五等分の護衛 〜1人で5人なんて守れるわけねえだろ〜   作:無限夢幻

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 投稿遅くなりまして申し訳ございませんでした。

 感想、誤字報告、催促の声を下さった方々、本当にありがとうございます!

 銃の種類って難しいんですね……

 今回はお詫びの意を込めて少し長く、深めに書き上げました。

 それでは、どうぞ!


第十五話 花火大会開幕

 道行く人々の喧騒と荒波に揉まれクラクラした頭を冷やすため、風太郎は人混みから少し離れた場所でベンチに疲れ切った顔で座っていた。いわゆる人酔いというものだろうか。その隣ではらいはがつまらなそうな顔で足をプラプラ揺らしながら風太郎の腕を引っ張っている。

 

 それを真上から呆れたように立ち見下ろす零と、項垂れている風太郎を心配そうに覗き込む美雪の行動はとても兄弟とは思えないほど真逆だ。

 

 「クソッ……人が多すぎる…。これが花火の力か……」

 「おいおい、まだまだ序の口だが? これからどんどん増えていくはずだぞ」

 「……帰りたい」

 「ダメだよお兄ちゃん! 今からお祭りなんだから!」

 

 人酔いーーというよりさっきから馬鹿みたいに足を踏まれまくっていることが原因で、風太郎は若干人混みが苦手になったようで死んだ魚のような目をしている。

 

 ちなみに五つ子の宿題はすでに柳井によって済ませてしまっていた。そしてその柳井も『ちょっと野暮用』と言ってどこかに去っていった。去り際に意味ありげに零にアイコンタクトをしていたが、その意味を知るものは零を含めて誰もいない。

 

 「何ですか? その祭りに不相応な顔は?」

 

 そこに両手に綿菓子を持った五月が近寄ってきた。赤い浴衣を着た彼女は普段は自然体にしているその赤髪を、今は頭の後ろで短くアップに纏めている。その姿は祭りの灯りと相まって非常に美しく照り映えていた。

 

 そんな五月をじーっと穴が開くほど凝視する零と風太郎。

 

 「そ、そんなに見ないでください…」

 

 二人に注目されて照れた五月は、赤らめた頬を隠すように俯きながら小さな声で言う。そのとても可愛らしい姿は並の男子なら一撃でノックダウンしていたであろうが、ここにいるのは勉強好き(鈍感)恋愛音痴(鈍感)の二人だ。

 

 「…こいつ誰だ?」

 「見りゃ分かるだろ、五月だ」

 「ただでさえややこしいのに、髪型まで変えるなよな…。夢宮はよく分かったな?」

 「綿菓子二つ持ってる時点でお察しだ」

 「ああ、なるほど」

 

 デリカシーや気遣いなどは生まれたときに捨ててきたような二人の会話を聞いた五月は、羞恥心と怒りで顔を真っ赤にしたまま俯いてプルプルと震える。

 

 「五月さんにーー」

 「失礼でしょ!」

 

 そんな二人にそれぞれの妹からお叱りの拳がクリーンヒット。そして痛みに呻く二人を放って五月に「うちの兄がすみません」と二人揃ってペコペコ頭を下げる。それに気づいた一花がからかうような笑みを浮かべて近寄ってくる。

 

 「あーあ、ダメだぞー。女の子が髪型変えたら褒めてあげないと〜」

 「……誰?」

 「一花だ」

 「あはは……そこまで見分けつかないか〜……」

 

 風太郎の観察眼には、最早怒りを通り越して呆れてしまう。「なんでわからないんだこいつ?」とでも言いたげな蔑むような目で零に見られた風太郎は、慌てたように弁解する。

 

 「い、いや、これからは大丈夫だ。ちゃんと浴衣の色を覚えた」

 「顔は覚えられないんだな……ってなんだ?」

 

 やれやれと呆れたようにため息を吐く零の眼前に、白い綿菓子がグイッと突きつけられる。危うく顔に付きそうになって仰け反りながら、零は犯人である五月の顔を見て怪訝そうな顔をしながら尋ねる。

