五等分の護衛 〜1人で5人なんて守れるわけねえだろ〜 作:無限夢幻
なんとか投稿予定日に間に合わせたため、進みたかったところまでストーリーを進めることが出来ませんでした。すみません。
今回は『守り人』と零についてのお話がメインです。
では、どうぞ!
風太郎たちの住む街の端にある大きくも小さくもない、地図に名前も載っていないようなごく普通の山。その麓にある武家屋敷を彷彿とさせるような豪華な作りの道場に零は訪れていた。三玖と四葉に勉強を教えた後、ちゃんと彼女達を家に送り届けてから零はここに来た。
零は人の生活感が一切感じられない古い道場に躊躇うことなく足を踏み入れた。そして玄関へと続く石畳へ足を伸ばした瞬間、零は足先に違和感を感じて足を止める。
「チッ、また罠の配置変えやがったな」
零は一瞬思考を巡らせる。罠を一つ一つ解除して進むべきか、それとも自分の『特技』を信じて突っ切るか。罠を一つ一つ解除していると時間がかかりすぎる。かといって突っ切ると、いつ、どこから、どのような罠が襲ってくるか分からない。
しかし零は突っ切る選択を取った。理由は単純。罠を解除するのが面倒くさいからである。
零が先程は躊躇った一歩を今度は迷いなく踏み降ろすと、何か糸が切れる音がした。その音を聞いた瞬間、
空を切るようにして数本の矢が死角から零を襲う。それを零はまるで見えているかのようにゆらりゆらりと揺れて躱す。続けて奥に踏み込むと今度は上から鉄球が落ちてくる。重さも高さも硬さも十分当たれば即死級だ。だが零はそれを地を蹴って前に加速することで躱す。
そしてそのまま残りの罠も蹴散らす勢いで強引に突破する。地面からからくり床のように飛び出してくる杭を前宙で避け、そこから側転と反転しながらのバク転につなげて飛んできた吹き矢の嵐を回避する。そうして零は人間離れした技で玄関までたどり着くことに成功したのだった。
「まったく、一般人が迷い込んでたら間違いなく死んでたぞ……っ!?」
パーン!
零がため息を突きながらドアを開けると辺りに破裂音が響き渡る。零はドアを開けるとき僅かな手応えを感じ取っていた。だが、先程までの人間離れした反応速度とは違い、零はそれに何も対処することなく開けてしまった。その結果が頭上から降り注ぐカラフルな小さい紙である。零がドアの裏側を見ると、スライド式のドアに紐が貼り付けられていて、その行く先はちょうど零の顔の高さに設置されたクラッカーだ。
「あぁ? おいおい、なにこんな子供騙しに引っかかってるんだよ。これが爆弾だったりしたら今頃お前もドカン! だぜ」
奥へと続く廊下から和服姿の社長が現れた。いつもだらしがない社長は和服を着崩していると余計にだらしなく見える。零は不満そうに社長に言い返した。
「これが本当に爆弾だったら俺は
「ハッ、まあな。だがお前が警戒を怠ったことは間違いない。だからお前は未熟なんだよ。そんなんじゃ彼女達を護れないぞ」
「……改善します」
零は社長の言うことの正しさをすぐに理解した。零の『特技』は確かに有能だが万能ではない。零はそれを過信しすぎていた。
社長の言う零の特技。それは異常なまでの生存本能から来る危機察知能力だ。
人間が命の危機に陥ったとき、まれに普段は発揮できないような限界を超えた能力を無意識的に引き出すことが出来るときがある。俗に言う火事場の馬鹿力というものだ。
では、常に自らの身をその『火事場』の中に置き続けたらどうなるか? 危険を日常とすること、つまり能力を引き出した状態を日常とすることで零は身体能力の限界の引き出し方を掴み取った。その結果がさきほどの人間離れしたアクロバティックな動きである。
そして自らの命を賭け続ける日々の中で、零は危機察知能力を身に着けたのだ。
何度も死線をくぐり抜ける間に生じた『生きたい』という強い思いが零の生存本能を発展させた。生存本能、それは無意識的に生きようとする能力のことだ。つまり、自らに危険が迫ったとき、思考よりも早く無意識的に体が反応して危険に対処するのことが出来る。
これは護衛にとって大きなアドバンテージとなる。なぜならそれは零に
しかし対処できない場合もある。零が無警戒で引っかかったクラッカートラップなどがその例だ。危機察知能力はあくまでも身の危険に関わることしか察知できない。つまり直接的に命に関わることしか零は気づけないのである。
もしも仕掛けられていたのがクラッカーではなく人を呼び寄せる警報装置だったとしたら? 社長が言いたいのはそういうことだったのだと零は気づいた。
「だが、あの罠を全部突破してきたってことはお前の『特技』は衰えてないみたいだな」
