【完結】届け、ホシガリスポーズ!   作:お菊さん

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今回もバトル回なので主人公にセリフがあります。
よろしくお願いします。


決戦、セイボリー!

「ありがとう、助かった!」

 

目的のスタジアムが見えたところでリザードンが一声鳴いた。もう大丈夫だということらしい。俺は案内してくれたことを感謝し、ガシッと握手した。

 

「ここからならリザードンで飛んでいける。迷った時はどうしようかと思ったけど、君がいてくれて本当にラッキーだった。俺は今日のことをきっと忘れない!」

 

リザードンにまたがり、ゆっくりと飛翔する。手を振りながら最後に叫ぶ。

 

「――次会えた時は、君のポケモンを見せてくれ! そうでなくても夢を叶えた君と再会したい! 楽しみにしてるぞ!」

 

スタジアムに到着した時、リザードンがバギャアと鳴く。何だ、と思えばすっからかんの自分の手を見つめている。

 

「……あ、預けたまま忘れちゃったのか。まぁいいさ、すぐに使う物じゃないしな。次会ったときに聞いてみるさ!」

 

……ダンデさんから意図せず預かってしまった『それ』は、今もリュックの中に入っている。

 

 

 

 

 

 

エンジンシティジム、スタジアム入場口。スタジアムに入る前に四匹のポケモン達と作戦を確認する。ルンパッパをゲットした後もゴーストタイプか悪タイプのポケモンを狙ってみたのだが、付け焼き刃で言うことを聞いてくれるポケモンはいなかった。そもそも一流トレーナーでもない自分に従ってくれるような強いポケモンなどそういない。

 

『チャレンジャー、ジムリーダー、共に入場してください』

 

コロトック、グレッグル、ホシガリス、ルンパッパが作戦を理解したことを確認してからボールに戻し、スポットライトの当たるコートを歩く。中央にはすでに待ち構えているジムリーダー、セイボリーがいた。

 

「ようこそチャレンジャー。ワタクシのエレガントなジムチャレンジを選ぶとは、あなた中々見る目がありますよ。自慢していいです」

 

あれがエレガント……? ここのジムチャレンジはサイキックパワーで平衡感覚を失ったままゴールまで歩いて辿り着くというものだった。後から聞いたら毒の場合も平衡感覚を麻痺させるガスを吸ってゴールを目指すんだから過激すぎる。

 

「ところでラテラルタウンジムのユニフォームということは、あなたゴースト使いですか? さもありなん、エスパー対策筆頭ですからねゴースト、当然の構えです」

 

「いえ、これは頂き物でゴーストタイプは持ってません」

 

「まっ、紛らわしいっ! まぁいいです、それではバトルを始めましょう。お行きなさい、コロモリ!」

 

コロモリか! 予定と少し違うけど、エスパー・飛行の複合を相手にできるのは一匹しかいない。ガラル鉱山でも戦ってるからシミュレーションはできるはず。

 

「いけっ、ホシガリス!」

 

「んん~? ホシガリスですか。ははーんさてはかみつく狙いですね? あれはにっくき悪の技! あんな非道な技を使うやつは体もハートもサイコブレイク!」

 

「……ホシガリス、飛びかかりつつ、たくわえる!」

 

予想通りホシガリスは怖がらずにすぐ指示に従ってくれる。勢い良く走り出すと尻尾から何かの食べ物をたくさん口に放り込みつつ飛び上がる。

 

「飛んで火に入るサシカマスのごとく直線的な動き! コロモリ、エアカッター!」

 

「ホシガリス、のみこむ!」

 

たくわえるの技はたくわえている間は防御と特殊防御が上がる技。その状態でエアカッターを受けさせ、さらにのみこむを指示することで回復させる。耐久力の高いホシガリスならではの戦法だ。

 

「そしてたいあたり!」

 

「ホワッ!? かみつかない……!? それなら問題ありません! コロモリ、ねんりき!」

 

「ホシガリス、もう一回同じことをやって!」

 

