シンエヴァ 空白の時間の補完   作:ネノマ

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長くなりそうなので前と後で分けました


お見舞い編 前

ダッダッダッ

 

 

「はぁはぁ」

 

 

一体なんだって言うんだ。

 

後ろから男?が追いかけてくる。

 

 

「しっあわっせはーぁるいってこなぃー」

 

 

ほとんど姿形は父さんに見えるが、決定的に違うのがツインテールついていることだ。

 

 

顎髭生やしたオッサンがツインテール

 

後、変な歌を歌っている。

 

絶対に捕まりたくない。

 

 

10分位走ったのだろうか、もう足音はすぐ後ろにまで迫っていた。

 

「シンジィ、シンジィ」

 

最初の呪詛はいつしか僕の名前に変わっていた。

 

それに気づき恐怖で身がすくんだ僕は、自分の足を引っ掛けて転んでしまった。

 

奴はゆっくり忍び寄ってきた。まるで獲物を追いつめた蛇のように。

 

そして飛翔した奴を見た時、僕は声もなく意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

閉じている目蓋から温かい光が差し込んでいる

 

 

「ハッ」パチッ

 

 

ひどい夢をみた

 

前半は、なんだろう…あまり良く覚えていないけど、誰かから背中を押されるようないい夢だった。

 

でも、今みたのは悪夢の他ならない。朧気どころか魂にまで刻まれた気がする。僕の怖いものを無理やり一緒くたにした怪物がそこにはいた。

 

ところで、この胸を圧迫するような重みは、なんだろう。

 

あまり動かせない体に鞭をうって、首だけそっと起こす。

 

 

「………」

 

 

足が乗っかっていた。

 

………

 

……………ハッ!!

 

こ、この足は!

 

一見すると、長い足が相まってか、少しスリムな足と思われるがそうじゃない。

 

俺には分かる…俺には分かるぞ!!

 

ふくらはぎはパンパンに身が詰まった果実のようで、みずみずしさが迸っていた。また、釣られるように見た太ももは、見た瞬間むしゃぶりつきたくなる肉感とそれでいて、牡鹿のようなたくましい筋肉質を備えていた。

 

 

「動け、動け、動いてくれよ!!」

 

 

こんなに動かしたくても動かせなかった状況は今までなかったと思う。

 

…ところで誰だ?こんなけしからん足をもつ輩は?

 

僕は僕の目をとらえて離さない足からやっとのことで外して、その御尊顔を拝んでみた。

 

 

………

 

 

何も言わず、動かせないはずの手で足を掴みそのまま上に放り出す。

 

 

ガンッ

「~~~!!いったー!!もうなんなのよ~」

 

 

文字通り椅子からひっくり返ってそうのたまう。

 

なんでそんなひどいことをするかって?

 

そりゃ…コイツが

 

 

 

赤いツインテールだからだ

 

 

 

なんというか、色々と損した気分になる。母とか姉の裸を見て欲情していたようなもんだ。

 

頭を押さえながらもがくツインテールを見下ろす

 

 

「………」

 

サスサス

「いつつ…」

 

「………」

 

 

「うーん、ここどこよ?」キョロキョロ

 

「………」

 

「……あ」

 

 

バチッと目線が合う

 

 

「………」

 

「………」

 

 

お互い黙っているが、赤い方は百面相のように顔が変化している。見てて面白い。

 

確かに僕もコイツがここにいて驚いているが、自分より驚いている人を見ると冷静になるって言うやつでなんとか平静を保てている。

 

そしてはっと、僕の手を見てなんで自分が椅子から落っこちたのか気づいたらしい。

 

 

「…!!な、何すんのよバカシンジ!!人がせっかく見舞いに来てやってんのに、やってくれるじゃないの!」

 

「それはアスカの方だろ!普通寝てる病人を足置きにして寝るとか、常識がないにも程があるよ!!」」

 

「だいたいそれはアンタのせいでしょうが!こっちは心配して来ているのに、だらしない顔で寝てるからこっちまで眠くなるのよ!」

 

「言っていることが無茶苦茶だよ!アスカが寝ていることに関して僕は全く悪くないよね?!」

 

 

わーわーぎゃーぎゃー

 

 

ガラッ

 

 

「うるさいよー、姫にワンコ君。ここは病院だぜ?」

 

 

音を立てて仕切りのカーテンが開かれる。

 

こ、この声は!

 

 

「マリさん!」

 

 

間延びした声と共に入院着姿のマリさんが現れた。

 

少し不機嫌そうなのはさっきまで寝ていたからなのだろうか

 

 

「良かった…無事だったんだ」

 

「ワンコ君も無事で良かったよー、これても心配してたからね」

 

 

それにしても、やけにマリさんが僕の事を眺めまわしてくる。僕の顔に何かついているのだろうか?