「当たり前です。社長にどれほど叩き込まれたことか」
零は社長をジト目で睨みつける。何を隠そう、零が何回も死の淵まで近づくことになった原因は99%が社長の言動なのだ。時には紛争が起こっていて危険だと分かっている地域に十歳にも満たない零を連れ出したり、時にはキャンプと称して零を熱帯の危険な生き物がウジャウジャいる無人島に一ヶ月間置き去りにしたり、時には訓練と称して零を直接的にボコボコにしたり……などなど様々なことをされた。
だが、零は社長を恨んだりはしていない。社長の厳しい訓練のおかげで零が生きる術を身につけれたのは事実だし、両親を失った零を拾って育ててくれたのも社長なのだ。
「そうかそうか。ならこれから更にその能力を伸ばしていくぞ!」
「な、何をする気ですか……?」
急にノリノリで訓練を始めようとする社長を見た零は、今までの経験から何が起きるのかを想像しながら恐る恐る尋ねる。
「何って決まってんだろ。『遊ぶ』んだよ!」
「それ絶対に楽しくない遊びですよね……」
サムズアップしながら飛び切りの笑顔で答える社長を見て零は「あ、俺終わったな……」と魂が抜けた様子で社長に訓練所まで引きづられて行った。
それから約二時間後、真上にまで上がった深夜の月明かりを浴びながら零は屋敷の中庭を散歩したいた。その顔にはいたるところに絆創膏やガーゼが貼られ、体中にアザや傷が出来ている。しかし、零は経験上この傷が明日までにはおそらく治るだろうと予測していた。小さいときから多くの傷を負ってきたせいか、傷の治りが常人より少し早い。
零が中庭の方に歩いていくと縁側に座ってタバコを吹かしながら美しく白銀に光り輝く月を眺めている男がいた。男は零が近づいても月から目を離さない。
「やはり日本の月が一番キレイだよ」
「そうなのか?」
「ああ、なぜかは分からないが日本の月は見ていると心が和む」
そう言って短く刈り上げた黒髪の三十代付近の男が零に顔を向ける。
「久しぶりだね、零君。三年ぶりくらいだろうか?」
「ええ、そのくらいですね。お久しぶりです、後藤さん」
後藤は自分の横をポンポンと叩いてそこに座るように促した。
「すごい傷だ。何かあったのかい?」
「目隠しをされて社長にボコボコに殴られただけです。気にしないでください」
傷だらけの零を見て後藤がその理由を尋ねると、零は色の失せた目をしながら答えた。
「なるほど、社長に稽古をつけてもらったのか。それにしても変わった稽古の仕方だ」
「『お前の能力なら躱せるはずだ!』なんて言って木刀で殴りかかってくるんですよ。二時間の間クリーンヒットを受けずに躱し続けた俺を褒めてください」
「まあ、君にはそれくらいが妥当だろうね」
「…後藤さん俺をなんだと思ってるんですか?」
明らかに常軌を逸した稽古の内容を聞いて、それが妥当だと判断した後藤に零は訝しむ目を向ける。
「それほど君は優れているということだよ。現に君には一発もまともに当たらなかったんだろ?」
「まあ、社長も本気じゃなかったですし。本気で来られたら俺なんて一発でノックアウトですよ」
「それはそうだろうが、少なくとも社長は本気は出さずとも手を抜いたりはしていなかったはずだ。彼は自分に付いてこれない者は躊躇いなく切り落とすからね」
だから君はすごいんだよと後藤は零を褒めるが、零は浮かない顔をしている。零の中では社長に本気を出させることが出来ていない現状が不服だったからだ。
「それにしても後藤さんはいつ日本に帰ってきてたんですか?」
「つい先日だよ。社長からのお願いで私はこの辺りでの依頼を主として受け持ちつつ、君のサポートにまわることになった」
「ほんとですか! 後藤さんの協力があれば百人力ですね。【魔弾の
「ああ、任せてもらおう。それにこっちも【
「あはは、懐かしいですねそのコードネーム。そっちで呼ばれるのは久しぶりです」
『守り人』に関係している者のうち、特別な人間しか持っていないコードネーム。零は表では【期待のルーキ】などという本人が一切納得していないダサいコードネームで呼ばれているが、裏では【狂戦士】というこれまた中二病の雰囲気を漂わせるコードネームを付けられている。ちなみに後藤の【魔弾の狙撃手】も零の【狂戦士】も全て名付けたのは社長だったりする。
「でも変ですよね。わざわざ一つの案件に対して海外から後藤さんを呼び戻すなんて。なにか理由があるんでしょうか?」
「これは推測だが、おそらく社長は中野さんの病院を『第3部隊』に引っ張り込みたいんだろうね」
後藤の言う『第3部隊』が何を意味するのか?