再び飛びかかり、たくわえ、のみこみ、たいあたり、また走ってたくわえ、のみこむ。ダメージが蓄積したらオレンの実と特性ほおぶくろで回復。最後は思いっきりコロモリの顔にたいあたりをぶつけるという急所を狙った攻撃で倒しきった。

 

「よしっ! よくやったホシガリス!」

 

「くっ、まぁやりますね。ですがまだ一匹目。次はこちらですよ、ユンゲラー!」

 

ユンゲラー。このポケモンも知っている。エスパー使いの心強いパートナーで強力な念導力を持つポケモンだ。ここは本来の作戦でいこう。ホシガリスを戻しルンパッパを出す。さあ、初試合だルンパッパ!

 

 

 

 

「(ナゾノクサのごとき謎の行動……。どうしてあのホシガリス、かみつくをやらなかったのでしょう……。かみつくをやればもっと早くコロモリを倒せたはずです。わざわざオレンの実を使う必要はなかった……)」

 

 

 

 

「ルンパッパ、あまごい!」

 

「っと、特性発動狙い! これはやっかいです。ユンゲラー、サイケこうせん!」

 

ステップを踏んでいたルンパッパがよく分からない動きをすると、にわかにスタジアム上空を厚い雲がおおっていく。ポツリポツリと雨粒が落ち、一気に空は雨模様となった。ルンパッパの特性は『すいすい』。雨の時は素早さが上がる。サイケこうせんをくらいはしたが、見合うだけのアドバンテージは得た!

 

「ユンゲラー! スピードスター! どんなに早くなっても技が当たればこっちのものです! ヒットアンドアタック!」

 

「ルンパッパ、バブルこうせん! スピードスターを撃ち落としながら攻撃!」

 

雨によって威力の高まったバブルこうせんを口から吹き出す。スピードスターが確定命中なら軌道上に技を出して全部撃ち落とすまで。輝く星をぶち抜いた高速の泡は、そのままユンゲラーにも炸裂した。

 

「押しきれルンパッパ! もう一回バブルこうせん! 今のお前の方が早い!」

 

「なんの、かわすのです! かわしたところでサイケこうせん!」

 

「かわさせるな! テレポートできないなら姿を消すこともない! お前の動体視力なら捉えられるって信じてる!」

 

「動体視力!? サイケデリック・アイは我らサイキッカーの商売道具ですよ! 勝手に使わないで使用料を払いなさい!」

 

何の話だ。

 

「ンッパッパー!」

 

ルンパッパがバブルこうせんを継続しながら自分の指で四角を作り、その四角を目のところに持っていく。まるでカメラのスコープを覗くような仕草だ。そのまま回避しようと動き回るユンゲラーを捉え続ける。……お前は本当はエスパータイプか? 何だその手! 明らかにこっちの会話内容理解した上で悪ノリするんじゃない!

 

「キィーッ! 著作権侵害です! 法廷に訴えますよ!?」

 

いや著作権は関係ない。

 

「ええいワタクシのユンゲラーはペロッパフではありません! つまりは舐められるほど甘くない! ユンゲラー、サイケこうせん! 当てることに集中なさい!」

 

回避するのをやめたユンゲラーがスプーンをまっすぐルンパッパに向ける。瞳を怪しく光らせながらサイケこうせんを放つと、その光はなんとバブルこうせんの泡を生き物のように潜り抜けながらルンパッパに迫る。集中しながらの攻撃を回避するのは難しく両者に直撃した。二匹ともぶっ飛んでどさりと倒れるが、ルンパッパはむくりと立ち上がってステップを再び踏み始めた。

 

「ンッパ!」

 

このルンパッパ、調子のいい所はあるが戦闘へのポテンシャルはウチで一番だ。グレッグルを上回るその戦闘センスに舌を巻く。自分はその才能に見合う指示を出せるのだろうか。

 

 

 

 

 

「最後の一匹にまで追い込みましたか。やりますね、私の力を2.8%も発揮させるとは。さぁ出番ですよヤドラン! ダイマックス! 1、2の3で巨大化しなさい!」

 

ヤドラン! 今度も知っているポケモ……、待て、ヤドランってあんなのだったっけ? ヤドランと言えば焦点の合ってない目、ピンクの健康そうな体、尻尾に合体したシェルダー……えぇっ!? し、尻尾じゃなくて、手にシェルダーがくっついてる!? どういうこと!?

