アサルトリリィ Reconquista   作:シン・ナス

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二話 疑惑

 〜フギン 艦内ブリーフィングルーム〜

 

 

 

「各レギオンの隊長さん方。本作戦の指揮官であります百合ヶ丘女学院三年の木津来春と申します。ちなみに事前情報なのですが本艦は旧ロシア連邦上空を巡航速度のマッハ3で航行中です。そんなことはさておきですね、これからレコンキスタ作戦について説明いたします。では、百由。パネルをよろしく」

 

「了解です〜」

 

 百由が端末を操作すると床にブリテン島の図が表示された。

 

「既知かと思うが、現在カッスル女学院管轄のハドリアヌスヒュージネストが突然に活性化しハドリアヌスの長城が陥落しかねない状態となっている。ここが陥落すればブリテン島はヒュージの巣窟となり、間違いなく人類にとって大きな後退となるだろう。そこで、ハドリアヌス戦線の押し戻しだけでなくブリテン島を再征服してしまおうという、ノルマン公ウィリアムも驚きの作戦だ。再征服というか奪還だがな」

 

 前説のようなものが終わるとパネルは現在の状況を映した。

 

「ハドリアヌスラインAからGまでのうち、既に陥落指定となっているのが最西端のAと最東端のG、そして中心のDだ。他のポイントもおそらく瓦解していくだろうね」

 

「てことは、Dから修復していくってことですか?」

 

 そう言って少し前に出たのは御台場のセインツと呼ばれているLGヘオロットセインツの川村楪だ。

 

「いや、ここは別にほっといても大丈夫だ。AとGが完全に崩れたらハドリアヌスエリアディフェンスが一気に瓦解、その地点で作戦名を撤退戦に変えなければならなくなる。だから、メルクリウスから『方舟』を2隻も借りたんだ」

 

 その場にいる皆がメルクリウスの制服に身を包む二人に目がいった。

 

「第1飛空挺団ミカエル団長のアルテア・アレッサンドリーニよ」

 

「余が第5飛空挺団ラグエル団長ティシア・パウムガルトナーだ」

 

 来春は二人が自己紹介をした後に作戦の説明を再開した。

 

「Aの攻略をミカエルがGの攻略をラグエルが担当することとなる。これをリペアハドリアヌス作戦とし、この後にレコンキスタ作戦を行う。ではリペアハドリアヌス作戦の詳細はアルテアさんとティシアさんに任せることとする」

 

 ちらっと二人をみると頷いて応じていた。

 

「ちなみに作戦開始まであと1時間ちょいしかないから」

 

 満面の笑みでびっくりするようなことを言う来春に全員が凍りついた。

 

「えぇー?!」

 

 という驚きの叫び声が一斉に湧き上がったのはしばらくしてからのことであった。

 

 

 

 〜ブリッジ〜

 

「現地の最新の情報を受信しましたです」

 

 赤来はキャプテンシートにデータを送信した。

 

「なるほど見た目以上にDが厳しそうだね。比べてAとGは驚くほど手薄なんだけど」

 

 来春は光希に視線をやった。

 

「戦術予報士としての直感は絶対罠だって告げてる。どう見たって怪しいだろ。Dにリリィを寄せ集めて挟撃とか考えているんじゃないか?それにAとGには見た目以上にヒュージが潜んでいると考えるな」

 

 光希の冷静な分析にただただ頷く来春。

 

「作戦は予定通り決行すると言うことで良さそうだね」

 

「それがいいと思う…」

 

 光希はどこか煮え切らない返事をした。

 

「なにか気にかかることでもある?」

 

 来春は光希の感情を理解しつつも尋ねた。

 

「それでもカッスル女学院という大ガーデンであってもこの数を相手するのは中々酷だと思うんだ。だから…」

 

 来春はニッと笑顔を見せた。

 

「確か、SSSランクレギオンがあと1つは欲しいということだったね」

 

 光希も来春の笑みに笑みで返した。

 

