五等分の護衛 〜1人で5人なんて守れるわけねえだろ〜 作:無限夢幻
というより原作キャラの口調って案外難しいんですね。
では、どうぞ。
放課後になり、多くの生徒が零と五月の方へ押しかけて来た。どこから来たのかだとか(零はまたやんわりと躱していた)、好きな食べ物はなんだとか(五月はかなり熟考した)、そんな質問に答えているうちに時計の針は五時を指していた。
「なぁなぁ、これから一緒にカラオケ行かねえ?」
「悪い、俺これから用事あるんだ。ごめんな」
「そっか。ならまた今度な」
「おう、また誘ってくれ」
零が席を立とうとすると近くにいた男子生徒達が声をかけてきた。彼らの誘いを断った零はかばんを持って教室の出口に向かう。そして五月の後ろを通り過ぎると時に一言、
「頑張れー」
と呟いた。
「?」
零からの応援の言葉の意味がわからず頭上に疑問符を浮かべる五月だったが、考える間もなく次々と質問が飛んでくるので考えるのをやめてしまった。
五月が零の言葉の意味を理解したのは、零がいなくなったことで興味の矛先が全て五月に向き、質問攻めにあって帰るに帰れなくなったと気づいたときである。
(まさかあの人、こうなる事を見越して先に帰ったのですか!?)
その時、五月の中で零の好感度がかなり下がった事は言うまでもない。
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一方、カラオケのお誘いを断った零は制服のままとある病院を訪ねていた。病院に着いた零はフロントで来訪者名簿に言われたとおりに名前を書くと、迷うことなく一直線に201号室へと向かった。
軽くノックをして返事が返ってくるのを確認すると、病室のドアを開けて部屋の奥にあるベットを目指す。そこには白く長い髪を腰に届くほどまでに伸ばした少女が窓の外の小鳥を見て優しい微笑みを浮かべていた。それはまるで一つの絵画のように完成された風景であった。
「美雪」
零が後ろから優しく声を掛けると、少女ーー
「
「ああ、明日からまた仕事が始まって忙しくなるからな」
「次はどんな仕事なの?」
「ああ、それがどうやら五つ子の護衛らしい」
「五つ子!? そんな人達がいるんだね。美雪も会ってみたいな〜」
「…まあ、機会があったらな」
そう言いながら零は美雪の頭を優しく撫でる。美雪は嬉しそうに目を細めながら、気持ちよさそうにしている。
それから二人は色々と話をした。話の内容は主に零の前回の任務についてだった。
病院に入院していてなかなか外に出ることの出来ない美雪にとって、日本だけでなく世界中をあちこちを転々とする零の話はとても興味深く、面白いものだった。美雪はいつも零の話を聞くこの時間を楽しみにしていたりもする。
美雪は零の語り口に魅せられ、その目を純粋に輝かせながら話を聞いている。そうこうしているうちに日が暮れて辺りが真っ暗になったのを見て、零は壁にかけられた時計に目をやる。
「もうこんな時間か。そろそろ帰るわ」
「うーん、そっか。残念。お仕事がんばってねお兄ちゃん」
心底残念そうな顔をしながらも兄を応援する美雪を見て、零はもう一度美雪の頭を撫でてから病室を出た。
病室を出て病院の出口に向かう途中、零は向こう側から歩いてくる見知った顔の二人に出くわした。
「お久しぶりです、社長、中野先生」
「ああ、君か。久しぶりだね」
「おいこら零。何回言ったら分かるんだ。目上の俺に敬語を使うんじゃねえよ」
「普通逆だと思いますけど」
零が出会ったのは『守り人』の社長こと〝社長〟と、医師の中野マルオだ。ちなみに社長の本名は誰一人として知らず、皆揃って"社長"と呼んでいる。ボサボサな赤い髪にだるそうな目はとても社長には見えないが、周囲からの助言に対して本人が変わる気配は一向にない。というより変える気が微塵も無いのだろう。
「社長はこんなところで何をしてるんですか?」
「おいおい、うちの社員がお世話になるんだぞ。しっかり挨拶しておくのが社長の務めだろ」
「…そうですか」
(これは教える気なさそうだな)
零と社長の付き合いはそれなりに長い。社長が戯けたように答えるときは何か隠しているということを零は既に知っていた。だが、それと同時に社長が戯けている時は追及しても何も教えてくれないということも零は知っていた。
