛豆知識】(筆者が文章に入れきれなかったやつ)

 ①美雪の髪が白いのは【夢幻病】のせい

 ②零の持っている服は任務用と私服用に分けられている。任務用にはさまざまな仕掛けが施されていたりする。もともとは零は私服を一切持っていなかったのだが、それに見かねた柳井によって私服を持たされた。ちなみに、零の今回の服は私服用。

 ③柳井は【黄昏】の名で呼ばれると背中がすごく痒くなる。

 ④全員のコードネームの発案者は筆者の弟。絶賛厨二病拗らせ中。


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 更新が遅くなって本当にすみません。これからは出来るだけ早く投稿をしていこうと思います。

 アンケートを締め切らせていただきました。ご協力ありがとうございました!

 アンケートの結果についてですが、筆者は結果の開示をしないつもりです。筆者はアンケートの結果を元に作品を書いていきますので、皆様はだれがヒロインになるのかを推理しながら読んでみてください! そのほうが楽しめると思いますので。


 まあ一応今回はどうしても結果が気になる! という方に向けて結果を活動報告にて発表させていただきます。気になる方はそちらでどうぞ!

 お気に入り登録&高評価&感想の応援お待ちしております! 

 次回乞うご期待!
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