()()でいいんじゃね?」

 

 来春は艦内放送用のマイクを手に取った。

 

『スルーズの諸君とアルテアさんとティシアさんは今すぐブリッジに集合です』

 

 短く伝えるとガチャりとおろした。

 

 数分後全員の集合を確認すると来春は立ち上がった。

 

「最終決定事項を確認するね。じゃあブリッジの大パネルに注目だ」

 

 映し出されたのはハドリアヌスラインの現状だった。

 

「ちょっと、聞いていた話しと違うくない?!」

 

 真っ先に反応したのがアルテアだった。

 

「余の大部隊でこの手薄なGを落とすことなど容易いが、Dに部隊の半数を割くべきでないだろうか?」

 

 ティシアの優しさが滲み出る提案だが、光希が即座に否定する。

 

「ヒュージ達は私らにそうさせようとしているんだ。敢えて乗るという選択肢は無いと思うな」

 

「それでも部隊を出す必要があると思うわ!でなきゃカッスルが押しつぶされてしまう!」

 

 アルテアが訴えるように乗り出す。

 

「だから、だ。この艦と私たちのレギオンで戦況をひっくり返す」

 

 ティシアとアルテアは驚愕する。

 

「この艦にそれだけの力があるというのか?」

 

 ティシアの疑問はもっもである。

 

「この艦はあくまでもCHARM。CHARMはヒュージに決定的なダメージを与えることのできる世界で唯一の機動兵器。しかもこの艦は一般的なCHARMが扱う何十倍もの威力を出すことが可能な兵器を有している。海に浮かぶ戦艦とは違うということだよ」

 

「だけど、まだテストは一回もしていないと聞くわ」

 

 アルテアは部隊分割に拍車をかけるようにする。

 

「テストで使えても実戦で使えなかったら意味がないということよ」

 

「それで失敗したら何人のリリィが死ぬと思ってるの?!」

 

 風華の反論にアルテアが胸ぐらをつかむ勢いで抗議する。

 

「兵器の不調に関しては多分大丈夫だと思いますよ〜」

 

 鬼気迫る状況にそぐわないフワッとした声が響く。百由だ。

 

「だって私が5徹して点検したんですもの!」

 

 来春は苦笑いした。

 

「よくそれで身体が保つよね」

 

「どうせいつも四六時中起きてますし、好きこそもののなんとやらです〜」

 

 来春の気遣いに全く応じる気の無い百由であった。

 

「なんだか調子狂っちゃうわね…」

 

 アルテアは風華から手を離した。

 

「ではこの艦でDポイントのヒュージ群を混乱させた後はどうするのか?」

 

 ティシアは冷静に尋ねる。

 

「そこからは私たちの出番だ。LGスルーズは一応格付けはSSS頂いてるし、カッスルからも、SSSのレギオンが一隊あればと言っていたからなんとかするよ。それにエリアディフェンスを修復するまでの時間稼ぎだからね」

 

 アルテアは少し引き下がった。

 

「つまりカッスルのリリィたちの命運は私たちがどれだけ早くエリアディフェンスを修復できるかにかかっているということね」

 

「イグザクトリー」

 

 来春はアルテアとティシアを半ば上から見下すようにした。

 

「そういうわけで、全ては君たちの采配にかかっているわけだ。ちなみに作戦はまとまったのかな?」

 

 アルテアもティシアも頷く。アルテアが一歩前に出る。

 

「まず私から。エデン大隊はAポイントに対してスイッチ作戦を取ります。レギオン2隊ずつ前衛後衛を交代しながら確実に推し進めていき、その間にアーセナルによってエリアディフェンスの修復を行います」

 

 次はティシアだ。

 

「Gポイント付近に街がある故、余のカナン部隊は各レギオンごとに役割を分担していく。街の住民の避難を第一にし、避難民護衛隊、突撃隊、露払い隊、後方支援隊を編成し、着実に戦線を押し上げていく」

 

