アサルトリリィ Reconquista   作:シン・ナス

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どうも書きかけで思いつかなくなって放置してしまう民です。
気づいたらアサルトリリィにハマって気づいたらトンデモないものができていたのでここに綴ろうかと思います。


prologue 神鳥の胎動

 

 

 

 

〜12月3日 夕方4時 一柳隊控室にて〜

 

 

 

「梨璃さんと夢結様が由比ヶ浜ヒュージネストを破壊した後は本当に平和な日々ですわね〜」

 

 ソファに座っていながらも優雅に紅茶を飲むのは一年の楓・J(ジョアン)・ヌーベル。

 

「そうだね〜」

 

 ほんわかしているのが、現在レアスキルの分野でメキメキと頭角を現している新星、一柳隊隊長の一年生一柳梨璃。

 

「梨璃がいなかったらオートケプヒン戦も勝利できてなかったしナ。実質ガーデンとしての機能を失うところだったんだゾ」

 

 二年の吉村・Thi・梅は梨璃の肩に手を置いてニカッと笑ってみせた。

 

「いえいえ! 楓さんがノインベルト用の弾に気づいてくれて、みんなに協力して頂いてようやく倒せたんです。頼りない隊長ですけれど、なんだかんだみなさんに支えていただいて…」

 

 クッキーをサクサク食べる愛らしい姿からは考えられない功績を立てたのである。

 

「本当に梨璃は謙虚じゃなー。わしならもうちょい威張っとるな」

 

 年齢に見合わない言葉遣いをするのが工廠科(アーセナル)所属の一年、ミリアム・ヒルデガルド・v(フォン)・グロピウスである。

 

「本当にあの時はどうなるかと思いましたよ」

 

 梨璃と同じく一年のリリィオタクの二川二水が梨璃に笑顔でそう言った。

 

「本当に梨璃さんは立派な隊長さんだと思いますよ?」

 

 オッドアイのなんとも優雅そうな一年の(くお)(しぇん)(りん)がそう励ます。

 

「うん。私もそう思う」

 

 ちょっと口数が少なめの神琳のルームメイト(わん)(ゆー)(じあ)が同意した。

 

「そうですわ! もっと自信を持ってくださいまし、梨璃さん?」

 

 楓は梨璃の手を握ってにっこり笑顔を作った。

 

「えへへ…お姉様からもよく、自信を持ちなさいって言われるよ…」

 

 梨璃は照れ笑いしてからまたクッキーをパクッと食べた。

 

 楓は一瞬周りを見渡す。すると百合ヶ丘の名だたるリリィの一人である白井夢結のシルト、梨璃がそれに答える。

 

「お姉様と鶴紗ちゃんは理事長代行先生に呼ばれていて……」

 

「なにか引っかかるナ…ま、いいカ」

 

 梅は少し天井を見上げてからクッキーを頬張った。

 

 

 

 

 

 〜同日 夕方4時 理事長代行室〜

 

 

 

「イギリスへ外征?!」

 

「驚くのも無理はない」

 

 夢結が目をひん剥く勢いで驚いているのを見て理事長代行の高松咬月は一つ大きな溜息をついた。

 

「なんで梨璃じゃなくて私が呼ばれたんですか?」

 

 安藤鶴紗が怪訝な表情で尋ねた。理事長代行室の扉の前に立つリリィが答えた。

 

「それは私が指名した」

 

 夢結と鶴紗がソファから立ち上がり背筋を伸ばした。

 

「ごきげんよう、夢結、鶴紗さん」

 

「ごきげんよう、来春様」

 

「ご、ごきげんようらいはさま…」

 

 三年の木津(きづ)(らい)()は少し笑みを浮かべた。

 

「鶴紗さんは始めましてだ」

 

 鶴紗は燻んだ赤色の髪になんともいえない迫力に少しだけ狼狽えた。

 

「ま、座りなさいな。ちょっと重要なお話をするから」

 

 それを聞いて夢結と鶴紗は腰をおろした。それを確認した来春は端末を操作し、理事長席とソファの間にホログラムを出した。

 

「既に知っているとは思うけれど、現在イギリスのハドリアヌス戦線は絶望的な状況だ。ハドリアヌスヒュージネストの突然の活性化がカッスル女学院を追い詰めていて、エリアディフェンス崩壊まで二日もない。つまり外征は急がれているわけだ。ちなみに、ハドリアヌス戦線の重要性については?」