そもそも守り人に所属している人間は主に次のような五つの部隊に分けられる。
第1部隊は主に戦闘に特化した人達が集められており、護衛の任務に当たる。零と後藤は一応ここに所属している。
第2部隊は情報収集に特化している。世界的にも優れたハッカーも所属しており、また柳井もここに所属している。
第3部隊は医療部隊だ。第3部隊は少し特別で、直接的に第3部隊に所属している人はおらず、『守り人』と協力体制にある病院が第3部隊の役割を間接的に担っている。
第4部隊は主に第1部隊や第2部隊の後始末を担当している。その2つの部隊が何か問題を起こしたときにその問題を速やかに解決することを目標としている。
第5部隊は俗に言う営業部門と人事部門が混ざったようなものだ。仕事の受注からそれの割り振りまでを任されている。ここにはナミが所属している。
つまり、社長はマルオを病院ごと第3部隊に引き入れようとしているのだ。そのためには五つ子に万が一のことがあってはいけない。だからこその過剰な戦力投入なのだろうと後藤は予想していた。
「さて、そろそろ私は仕事に向かおうかな」
「後藤さんに護衛の依頼ですか? 珍しいですね」
「いや、違うよ。これは
「ああ、なるほど。頑張ってきてください」
後藤は立ち上がり、タバコの煙を
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次の日、零はまたもや朝のHRに滑り込むように学校に登校したのだった。昨晩の稽古と日頃の疲れが思っていたより溜まっていたようで深く眠りすぎたようだった。席につくと隣の席の五月が零に声をかけた。
「おはようございます、夢宮くん。またギリギリに登校ですか?」
「ああ、少し疲れていたみたいで寝坊した」
「疲れたなら護衛の仕事を辞めたらどうですか?」
「おっと、えらい直球だな。護衛の必要性を理解したんじゃなかったのか?」
零は五月が護衛の必要性を分かってくれたと思っていたので、少し驚きながら尋ねた。
「確かに私は護衛の必要性は理解しました。しかし、あなた自身を認めたわけじゃありません。もっとちゃんとした護衛の方を私は要望します」
「辛辣だな」
これはまだ信用を得るには時間がかかりそうだと零はため息をついた。それに遠回しに零はちゃんとしていないと言われて少しショックも受けていた。
「俺のどこがちゃんとしていないって言うんだ?」
「あなたが不真面目なところです。朝遅刻してきたり、家庭教師の補佐という立場でありながら授業中はずっと寝ていたり、おまけに他の人に護衛を手伝ってもらっているなんて恥ずかしくないんですか? 私は一人でも護衛ができる真面目な人が良いです」
「⋯⋯あっそ。なら分身の術でも出来る人を探すんだな」
五月が出した護衛の条件を聞いた零は、バカにするかのような興味のない返事で返す。
「それはどういうーー」
「こらそこ! 静かにしなさい」
「す、すみません」
鼻で笑われた五月は零にその真意を問い詰めようとするが、先生の注意が飛んできたので遮られた。
そしてそのまま一時間目の授業が始まったが、零は午前の授業と午後の授業ははずっと寝ていて、昼休みは教室から姿を消していたので尋ねることは出来なかった。そして五月は零の言っていたことを気にしないことにしたのだ。
そして零が教室にいなかった昼休み、零は屋上で電話をしていた。
「それでね! らいはちゃんがお友達になってくれたの!」
「そうか、それは良かったな。らいはちゃんにもお礼を言っとかないとな」
「うん! あ、そうだ! お兄ちゃんまた今度らいはちゃんにケーキ作ってあげてよ。お兄ちゃんの作ったケーキが美味しいって言ったら羨ましそうにしてたもん」
零の電話の相手は病院にいる美雪だ。どうやら零が前に頼んだことをらいははちゃんとやってくれたようだった。美雪はとても興奮した様子で話し、それを聞いている零はとても優しい笑みを浮かべていた。
「ああ、良いぞ。楽しみにしといてくれって言っといてくれ」
「うん、分かった!」
そして昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴った。
「じゃあそろそろ切るぞ」
「うん、お仕事頑張ってね」
「おう」
電話を切ってポケットにしまった零は階段を降りて教室に向かおうとするが、階段を降りたところで一花と遭遇した。
「あれ? レイ君じゃん。一人なの?」
「そう言うそっちも一人みたいだな」
腕を後ろに組んで体をぐっと前に突き出しながら聞いてくる。零は強調される胸に目がいかないようにしながら答えた。
「まあね、レイ君は何してたの?」
「電話だ。妹とな」
「へぇ〜妹がいるんだ〜。可愛い?」
「答えるまでもないな」
そんなやりとりをしながら零と一花は教室に向かう。そして途中にあるガラス張りの渡り廊下に差し掛かったとき、零の本能が危険を察知した。考えるよりも先に零は一花を抱きしめるように抱えて横に跳ぶ。
「え?」
パリーン!