 メルクリウスの暴君と渾名されるだけあってアルテアはかなりの強行策だが、対してティシアは御台場迎撃戦に参加していたのでのその時の作戦を基盤とし各レギオンの特色を活かす作戦だ。

 

 来春は作戦データを受領すると頷いた。

 

「了解した。それと、だね。みんなにマイク付きヘッドフォンバイザーを着用することを通達しといて。左側のヘッドフォンをタップしたら起動するってこともね。あーあとそれと、『O.T.(オペレーション)13(サーティーン)』の赤文字がバイザーに浮かび上がると、推奨退避域が地図上に表示されるから従うこと。いいね?」

 

 アルテアとティシアの顔には疑問が浮かび上がっていたが承諾した。

 

「じゃあ、作戦開始まで準備運動でもしておいてね。解散!」

 

 と言い放つと呼ばれたメンバーはさっさと持ち場や自室に戻った。

 

 ものの十分後くらいにフギンは作戦開始への行動に出る。

 

「現在の高度は9万フィート。間も無くモスクワ上空を通過します」

 

 操縦士の亜紀が報告する。

 

「そろそろだね。マッハ0.6まで徐々に減速しつつ0.7フィートまで降下して。取り敢えずヒースローコントロールの交信可能域に入ったら現空域にいる航空機を全部立ち退かせるよう伝えて」

 

「了解しましたです」

 

 赤来は準備を始め、亜紀は自動操縦装置に指示内容を即座に叩き込む。たちまちフギンは緩やかに降下と減速を始めた。

 

「ところで、雅枇ってば苦労してないかな…」

 

 他校の親友を気遣う来春であった。

 

 

 

 〜一柳隊仮控え室〜

 

「減速し始めたわね」

 

 夢結が僅かにかかるGを感じ取った。

 

「もうすぐ作戦が始まるということですわね」

 

 楓だけでなく、メンバー全員の表情が引き締まっている。

 

「じゃあみなさん。私たちに任された位置を確認します」

 

 梨璃が端末を操作すると控え室の机にブリテン島の地図が浮かび上がった。

 

「一柳隊が所属するのはアルテア様率いるエデン大隊です。スイッチ戦法で私たちはアールヴヘイムと共に第2中隊に参加します。第2中隊の役目は第1中隊の撃ち漏らしの撃墜、第1中隊との前線交代後、前線の押し上げを行います」

 

 梨璃の丁寧な説明の後に

 

「質問はありますかといっても答えれることは少ないかもしれませんが…」

 

 と尋ねた。すると梅が

 

「ところでアールヴヘイムと同盟を結んでるローエングリンはどこにいるんダ?」

 

 きょとんとして尋ねる。

 

「あっ!それはですね、レコンキスタ作戦からの参加らしいですよ。なんでも来春さんに乗艦を断られたんだとか」

 

 鶴紗は百由からもらったドーナッツを頬張りながら尋ねる。

 

「…なんで?」

 

 それに答えたのは梨璃ではなく二水だった。

 

「学内訓練施設を破壊した前科を持つ方がいらっしゃるからじゃないでしょうか?」

 

紗癒(さゆ)さんですわね…」

 

 楓のライバルの立原紗癒はローエングリンの首相である。

 

 苦笑いするメンバーであった。

 

「あの、どうやってここまで来るの?」

 

 雨嘉が尋ねる。

 

「アンブロシア女学苑の軍艦でここまでいらっしゃるらしいですよ」

 

 それを聞いた神琳はまたも苦笑い。

 

「アンブロシアの皆さんも大変ですね…」

 

 それを聞いたミリアムがポンと手を叩いた。

 

「あーそれで1ヶ月前に出立したんじゃなー」

 

 夢結は紅茶を飲みつつ話が終わったのを確認し次の話題に進める。

 

「確かバイザー着用の指示が出てたわね」

 

 梨璃に尋ねる。

 

「はいお姉様。先程アルテア様から指示がありました。なんでも指示とかは全部ヘッドホンバイザーで行うとか」

 

