〜12時34分 Dポイント〜
「LGマーリンが後退を宣言しました!LGヴィヴィアンに引き継ぐそうです!」
「第3エリアにてLGオベロンの消耗が激しくなっています!」
カッスル女学院では怒号が飛び交う。
「日本のガーデンからの増援はもう来ているのでしょう?!」
そう叫ぶのが生徒会長的立場の
「たった今作戦を開始したとの報告がありました!同時に伝令。こちらの作戦の都合につき20秒以内に全戦闘を停止しポイント2.4より後方へ撤退されたし。尚こちらの要求に従わなかった場合の安全は保証しかねる、とのことです!」
情報担当リリィが報告した。エレミアは怪訝な表情を浮かべる。
「全レギオンに通達。今すぐポイント2.4より後方へ撤退!交戦中のヒュージも無視して!今すぐよ!」
エレミアは必死になって叫ぶ。
「は、はいっ!全レギオンに告ぐ!今すぐ全作戦を中止、ヒュージに構わず撤退せよ!繰り返す!…」
エレミアは上空を見上げた。
「なにか感じるのですか、王よ」
エレミアの横に控えていた円卓12人の副会長ガウェインのルーテリア・ケープが尋ねる。
「感じるだけよ、ルーテリア卿」
ルーテリアも同じように上を見上げる。
すると頭上を超高速で通り過ぎる物体がヒュージに向かって飛んで行った。その物体はヒュージに爆音爆風と共に着弾した。
〜12時34分 フギン艦橋〜
「取舵90度の後、ホバリング」
「了解。取舵90度」
亜紀が舵を左にきる。間髪入れず来春は次の指示を出す。
「主砲にCHARM用実態弾装填。目標D1.5」
「了解。主砲右90度回転」
光希は指示通りにする。
「12時30分にエデン隊がAポイントで12時35分にカナン隊がGポイントでのエンゲージを確認しましたです」
赤来はキャプテンシートに座る来春に報告をした。
「Dポイントで奮戦している戦線のカッスル女学院に30秒以内でD2.4より後方へ撤退するように通達」
「了解です」
その指示が終わる頃には艦は停止し主砲は発射体制をとっていた。
「25秒計測開始」
赤来は指示に従って神速で操作する。前面ディスプレイに秒読みカウントが表示された。
25
24
23
22
21
20 沈黙が緊張に変わる。
19
18
17
16
15 秒読みカウントだけがブリッジに鳴り響く。
14
13
12
11
10 この一撃が今回の作戦の命運を握っている。
09
08
07
06
05 光希の手に汗が流れる。
04
03
02
01 …そして
00 「撃て」
来春の静かな声が秒読みに変わりブリッジに響いた。
そして主砲の発砲音がさらに変わって響く。
「着弾まで1000m、500、400、300、200、100、0。着弾確認したです」
赤来の報告を確認したブリッジのスルーズ面々は立ち上がる。直後、百由と士官の面々がブリッジに入室した。
「手筈通り、後は引き継ぎます〜」
来春は立ち上がり頷くとメンバーを引き連れて格納庫まで走った。
百由はキャプテンシートに座り指示を出す。
「では高度をそのまま維持しつつ、D1.1を目標に第二射、いっちゃってください」
百由はキャプテンシート前方のパネルに映されている戦況図を眺めた。
「えーっと、どれどれ?Aポイントはそろそろ前線中隊が後発と交代する頃合いで、Gポイントが押し上げに成功してきている、と。…む、むむむ?」
百由は目を擦ったり、眼鏡をかけなおしたりした。しかしどうしても無意識のうちにマス目が見えてくるのだ。
「すごろくか!」
亜紀は振り返って
「どこが?!」
とツッコんだ。
「えー見えません?」
「見えないわよ」
亜紀にバッチリと否定されてしまった百由であった。
〜Dポイント上空〜
「最前線のAZ班がなるべくスモールミドル群体を陽動しつつ、ミドルを個別に生成する能力を持つギガント級をTZ班とBZ班、後方AZのノインヴェルトで潰す」
「いつもの作戦だな」
光希が自身のCHARMの最終調整を行いながら確認する。
「うん、そうだよ。ただ、このギガント動きがおかしくてね。一柳隊が初陣で撃破したあのダインスレイフを抱えていたギガント級みたくまるでリリィを恐れていないんだ」
