【完結】届け、ホシガリスポーズ!   作:お菊さん

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キャンプと、女子トーク

 

 

 

ポケモンと人の関わり方には、大きく三つの種類がある。

 

一つ、ポケモントレーナー。ポケモンを戦わせることを仕事とし、スポンサーや研究機関の援助を受けて地方を代表する存在になるために切磋琢磨する者達。たくさん捕まえる人もいれば一つのタイプに絞る者もいる。育成環境は支援があればあるほど良くなる。

 

二つ、ポケモン研究機関。いまだに未知なことが多いポケモンを研究、調査するための組織。地方の自治体の援助を受けながらトレーナーと協力関係になることが多い。規模は様々だが、ポケモンを育成する環境としてはトップクラス。

 

三つ、普通に生活する人々。ポケモンを家族として迎える、仕事のパートナーにするなど様々な目的でポケモンを連れている。基本的に一家族で一匹か二匹くらいなことが多い。家庭環境で暮らせるようなポケモンが好まれるため、氷や毒、ゴーストなどが選ばれることは少ない。エサ代などの問題もあり、育成環境はピンキリである。

 

自分は三番目だ。だからたくさんは捕まえられないし、面倒を見ることもできない。もし捕まえるにしても職場に連れても問題ないポケモンにしないといけない。

……今でも一番目になりたいという未練がある。でも料理人になりたいのも間違いない。決めきれていないのだ。この旅でそのことにも決着をつけられたらいいなと思う。それもこの旅を決めた理由なのだ。

 

 

 

 

 

 

「その時にね? ヤローくんが言っちゃったワケよ。『僕が一番目のジムチャレンジやります』って! ダンデくんも『それがいい』だなんて! だったら私だって二番目が良いって言ったのに!」

 

「まーそうよねぇ。でもルリナも分かってるんでしょ? ヤローくんはともかくルリナまで二番目は体裁上無理だって」

 

「分かってるわよ……。あの問題児二人に一つ目のジムチャレンジは任せられない。だからってヤローくんと違ってメジャージムじゃない。その辺を加味したからこその順番なんだって、分かってるわよ……」

 

「あ、こっちもおかわりくれる? ごめんねやらせちゃって!」

 

 

 

どうしてこうなった。

 

 

 

話は少しさかのぼる。コロトック子守唄で見事撃沈し、ふと誰かに起こされて目が覚めた。そこにはグレッグルがとホシガリスがいて、どこかを指差している。そちらを見ると、コロトックが大人のお姉さん達に絡まれていた。

 

「むしタイプなのは間違いないわよね……。ストライクみたいな鎌、複眼、顔つきなんかから判断できる。でもこのお腹の器官は何かしら? ストリンダーみたいに弾くことで演奏できてたことを考えると、意志疎通の器官なのかな。メロディを奏でてたことを考えると……」

 

「もーソニアったら、一度こうなると中々戻ってこないんだから。……あ、君たちのご主人様、起きた?」

 

慌てて飛び起き駆けつける。コロトックは困っているものの何かされた訳ではないらしい。ソニアと呼ばれた方の女性に見覚えはないが、もう片方の女性はついこの前見た気がする。確かバウタウンのジムリーダーだったような。

 

「私について知ってるの、それだけ? ……ふーん。あなたよその人? シンオウかぁ。なら仕方ないのかなぁ。こっちのソニアも数年前にブームの人になったんだけど、まぁガラルの中の話よね」

 

そっかぁと言いながら決して嫌そうではない。二人は喧騒に疲れて人のいないとこに来たかったという。ジムチャレンジが始まって忙しいから、貴重な息抜きという訳だ。

 

「そうそう、なんでキャンプなのにカレー作ってないの? ……あ、そっか。ガラル以外ではそこまでカレー流行ってないのね。じゃあさ、一緒にキャンプしましょ! こっちでのカレーについて教えてあげるから。ソニア、それでいいでしょー!?」

 

ジムチャレンジはいいのだろうか。

 

「今何時か知ってる? 夜7時過ぎ。もう今日の分は終わってるわよ」

 

ルリナはボールから見たことのないポケモンを出した。ドダイトスのような、ゼニガメのような、背中に甲羅をつけた水色のポケモン。口がかなり鋭利で噛まれたら危なそうだ。

 