一花が拍子抜けするような声を上げた刹那、何かが窓を突き破りさっきまで一花の頭があった場所を通り過ぎて壁にめり込む。黒いそれは紛れもなく銃弾だった。
「え? うそ、どういうこと?」
「チッ、こんな真っ昼間から学校に狙撃してくるなんて頭おかしいんじゃねえのか」
そんな悪態をつきながら零はポケットから携帯をとりだして電話をかける。
『どうしたんだい? 零君』
「狙撃されました。場所は恐らく駅前のビルです」
『了解。すぐに君の方に第4部隊を向かわせるよ。狙撃手は私に任せて君は雛の護衛を頼む』
「分かってます」
そう言って零は電話を切ると、未だに事態を飲み込めていない一花に声をかける。
「大丈夫か? 怪我とかしてないか?」
「う、うん。怪我はしてないよ。一体何だったの?」
「狙撃されたんだよ。悪いが今日は放課後に真っ直ぐ帰宅して外出禁止にさせてもらうぞ。今日だけ我慢してくれ」
「わ、分かった。でもいつまでこうしているのかな? お姉さん照れちゃうよ」
「ん? あ、悪い」
一花に言われて零は未だ一花を片手に抱いたままなことに気づいて、謝りながらその手を離したのだった。
「ううん、その、守ってくれてありがとね」
「おう、感謝の気持ちだけ受け取っておく」
そうこうしているうちに本鈴が鳴り、一花と零は慌てて教室に向かったのだった。
今回はここまでです!
注)能力などという単語が出てきておりますが、零は普通の人間です。魔法も変な能力も使えません。ただ一般人よりも危機察知が優れているだけです。
続いておまけをどうぞ!
【零との対談 part2】
筆者「は〜い、どうもどうも。筆者です!」
零「零です」
筆者「皆さんお待ちかねの時間がやってまいりました!」
零「いや、多分これを待ってる人はいないと思うぞ。多くの人は『こんなの書いてるんだったらもっと早く更新しろ』って思ってるだろ」
筆者「うぐっ、そうですよね〜。まあ筆者的にはこっちのほうが十分ぐらいで適当に書いてるんで楽なんですけどね」
〜閑話休題〜
筆者「それでは前回の続きで零君に質問です。ズバリ、零君の好みのタイプは?」
零「好みねえ……まあ性格が良ければそれでいいかな」
筆者「そんな大雑把じゃダメでしょ! それなら髪の長さはどんなのが好みですか?」
零「特に無い。剥げてなければいいかな」
筆者「零君って絶対に恋バナとか参加出来ない人ですよね……」
零「俺に恋バナを振るほうが悪い」
筆者「ごほんっ、え〜それでは次の質問です。ズバリ『この作品の最後はどれが良いでしょうか?』です!」
零「お前、それ設置してあるアンケートじゃねえか」
筆者「はい、そうです! と言う訳で、皆様アンケートにご協力お願いいたします! 皆様の一票がこの作品の行く末を左右しますので、どうかお願いいたします」
零「チッ、俺をダシに使ってんじゃねえよ。なら俺も言っといてやるか。今のところ『誰か一人を選ぶエンド』が優勢だぞ〜」
筆者「ちょ、ちょっと! それ言ってどうするんですか!」
零「知るか。問題が起きたら責任は全部お前が取れ」
【零の退出により対談が終了されました】
筆者「ええ〜、マジすか……」
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先程も言いましたようにアンケートを設置いたしました。ご協力お願いいたします。
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