赤来が困ったような表情をする。
「カッスルの皆さん、困惑しちゃったです?」
「だろうね」
「オートケプヒンのような特殊能力にも気をつけなければいけませんね」
グレースは少し顔をしかめる。
「あれは本当に厄介なヒュージだった。梨璃さんがいなきゃ詰んでたよ」
来春思い出すように言うと一つ溜息をついた。
「作戦開始ポイントに到着しました!」
操縦席から声が聞こえてきた。
「うむ!さ、皆の衆行こうか!スルーズ出撃!」
来春の掛け声に、イェスロード!と皆が声を揃えて叫んだ。このレギオンの習わしだ。
AZ筆頭の風華とグレースがハッチを開けるとそのまま飛び降りた。次々とメンバーが飛び降りてBZの来春が最後に飛び降りた。
空には白の点が13。隊服が、漆黒の制服に白いローブという組み合わせだからだ。
降下しつつ先行しているAZ班が接敵したことを確認すると来春は相棒のアパラージタを構える。そして斬るような動作をすると弧の形をした衝撃波『ソニックウェーブ』がスモール級及びミドル級を墜としていく。遠距離応戦携帯に変形させるとさらに撃墜数を増やす。
『来春様!ミドル級が恐らく全部リジェネレーターを持ってます!』
着地している風華の叫びには焦りは感じられないが作戦を変更すべきだというメッセージのようなものが伝わってくる。
「ミドルを撃破せずに引きつけて!榛名!」
『イェスロードッ!』
AZの榛名はレアスキル縮地を所持しているので陽動には適している。
「私が接地したらすぐにノインヴェルト戦術を仕掛ける!タクティクスハイプレス!」
『イェスロード!』
ハイプレス戦術。戦場にいる小物にプレッシャーをかけパスコースを作成し早めにギガント級にノインヴェルト戦術を叩き込む戦術だ。
来春はBZ降下隊の中心に移動し、ノインヴェルト用特殊弾を装填する。AZがギガント級の前に立ちはだかる小物にプレッシャーをかけつつギガント級を引きつけ始めた。
「行くよ赤来!」
「イェスロードです!」
来春が地に足をつけた瞬間に赤木にファーストパスが周りノインヴェルト戦術が始まった。来春はすぐさまTZにポジションチェンジを行った。TZにいたリリィがBZへポジションチェンジを行う。スルーズのメンバーは瞬間的に自分たちのリーダーがブリッツパスを行うことを理解し相応の行動を始めた。これを『方向づけされた行動制御』と呼ぶ。
マギスフィアのパスは超高速で順調に繋がりフィニッシュの風華に回ってきた。受け取るとギガント級真下に滑り込み、遠距離応戦形態のCHARMを構えた。
「さよならよ」
静かに決めゼリフを吐くとそのままフィニッシュショットを打ち込んだ。風華は榛名に拾われそのまま撤退する。
雷のような咆哮と共にギガント級は爆散した。
「危ないよ、風華」
「えへへ、つい熱くなちゃって」
ギガント級は処理したがまだ終わっていない。来春はミドル級を引きつける為にAZポジションまで移動した。13人で懸命に牽制しているとカッスル女学院からついにDポイントエリアディフェンスの修復準備完了の知らせが飛んできた。
「総員エリアディフェンス内に退避!」
この指示でスルーズのメンバーは一つに固まりハドリアヌスの長城の線まで一気に後退し線を超えると
「今です!」
とインカムに向かって叫んだ。
エリアディフェンスが起動しバリアが張られヒュージは入れなくなった。
来春は溜息をつく。
「親玉倒して終わらない戦いとかもうごめんだね…」
しかし、さらなる脅威がスルーズを再び駆り立てる。
〜同刻 Aポイントエデン大隊〜
「順調に押してるわね」
エデン大隊を率いると同時に第1中隊を率いるアルテアはすでに第2中隊と交代し大隊後方にて援護を行なっていた。
「そうね。中々いい感じなんじゃないかしら?」
ヘオロットセインツ所属の月岡椛が応戦しながら応じる。
「こうしていると御台場迎撃戦を思い出すわね!」
「そうね。あの時の連携忘れられないわ」
後方隊だからか話せる余裕があるらしい。
「来春様のこと、どう思う?」
アルテアはCHARMを振りながら椛に尋ねる。
