虹ヶ咲パロディパラダイス 作:NPP制作委員会
【そらなり】
どうも、皆さんこんにちは。まさか企画立案者がトップバッターを飾るとは思っていなかったので少し驚いてはいますが、作品に手を抜いたりはしていないので楽しんでいただけると幸いです。
それではイナズマイレブンの展開を虹学のメンバーにやってもらったのでどの話をパロったのか予想しながらどうぞ!!
虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会。そこに在籍しているメンバーは仲間でありライバル。そんな関係性だった。だからだろうか? 不意に誰かが提案したイベント内容。同好会トーナメント。パフォーマンスで競い合おうという単純なイベントだった。そのイベントは学内を巻き込み、観客が好きな方を投票する。
そんなイベントに消極的な少女がいた。
近江彼方。
彼女はイベントが決まった時から心の中で膝を抱えて消極的なことばかりを考えていた。が、はたから見れば彼女はこのイベントに意欲的であるかのようにみられていたのだろう。しかも、それはただのやせ我慢ではなく本心から楽しみにしている。
繰り返すことになるが近江彼方自身はトーナメントイベントに関しては積極的ではない。なのになぜ周りから見たときにそう思われるのか。それは彼方の中にもう一人の人格があるからに他なかった。彼方自身がスクールアイドルを始めようと思った原因を作った人物。妹の近江遥の精神が彼方の中にはあった。
彼方と遥は仲のいい姉妹だった。が、2年ほど前にライブ会場に車で向かっているときに事は起きた。
「にしても、休日もスクールアイドルの研究だなんて遥は熱心だな」
運転している父親が助手席にいた遥に語り掛ける。それを彼方は後ろの席で見守っていた。
「だってお姉ちゃんはもうスクールアイドルになってるんだよ!! ここで差をつけられないためには私もいろいろと研究しなくちゃ!」
「遥ちゃんはそう思ってたんだ~……。じゃあお姉ちゃんも負けないぞ~」
「ははっ、もう2人が揃ったら完璧なスクールアイドルになれるんじゃないか?」
「完璧な?」
「スクールアイドル?」
「なりたい! 私、お姉ちゃんと完璧なスクールアイドルに!」
「いいねぇ~。でもお姉ちゃんの方がすごいんだぞ~」
そんな他愛もない会話をしていた。普通の日常。
……のはずだった。出来事は一瞬で起こった。彼方たちには目の前の赤い信号が映っていた。目の前には法定速度を優に超える速さで向かってくる乗用車。気づいたときには遅かった。正面から彼方たちの乗っている車とぶつかり、即座に救急車によって近くの病院に運ばれた。
彼方は数週間の入院は必要ではあったものの命に別状はなかった。ほかの2人も命に別状はなかった。
しかし、彼方以外は今もまだ意識が戻っていなかった。
その件以降、彼方の中には遥が住み着くようになっていた。そしてもう一つ変わってしまったことがあった。
それは彼方自身スクールアイドルのパフォーマンスをしなくなってしまったことだ。それは遥への贖罪なのかそれとも、遥がやった方がいいと思っているのか。それとも……
『じゃあ、今回もお姉ちゃんは見守ってるから遥ちゃん頑張ってね』
『え~! お姉ちゃんはやらないの?』
『うん。その方が完璧になれるから。お姉ちゃんの身体で遥ちゃんがライブをすればきっとせつ菜ちゃんにだって負けないよ』
心の中で繰り広げられる姉妹の対話。あの日の会話が彼方への縛りとなり、それを守ろうとしている。
『まぁ……お姉ちゃんがそう言うなら……』
実際にこれまで彼方としてライブをしてきたのは全部遥だ。勝つためにはそうした方がいいと考えているのだろう。だが、遥自身このままではだめだと意思が芽生え始めていた。
このままではお姉ちゃんは一人ぼっちになってしまう。私しか信用できる人がいなくなってしまうという姉を心配していた。ただ、それを言葉で伝えても受け入れてもらえない。姉妹だからそれくらいはわかった。
そんなやり取りをしたのちに、いよいよイベント開催の時間がやってきた。
もうすでに対戦相手のせつ菜のライブが終わり、彼方の準備ができればすぐに始まる状態まで舞台は整っていた。
「さぁ、彼方さん。次はあなたの番ですよ! お互いのベストをぶつけ合いましょう!」
「頑張ってくださいね! 彼方さんの事応援してますから!」
「せつ菜ちゃん……。歩夢ちゃん……」
「彼方先輩、かすみんも応援してますからね! せつ菜先輩を倒しちゃってください!」
「そうだそうだ~! カナちゃんならせっつーを倒せるよ!!」
「かすみちゃん……。愛ちゃん……」
「彼方さん、いいライブにしましょうね!」
「彼方さん、頑張って! りなちゃんボード『ファイト!』」
「しずくちゃん……。璃奈ちゃん……」
「彼方ちゃんなら絶対にできるよ! 頑張ってね!」
「そうよ。彼方ならできるわ。だから思いっきり行ってきなさい」
「エマちゃん……。果林ちゃん……」
「彼方さん! いいライブにしましょう!」
「侑ちゃん……」
この"彼方"へのエールが心の中の暗闇で蹲っていた彼方の前に光を照らした。光の向こうには誰の手だろうか? 安心する温かい手が差し伸べられていた。
直感。それで手を差し伸べている人がわかった。侑だ。彼方は侑の手を取り侑に手を引かれた。
周りを見てみるとそこには同好会のメンバーがいた。その瞬間彼方はあることを思い出す。
「うん!! 彼方ちゃん、頑張っちゃうぞ~!! だから"私"のライブを見ててね」
『そういうことだったんだね、お父さん。完璧になるってことは私が遥ちゃんになることじゃない。仲間と一緒に切磋琢磨すること……一つになることだったんだね!』
『うん。お姉ちゃんはもう一人じゃない!! 頑張って! お姉ちゃん!』
『遥ちゃん……。うん! お姉ちゃんは負けないぞ~!!』
彼方は彼方としてステージに立った。
久方ぶりのステージ。できるかどうかわからない。けど、今できる最高のステージにしたい。その思いが彼方の身体を動かす。
「虹ヶ咲スクールアイドル同好会の近江彼方です! それでは聞いてください。『Butterfly』」
ライブが終わった後、彼方はとあることに気が付く。自分の中に遥がいなくなっていることに。
気が付いた瞬間、涙が出てきた。ぼろぼろと大きな涙が。
そんな彼方の元に1本の着信があった。相手は母親。電話の内容を聞いた瞬間。ライブ衣装のまま駆け出した。遥と父親が入院している病院へ……
「遥ちゃん!! お父さん!!」
「あ! お姉ちゃん……。素敵なステージだったよ……」
「彼方か……。ずっと心配をかけたな……」
衰弱状態から復帰して間もないからだろう。弱弱しい言葉ではあったが、久しぶりの2人の声を聴いた彼方はさっき以上に涙を浮かべ笑いかけた。
「おかえりなさい」