 

「フフン、うろたえることウールーの如し。ガラルヤドランは初めてのようですね? ではその強さを思い知りなさい!」

 

セイボリーは超能力でボールを操ると、巨大化したボールを後方へ投げる。出てきたヤドランを改めて見て、さっきの言葉を確認する。『ガラル』ヤドラン。おそらく、自分が知るヤドランとは生態が違う。油断はできない。ルンパッパを続投させる。ヤドランは水とエスパーの複合。ルンパッパなら悪くない勝負ができるはず。

 

「ルンパッパ! ギガドレイン!」

 

すいすいで速度の上がったルンパッパが大きく息を吸い込むとヤドランの体が緑に発光し、その光もまとめて吸い込んでいく。ところがルンパッパは「おいしくない」と言いたげな顔で振り返り、ヤドランと言えばあまりダメージを受けていなさそうだ。……まずい、生態だけじゃなくてタイプも変わってる!?

 

「ヤドラン、――ダイアシッド!」

 

巨大なヤドランが左腕のシェルダーをまるで銃器のように構える。そこから紫色の液体が射出され、ルンパッパを飲み込んでコートの壁に叩きつけた。そのまま動かなくなる。

 

「このヤドランは、エスパーと毒なんですよ。草タイプでもあるルンパッパはジ・エンド!」

 

嘘だろ、毒はもう一つのジムじゃなかったのか。でも確かに毒タイプは使わないなんてルールも宣言もない。これは悪手だった、まだバブルこうせんの方が良かったか。考えても仕方がない、まだバトルは終わっていない。

 

「もう一度頼む、ホシガリス!」

 

ホシガリスは巨大化したヤドランを見て、振り返ってこっちを見る。目だけで作戦を伝えると、泣きそうな顔でヤドランに向き直った。

 

「ホシガリス、たくわえる!」

 

「ふふん、かみつけないホシガリスなど角のないトサキントに同じ! ヤドラン、もう一度ダイアシッド! 一度ダイアシッドをするたびに特攻が上がるのでますます強くなるのです!」

 

再び射出された毒を受けて、たくわえていたとはいえホシガリスが耐えられるはずもなく。ふっとんで目を回している。……これでダイマックスの時間をかなり削れたはず。次が勝負だ。

 

「コロトック!」

 

「ははーん! コスモパワーで全てを悟りました! あなたの切り札はそのむしポケモン! ルンパッパとホシガリスはできるだけ体力を削るのが仕事! むしポケモンは速度はあっても長期戦に向かないことがほとんどですからね! これぞ自明の理、いや、ジメーノ・リ!」

 

変な口調はとにかく、その通りだ。防御型のホシガリスと雨で先手を取れるルンパッパでお膳立てをし、エスパーに相性有利なコロトックがとどめをさす。これがソニアさんの言っていた今回の作戦だ。見抜かれたところで勝負は終盤。毒とエスパー複合の相手に虫技は等倍だが、もうすぐダイマックスが終わると踏んで畳み掛ける!

 

「コロトック、シザークロス!」

 

「ヤドラン、ダイストリーム! 上がった特効で押し流しなさい!」

 

雨の中飛び上がったコロトック、ヤドランの左腕を切り裂くも直後噴射された水流に飲み込まれた。雨が強まる中ヤドランの体が赤く光り、元の大きさに戻っていく。コロトックもなんとか起き上がってヤドランを見据えた。

 

「コロトック、いける!? よし、とどめばり!」

 

「ヤドラン、シェルアームズ!」

 

同時に動いた二匹のポケモン。素早さならコロトックが上だ。回避されなければ勝てる! ……そのはずだった。

 

 

 

「え……?」

 

 

 

