五等分の護衛 〜1人で5人なんて守れるわけねえだろ〜 作:無限夢幻
紛らわしくてすみません。
では、どうぞ。
放課後になり、零は五月に話しかけるも避けられるために頭を悩ませる風太郎を尻目に屋上へと向かった。屋上への扉は鍵が掛けられておらず、零が扉を開けると爽やかな暖かい風と共に眩い光が差し込んできた。
「さてと、仕事しますか」
零の任務は今日の放課後から。つまり既に始まっているわけである。零は軽く体を動かしてウォーミングアップを即座に終える。
「とりあえずあいつらを探すか」
そう言って零は助走をとると近くの木に向かって飛び移った。そしてそのまま木の枝を蹴り、住宅の屋根に飛び乗る。そこからはひたすら屋根から屋根へと飛び移るフリーランニングで移動しつつ、五つ子たちの家へ向かいながらその姿を探す。
かなり疲れる移動の仕方なので出来ればしたくなかったのだが、
「あれは……、確か一花と四葉だったか?」
そして零は屋根の上から一花と四葉が仲良く下校しているのを見つけた。しばらく二人の様子を見守るが、特にどこかに出かける様子もなく、真っ直ぐに家に向かっているようだ。
零は辺りの様子を上から伺うが、特に怪しい人影もいなかったので、先に五月たちを探すことにした。
そのまま五つ子の家へとフリーランニングを続けることおよそ数分後、零は五月、二乃、三玖の三人がコンビニの前で話しているのを見つけた。ついでに風太郎が立て看板から顔を出して覗いているのも。
零は出来るだけ音を立てずに風太郎の後ろに着地すると、こちらに一切気づく様子のない風太郎に声をかけた。
「お前それ完全に不審者だぞ」
「っ!? ってお前か。脅かすなよ。なんでこんなところにいるんだ?」
「それはこっちのセリフだ。なんでこんなところで不審者してるんだよ。五月に謝りたいならさっさと行けば良いのに」
「行きたくても周りに友達がいるだろ?」
「友達? …どれが?」
(何言ってるんだこいつ? まさかこいつらが五つ子だってこと知らないのか?)
零が首を捻っていると視線の先では、ニ乃と五月のじゃれあいを離れて見ていた三玖が立て看板から顔だけ覗かせている風太郎を見つけて近寄ってきた。
「そんなことして楽しい?」
「割とね。こういうのが趣味なんだ」
「ふぅん。女子高生を眺めるのが趣味……予備軍」
三玖は風太郎をストーカーと判断したようで、スマホを取り出して警察に通報しようとする。それを見た零は慌てて止めた。流石にフリだとは思うが、万が一通報されたら面倒臭い事この上ない。
「あー違う違う。こいつは立て看板にはまるのが趣味なんだ。警察に通報するのはやめてやってくれ」
「おい、勝手に俺を変人にするな! 別に趣味なんかじゃない! ⋯⋯あと君も友達の五月ちゃんにこの事を言わないでくれないか?」
「⋯⋯分かった。⋯でも、あの子は友達じゃない」
三玖は大人しくスマホをしまうと先に行こうとしている姉妹を追いかけて走って行った。残された風太郎はまるで女子の闇を見てしまったような顔で呆然としている。
「あんなに仲良さそうなのに友達じゃないって……」
(あ、こいつマジで知らないんだ)
零は風太郎の勘違いに気づいたが、特に訂正しようともせず黙っておくことにした。何故かって? その方が面白そうだからに決まっている。
我に帰った風太郎と零はそのまま三人の後をつける。どうして一緒に来るのかと風太郎が零に尋ねたが、零は仕事だからと答えてそれ以上は何も言わなかった。
そうしてたどり着いたのは金持ちが住んでいそうと思われるような意匠の凝らした豪華な飾りのあるタワーマンションだった。
(さすが中野先生、豪邸だな)
二人がタワーマンションの荘厳さに驚きながら中に入ろうとしたその時、二人の少女が零と風太郎の進路を塞ぐように立ちはだかった。
「なに君たちストーカー?」
「げっ……」
蝶柄のリボンをした少女ーー二乃が板に足をのせて道を塞ぐように待ち構えていた。零は心のなかでヤンキーみたいだなと思うが決して口には出さない。よほど仲が良い場合以外は『雛』に失礼なことを言ってはいけないというきまりがあるからだ。ただ、零がその決まりを守ることは滅多にないが⋯⋯。
「お前……」
「五月には言ってない」
風太郎が裏切り行為を責めるような視線を三玖に向けるが、三玖はさらりと受け流す。
「五月なら先帰ったわよ。用があるならアタシらが聞くけど?」
「お前らじゃ話にならない。どいてくれ」
(こいつまだ気づかねえのか? 結構似ていると思うけどな。ひょっとしてこいつじゃなくて俺の感覚がズレてるのか?)