 

 「なんだ? くれるのか?」

 「これはもとよりあなたのために買ったものです! 私は二つも食べません!」

 「そ、そうか。なら有り難くもらっておく。ありがとな」

 

 再びグイッと強く押し付けられた綿菓子を素直に受け取った零は優しく微笑んで礼を言う。それは普段から美雪にしか見せないはずの優しく包み込むような笑みであって、美雪と一緒にいるからか零は無意識に五月にもその温かみのある笑みを見せてしまっていた。

 

 「べ、別にお礼を言われる筋合いはありません。この程度で返せる訳ではありませんが浴衣のお礼ですので」

 

 普段の無表情な零とはギャップがありすぎる笑みを向けられた五月は、調子を崩されたのか照れたようにそっぽを向いた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 時は遡ること一時間前。

 

 零と柳井の殴り合い(お遊び)が終わり、柳井が五人を零に任して去っていった後、零は風太郎と美雪とらいはと五月の四人を引き連れて近くの着物屋に来ていた。

 

 「ほ、本当にいいのか夢宮?」

 「ああ、美雪のついでだ。話もちゃんと通したから大丈夫」

 「あの、本当に良いんですか零さん?」

 

 今らいはが着ているのは紺色の生地に色鮮やかな朝顔が描かれた着物だ。彼女の髪の色とマッチしていてとても良く似合っている。そんな彼女を手放しで褒めるのは白い髪とは真逆の黒い浴衣を着た美雪だ。子供では珍しい色の浴衣であるせいか、いつもより少し大人びているように見えた。

 

 「ああ、良いの良いの。後で上杉にしっかり働いてもらうから」

 「そうですか。それなら遠慮なく着ますね!」

 「くっ、らいはめ……いや、だが……」

 

 零の言葉を聞いて一切遠慮がなくなったらいはを見て思うところは少なからずあるものの、彼女の喜んでいる姿を見て嬉しく思う兄心と葛藤している。

 

 「あの…私まで良かったんでしょうか?」

 「ついでだついで。わざわざ家に帰るよりこのほうが早いだろ?」

 「…そうですね。では有り難く着させてもらいます」

 

 そう言って五月達三人は互いに褒め合いながら店を出ていき、その後に項垂れた風太郎が続く。

 

 全員が店を出ていったのを確認すると、零は三人の浴衣を手配してくれたこの店の女性の店長の方へ向き直る。

 

 「いやー、急に無理言ってすみませんでした」

 「いえいえ、大した事ありませんよ。これでやっと今までの恩の一パーセントを返せたくらいですから。その節は本当にありがとうございました」

 「「「ありがとうございました!」」」

 

 店長が頭を下げると、その後ろに並んだ三人の従業員も頭を下げる。

 

 「お礼は俺じゃなくて社長に言ってください。俺は社長の意向に従っただけですから」

 「いえ、たとえそうであったとしても私達が救われたことには変わりありませんから。それに謙虚すぎるのも良くありませんよ?」

 「…そうですね」

 

 店長の言葉に確かにそうだと納得した零は素直に礼を受け取り、その後何故か頬を赤らめながら潤ませた目で握手を求める従業員に、不思議に思いながらもしっかりと握手を交わして『にっこり』と優しく微笑んだ。

 

 本人はほとんど意識していないが、一応零は美形の部類に入る男子であったりする。そんな零の微笑みを真正面で受けた彼女はプシューと頭から湯気を立ち上らせながらヘニャヘニャと崩れ落ちてしまった。

 

 それを後ろからしっかりと支えた店長はため息を吐きながら零の方に向き直る。

 

 「まったくこの子は……。お時間取らせてしまって本当にすみませんね、零さん」

 「いえ、俺は大丈夫です。では、また帰りに寄らせていただきます」

 「はい、お待ちしておりますね」

 

 店長達に向かって模範的で綺麗な礼をしてから、零は店の外からこちらを覗いている四人のもとへ歩いていった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 それから一時間の間に風太郎が足を踏まれた回数はおよそ十回ほど。つまり六分に一回の頻度で足を踏まれているという計算になる。

 

 運が悪いのか、運動神経が悪いのか、それとも誰かが故意に狙って踏んでいるのか、どちらにせよもう人混みはごめんだと思い始めている風太郎。

 

 だがしかし、可愛い妹のためなら例え火の中水の中、人混みの中であろうとも行かないわけにはいかない!