「明日からうちの娘たちがお世話になるよ。無理を言って仕事を依頼してすまなかったね」
「俺も妹がお世話になっているんです。受けた恩は忘れないのが
マルオからの
「本当に彼で大丈夫なのか?」
「大丈夫なわけないだろ」
「……どういうことだ?」
マルオの驚きの声と非難の視線に社長はこいつ何言ってんの? という呆れた視線を向ける。
「1人で5人の護衛をするんだ。体が最低でも5つないと無理だろ? そもそも護衛ってのは一人のために3、4人つけるのが普通だ。それを一人でやれってのは不可能だよ。さらに『雛』を幽閉して守るのもダメ。敵を殺すのもダメときたもんだ。誰がそんなこと出来るんだよ」
「……だが、あなたなら」
「あー無理無理。俺でもそれは無理だわ。ーーというよりやりたくない。だから一番可能性があって、あんたの要望に合う零が選ばれたんだよ」
「彼が私の要望に合う?」
「ああ、護衛の技量はもちろんだが、お嬢さんたちに勉強を教えられるほどの学力を持ち、さらには一番彼女たちのことを考えて行動できる人間だ」
そこまで言ってから社長は照れ臭そうに頭を掻きながら付け加えた。
「まあ、
「……お宅の会社のことだ、期待はしないでおこう」
「ハッハッハッ、そうしといてくれ」
そんなふうに話していると二人は病院の出口にたどり着いた。
「では、娘たちをよろしく頼むよ」
「それは零に言ってくれ。できる限りのフォローはするが実際に護衛するのはあいつだ」
そう言って社長は出口に向かって歩き出すが、数歩歩いたところで足を止めた。
「そうそう、これだけは言っておくが。
この仕事は
そう言うと社長は何も答えず考え込むマルオに背を向けて病院の出口から出ると、闇に溶け込むようにして夜の街へと消えていった。
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翌日の昼休み、零は食堂に来ていた。『雛』の一人である五月と話をするためだ。授業の片付けを終えると既に彼女の姿は無かったので食堂に来ているだろうと予測してのことだった。
メニューを適当に頼んでから五月を探し始めるが、五月はすぐに見つかった。それもそのはずで五つ子が五人揃って昼食を取っていたのだ。ただでさえ転校生という立場で注目されやすいのに、全員が美少女ときたら注目を集めるのも無理はない。
全員が集まってくれているのは零にとってとても都合が良いことだが、注目の的になっているあの場所へ特攻する勇気は零には無かったし、任務のことを考えると今は目立つのは良くないことだった。
しかし、零は五つ子に話しかけるのをやめたが、実は零自身もそれなりに注目を集めていたことを本人は気づいていなかった。
「と、言うわけでここ座るぞ」
「俺まだ良いって言ってないんだが……」
風太郎のツッコミを無視して零は黙々とカツ丼を食べ始める。だが、ふと顔を上げると風太郎が視線をある方向へチラチラと向けているのに気づき、零もそちらの方に目を向ける。
(視線の先は……多分五月だな。ああ、そうか。こいつ昨日
「お前、五月に謝りたいのか?」
「!? お前どうしてそれを!」
「いや、そんなに五月のことチラチラ見てたら誰でも気づくから」
「そ、そうか。⋯なあ、夢宮って五月と仲良いのか?」
「会って初日で仲良いとか分かんないけど、悪くはねえと思うぞ」
「なら、あいつに言ってほしいことがーー「無理」」
一筋の希望を見出したかのような風太郎の頼みをあっさりと拒否した零に、風太郎が固まる。
「なんで俺がそんな面倒くさいことしないといけないんだよ。自業自得だろ? 自分で頑張れよ。ごちそうさま」
きっちり手を合わせてごちそうさまと言って、零はその場を去っていった。絶望に暮れる残された風太郎は頭を抱えこみながら、過去の己を呪った。
そんな風太郎に声をかけたのがテスト用紙を二枚持った四葉だったりするのだが、それはまた別の話。
今回はここまでとなります。オリジナル要素の説明があって本編が全然進まないことをお詫びします。
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