【完結】届け、ホシガリスポーズ!   作:お菊さん

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お弁当です、ヨロイ島

 

 

 

 

 

砂浜に打ち寄せる波。どこまでも広がる空と海。ゆっくりと流れる時間。

空飛ぶタクシーを降りて目的のマスタード道場に着く。ガラルヤドンがぬぼーっとたたずんでいるのを横目に、扉を叩く。

 

「デ・デ・デ・デター!」

 

突然足元にディグダが飛び出し尻餅をついてしまった。何でこのディグダ、髪の毛生えてるの?

 

 

 

 

 

 

「いやー、ありがとねぇ。配送できる人が見つからないって言われた時はびっくりしちゃったけど、急遽『防波亭』の手伝いに来てくれたんだって? わざわざヨロイ島まで持ってきてくれて、ワシちゃん大感激!」

 

「ほんっとうにもぉ、助かったわ~! ほら、セイボリーちゃんとクララちゃんがついにジムチャレンジのジムリーダーに選ばれたじゃない? 二人で一人みたいなもんだけどさ、ウチで修行してた子達がここまで来たと思うと嬉しくって、今日はパーティーしようって話してたのよ! 二人はいないけど」

 

「ミツバちん、さすがの目利き! おいしそうだねこのお弁当!」

 

「でしょうダーリン!? さあ、もうドリンクは準備できてるから、飲むわよぉ~!」

 

空飛ぶタクシーで到着したヨロイ島のマスタード道場では、歳の差夫婦が待っていた。お弁当をキッチンまで届けると女将さんは準備に入る。お、と思わずしげしげと眺めてしまったのはスープが煮込まれている鍋。具材に紅色のキノコがあるのは見ないふりをして、その鍋は使い込まれてるがかなりの品だ。どこで買えるのだろう。

 

「あら、分かる? その鍋カロスで仕入れたの。テフロンとかは使ってないけど元々の鉄がいいから焦げ付きにくいし、昔扱ってた品の中でもイチオシの一つよ」

 

扱ってた?

 

「昔ね、貿易会社の社長やってたのよ。ダーリンに一目惚れしてやめちゃったんだけど。……え? お店を開きたいの? ――そうだっ!」

 

ミツバさんはガシッとこちらの肩を掴む。その細腕のどこにそんな力が、と言いたくなるくらいの、まるでゴーリキーに掴まれていると錯覚するような怪力だ。そしてにーっこりと笑う。もう泣きそう。

 

「ここで会ったのも何かの縁だし、後で少しお話しない? ちょーっとパーティーの間にワットを集めてきてくれたら、絶対損させない情報あげちゃうわ! お店を開く力になること間違いなしよ!」

 

え、それは大丈夫じゃないのでは? その話聞いたら後から悪徳業者に高額請求されない? ……この既視感、ルリナさんとソニアさんに会った時も感じたやつだ。

 

「ミツバちん気合い入ってるね~。島を回ってワットを集めてくれると、ミツバちんが助かるのよ。……その格好、ジムチャレンジ途中? ならむしろ良い話じゃないのっ! ほら、野生のポケモンも出てくるからそれと戦わせれば自分のポケモンも強くなるし、ジムチャレンジも進みやすくなるなる。ね、ワシちゃんからもお願いっ!」

 

……無理、断れない。この夫婦、別の意味でできる。

 

 

 

 

 

 

あの後道場の門下生の人が出て来て、

 

「怖がらせて申し訳ないっス。女将さんは本当に昔はやり手の社長でしたし、師匠もめちゃくちゃ強いポケモントレーナーなだけで、黒づくめの人達に拉致されるようなことはないっス。だから安心してワット集めて欲しいっス」

 

と言われた。結局集めることは確定なのか。やるけれども腑に落ちない。

ダイマックスの巣を調べてワットを集めながら現地のエリアスタッフにヤドンのしっぽについて聞いてみる。うーん、確かにすぐ生えかわるから生態に問題はないけど、店に出すほどの供給はないな。これも却下で。

などと考えながら島を歩いていると、向こうからシザリガーが走ってくるのが見えた。敵対する気まんまんだ。よし、ちょうど良い。試させてもらうとしよう。

 

「出番だよ、――ドクロッグ!」

 

ボールから出たのはグレッグルを一回り以上大きくし、頭部に角が生えたグレッグルの進化系、ドクロッグ。ポケジョブで十分な経験値を得たらしく、帰って来たとたんに進化したのだ。嬉しいサプライズをどこかで試したかったので、この敵襲をありがたく活用させてもらおう。

 

「ドクロッグ、どくづき!」

 

シザリガーに接近すると、指の中で一本だけ鋭利になった真ん中の指を硬い殻の隙間に突き刺す。シザリガーはびっくりしてみずでっぽうを撃ってきたが、『かんそうはだ』のドクロッグには回復にしかならない。

 

「リベンジ!」

 

シザリガーを掴んでぽーいと海まで投げた。圧勝である。強くなったことは素直に嬉しい。ただ、これがどこまで通用するかは別だというのも分かっている。それでも今は進化するまで頑張ったことを誉める。

 

「グレグレ」

 

あれ、鳴き声変わらない……? うちのヨクバリス、あいつなんで「バリス」になったの……?