 

 と、そんな風に一人でぶつぶつ呟いて奮起している風太郎に若干引きながら放っておいて、一花は綿菓子を不思議そうな顔で頬張ってる零に絡み始めた。

 

 「あれ? なんでそんなに驚いた顔してるのかな?」

 「ん? ああ、初めて食ったからな、これ」

 「え? 今まで食べたことなかったの!?」

 

 一花が驚きで目を見開きながら変人を見るような目で零の方を見る。なんと言ったってあの綿菓子だ。お祭りには定番と言っていいほどに必ずあるし、最近ではコンビニなんかでもお菓子として売っていたりする。見た目や匂いが嫌いでもない限り人生に一度はかならず食べる代物なはずだ。

 

 「まあな。『綿菓子』って物があるのは知っていたが実際に食べたのは初めてだ」

 「え!? それは人生損していますよ!」

 「ああ、だろうな。こんな美味いもの食べてなかったなんて損してるよ」

 

 五月に哀れんだ目で見られるが、零はむしろ自嘲するような言葉と共に苦笑する。

 

 (レイ君って意外と世間知らずだったりするのかな…? からかったら面白いかも!)

 

 綿菓子すら食べたことがなかった零を見てそんな感想を抱く一花に、いたずら心が芽生え始める。

 

 「ねえレイ君、浴衣は本当に下着を着ないのか興味ない?」

 

 そう言って浴衣の前を少し開いて見せる一花。その仕草は並の男子の理性を崩壊させるほどのインパクトがあるのだがーー

 

 「いや、ないけど」

 

 もっとヤバい人(ナミ姉)を知っている零には効果は今ひとつだったようだ。真顔で返された一花は出鼻をくじかれたようにたじろぐ。

 

 「え〜本当に〜?」

 

 それでも滅気ずに零に腕を絡ませて、からかうような笑みを浮かべる一花であったが、零の反応は全くもって皆無だった。ーーというわけでもない。

 

 「フンッ」

 「痛っ!」

 

 綿菓子を完食し終えた零は、一花の正面に持ってきた指を額の前で弾く。いわゆるデコピンというものだ。零の急な動きにキョトンとしていた一花が、優しめのデコピンを受けて額を抑えながら抗議の目を向ける。

 

 「ひどいな〜女の子にこんなことして〜。お姉さん泣いちゃうぞ〜」

 「…泣きたくなかったら今のうちにその思わせぶりな態度はやめておけ。そのままだと痛い目見るぞ?」

 「え?」

 

 零の言いたいことが全くもって分からず、おどけた口調から素に戻ってしまう。思わせぶりな態度というのはまだ分かるが、痛い目を見るという言葉の真意が一花には分からなかったからだ。

 

 そんな一花を見て零は少し言いにくそうに、照れたように、それであって優しく諭すように口を開く。

 

 「あのなぁ、お前はいい意味でも悪い意味でも魅力的なんだよ」

 「…………ふぇ!?」

 

 零からの予想外な告白(褒め言葉)に理解が追いついた途端、頬が一瞬にして赤く染まり間抜けな声が一花の口から漏れ出す。

 

 「そんなことしていたら勘違いした男子に逆上されて襲われるぞ……って聞いてるのか一花?」

 「……え、うん。聞いてるよ」

 

 頬を染めたままポーッと零を見ていたのも束の間、両頬を叩いてとびかけていた意識と冷静な思考を呼び戻す。

 

 「まあ要するに面倒なことになるまえにその態度を改善しろじゃないとーー」

 「じゃないとーー?」

 

 零の厳しい顔つきを見て思わず生唾をごくりと飲み込みながら零の言葉を待つ一花。だがーー

 

