男の取り合いで負かした女が嫉妬に狂って悪戯してくる 作:あいだ子
第1話
自然に話す相手ができるのならそれでよし、そうじゃないのなら一人で小説でも読んでいれば良い。
それが香澄なりの、いつの間にか定着していた他人との距離感の測り方だったが、小学五年生になった頃、そのスタンスは突然機能しなくなる。
香澄は一部の女子生徒から敵視されるようになったのだ。
当初、香澄にはその原因がわからなかった。
去年まで問題なく過ごせていたやり方で同じように5年生も始まったはずなのに、何故か上手くいかない。
となると原因は自分の外側にある。
そう考えた香澄は、数日間周りを観察し、教室の空気が去年までと異なっていることに気がついた。
それは、男子生徒の視線だった。
彼らの目がときどき香澄に向く。
そして、そんなときは決まって、香澄にいじわるを言ってくる女子生徒たちの、睨みつけるような視線に貫かれた。
ただし、実害といえばそのくらいで、いじめを受けるわけでもなかったから、香澄は素知らぬふりを決め込んだ。
中学校に上がる頃には自分が同性とは相容れない存在だと理解していた。
自分から壁を作っているつもりは無いのに女子と話す機会は減っていき、反対に男子とはよく話すようになった。
中一の夏休み前、香澄は人生で初めて告白された。
相手は当時席が隣だった男子だった。
恋愛への興味がないわけではなかったが、付き合った後のあれこれを想像してみて思ったのは、面倒だな、ということだった。
教室という小さな箱の中で男子たちにちやほやされるのは悪くないが、その関係性を学校の外まで持ち出すのは、時間の無駄に思えた。
その告白を皮切りに、何人かの男子、中には話したことすらない相手からも告白をされるようになるが、交際を楽しめる未来が見えなかった香澄は、毎度その場で断った。
誰とも付き合わないことは女子からの反感を抑えるのに一役買っていた。
気に入らないけど特に害はない存在とでも位置付けられたのか、中学二年生はここ数年で一番過ごしやすかった。
女子に嫌われる容姿ながら、自分はうまくやれている。
3年になったらまたポジションがリセットされてしまうけれど、クラス替え直後のごたごたさえ過ぎてしまえば、主要な女子グループとはお互いに不干渉の構図ができあがっていることだろう。
このまま中学も高校も、さらにその先も女子の友だちができないと思うと、少しだけ寂しい気持ちもあった。
しかし、結局は集団に溶け込んだときの賑やかさよりも、一人でいるときの気楽さに天秤が傾く。
それが香澄の本質だった。
そして平和な二年生は終わり、春休みが明けて、香澄は三年生になった。