零が頭を悩ませている間にも風太郎は二乃を押しのけて前に行こうとするが、二乃もそれを許さず負けじと立ちはだかる。
「しつこい。君等モテないっしょ? 早く帰れよ」
(顔怖いって。女の子がしていい顔じゃないと思うぞ。やっぱりこいつヤンキーか何かなのか?)
少し迷った末に零は二乃のことをオブラートに包んで気の強い少女というふうに思うことにした。
「悪いけど俺の家この上だから」
「え、うそ! ゴメン……」
まったく失礼な人達だ、と零から見ればバレバレの演技と嘘をついて風太郎は通り過ぎようとする。だが、零の他にも気づいている人がいた。
「焼肉定食焼き肉抜き………ダイエット中?」
「!?」
なにせあれだけ奇異の視線を浴びるような注文の仕方をしたのだ。風太郎の特徴からして覚えられることは割とよくある事だった。
三玖の質問と風太郎の反応で二乃も感づいたようで、風太郎に詰め寄る。
「やっぱお前らここの住民じゃねえだろ! 警備員さん!」
二乃が警備員さんを呼び、風太郎が駆けつけた警備員によって連れて行かれるーー
なんてことはなく、今まで面白がって静観していた零が二乃を手で制した。
「ちょっと待って。ここ
「じゃあ何で嘘なんか!」
「あ〜悪いな。こいつは良い格好したかっただけなんだろな。そういう奴なんだよ」
零は風太郎の殺気を背中に浴びながらも無視する。風太郎も零が自分に協力してくれたことに感謝しているし、五月が既に先へ行ってしまったことを焦っていたので、睨むだけで済ませていた。もちろんそのことも零は把握済みだったので最短で突破できる方法(風太郎を変人扱いすること)をとっていたのだ。
……決して説明が面倒臭かった訳ではない。ないったらないのだ。
「なにそれ」
二乃と三玖が異物を見るような目で見るのを風太郎は歯を食いしばって我慢する。今怒るわけにはいかない。例え目の前の
「と、言うわけで中に入るぞ」
「ええ、そうね。お先にどうぞ」
先程まであれほど二人をマンション内に入れることに反発的だった二乃が、笑顔で先に行くように促してくるのを見て零は不思議そうに頭を捻った。だが、行く先を見てすぐに腑に落ちることになる。
視線の先に待ち受けるのはこのマンション内の部屋の鍵を持つ者しか通れない
つまり零はまだ疑われていたわけである。風太郎のことがあったのでそれも当然かと納得した零はポケットから鍵を取り出す。零が鍵など持ってるわけがないと焦る風太郎を他所に、何食わぬ顔でそれを鍵穴に差し込んで捻るとサーッと扉は開いた。
「なんだ、本当にこのマンションに住んでたのね」
「ああ、まあな」
ロビーに入ると零と風太郎はまず五月を探す。そして五月がちょうどエレベーターに乗り込んで行くのを目撃した。これ以上ないチャンスを逃した風太郎は顔を青ざめて動きを止めてしまった。
「三十階だ。階段で行ったら間に合うかもしれない」
「え? だ、だがこいつらが……」
零は風太郎に軽くウインクすると、二乃と三玖に聞こえるような声で風太郎に話し始める。
「さーてと、余計なことをしてくれた君は先に行って俺を出迎える準備でもしていなさい」
ホイッと投げられた鍵を風太郎が慌てて両手でキャッチする。そして困惑する風太郎に小さい声で言った。
「こいつらには俺が説明しておく。さっさと行け」
「! す、すまない」
風太郎は零にお礼を言うと、走って階段の方へ向かっていった。そのついでに風太郎が途中でコケそうになっていたのを見て、零は風太郎の運動神経の悪さを把握することになった。
(……さてと。任せろと言ったのは良いが、どうしようか)
「そ、その……」
「ん?」
「さっきは疑ってごめんなさい」
零が悩んでいると二乃がさっきのことを悪いと思っていたらしく丁寧に頭を下げて謝ってきた。
(なんだ、ちゃんとしたいい子じゃん)