 

 

 

 

 「俺の仕事が増えるだろうが」

 

 零という男はどこまで行っても面倒くさがりなのであった。

 

 昔の苦行(大量の残業)を思い出して社畜のような腐った目をして虚空を眺める零。その零らしいと言えば零らしい姿に一花は思わず苦笑をこぼす。

 

 「一花さん、一花さん。これでもお兄ちゃんはちゃんと心配してるんです」

 「…うん。それはすごく伝わったかな。私もレイ君のためにもう少し考えてあげないとね」

 「はい!」

 

 一花のウインク混じりの返事に元気よく微笑みながら返事を返す美雪。

 

 零は一花に忠告する時、常に一花の目を真剣に見ながら語りかけてくれていた。口では自分の為などとは言っているが一花の身を案じて言ってくれていることは、その目を見たらすぐに分かった。

 

 (レイ君は優しくないふりをしてるけど、ホントは優しいんだな)

 

 一花はほんの少しだけ零のことが分かれたような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 「遅いわよ、アンタ達!」

 「なんだ? やけに張り切っているな?」

 

  時は進み、貸し切ったというビルの屋上へ向かう道中に祭りの屋台を冷やかしながら歩いてる零たち。零が射的から出禁にされるほどにまで景品を落としまくったり、四葉と美雪で金魚すくいの水槽を空にしてしまったり、五月が様々な屋台で買食いしたりと寄り道に寄り道を重ねて歩いてきたのだが、とうとう二乃も我慢の限界が来たようだ。一向に進まない零たちに向かって怒りの声を上げると鼻を鳴らしてズカズカと先へ進んでしまう。

 

 そしてそれを五月と風太郎が慌てて追いかけていった。一花は先程からどこかへ姿を消しており、四葉と美雪とらいはは次は輪投げの店で遊んでいる(を潰しにかかっている)。だから三玖と零は現在こうして二人で並んで歩いているのだった。

 

 「花火は私達五人にとって特別なものだから」

 「特別?」

 「うん。お母さんとの大切な思い出なんだ」

 「大切な思い出、か……」

 

 昔の思い出(幸せだった頃)を思い出してふんわりと微笑む三玖の隣で零も笑みを表情に浮かべながらも、内心では深海のように深く暗い感情が渦巻いていた。

 

 「どうしたのレイ? なんか変だよ?」

 

 だが、喜んだ表情をしてもさほど変化のない零の鉄仮面であっても、どうやら三玖にはほんの少しの違和感が生じたようだった。少し心配そうに俯きかけていた零を覗き込むようにして見上げる。

 

 「いや、なんでもない。それならみんなで楽しまないとな」

 「…うん、そうだね」

 

 だが、表情を取り繕う(隠す)ことは零もプロ並みであるので、次の瞬間前を向いた零の顔はいつものように口元が少し微笑んでいる無表情であった。

 

 (……気のせいかな? いまレイの顔がすごく苦しそうに見えたんだけど……)

 

 三玖は零への違和感に首を捻る。本人(三玖)は全く気づいてないだろうが、三玖はよく無意識のうちに零を見ていたりする。そのせい(おかげ)で今の零の表情に違和感を感じていたことにまで三玖は気づけていない。

 

 そうして三玖が悶々と悩んでいるとどこかからノイズ混じりの音声が流れ始めた。

 

 『お待たせいたしました。七時になりましたので花火の打ち上げを開始いたします!』

 

 スピーカーから祭り会場全体に届くような大きさで花火開始の宣言が告げられ、それを聞いた人々は花火がよく見える場所へと一斉に向かい出す。互いにぶつかり合いながら進む彼らの人並みに飲まれた三玖と零は揉みくちゃになりながらも、零が三玖の手を引っ張って人混みからなんとか脱出出来た。

 

 「す、すごい人の量……」

 「ああ、本当に恐ろしいな…」

 

 なんとか抜け出せたことにホッとした三玖が胸を撫で下ろした瞬間、辺りに火薬の爆発音と色彩豊かな光が広がる。とうとう最初の花火が打ち上がり始めたのだ。

 