 

 夢結はホログラムに目を向けた。

 

「大規模な北極ヒュージネスト群の一つであるハドリアヌスヒュージネストは人類に最も肉薄しているネスト。ここから放出されるヒュージの数は計り知れない。即ち、ハドリアヌスの長城に展開されているエリアディフェンスが崩壊し陥落すれば、人類は大幅に後退せざるを得ない、ということは理解しています」

 

 来春は頷いた。

 

「そこまで理解しているなら、今回の外征の重要性はわかるでしょう? 今回の外征は他ガーデン合同で行う。約100人規模だ」

 

「百合ヶ丘が所持するガンシップではとても間に合わないのでは?」

 

 夢結が当然の疑問をあげる。

 

「だから私と百由が四年前に開発し、ユグドラシル社が富士宮市地下に建造したドックで造船されていた空中移動拠点作戦艦の試運転も兼ねている」

 

 夢結はきょとんとした。

 

「空中移動拠点作戦艦?」

 

「そうとも」と言いながら端末を素早く操作すると、ホログラムが船を映し出した。

 

「全長400m、全高100mのマギで稼働する超巨大空中作戦艦フギン級一番艦フギン。こいつを使えばここからイギリスまで巡航速度なら約三時間で行けるというわけだ」

 

 鶴紗が驚いたような顔で「化け物か…」と呟いた。

 

「さっき理事長代行にも同じ反応をされた」

 

 夢結が一瞬目を閉じたと思うと、まっすぐ来春の方を見た。

 

「巡航速度マッハ3の空中戦艦ということですか?」

 

「計算早いな…」

 

 来春は夢結の超速計算に素直に感心していた。

 

「次の外征には私のLG(レギオン)スルーズと君たちのLGラーズグリーズ、LGアールヴヘイムを外征メンバーとする」

 

 夢結は少し驚いたような表情をした。

 

「拒否はもちろん可能ですよね?」

 

「当たり前だ。だが、夢結のシルトならどうするかな?」

 

 夢結は断りたいのだろう。そもそも長距離外征なんて普通ありえないのだ。

 

「行くと言うでしょうね」

 

「つまりそういうこと」

 

 来春は端末を操作し、ホログラムを閉じる。

 

「もちろん百由は同行させる。というか着いてくるだろうな」

 

 夢結と鶴紗は立ち上がり、頭を下げて一礼すると退出しようとした。

 

「鶴紗さんは少し残ってね」

 

 鶴紗は少し困惑した様子だったが「分かりました」と言うと夢結に「また後で」と挨拶をして再びソファに座った。

 

 夢結の退出を見届けると鶴紗は少しばかり睨むように来春に尋ねる。

 

「私に何か用ですか、と言っても何となく察しはつきますけど」

 

 来春は申し訳なさそうに言う。

 

「君を縛り付けてるのはある意味、私たちなのかもしれない」

 

 鶴紗は少し俯いた。

 

「私はあなた方に助けていただいて、その助ける立場に私がなるだけです。これ以上、不幸な子達を増やさないために…」

 

 咬月はうむと頷いてから頭を下げた。

 

「頼む」

 

 〜同日 夕方5時 生徒会室〜

 

「とまぁ主力レギオン引き抜くからその他の外征とかは頼むね」

 

 来春の目の前にいる三人の生徒会長。

 

「重要な遠征だから仕方がないわ」

 

 三年生でブリュンヒルデの(いづ)()(しの)()はティーカップを片手に頷いた。

 

「来春様まで出るとなると、それほど重要な作戦なのですね」

 

 二年でジーグルーネの(うち)()()()()がソファの端に肘をついて組んでいた足を正位置に戻した。

 

「地域主義としてお任せください」

 

 二年でオルトリンデ代行の(はた)(まつり)は端末を片手にもう片手でグッと握った。

 

「ところで今回の会議には百由が参加するはずなんだけど、百由は?」

 

 扉の向こう側から、ダッダッダッダッとかけて来る音がする。

 

「噂をすれば、かな?」

 

「ごめんなさーいっ! ちょっと遅れました〜!」

 

 百合ヶ丘を代表する戦う工廠科二年の()(しま)()()が手にいっぱいの箱を持って現れた。

 

「その箱なんだい?」

 

「遅刻が確定したんで差し入れにと思ってドーナッツを…」

 

「それ買ってる暇があったらちゃんと来なさいよ」

 