コロトックのとどめばりが刺さる前に、突然ヤドランが素早く腕を構えたのだ。それは今までの行動からは想像できないほどに素早く、コロトックが攻撃する前に毒液を発射する。一歩及ばなかったコロトック、ほぼゼロ距離で攻撃を受けてしまい戦闘不能となってしまった。

 

「――ガラルヤドランの特性『クイックドロウ』ですよ。一定の確率で先制攻撃をします。さすがはヤドラン、エレガントすぎです」

 

そんな特性あるのか。絶句しながらモンスターボールにコロトックを戻す。またこの展開になってしまった。あと一撃なのに、相性不利の一匹しか残ってない。

 

「そちらの最後のポケモンは……、んん!? グレッグル!? グレッグルなんて毒と格闘の複合! エスパーが苦手な複合ではありませんか! これはもうボンッ、ですね!」

 

そう、格闘と毒それぞれがエスパーを苦手とするため、エスパー技を受けたら間違いなく一撃で落ちる。だが他のポケモンは戦闘できる体力がない。負けないためにはここで出すしかないのだ。

 

「とどめですよヤドラン! シェル――」

 

その先が言葉になることはなかった。今度はセイボリーが「え?」と呟くことになったからだ。攻撃指示を出した時すでにグレッグルはヤドランに接近し終わっており、ジャンプしながら裏拳をヤドランの側頭部に叩き込んでいたのである。

 

「ヤ、ヤァ~ン……」

 

ヤドランは聞き覚えのある抜けきった声を出してゆっくりコートに横になると、そのまますやすやと眠りだした。一応戦闘不能扱いらしい。

 

「ん、んな、なぁっ!? まさか今のは、『ふいうち』!?」

 

「そうです。悪タイプ技のふいうちです」

 

「な、まさかあの虫ポケモン以外にもエスパー対策をしてあったんですか!? あなたのホシガリス、効果のある『かみつく』ド忘れしてたのに!?」

 

「いいえ、覚えてました。……万が一この展開になることを考えて、あえて使わなかっただけです」

 

今回の作戦は二段仕込みだった。理想はソニアさんが教えてくれたルンパッパとホシガリスでなるべく敵を削り、とどめを相性の良いコロトックにやらせて勝つというもの。しかし何かあった場合はグレッグルまで回し、相手に何かされる前にふいうちで倒す。そのためにホシガリスにはかみつくをさせなかったのだ。

 

「わ、ワタクシに、グレッグルにエスパー対策があると分からせないための、布石……!?」

 

「コロトック以外が効果抜群の技をしなければ、コロトックこそが切り札だと思うでしょう? 実際そうなれば楽なのでそうなるように戦ってました。グレッグルは最後の最後の奥の手だったんです。危険な賭けでした」

 

もしもまだヤドランに余裕があったら。もしも先制技を封じられるサイコフィールドを出されていたら。そんな不安の残る中、最大限のやれることをやりきった勝利だった。

 

「勝者! チャレンジャー!」

 

わああ、という歓声が響く。ターフタウンよりかなり弱い声量だが十分だ。見ている人が一人でもいる限り、パフォーマンスをする理由になる。

 

「ホシガリス、ポーズ!」

 

腹の底から大声を出す。目の前でグレッグルが同じポーズを取ってくれた。あれ、教えたっけ? ちらりと振り返ったグレッグル、パチンとウインクして向こうを向いてしまった。

 

「あり得ぬ、いや、アリ・エーヌ! まさかこんな形で敗北など! ですが認めてさしあげます。ワタクシまだ6.3%しか本気を出しておりませんので。ちっとも悔しくありませんので」

 

ショックのあまり落としたモンスターボールを超能力で浮かばせながら、嫌そうに手を出す。その握手に応える。二つ目のジムミッション、クリアだ。いよいよ次は、ルリナさんの待つバウタウン!

 

 

 

 

 




セイボリー、セリフ調べつつ書いてましたけど、よく分からないこと言ってますね!
あとクイックドロウ、凶悪ですね!
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