 花火のもとへと向かっていた人たちも思わず一度足を止め、その色とりどりな美しさに見惚れる。

 

 「すごいキレイだね、レイ。…………レイ?」

 

 キレイ! や、すごい! などの歓声が辺りからチラホラと上がってくる中、三玖が零に問いかけるように感想を零すが、いつもならすぐに返ってくるはずの賛同の声が聞こえない。

 

 不思議に思って後ろを向くと、会場にいる人の殆どの視線がそちらに向く中、たった一人だけ零は全く別の方向を睨みつけるようにして見ていた。

 

 「チッ、なんでアイツがここにいるんだ。悪い三玖、野暮用が出来たからみんなで合流して先に行っていてくれ!」

 「え!? ちょ、ちょっとレイ! ーーーーっ!!」

 

 三玖には聞こえない大きさで舌打ちし愚痴を零すと、零は三玖の返事も聞かずに先程睨みつけていた方角に向かって人混みを縫うようにして走り去っていく。

 

 置いて行かれそうになって慌てて零の手を掴んで止めようとした三玖だった。

 

 しかし、零の目を見た途端に引き留めようとして伸ばした手を思わずサッと引っ込めてしまう。いや、引っ込めてしまった。まるで体が拒否反応を起こしたみたいに。そのことに三玖は自分自身で驚く。

 

 (何で……?)

 

 ーーなぜならその目がいつになく真剣であったから。

 

 (どうして今……私はレイを……)

 

 ーーなぜならその瞳の奥に黒くドロドロと渦巻く殺意(ナニカ)を垣間見てしまったから。

 

 

 

 

 なぜならーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (恐いと思ったの?)

 

 

 ーーそんな零に恐怖を覚えずには居られなかったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ーー花火大会が、始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 花火が上がる少し前、二乃は放送によって突如動き出した人の波に飲まれてしまっていた。

 

 「ちょ、ちょっと! 通して!」

 

 慌てて振り返るもそこには誰もおらず、戻ろうにも押し寄せる人波で上手く前に進めない。すれ違う人々は二乃のことなど気にもかけず楽しそうに笑い合いながら通り過ぎていく。

 

 (助けて! 一花! 三玖! 四葉! 五月!)

 

 二乃の願いも虚しく、彼女たちが助けに来る様子はない。それも当然で、彼女たちはそもそも二乃が何処にいるのかも分かっていないし、二乃の状況など知る由もない。

 

 (お願い……誰か来て…)

 

 人混みで揉みくちゃになりながら彼女たちがいる方へ手を伸ばす。届くないことは分かっている。それでも救いを求めるかのようにその手を伸ばす。

 

 だがーー

 

 「キャッ!?」

 

 ドンッと誰かにぶつかられ、誰かの足に二乃の足が引っかかった。体勢を崩した二乃は小さく悲鳴のような驚きのような声を上げて後ろ向きに倒れていく。

 

 こんなところで転んでしまったら、大勢の人に踏まれて大怪我を負いかねない。

 

 そしてーー

 

 (ーーー誰か!)

 

 「!?」

 

 願いは届く。

 

 重心が後ろへと傾き、その長い髪が地面に接しそうになった刹那、人の間をすり抜けるように伸ばされた手が今にも倒れそうな二乃の腕をしっかり掴み、力強く引っ張り起こした。

 

 「大丈夫か?」

 「………へ、平気よ。ありがと」

 

 少し恥ずかしそうに顔を赤らめながら二乃は助けてくれた風太郎に礼を言う。

 

 「こんなところにいても埒が明かない。移動するぞ」

 「…ええ、分かったわ」

 「ほら、はぐれないようにココ掴んでろ」

 「…ええ」

 

 二乃は差し出された袖の端を躊躇いながらもキュッと掴んだ。

 