 梨璃はささっと壁に設置してあった装備庫をタップして開くと、そこには装備品が揃っていた。具体的にはLGラーズグリーズの隊服とバイザー、工廠室にメンテナンスに出していたCHARMも既にあった。

 

「CHARMってメンテ出してなかったけナ」

 

 梅は驚くように倉庫を覗く。

 

「確か百由様が言っておったぞ。工廠室(うち)で整備したCHARMは取りに来なくていいから。控え室の倉庫を覗いたらあるかも〜、とかなんとかな」

 

 百由のシルトであるミリアムのこまねが炸裂した。

 

「便利な世の中ですね」

 

 素直に感心する神琳だった。

 

「それはさておき、続けてちょうだい、梨璃」

 

 話題を戻すように促した。

 

「は、はいお姉様!」

 

 元気の良い返事をするとバイザーを手に取りヘッドホン部分を耳に当てるとしっかり固定された。

 

「あとは、左耳側のヘッドホンをタップすれば起動しますよ」

 

 皆も梨璃の真似をして早速装着した。

 

「おお!なんじゃなんじゃ?!」

 

 突然映し出された情報に困惑するミリアムであった。

 

 夢結がおもむろに手を前に伸ばし、スワイプの動作をした。

 

「端末を操作するようにできるのね」

 

 雨嘉もそれを見てスワイプした。

 

「風向きとか風の強さまでわかる…」

 

 レアスキル『天の秤目』持ちらしい情報を覗いているらしい。

 

「あ、それと、おーえすさーてぃーん?、という表示がされた時はいかなる状況でも5分以内に指定された地域に移動しろ、とのことです」

 

 伝達は完璧に熟す梨璃。

 

「O.S.13、か」

 

 鶴紗が知っているような口ぶりで呟く。

 

「鶴紗さん。何か知っているんですか?」

 

 二水が不思議そうに尋ねる。

 

「ま、まぁね。でも出されることはない、と願いたい」

 

 楓が少し興味を持って尋ねる。

 

「倫理的にまずい感じだったりするのでしょうか?」

 

「それは無いナ。だって来春様だゾ?」

 

 梅はすぐさま否定する。

 

「梅の言う通りだわ。来春様に関しては情報がほとんどないと言うけれど、無いのではなくておそらく抹消されているのよ」

 

 夢結は梅に同意して、1つの事実を告げようとする。

 

「奥羽事件って知ってるカ?」

 

 場の雰囲気が一瞬にして凍りつく。

 

「奥羽解放戦において多数のリリィが亡くなり、G.E.H.E.N.A.の研究所が跡形もなく無くなっていた、という事件ですね」

 

 二水が解説する。

 

「そうよ。浴びた無数の血をひとつも拭わずに帰ってきたあの来春様の痛々しい姿、今でも忘れてないわ」

 

 夢結は額に手を当てて、考える素振りを見せる。

 

「ああ。あれ以来、来春様が外征はもちろん、ヒュージ戦にももっぱら顔を出さなくなったんダ」

 

 すると神琳が思い出したように話に加わる。

 

「その後に、内容は分かりませんがG.E.H.E.N.A.と理事長代行が激しく争ったと言われています」

 

 雨嘉はそれを聞いてなにかに気づいた素振りを見せるも控えた。

 

「だけど私は来春様を信じたい。父さんの汚名を晴らそうとしてくれている方が悪い人なわけがない」

 

 鶴紗は自らの意志を告げた。

 

「鶴紗さんがそういうなら私は信じるよ!」

 

 梨璃は鶴紗の手を取った。

 

「そうね。私も来春様を信じるわ」

 

「梨璃さんがそうおっしゃるなら私も信じますわ!」

 

 夢結も楓も、2人だけではなく皆が信じると言った。

 

「そろそろ集合時間ですね。準備を早く済ませてしまって、格納庫に行きましょう!」




今日はコーナーおやすみです。

あと時間かかってすみません!
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