「カジリガメっていうの。キャンプでは互いのポケモンを一緒に遊ばせることもできるのよ。って、あなたのホシガリスとソニアのワンパチ、もう打ち解けてる」

 

ワンパチの背中にホシガリスが乗って走り回っている。グレッグルがカジリガメに何やら声をかけ、少し離れたところで軽いバトルのようなものをやっている。どちらも好戦的なようだ。

 

「じゃあカレー作りましょうか。リンゴあるみたいだし、リンゴカレーで」

 

やっとコロトックの観察に満足したソニアも加わって、三人でカレーを作る。これでも料理人だ、配合さえ聞けば味を想像しながらカレーくらい作れる。木の実はイアの実をチョイス。お疲れの二人にはリンゴ自体の甘味と酸味に加え、イアの実の酸味と水分を加えることでさっぱりしてくどくない味付けにした。

 

 

 

 

イアの実を入れたすっぱくちアップルカレーの完成だ!

 

 

 

 

「あ、おいしい! カレーなのにこってりじゃない!」

 

「カジリガメも喜んでる。あなた料理上手なのね」

 

誉められると嬉しくなって、思わずニコニコしてしまう。人間と違って初めてカレーを食べるだろうコロトックとグレッグルは最初こそ怪訝な表情だったが、ワンパチが勢い良く食べたのを見てそっと一口。目を見開き、そこから一気にカレーを口に運んでいった。お気に召したようだ。

 

「あーおいしかった! そうそう、おいしかったと言えばこの前ホップがね……」

 

そうして女子トークが始まり、冒頭に至る。コロトックがムーディーなメロディを奏でているのもあって、二人の話は尽きないようだ。ワンパチとホシガリスは走り回り、カジリガメとグレッグルはまだカレーを食べている。と、その時だった。いつの間にか自分の背後に誰かが立っていた。

 

「イヌヌワン?」

 

それに気づいてワンパチが声を出すが、警戒というより困惑の吠え声だ。慌てて振り返ると、立っていたのは人ではなくポケモンだった。緑の帽子のように見える大きな葉を頭にかぶり、鳥のようなくちばしを持ちながら人に近い手と足を持つ。でも一番の特徴は、体を小刻みに揺すっていることだ。なんともリズミカルに……、ん? コロトックのメロディに合わせて揺れてる?

 

「あれ? コロトック、演奏やめちゃうの?」

 

「ねぇルリナ……。そこにいるの、ルンパッパじゃない?」

 

「あ、本当ね、ルンパッパ」

 

演奏を止めたコロトックとルンパッパが見つめあう。と思ったら、突然コロトックがギィン! と激しく腹をこすった。ルンパッパも足を肩幅に開いて腰を落とす。次の瞬間コロトックがかなりの速度でメロディを奏で始めた。ルンパッパも負けじと激しいステップを繰り広げる。突然の展開に人間達は口を開いて固まっている。

 

「ワン!イヌヌワン!」

 

「キキッ!」

 

ワンパチとホシガリスは楽しそうに二匹の間に入って両者を見ている。一方のカジリガメとグレッグルは遠巻きに様子をうかがっている。人間達は真剣な表情で突然のダンスバトルを始めた二匹から目が離せない。何だか分からないけど一つだけはっきりしていることがある。あいつのステップ、キレッキレだ。

 

「……ルンパッパって、確か良いリズムを求めてるんだって聞いたことある。そのリズムに合わせて体を動かすことで自分のパワーを増幅させるんだとか」

 

ぼそっとソニアが解説した。そういえばコロトックも奏でるメロディで感情を伝えるとか聞いたことがある。じゃあ何だ、コロトックの感情に合わせて踊ってるのか。あんなに真剣に。

 

 

 

 

 

「――ンッパ!」

 

ルンパッパが息を込めた声を出して、フィニッシュ。コロトックもルンパッパもはぁはぁと荒い息を吐いている。だが互いに歩み寄ると、がしっと抱き締めあった。深い友情が芽生えたようだ。思わず拍手してしまう。

 

「わあーすごい。……ってカレー食べるの? ルンパッパも? じゃあ、よそうね?」

 