「私は信頼してもいいと思うけど、アルテアはどうなの?」
CHARMを振りながらにも関わらず優雅に尋ねた。
「正直、奥羽奪還戦の時のことがあるから少しムカついてはいるのよ。鎌倉5大ガーデンの当時2、3年生だったリリィの殆どが参加したという幕張奪還戦にも、相当実力があるにも関わらず参加していなかったんでしょ?」
アルテアの鋭い指摘に椛は「ええ!」と叫んだ。
「でも確か来春様のレギオンは百合ヶ丘では生徒会直轄の隠密作戦などを請け負う特務隊だったような…」
椛は一瞬考えてしまった。
「何か隠してるってこと?」
「私はそう思うわ」
それに対してアルテアが何か言おうとしたその時だった。
「っ?!」
「なに?!」
バイザーにフギンからの『緊急』という赤文字が映し出された。
〜修復後のDポイント〜
「なに?!」
Dポイントのエリアディフェンスの修復が完了した来春は叫んでキャプテンシートに座る百由を呼び出した。
『モグラのように地下深くを進むヒュージがいて、そいつがロンドンに向かっててかなりまずいんです!』
百由が焦って伝える。
「サイズは?!」
ガンシップに走り戻るよう指示しつつ尋ねる。
『ギガント級よりちょい小さめ!』
「私たちで行く!他の両大隊に作戦完了を急がせてくれ!その上で両大隊からレギオンを一隊派遣してくれ!」
来春の心臓がばくばく鳴り響く。
『こちらカナン大隊。こちらからは派遣することができない。一隊も外すことができない状況だ』
ティシアが要請拒否を宣言した。
『悪いけどこっちも無理!なんだかヒュージの抵抗力が上がってて一隊も欠かせない状態!』
アルテアまでもが拒否した。すると
「私たちが行きましょう、来春卿!」
とカッスル女学院の制服を着たリリィが近づいてきた。
「貴女は…」
「カッスル女学院生徒会長のエレミア・アークランドです。私ののLGアークランドが同行いたします」
エレミアがそう提案してきたのだ。来春は迷わず頷いた。
「よろしく頼むわ。ではガンシップに乗って」
LGアークランドの面々も搭乗完了したのを確認する。
「かっ飛ばしてちょうだい!」
来春が操縦席に声をあげると、搭乗口が閉まり一気に飛び立った。
来春はエレミアに端末を見せた。
「作戦会議といくわ。まず目標は地中深くを進んでいる。こちらからはマギの反応でどこにいるか確認できる装置をつけているから、位置探しは困らない」
「でもなんとかして地上に引きずり出さねばなりませんね」
「そう。そこで、だ。こいつを使うの、さっと!」
後ろから引きずり出したのはなにやらドデカイ砲身を持つ兵器だった。
「長射程高出力砲。1ヶ月前に百由が使って百合ヶ丘を停電させた兵器さ」
「あはは…そんなこともありましたねぇ」
風華の苦笑いはよそに説明は続く。
「こいつを使って地面を抉ろうと思うんだけど、どうかな?」
エレミアは驚愕して
「なんたる野蛮戦術?!」
と思わず叫んでしまった。
「どうしようもない時はパワーよパワー!…パワーよ!」
風華がエレミアの肩をポンと笑いながら叩いた。
「でもさっき百合ヶ丘の電力が落ちたって。あ、副主将のメリー・リズリッタです」
ごもっともな指摘を受けて来春は頷く。
「大丈夫。電力は使わないから。うちのフェイズトランセンデンス使いの光希がマギ供給、天の秤目を持つ赤木が引き金を引くってことで」
ちらっと光希達を見るとグッと親指を立てていた。
「ニアギガント級の速度は幸い遅めだから待ち伏せはできるはずです」
エレミアが地図にタップする。
「よし。じゃあそうしよう。具体的な作戦だけど…」
来春は次に話題を進める。
「ノインヴェルト戦術はこちらで行います」
エレミアが提案した。来春はその提案を普通に受け入れた。
「頼むよ。こっちはさっきノインヴェルトやっちゃったからね。CHARMが多分壊れると思う」
そんなことを言っているとどうやらニアギガントを追い越したようだ。
「じゃあ作戦開始だ」
来春の宣言と共に長射程高出力砲を二人がかりで構え発射態勢に入った。
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