 唐突に始まるコントにも迅速に対処する来春だった。

 

「ま、じゃあいただくよ」

 

「どうぞどうぞ〜♪」

 

 箱から取り出したチョコドーナッツを頬張り、端末を操作してフギンのデータを大パネルに映し出す。

 

「北欧神話には、主神オーディンに様々な情報を伝えるために世界中を飛びまわる二匹のワタリガラスがいたそうです。名前はフギンとムニン。フギンは思考、ムニンは記憶を意味するそうです。そしてそして…」

 

「「「「要点を」」」」

 

「話の枕なんで〜」

 

 百由が一気にギャグのような空間と化すのは恐ろしい能力である。

 

「では、フギン級1番艦の概要を説明しましょうかね。来春様?」

 

 百由が建造の主導をしたとは言え基本設計を行なったのは来春だ。

 

「いや説明は百由がやってよ」

 

 来春がめんどくさそうにそう言った。

 

「あっ、説明していいんですね? それでは僭越ながら。この戦艦は船そのものがCHARMで、動力としてマギを使用するマギドライヴエンジンを搭載しています。スキラー数値が50以上、即ちリリィでなければ起動はできないのは通常のCHARMと同じですが、フギンが通常のCHARMと唯一違うのが、バカみたいな量のマギを食うことです。マギバッテリーに溜め込んだマギを使うか、マギコンバータールームで誰かがマギを供給し続けるかするしかありません。しかしですよ? 百合ヶ丘を窮地に追いやったヒュージオートケプヒンを思い出してください」

 

 眞悠理は視線だけを上に向けて思い出すように言った。

 

「確か、マギを奪う結界を張って私たちのCHARMを使用不可にしたな」

 

 百由は端末を持っていない方の手でドーナツをもきゅもきゅ食べながら

 

「ほーなんへふ!」

 

 と言っているところを来春が横から端末を奪った。

 

「はい説明ご苦労様。大人しくドーナッツ食うか補足入れるかなさい」

 

 百由は大人しく「はーい」と返事すると下がった。

 

「そういうヒュージが出てきてもおかしくないと思ってはいたからマギドライヴだけじゃなくて原子力タービンエンジンも搭載している。ただ、原子力タービンを使う時は飛行機みたく翼を展開しなきゃならないしホバリングもできない」

 

「つまり、ヒュージとの真正面からの戦闘は最初からから想定されていないということですね」

 

 祀がそう分析する。

 

「にしては兵器がやたらと多いように見えるのは気のせいかしら?」

 

 史房がまじまじとフギンの設計図を見つめながら指摘した。

 

「この船は万能作戦艦として設計されている。つまり、単艦でギガント級ヒュージを相手取れる性能を有しておきながら、リリィたちの輸送及びガンシップの空母としての役割も果たす。三連装砲塔が船体上部前方に二門、後方に一門。下部も同じような配置になっているから合計で六門搭載している。マギを直接打ち出すこともできるけど、基本は実体弾。あとは……」

 

 端末をささっと操作すると、船体各所を指す矢印が驚くほど出現した。

 

「これ全部何かしらの兵器ね」

 

 態勢を崩していなかった眞悠理も思わず「えっ」という驚きの声とともに顔を大パネルに近づけた。

 

「化け物か…」

 

「本日三回目の『化け物か』反応頂きました」

 

 来春は苦笑いした。

 

 史房は少しばかり怪訝な表情で来春に視線を向ける。

 

「本当に対ヒュージ戦を想定したものなの?」

 

 その問いかけへの答えを期待するような目線を祀や眞悠理だけでなく百由も向けていた。

 

 静寂が一瞬漂う。

 

 来春は頼もしい笑みを浮かべた。

 

「…まさか。この船の銃口が()()な人間側へ向くことはないよ」

 

 眞悠理と祀は安堵したが史房は少し違った様子だった。

 

「ま、まぁ本人がこう言ってるんですし問題ないでしょ! ね、史房様?」

 

 百由は史房に詰め寄る。史房は大きな溜息をつく。

 

「…まぁそういうことにしておくわ」

 

 どこか煮え切らない様子ではあったが一応納得はした。

 

 来春は時間を確認すると、端末を百由に渡して「ではこれで」と一礼して生徒会室を退室した。

 

「本当に大丈夫かしら、来春……」

 

 史房が心配するように呟いた。

 

 

 

 

 

 〜同日 夜9時 地下リニア〜

 