 

あまりにも無遠慮にこちらの顔をのぞきこんでくるので、こちらも観賞させていただくことにした。

 

僕が見つめ返していることに気づいたマリさんは、一瞬目をそらしたが再び目を合わせてきた。

 

もはや見つめ合う、と言うよりかはにらみ合いみたいになってしまった。

 

 

「コホン…お二人の世界を邪魔するようで申し訳ないけど、こっちには聞きたいことがいっぱいあるから、その後にしてくんない?」

 

 

その言葉を聞いて僕はバッと顔を反らすが、マリさんはニヤニヤしながら「ふーん」と言って顔を反らした。

 

大人の余裕みたいのを見せつけられて少しイラッとしたが気にしないことにした。

 

                                              ガラッ  

「フン!それじゃ早速話な「おう、シンジ。起きたんか」

 

「トウジ!」

 

 

思えば、ここはトウジの診療所だった。

 

短時間にあまりに色々な事が起こりすぎていて

周りがよく見えていなかった。

 

「いやー最近忙しゅうてな、お前ばっかりには構っておられんくなってのー。代わりに、ちょうど見舞いにきたアスカに見てもらっとったんや」

 

「ハハハ、あれが見舞いの訳がないよ。だって寝てる人のうバシッ…ムガムガ」

 

 

突然アスカが口を手で押さえてくる。

 

 

「イヤーこぉんな美少女がお見舞いに来てくれるなんて嬉しくて仕方がないよね、シ・ン・ジ?」

 

 

嬉しさなんて1mmもないが、恐ろしい圧を感じるためとりあえずコクコクと頷く。

 

それを横目にみたアスカは、ゆっくりと手を剥がしてくれるが、目は笑っていない。

 

余計なことは言うな、ということらしい。

 

 

「?、まぁともかく、シンジ。アスカにお礼を言ってやっといてええぞ。なにせ、お前さんが海で倒れとったところを見つけて、運んできたのもこいつやし、その後毎日見舞いにもきてたしなぁ。そんで今日、わしの代わりに見てもらっとったんや」

 

「ちょ、それは内緒に

 

「そうだよワンコ君、『ついでよついで』なんていいながら、姫ってば明らかに私より心配してたもんね。昨日なんか寝てるワンコ君の手を握って、『早く目が覚めますように』って聖女まがいなこともしてたしね」

 

「エロメガネに限っていえば、分かってて言ってるよね?!」

 

「どうどう、アスカ落ち着きなよ、別に恥ずかしいことしてた訳じゃあるまいし」プクク

 

「ほら!見なさいよアンタたち!『へぇ、こいつかわいいとこあんじゃん』みたいな顔をしてるシンジの顔を!!」

 

 

だからばれたくなかったのよ…とぶつくさ言っているアスカを放っておいて、本題に戻る。

 

 

「そういえば、レイやカオルくんたちは?それにブンダーに乗ってた人たちは?」

 

「まぁ落ち着けや、シンジ。今から一つ一つ話したるから」

 

 

 

………

 

………………

 

……………………

 

……………………………………

 

…………………………………………………………………

 

 

そう言ってトウジは僕らがブンダーに乗っていった後に起きたことを話してくれた。

 

トウジが言うには、リツコさんたちが帰ってきたのがその日の夕方で、アスカやレイ、カオルくんが帰ってきたのが夜。マリが次の日の朝。僕がそのつぎの日の朝に帰ってきていたらしい。

 

感覚的には何ヵ月も戦っていたと思っていたが、実際には一瞬の出来事だったのだろう。

 

トウジ側からしても、あんなに準備して出発していった船が、まるでトンボ返りかのように帰ってきて、それに死傷者もほとんどおらず全部が万々歳のように解決し、青天の霹靂だったそうだ。

 

ただ、リツコさんたちが帰ってきた時には僕らは一緒にいなかったため、ひどく心配されていたようだ。

 

もうひとつの大きなニュースは、エヴァや使徒に巻き込まれて死んだ人が甦った?らしい。

 

どうやら、「エヴァがなかった事にした」事により死んだことも無かったことになったそうだが、壊れた建物や地形はそのままになっており、復旧が急がされている、とのことだ。

 

また、この第三東京村もいきなり人が増えたことから、食料の問題や住む場所を新しく作らないといけないため本当にてんやわんやの状況だそうだ。

 

 

「ま、こんなもんやな」

 

「へー、トウジたちも大変だったね」

 

「まぁ本当に大変なのはこれからやけどな…」

 

「ふーん」

 

「なに他人事みたいに思っとんねん。シンジ、お前も治ったらバリバリ働いてもらうで?」

 

「うぇ?」

 

 

口では驚いたものの、別に仕事自体に抵抗があるわけではない。むしろこの村では色々お世話になったから、ぜひお返ししたいと思っている。

 

トウジは僕の顔を見て一息つけたのか、三角椅子から立ち上がる

 

 

「ふぅ、割と元気そうでよかったわ。アスカがお前さんを担ぎ上げてきた時はほんとに心臓が止まるかと思ったわ」

 

「もう!その話はもういいでしょ!」

 

「すまんすまん…よし、俺はそろそろ戻るからな。この後も町会議があるんや、ほなまたなシンジ、夜には戻る」

 

「うん、頑張ってね」

 

 

そう言って、トウジはカーテンを開けて出ていった。

 

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

 

残された3人

 

なんとなく気まずい時間が流れている

 

 

「…はぁ、んじゃ私もそろそろいくわ」

 

「うん?アスカも行くの?」

 

「ふん!私はあんたたちと違って暇人じゃないからね、私には仕事を沢山任せられているのよ!」

 

「え?それならここにずっといてよかったの?」

 

「………」

 

「………」

 

「…クックック」

 

「…フフフフフ」

 

「プックックック」

 

「ンフフフフフフ」

 

「「アッハッハッハッ」」

 

 

バン!

 

 

もうそこには開け放たれたカーテンが風に揺られているだけだった。

 

気づけばマリさんと二人きりになってしまった。

 

 

「………」

 

「………」

 

「…わんこ君はさ」

 

「…?」

 

「………」

 

「?」

 

「うんや、やっぱりなんもない」

 

「?、そう?」

 

「これから暑くなりそうだね」

 

「…そうだね」

 

 

これから本格的に夏になっていくらしい。

 

季節が順当に巡るようになったとはいえ、この暑さはまだまだ続いていくようだ。

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