その様子を見た零の中で二乃の評価が気の強い子から、不審者に立ち向かう勇気のあるしっかり者に変わった。
「いや、別に謝る必要はない。俺がこのマンションに住んでるってのは嘘だから」
「え?」
零が二乃の謝罪をサラリと受け流し、零がここに住んではいないという事実を告げると、ニ乃は顔を上げたまま驚いた顔をして動きを止めてしまった。
「だから嘘なんだって。俺はここには住んでない」
「でもさっきオートロックを開けたはず」
零の言っている事実をうまく咀嚼出来ずにいるニ乃にもう一度同じ事を告げると、今度は三玖から指摘が飛んできた。
「ああ、確かに鍵は持ってる。ーーっと質問はもう少し待ってくれ。どうせなら
零が鍵を持っていたことを認めると二人が同時に口を開こうとしたので、零は再び手で制するとチラリと腕時計へと視線をやる。
「あの二人もそろそろ着くはずだ」
「あの二人ってーー」
「ほら、来たぞ」
零に言われて二乃と三玖がシンクロしたように(流石姉妹)同じ動作で振り返ると、ちょうど一花と四葉がオートロックを開けて入ってきたところだった。
「あれ? そんなところで何してるの?」
「あー! この人今日上杉さんと一緒にお昼ごはん食べてた人です!」
一花、二乃、三玖、四葉が揃うと同時にポーンとけいかいなおとをならしてエレベーターが降りてきたので零がまず乗り込む。逃げられると思ったのか二乃が飛び込むように乗ってきて、エレベーターの開くボタンを押す。零は苦笑しながら両手を上げて逃げる気はないことを示した。
全員がエレベーターに乗ると二乃が零に訪ねた。
「それで、アンタは何階なの?」
「もちろん30階だ」
「うん? それって私達の家に用があるってこと?」
一花が可愛らしく首をかしげる。零がそれに頷くと今度は三玖が尋ねてきた。
「なんの用事?」
「あれ、聞いてないか? 仕事の依頼があったから来たんだが……」
「仕事って……まさかアンタが家庭教師!?」
「いや、それは違う」
二乃の中では家庭教師と護衛の二択があったのだが、どうやら零の見た目で選択肢は一つに絞られたらしい。零が否定すると二乃はもう一度考えてある考えにたどり着いたようだ。そしてエレベーターももうすぐ30階に迫っていた。
「じゃ、じゃあまさかアンタが!?」
「そのまさかだ」
チーンと音がなってエレベータのドアが開き、零は外にでる。そこには壁ドンをしている汗だくの風太郎と、膝から崩れ落ちてショック状態で固まっている五月がいた。何してんだ? と訝しむ零に続いて四人が降りてくる。
「あれ? 優等生くん?」
「あ! 上杉さん!」
「なんでアンタもここにいるのよ!」
「待って二乃、この人が説明してくれる」
皆が思い思いの反応をした後説明を求めるように零を見る。ついでになぜ零がここにいるのか分かっていない五月と風太郎も同じく零を見た。
「まず、こっちの真面目な優等生の上杉風太郎。コイツがあんたたちの家庭教師だ」
「「「「え?」」」」
指し示された方向にいる風太郎を見て、一花、二乃、三玖、四葉は思い思いの反応をする。素直に驚いたり、あからさまに嫌そうな顔をしたり、失望をしたり、嬉しそうに顔をほころばせたりした。
「そしてーー」
零が言葉を続けると皆の視線が一斉に零に集まる。
「俺があんたらの護衛、夢宮零だ」
「「「「「「……………」」」」」」
たっぷり十秒くらいの沈黙が辺りを支配する。
そしてーー
「「「「「「はぁ!!??」」」」」」
六人の驚きの声が辺りに響き渡った。
……どうやら零は護衛には見えないらしい。
セリフの口調がこれで良いのかと不安になります。五等分ファンの皆様、おかしいところがあればぜひぜひ教えて下さい。
また「面白い!」や「この話の続きが気になる」や「この作者を応援してやるか」など思われたお優しい方々、ぜひぜひ高評価な応援をお願いいたします。