 普段なら風太郎を馬鹿にしながら拒否しているはずなのに、今の二乃はやけに素直なことに驚きながらも風太郎は二乃と共に予約している場所へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人混みの隙間を一切速度を落とさずに走り抜ける。隣を通過された人々は驚きの声を上げるが、零は気にしている余裕もなくただひたすらに()がいるであろう場所を目指して駆け抜ける。

 

 そのまま祭りの喧騒が聞こえなくなるほどに離れた場所の路地裏へと突っ込むと、その奥へと先程よりさらに速度を上げて走る。角を曲がる際にも減速などはせず、勢いのまま壁を蹴って曲がり切る。

 

 そして少し開けた場所に出るとようやくその足を止めた。かなりの距離を走ったのにも関わらず一切息切れをしていない零は、路地のとある一点を睨みつけて話しかける。

 

 「そこにいるんだろ? 出てこいよ」

 「………やはり貴様なら来ると思っていた」

 

 影から声が聞こえたかと思うと、まるで影が分離するかのようにヌルリと白い仮面を付けた黒ずくめの男が現れる。身長は零よりやや大きく、体格も零よりかなり優れている。

 

 その男を親の仇でも見るかのような目で睨みつけながら、零は問いかける。

 

 「…なぜお前がここにいる?」

 「仕事だからだ。この意味は分かるだろ?」

 「チッ、『教授』とやらにでも雇われたか?」

 「御名答」

 

 黒ずくめの男の拍手を零は心底嫌そうな顔で受け取る。白い仮面でその表情は隠されているが、大方ニヤニヤと今の零の様子を見て笑っているのだろう。そのことが余計に零を苛立たせていた。

 

 「それで、お前はここに何しに来たんだ?」

 「ふむ、そうだな。もう教えても良いだろう。我の仕事は貴様をここにおびき寄せ、あわよくば此処で始末。不可能なら足止めをすることだ」

 「……へえ、お前が俺を止めれるとでも?」

 「ああ。それどころか始末することも楽勝だと思っている」

 「…舐められたもんだな」

 

 互いに軽口を叩き、笑い合いながら近寄ると、一定の距離でお互いがピタッと足を止める。それ以上先はお互いの間合いに入ることになる。つまり戦いが始まるということだ。それが分かっているから二人共それ以上進まない。

 

 「ほう、意外だな。逃げないのか?」

 「あの五人のことなら他の奴らに任せてある。それにーー」

 

 そう言って一区切り付けると、ニヤリとニヒルな笑みを浮かべる。

 

 「お前は俺がここで殺さねえとなぁ

 「上々」

 

 途端に零から放出される視認できそうなほど黒く重く濃い殺気。だが、並の人間なら一目で意識を刈り取られそうなほどの濃密な殺気を真に受けた男はむしろ嬉しそうな笑みを零す。

 

 「『死神部隊』所属、『γ(ガンマ)』。通称『最速』だ。お見知りおきを」

 「『守り人』所属、『No.()』。通称『狂戦士』。覚えなくても良い。どうせ俺が殺すから」

 

 

 

 

 

 

 ーー花火大会(戦い)が、始まる。

 

 




 【死神部隊に関する報告書】
 全世界で活動する謎の傭兵団。構成員はたったの七人であるが、個々が強大な戦闘力を持っており、彼らによって一夜で一つの小国が滅ぼされたこともある。なお、構成員の素性は謎に包まれており、その仮面に隠された顔を見たものは誰一人としていない。

 【守り人に関する報告書】
 死神部隊とよく並列して語られる謎の集団。構成員の数は不明。圧倒的な戦闘センスを誇る『社長』と呼ばれる人物がトップに立ち、その下に『ナンバーズ』と呼ばれる七人の幹部が存在する。表向きは警備会社を装ってはいるが、その正体とは………?





 更新が遅くなってすみませんでした!

 けどこれからもこの調子になるかも……。

 そこでご相談なのですが、これからは投稿予定日が決まったら活動報告に書いた方がいいでしょうか? その方が皆さんもわかりやすいでしょうし…

 アンケートにしますので良ければ答えてくだされば嬉しいです。皆様のご協力をお願いします!
 
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