 

 

 

 

 

ワット集めをしている間に森の奥まで来てしまったようだ。この島はかなり複雑な地形で、森の奥の方が海辺につながってるかと思えば別の出口からは洞窟に通じている。なかなか地理の把握が難しい。踊るドレディアに手を振りながら進むと、突然空から何かが落ちてきた。

 

「○✕☆!」

 

形容しがたい鳴き声で叫ぶのは異様な見た目をしたポケモンだった。灰色、赤、青の縞模様を羽のような突起の先端に持つ全体的に黄色を基調としたポケモンで、尾羽にあたる突起も同様の色をしている。顔があるべき場所には真っ黒な細長い器官に緑の一つ目が見えるが、それと同じ目が腹部と思われる円形の部分にも二つついている。ワイルドエリアで見たような気はするが、名前などは知らないポケモンだ。

 

「ギァー! ギァー!」

 

木々に覆われわずかに見える空には、二匹のエアームドが見える。どうやらエアームドに縄張りから追い出されたらしい。幸い森にまで追いかけてくる気はないようだ。しばらく上空を旋回した後、チャレンジロードの方へ飛んでいった。

 

「▲★■◆……」

 

謎のポケモンは起き上がろうとするも、怪我がひどいのか飛び上がることができないようだ。もっとも、怪我してるかもよく分からないのだが。このままなのもかわいそうなので、いいきずぐすりを使ってあげた。

 

「…………」

 

謎ポケモンはふわっと浮かび上がる。これはエスパータイプの動きだ。そう考えていると、ゆるゆると羽のような突起物を動かしながらこちらをじいっと見つめてくる。しばらくするとスーッと森の奥へ飛び去って行った。今度はエアームドに見つからないことを願うばかりだ。

 

 

 

 

 

島の様々な場所を巡るうちに夕方近くになり、道場に戻る。パーティーはもう終わっていて、今日はお開きということで門下生達は部屋に戻っていた。ミツバさんにワットを渡すと感謝され、その場で新しい設備が買えるとかで電話を始めている。

 

「ふう、おまたせ! さて、ガラルカレーとポフィンを売るお店なのよね、今考えてるのは。ドリンクは……、なるほど、モーモーミルクを使ったラッシーか。それはいいわね、シンオウはモーモーミルクあるから。水もテンガンザンから良質なものが出てるだろうし……」

 

さっきまでの『女将さん』といった柔らかい態度から『キャリアウーマン』の凛とした姿勢に代わる。メモに書き付けながらタブレットを操作する姿は彼女の才覚がまだ衰えていないことを示していた。

 

「いいわね、久々にこういうのやると楽しい~! ……ああ、いいのよ、あたしがやりたいから無理矢理あなたを捕まえたんだから気にしないで。ん~、どういうコンセプトがいいかしら! 少人数経営だからコストは抑えないとでしょ、だけどメニューに幅は欲しいわよね。となると……」

 

ミツバさんが楽しそうに仕事する後ろではお子さんだろうか、男の子がパソコンを操作して何かをやっているようだ。血は争えないということらしい。一方のマスタードさんはテレビゲームをやっている。本当に強いポケモントレーナーなのだろうか。好好爺にしか見えない。

 

「あ、今日は泊まってって! ジムチャレンジの途中なんだっけ? ダーリン、アドバイスだけでもしてあげてちょうだい。あたし今からちょっと集中するわ」

 

「あらら、ああなっちゃうとミツバちんはテコでも動かなくなっちゃうからね~。ジムチャレンジ、セイボリーちんかクララちんとはバトルしたのん? ……セイボリーちんを選んだのね! どうだった?」

 

バトルの様子を話すと、マスタードは目を細めてうんうんと聞き入っている。正に孫の活躍を聞いて喜ぶおじいちゃんだ。

 

「そうかそうか、しっかりやれてるんだねぇ。ワシちゃん嬉しいよ。話してくれてありがとねぇ。じゃあチミは次どこに行くの?」

 

アラベスクタウンです、と答えた時、本当に一瞬だけ瞳がぎらっと輝いた……気がした。きっと気のせいだろう、うん。

 

「フェアリーだね、あそこは。でもチミのふるさとシンオウはフェアリーあんまりいないよね? ……やっぱり。ワシちゃんも手持ちにいたことはないんだけどねぇ」

 

あまり助けちゃうのも良くないけど、これだけならいいか、と首をひねって呟いていたマスタード。一回しか言わないよ? と前置きすると。

 

「フェアリータイプはあく、かくとう、ドラゴンに効果抜群。逆にはがねとどくに弱い。ほのおタイプにはフェアリーの攻撃が通りづらく、逆にむしタイプの攻撃はフェアリーに効果が薄い。……後は自力で頑張るんだよ」

 

大慌てで今の情報をメモにとる。ばっ、と顔を上げるとマスタードはすでにゲームに戻っていた。ミツバもまだまだ集中している。そっとお借りした部屋に下がる。これはまずいことになった。

 

フェアリーに効果を出せるのが、どくとはがね。

 

手持ちで条件を満たすドクロッグも、かくとうとの複合なので大きなダメージを受けてしまう。また、あくは向かないということはアブソルは出しづらく、コロトックもむしなのでダメージが通りにくい。ルンパッパとヨクバリスは相性の上で有利も不利もない。前回のオニオンさんとのバトルをかえりみれば、はっきり言って勝ち目はないだろう。

 

新しく六匹目のポケモンを捕まえる?

 

ポケモンは餌がなくても生きていける訳ではない。人がパートナーにするなら育成環境を整える義務が生じる。今まではコロトックとグレッグルだけだった。でも今はグレッグルもドクロッグに進化し、さらにヨクバリス、ルンパッパ、アブソルと増えている。すでにポケフード代がかなり圧迫してきているのに、もう一匹?

その日は答えが出ないまま、眠れぬ夜を過ごすのであった。

 

 

 

 

 

 




アローラディグダ、150匹捕まえました。二匹くらい攻略見ました。
あれをヒゲと知ったときの衝撃はやばかったです。
ダグトリオに進化した時のフッサフサの金髪もパネェっす。
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