清々しい表情をした二匹は隣同士に座ると、ソニアがよそってくれたリンゴカレーを食べ始めた。ルンパッパも味が気に入ったようで大喜びでガツガツ食べている。でもいいのだろうか、野生のポケモンにカレーあげてしまって。

 

「いいのよ。むしろそうやって仲間になるポケモンも少なくないんだから。このルンパッパもゲットしてあげれば?」

 

ここには確かに新しい仲間を探しに来た。でもこのポケモンは果たしてバトルにだせるようなポケモンなのだろうか。

 

「ルンパッパは草と水の複合タイプ。ヤローくんも本気の時は手持ちで使うことがあるわ。しかもあまごいを覚えるから、かんそうはだのグレッグルとも相性抜群ね。雨だとグレッグルは体力が回復するし、苦手な炎技も威力が減退するし。ルンパッパ、あなたにとってマイナスにはならないと思うわよ?」

 

「次はエンジンシティ? クララさんかセイボリーさんかー。あたしだったらグレッグルには悪いけどセイボリーさんを選んでホシガリスとルンパッパで耐久、最後はコロトックでノックアウトに持ってくかな。ルンパッパはスタミナもあるしね」

 

大変ありがたい。ポケモンの知識がある人達からの助言は正直お代を払う必要があるくらい貴重なものだ。まぁ、この二人はお代払ったら逆に怒りそうなので感謝を述べるだけにする。

 

「そうそう、使ってないからこれあげる。しめったいわ。バトルで天候を雨にした時、普段より長く雨にしておけるの。ルンパッパに持たせてあげて。さすがに天候を上書きされるのは防げないから注意して」

 

思わず二人の顔を見比べてしまう。この後悪い組織に大金を脅し取られたりしないだろうか。

 

「はっきり言ってね、あたしもルリナも君だから優しくしてるんじゃないんだ。『あたし達を知らない人』だったからキャンプにお邪魔したし、思いっきり話をさせてもらった。最近はどこに行っても視線を感じたり声をかけられたりでうんざりだったから。利用させてもらった分の対価を払っただけ」

 

「そうよ。それに私はあなたがバトルに来ても一切容赦しないわ。ルンパッパがいたって負けるつもりはない。……安心して、そっちのポケモンを知ってるからってジムバトル用のポケモンを変えたりはしない。逆にあなたが対策をすることで初めてジムに挑む資格を得たとすら考えるわ」

 

そのアイテムは口止め料よ、とまで言われればすんなり受けとるのが大人というもの。彼女達はきっと数日もすれば自分のことなど忘れてしまうだろう。それでいい。大人になってまで無駄な執着やしがらみを作る必要はない。

 

 

 

 

 

「それじゃカレーごちそうさま! お邪魔しました!」

 

「バウタウンで待ってるわ。楽しみにしてる」

 

二人は空とぶタクシーで帰って行った。残ったのは四匹のポケモンと自分のみ。嵐のようなイベントだったが、とても貴重な時間だった。

 

自分は今後、彼女たちのように有名になることなんてきっとないだろう。料理人としていつかお店は出したいが、まだ具体的なプランは決まってないくらいだ。だけどひょんなことで運命は交錯し、違う世界の住人が同じ鍋のカレーを食べることもあれば自分の料理が有名人の癒しを手伝うこともある。

 

 

この運命は、ダンデさんまでつながっているのだろうか。

 

 

ふと目が合ったルンパッパが、ビシッと親指を立ててウインクしてきた。こいつ調子良いやつだな。何はともあれ四匹目、ジムリーダーお墨付きの一匹だ。モンスターボールを投げ改めてゲットし、全員で片付けをやってからテントに入る。明日はエンジンシティで受付をしよう。受付をしたらルンパッパの技とかを確認しないと、と考えながら眠りについた。

 

 

 

翌日。エンジンシティに戻って本屋に入りファッション雑誌をめくる。でかでかとルリナの写真が載っているのを見て、自分が想像以上に大物のプライベートを見たことを実感し、奇妙な感覚に襲われるのであった。

 

 

 

 




ソニアさんとルリナさんでした。
主人公はどこにでもいる人間(原作主人公やライバル枠の人間ではない)を想定してますが、せっかくなので原作キャラとバンバン絡ませていく方針です。
原作キャラ、素敵な人が多いですからね!
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