 

 

 百合ヶ丘女学院から直通で富士宮地下ドックまでつながる小さいリニアに一人座る来春。というか使うのは彼女のレギオンであるスルーズのメンバーと百由くらいなのでこのコンパクトさなのだが。

 

 端末に映された施設を見下ろすように眺め、少し噛みしめる。

 

 ため息をついて横にスワイプするとそこには『Trishula』という銘がうたれたCHARMが映し出されていた。

 

 それから一時間後、リニアはようやく足を止めた。自動扉が開かれるとそこには、戦艦を連想させるような砲塔を上下に搭載した船が専用のドックの収まっていた。上下対称、左右対称の巨大戦艦は目覚めの時が近いのか胎動しているように感じられる。

 

 その姿を見て笑みを浮かべる来春。その時だった。

 

「来春姉様〜!」

 

「ちょっと抱きつかないでよ風華」

 

 と抱きついてきたのが来春のシルトで二年生の事代(ことしろ)(ふう)()

 

「抱きつきます! 大好きなお姉様と一日ぶりなんですもの!」

 

 いかにも貴族的な雰囲気の紫髪の風華は元気一杯に来春にまとわりつく。

 

「風華お姉様。あんまりはしゃがないでください。来春姉々様(ねえねえさま)がお困りですよ?」

 

 シュッツエンゲルの風華とは対称的にお淑やかで水色の髪を持つ風華のシルトのグレース・ボードウィンが近づいてくる。

 

「姉々様って呼ばれるのも未だに慣れないね」

 

 来春は苦笑いしながら言う。来春と風華、グレースでノルンの関係なのだ。

 

「私を救っていただいた時からずっとお姉様です」

 

 いつのまにか来春から離れていた風華がグレースの頭にポンと手を乗せる。

 

「最初はやさぐれていたものね。その頃に比べたらどれだけ成長したことか」

 

 グレースは少し恥ずかしそうにする。

 

「風華お姉様は一つも変わってませんけどね。そういうところがいいんですけど…」

 

「え、なんて? 最後のほう、聞こえなかったな〜?」

 

「意地わる!?」

 

 来春はそんな二人を見ながら少し微笑んだ。

 

「来春!」

 

 少し男らしい呼び声は船の方から聞こえてきた。

 

「マギの供給ご苦労様」

 

 来春に近づいてくる13人のリリィたちは、みなスルーズのメンバーだ。

 

「ついに完成したな。フギンも早く翼を広げたくてうずうずしてるんじゃないか?」

 

 榛東(しんとう)光希(みつき)はフギンの方を振り返って見上げる。

 

「お姉様もそうおもいますですか?」

 

 特徴的な話し方をする無表情の光希のシルトの御鈴(ごりん)赤来(あかぎ)が光希にそう尋ねる。

 

「ああ。明日にはこいつが空に向かって羽ばたく。その瞬間が待ちきれないな!」

 

 来春はそれを聞いて安心した。

 

「最終調整はどうやら上手くいっていたみたいだね」

 

「乗組委員の方々が随分と頑張ってくれているからな」

 

 来春はスルーズの面子に顔を向ける。

 

「今日はご苦労だった! 明日には出港だからしっかり身体を休めておくこと! いいね?」

 

「はい!」とか「了解!」とかそれぞれの返事が一斉に帰ってきた。

 

 来春はついてくる風華とグレースを引き連れてフギンの最終点検にはいった。

 




木津来春
身長:出江史房様と同じくらい
スキラー数値:90
CHARM:トリシューラ(今) アパラージタ(未だに相棒)
レアスキル:Z/ラストレター(S級)
サブスキル:狂乱の閾 ホールオーダー
レギオン:スルーズ(主将)(SSS)
シルト:事代風華
DATA
表舞台にあまり出なかったが故に謎の多いリリィである。自身のレギオンであるスルーズの表向きの主導権をシルトである風華に託し、密かにフギンの建造に専念していた。
実は研究者としての側面も持っていて、リリィ研究に没頭することもある。現在目をつけているのが『カリスマ』。美鈴が実はカリスマ持ちというのを知っていた数少ない人物である。現在は梨璃に興味の対象が向いており、オートケプヒン戦では百由に変わってずっとデータ取りをしていた。
何やらくらーい過去をお抱えのようで・・・



どうしてこうなった感。
次回はもっと短く書きます。
もっと百合百合させたいんよね・・・
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